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雑誌目次

雑誌文献

病院33巻3号

1974年03月発行

雑誌目次

特集 私立病院のゆくえ

わが国の私立病院の歴史的展望

著者: 酒井シヅ

ページ範囲:P.22 - P.27

 幕末までの日本の病院は宗教的動機から生まれた施薬院とか,江戸時代の小石川養生所にみるように人道的立場から出された建言を幕府が採用して開設したものといったようにすべて慈善病院の類であった.それだけに公共的な性格を帯びて,政変などで世情が変わると,たちまちそれらの施設も衰微してしまうのであった.
 ところが,幕末もぎりぎりになると,西洋文化は日本の国内にかなり浸透してきて,医療の面でも西洋医学の影響を強く受けた.そして,長崎の海軍伝習所で医学の伝習が始まると,教師ポンペは臨床教育のための病院の設立を要求し,ここにはじめて近代的な病院が誕生した.その後,各地に病院が誕生し,そこに国内からはもちろん,外国人の医師も招いて,当時としては高い水準の医療を行なった.そこではその医師に学ぼうと医学校が付属し,医育機関として活用された.一方,病院では良い治療が受けられるというので,患者数は増加の一途をたどり,それに伴って病院数も増えていった.明治初期に開設された多くの病院は,施療患者を受け入れることを規則に書いているが,実際には中流階級以上の患者が大部分を占め,極貧の者には行きにくい場所になってしまった.

私立病院経営の現状

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.28 - P.32

はじめに
 わが国の医療制度は一貫して私的医療機関を主流とするものであったことは,改めて説明するまでもないことである.しかし,診療所の段階であるとしたなら,世界的傾向であって,とくに違わないとしても,病院が医師の個人的財産から成り立ち,企業的に経営されるとなると,あまり一般的現象とはいえなくなる.去る47年8月,アメリカ病院管理者学会が日本の医療制度を勉強しに来たとき,わが国の私立病院の隆盛ぶりと,それに対する政府の保護育成政策を聞いて,きわめて奇異な感じをいだいたようであった.わが国の歴史的な背景とか国情を説明しても,なかなか腑に落ちぬ顔つきであったのである.
 わが国と同じようなところがほかにはないわけではないであろうが,欧米の病院のあり方と比べてみて,かなり特異な類型をなすことだけは事実である.医療のあり方として,またその経済的基盤のあり方として,医療の進歩普及にとって,当を得た制度であるか否かは,問題のあるところである.この意味で,わが国ではくり返し論義され,また実際的に公立私立の闘争(?)の歴史をつくってきたのである.しかし,そうした事実は事実として,なおかつ私的医療機関が主流をなしているという現実はいまだに変わりはないのである.

私立病院運営上の問題点と対策—‘人手不足’の観点から

著者: 菱山博文

ページ範囲:P.33 - P.36

 現在,われわれ私立病院の立たされている立場はきわめて困難であり,ほとんどその存立さえ危ぶまれている現状である.その大きい因子は,モノ(経済)と,ヒト(職員不足)に尽きよう.私は主としてヒトの問題にふれたいと考える.

私立病院の将来—郵送調査から

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.37 - P.39

 本誌編集室では,全国の医療法人,個人病院について,「病院要覧」(厚生省医務局総務課編,医学書院)掲載の名簿をもとに,1000病院を無作為抽出し,往復ハガキによって先の内容の調査を行なった.
 回答状況は表のとおりである.(集計総数156病院)

座談会

私立病院の存立と将来

著者: 亀田俊孝 ,   塩月正雄 ,   伊藤研 ,   野村秋守

ページ範囲:P.40 - P.49

わが国病院8000のうち約3/4を占める私立病院は,ここ10年来数を増しつつある.だが内容規模的には格差の大きいこの6000私立病院が,いまカド番にたたされている.現行医療体系の中で,また医療高度化という将来予測に立ってみるとき,私立病院の存立意義とゆくえは……第一線でご活躍の先生がたに,率直な発言をもとめた.

病院と統計 病院の部門別原価計算・3

手術部門

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.10 - P.11

 手術部門とは  手術室およびこれに付属する処置室,麻酔室,ギブス室,回復室,準備室,作業室,浴室などで手術に関連して行なわれるすべての業務を含み,外来部門で行なわれる手術は含まない.

今年は金沢で,素朴に……第24回日本病院学会長 奥田幸造先生

著者: 河野稔

ページ範囲:P.13 - P.13

 奥田先生はそのひととなりが豪胆細密であり,また,人の意表をつくアイデアマンかつ,週労働時間80時間以上の猛烈院長であります.とくに,昭和39年より公立能登総合病院長として,毎年,癌センター,高等看護学院,救急センター,学生福祉センター,精神神経センターなどを次々に完成し,能登半島の一角に総合病院を中心としたすばらしい医療施設群をつくり上げ,地域医療に貢献しておりますが,その実行力とバイタリティーは誠に驚嘆敬服すべきものがあります.
 今年の日本病院学会は,地方の特殊性を生かし,素朴に,かつ華麗に実施されるとのことですが,奥京都といわれる金沢の地で,内容豊富な学会が開かれることを信じて疑いません.心から学会のご成功を祈っております.

グラフ

小型コンピュータがフル回転する病院—宮城県成人病センターを訪ねて

ページ範囲:P.14 - P.18

 抗生物質の開発や公衆衛生の普及によってわが国の疾病構造は結核などの感染症が後退し,癌・高血圧など,いわゆる成人病が大きくクローズアップされ,医療の中心を占めるに至ったが,このような動きの中で,各地に成人病センターを,という声が急速に高まってきたのは昭和36,7年頃である.この波に乗って,宮城県でも東北大,県対癌協会を中心に癌中心の成人病センター設立の構想が38年頃に生まれ,各方面への交渉を経て42年4月,50床のセンターとしてオープンした.
 当時すでに胃癌や肺癌などの早期発見・早期治療に実績をあげていた東北大や抗酸菌病研究所の癌専門の医師たちが,10人ほど集って発足したが,患者需要の増大に伴って,現在,病床も200床に,また医師も癌専門の医師の他に循環器,呼吸器,胸部外科等の医師も加わり,23名の専門医がいる.発足当初から癌中心をめざしただけに,現在も入院患者の55%が癌である.患者は関連病院からの紹介や,対癌協会の集検でひっかかった者が多く,胃癌,子宮癌,肺癌など早期の患者も多い.

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第24回日本病院学会プログラム

ページ範囲:P.50 - P.52

会期 5月22日(水),23日(木),24日(金)
会場 金沢市観光会館

院長日誌

著者: 大脇弥六

ページ範囲:P.77 - P.77

憂うつな診療報酬査定減
 11月27日:本年度の青森県市立病院長会の第二回定例会が,診療報酬の査定減の対策を主要議事に当市で開かれた.
 ここ数年保険の審査がますます厳しくなり,巨額な査定減をかかえて,各公立病院は対策に四苦八苦しているときだけに,出席院長から真剣な訴えがあり,具体的な実効策について申し合わせし,各病院レセプト作成段階における厳重な点検強化のほかに,他県に比べ査定率の激しい基金関係の社保審査委員会に対して市立病院長会から考慮方を申し入れることにした.

病院のクオレ

第3話 フロントサービスの話

著者: 原素行

ページ範囲:P.53 - P.53

新来患者受付
 今でも行なわれているらしいが,新来患者が窓口を訪れると,内科ですか,外科ですかと尋ねられる.患者が診療科を選ぶのである.それがよいか?どうかと思われる.多くの場合,患者は素人である.たまに,とくに紹介状を持参する患者は別として.——ところが,病院,とくにお役所病院では,受付子のうちには邪険な人がいないとはいえまい.いや市民から聞かせられる問題である.お世辞は不用であるが,こんな人は患者との間に心の通いあいが必要であろう.ラポールの成立という.学者はむずかしい理論が好きであるから,‘両者の全人格の交流’などと呼んでいる.
 昭和20年代の半ば頃,たしか‘生きる’とかいう映画が世間に受けた.ところは区役所の窓口であったという."あちらの窓です"と言われ,次々と窓口を転々として,ついに元の窓口へ戻るという映画であると聞かせられた.作者はまもなく昇天したという噂であった.——窓口子の身になれば,同じことを尋ねられるため,邪険になるのも無理ではあるまいという見方もあるが.

英国で学んだ病院管理・3

看護管理と看護教育(2)

著者: 関武矩

ページ範囲:P.54 - P.55

overtime, no!
 病棟における看護婦の勤務体制は,わが国の3交替とはちがい,24時間を2つに分けたシフトによって成っている.1週間の労働時間は実働40時間(拘束4412時間)で,週5日労働制であるから,これを5日に配分したルイシャム・ホスピタル(前号述)の例を見ると,
 日勤拘束 実働A 7:30 16:309時間×2日 16時間B 12:15 21:00 834×2 16C 7:30 12:00 412 4 16:30 21:00 412 4 合計 40時間 夜勤 20:45 7:45 11時間×4日 40時間 以上の時間帯によって1週間ずつ日勤夜勤を交互にくり返してゆくが,日勤の場合,週5日のうちA勤務2日,B勤務2日,C勤務1日で合計40時間となり,夜勤では,1日の拘束が11時間と長いが,週4回の勤務でよいから,週休2日はおろか3日の休みとなる.1か月4週平均として,夜勤回数は8日ということになる.

病院職員のための医学知識・15

心臓病の知識

著者: 三浦勇

ページ範囲:P.56 - P.57

 よく虚血性心臓病という言葉が使われますが,それにはどんな病気が含まれるのですか.
 虚血性心臓病とは,心筋の栄養血管である冠状動脈の血流障害によって,心筋に酸素欠乏,変性,壊死などの‘虚血性’変化を生じ,その程度に見合う狭心痛,不整脈,循環不全などの諸症状を呈する疾患の総称で,狭心症と心筋硬塞および両者の中間の状態がこれに含まれます.
 栓塞症のような稀な例外を除けば,虚血性心疾患の原因の大部分は冠状動脈硬化です.動脈硬化のおこり方には,いくつかの型がありますが,冠状動脈に見られるのは,主としてアテローム硬化であります.つまり,動脈の内膜に,脂肪の変性物であるアテロームと呼ばれる‘おから’状の物質が堆積し,これに石灰化,壊死,出血などの変化が加わって,内膜の肥厚,内腔の狭窄,さらには閉塞などがおこり,冠動脈血流を障害するのです.

医療事故と法律・3

輸血による事故

著者: 饗庭忠男

ページ範囲:P.58 - P.59

質問
 病院では緊急事態で輸血をしなければならないことが多いが,輸血に伴う諸検査などで,病院ないしは医師の過失とされる場合にはどのようなものがあるか,具体的ケースを中心に説明してほしい.

医療提供システム論入門

2.システムとしての医療のとらえ方

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.60 - P.60

システム論研究の背景としての‘専門化’
 システムという言葉ほど広範囲に使用される言葉も多くあるまい.流行語として厳密な意味もなく使用されている例も少なくない.このことは,現代においての問題の多さ,複雑さを意味するものであるかもしれない.おそらくシステムとは,プラトンの昔から部分の集合物,しかも特定の目標を持つ各部分の相互関連のある集合物としての概念として存在してきたものであるが,現代での特徴はシステムそれ自体ひとつの研究対象として考えることに求められるようである.
 医療の世界においても明らかなごとく,近代における急速な専門化の進行が,その背景としてあることは明らかである.多種多様の専門化が必要悪とも思える形で分断化・断片化を生み出し,いわゆる木を見て森を見ない状態を生み出してしまっている.Ashbyは,‘科学は過去2世紀にわたって本質的に簡単なものか,簡単な構成分子に分析できるものを対象として究明してきた.そしてこの方法では多くの場合,複雑な機構に行き当たると根本的に通用しなくなる.1つの要素が変化すると,全体の構成物の変化が見られるものの研究は避けられて来た’と説明する.

緊急レポート

医療費改訂の影響—5病院の実態から

著者: 東義晴 ,   山崎信夫 ,   岡山義雄 ,   谷口憲郎 ,   河崎茂

ページ範囲:P.61 - P.65

モメにモメ,長びきに長びいた医療費の改訂も,ようやく2月1日から実施されるまでにこぎつけられた.各病院とも,沈没寸前のところ,ようやく息をついたという格好のようである.改訂内容についてはそれぞれ言い分もあろうが,ひとまず,今回の改訂の影響という点から,レポートを寄せていただいた.
なお自治体病院では,現在全国的にアンケートを集計中とのことであるので,別の機会に紹介することにした.

時評

レントゲンの曝射を少なくしよう

著者: とう

ページ範囲:P.66 - P.66

レントゲン装置の急増
 現在の医療からレントゲンを切り離すことはできない.わが国のレントゲン装置は最近急激に増加してきた.10年間に普通の病院で7倍,大病院で3倍近く増加しているという.このためにフィルムの使用量も10年前に比べて4.8倍に達している.
 このことは,国民が受けるレントゲン被曝量が急激に増加していることを意味するものである.医師や技師や看護婦など仕事をする側の個々の被曝も問題であるが,広く国民全体に及ぼす影響を考えなければならない.被曝した本人だけでなく,子孫へも影響が及ぶことを慎重に取りあげるべきである.

座談会

自治体病院からみた岩手県の医療—その歴史と今後の課題

著者: 中村直 ,   酒井清澄 ,   中島達雄 ,   加藤邦夫 ,   阿部辰夫

ページ範囲:P.67 - P.75

岩手県庁の中には医療局というのがあり,県の医療行政を担当している.他県のほとんどは衛生部という形が多い.岩手は医療に関して‘県営’の網が色濃くしかれているという特徴をもつといってよい.このことは,南北に広い地域性,そして僻地を数多く含む特殊性ともあいまって,地域住民への医療供給に対して陰に陽に作用してきた.そういう構造の中で,自治体病院はどのように生きてきたか,そして今後に課された問題は何か——全国的に包括医療が叫ばれているいま,組織的運動の中で努力してきた人たちの意見をきくことも,大いに参考になるのではないだろうか.

病院図書館

—日野原重明 著—「POS=The Problem-Oriented System医療と医学教育の革新のための新しいシステム」

著者: 柴田進

ページ範囲:P.76 - P.76

新しい病歴管理システムから医療革新の道を拓く
いらだたしい思いをさせられてきた従来のカルテ
 こういってはいささか素直でないとそしりを受けるかもしれないが,正直なところ私は医科大学卒業後,心ならずも‘事情によって’内科医に仕立てられてしまったものである.したがって修業の最初から内科学——もっと広くいって臨床医学——を心のすみで批判の目で眺めてきたように思う.その一つが毎日患者を診察するたびごとに記入するカルテのことであった.これが一種の乱雑なメモにすぎないような気がしていた.
 現在の保険診療は医療費を不当にやすく釘づけにし,ちょうど隊付軍医が受け持ちの1個中隊とか1個大隊の傷病兵を取り扱う時のように,患者を大量処理しないと医業がなりたたないように仕組まれているから,カルテなどまじめにつけていられたものではない——それは私にもよくわかる.しかし立派なカルテを作製するだけの時間を持っている医師が書いたものも,たいてい大同小異の雑駁なものである.なぜか?私にいわせれば,医師が科学者としての精神と態度をもって診療に臨まず,たんなる医者(薬を投与する人,なおす人)であることをもって満足しているからであろう.実は私自身それに気づいたのは,まことにはずかしいことであるが大変おそかった.

—M.アダン著,華表宏有訳—文庫クセジュ540「医療情報科学」

著者: 開原成允

ページ範囲:P.84 - P.84

臨床医からみた医療情報科学
‘情報科学的医学’の立場
 医療の世界に情報技術をとり入れようとする時,大きく分けて2つのアプローチの方法があるように思う.第1は医療を1つのシステムと考えて,システム分析を行ない,システムとしての医療のあるべき姿を想定し,その姿に従って情報科学技術の導入を進めていくべきであるとする立場である.これは,どちらかというとシステム工学者のとる立場である.
 第2は,医療の側から情報科学技術が最も必要とされているものを選び,1つ1つ情報技術の応用を研究し,その可能なものについてのみその分野ごとに利用を進めていくべきであるとする立場である.これは,主として医療関係者がとる立場である.

—小酒井 望・佐藤乙一 編集—「中央検査部管理必携」

著者: 山中学

ページ範囲:P.90 - P.90

体験から書かれた検査部管理・運営の実務書
難しい中央検査部の管理
 中央検査部の業務は,現代医学の水準において,正確な検査成績を迅速に診療科へ提供することにある.したがって,その管理・運営の良否は,直接その病院の診療内容に影響を与えることになる.しかしそれを円滑に行なうためには,検査部内はいうまでもなく,診療側の医師をはじめ看護婦,さらに事務員との間で,十分な理解と協力が必要である.
 従来,検査部長の職にある人の中で,研究者あるいは医師として高く評価されていても,管理者としてはいささか問題があるといわれた人のことを耳にしないではない.労働問題や,稀であるにしても医療過誤など多くの問題をかかえる現代においては,いかに円滑に検査部の管理・運営を行なってゆくかは,たんに検査部のみならず,病院にとっても大きな課題である.

ホスピタル・マンパワー

MSWの苦難の歴史とともに—岡山済生会総合病院MSW室長 小谷光江さん

著者: 大和人士

ページ範囲:P.78 - P.78

 わが病院が今日の大に至るのに力を貸してくれた人は数えきれないくらいであるが,特別に屋台骨となってくれた人は十指にあまるかもしれない.その1人が小谷さんといえよう.済生会病院の目玉商品のひとつがMSWとすると,そのボスがこの人であり,この途25年のベテランである.

病院建築・61

倉敷市立児島市民病院の設計

著者: 庄司和彦

ページ範囲:P.79 - P.83

風土との出会い
 倉敷市児島地区は旧倉敷地区から南へ25kmほど下った瀬戸内の海岸地帯,福南山の峠によってかつて明確なテリトリーを形成していた海辺の街である.おなじみの鷲羽山をはじめとする周囲の山々,箱庭のように続く島影に囲まれ,広大な海岸線に沿って累々と連なる流下式塩田の櫓(ヤグラ)が乾ききった砂地にくっきりと影を落としている.
 周知のように瀬戸内沿岸は,これまで開発の波に洗いつくされ,公害の防止と環境保存が問われて政治的,経済的にダイナミックな展開を見せてきた.開発による工業化,そしてそのための自然の破壊という高い代価を払いながら文化施設,福祉施設を中心とした町造りによって時代に対応した変身をはかるというパターンは,瀬戸内海周辺の都市がここ十数年の間にくりかえしてきたプロセスである.その両極は,歴史的な町並みを保存する旧倉敷と,夜間でも煌々と明かりや焔を海へ映すコンビナートをひかえた水島によってあらわされるのだが,そのような形での二者択一ではなく,両者をどのように融合させるかが,少なくとも,個々のプロジェクトにも求められる問題点であろう.

今日の精神医療・15

岩手の精神医療と精神病院

著者: 白石順吉

ページ範囲:P.85 - P.90

岩手の精神医療——過去のあれこれ
 岩手の自然は広大である.この地に昭和26年まで私立の岩手保養院がただ1つしかなかった.岩手医学専門学校の付属病院をかねていた保養院には,県下一円の精神障害者だけでなく,旧南部領に属する青森県三八地方や隣の秋田県にわたる広範な地域からも集まっていた.昭和25年精神衛生法が公布されたが,県は当時専門医が得られがたいとの理由で,保養院と隣接して県立静和病院を建ててその運営を保養院に委託した.昭和28年に一関市に県立南光病院が完成.さらに30年代には結核の二戸療養所と大船渡綜合病院とに精神科を併設したし,盛岡と水沢の市立病院にも併設,国は花巻療養所を結核から精神へと転換させた.この前後から県内各所に民間の精神医療機関が次々と誕生していった動機は,他の府県の現象とよく似ている.

研究と報告【投稿】

手術室の医療技術と技術員の現状—人工心肺技術員の実態を中心として(1)

著者: 若井一朗 ,   鈴木朝勝 ,   芦山辰朗 ,   伊佐二久 ,   青木紀道 ,   三浦哲夫

ページ範囲:P.92 - P.95

はじめに
 全国国立大学附属病院手術部協議会では,昭和45年と46年の2年間手術室の人的構成について分析検討を行なってきたが,その中で明らかとなったことの1つに,現代の手術室では看護業務以外に専門的な知識と技術をもつ技術員を必要とする業務がすこぶる多くあり,そのうち資格のある専任者をおかねば法規上も不備という状態のものもあり,手術室の人的構成と組織の面で大きな障害を露呈してきつつある現状が問題として浮かび上がった.
 一方では,手術室の必要とする業務を分担するために現在配置または配属されている医師看護婦以外の要員をみると,30種類にもわたるきわめてまちまちな呼称のまま,複雑な服務系統で,手術室に集められていることも判明し(表1,2),このことは身分がほとんど非常勤雇用であることとあわせて,昭和46年に全国国立大学病院会議に現状の問題点としてとりあげられた1)

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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