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雑誌目次

雑誌文献

病院33巻4号

1974年04月発行

雑誌目次

特集 病院新人教育

新人教育の範囲とねらい

著者: 吉村一郎

ページ範囲:P.22 - P.25

 若い女性の就職——この3月に卒業する予定の女子短大生を対象にした日本リクルートセンターの「就職動機調査」によると,‘知識や見聞を広める’ことを主な目的と考えて働いている女性が64%で,まったく眼中にないものは12%だけ.経済的理由や生きがい,社会に役立つといった考えはそれぞれ少数だし,‘専門能力を身につける’という目的はほとんどない.
 ‘どうせ腰掛けだから’と思えば不思議はないが,希望勤務期間との関係をみると,結婚退職や出産退職を予定しているグループばかりか,定年まで勤めるつもりの人でも‘知識や見聞を広める’が断然トップ.いわゆる‘社会勉強’である.こうして彼女たちは企業へ就職,いや‘就学’する.

私と部下とのノート

著者: 酒井暢 ,   西堀恭治 ,   酒見邦子 ,   平沢政人 ,   安藤秀雄 ,   内藤均 ,   佐野倫男 ,   松本重子

ページ範囲:P.26 - P.34

 病院の各部門に,‘新人’がはいってきたとき,どのように具体的な教育を施しているのだろうか.その過程で問題になったこと,悩んだこと,部下や同僚から相談を受けたことなどを,ここでは日誌ノート風にアレンジして寄せていただいた.また教育研修の専門家からのアドバイスを付けた.ノートでとりあげた事象は,その病院だけの特殊性ととらずに,広い意味の教育の場ででてくる各部門の特徴とご理解下さい.

わが病院の新人教育

視聴覚教育もとりいれて

著者: 田中新三

ページ範囲:P.35 - P.37

直接欠員の補充が主◇
 新規採用者に対するものだけでなく,一般職員の教育訓練についても,各病院によって非常に精粗の差があると思うが,当院もまだまだ十分なことができず,この誌面で発表できるものではないが,現在実施している教育方法の概要を紹介し,ご批判を賜われば幸いである.
 当院新規採用者の実状は,欠員の補充をするためのものが多く,将来の要員に備えて定期的に採用し養成することは,望むことではあるが,現今の労働事情・危機に直面している病院経済から考えて誠に困難である.したがって,直接欠員の補充をするために採用されたものは,欠員の生じた部署の緊急な要請に応じるべく,新人教育も病院の概要と,職務の遂行に必要な概略の知識,業務の引継ぎに必要な事項の修得にかぎられることになり,教育日数も1週間程度のもので,粗製濫造の感である.

医事課新入職員教育この1年

著者: 笹島吉平 ,   遠藤正夫 ,   鈴木忠勝

ページ範囲:P.37 - P.38

新人教育の具体的方法◇
 当院では,これらの教育訓練用に,一般的事項は前述の内容を職員手帳(写真1)にまとめ,それをテキストに使用し,医務部・看護部では,オリエンテーション・ブックレット(写真1)を作成し,専門的実務書として使用している.
 教育方法は,注入式・指導式・討論式を併用して行なっているが,注入式はその中に訓練補助具(写真2・3)として,テープレコーダ,スライドフィルム,16mm映画,ポータブル・ビデオコーダ,オーバヘッド・プロジェクターなどを使用している.

座談会

新人教育をどう進めるか—民間各社の実例に学ぶ

著者: 岩佐博夫 ,   原勉 ,   坪井宏夫 ,   井上昌彦 ,   落合勝一郎

ページ範囲:P.40 - P.48

病院においても,ようやく新人教育の必要性が認識されはじめているが,とかく診療一辺倒できたこれまでの歴史と,雑多な職種を含む病院の特殊性から,必ずしも効果的には行なわれていないようである.そこで,この面では一歩先んじている民間企業の新人教育の現状をうかがってみよう.

病院と統計 病院の部門別原価計算・4

検査部門

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.10 - P.11

 検査部門の病院経営貢献度 検査部門原価・収益の病院原価・収益に占める割合は(図1),あまり大きいとはいえないが,収益が原価を相当大幅に越えていること(図1,図5)から,病院の経営を維持するための貢献度は大きいといえよう.

グラフ わが町わが病院

暗く冷たいイメージを一掃—弘前市立病院

ページ範囲:P.13 - P.17

 弘前市  人口16万.津軽平野の扇のカナメにあたるこの町は,米やリンゴの集荷地,あるいは城下町としての長い歴史をもつ.このことは,近郷近在の住民を数多く参集させる基盤となった.
 弘前市立病院の診療圏は,市内はもちろん,大鰐,黒石,五所川原,藤崎等にわたって広い.市内には,他に国立病院1,大学病院1,私立病院18,開業診療所138を擁する.市立病院裏手の品川町は開業医の看板が軒を連らね,‘医者町’という名で通っている.

今月のニュース

‘人類の生存’を視野に入れて—1974・テクニコン国際シンポジウム

ページ範囲:P.18 - P.18

1974・テクニコン国際シンポジウムが,2月26,27,28の3日間,東京・高輪のホテルパシフィックで開催された.
テクニコン社は,臨床化学検査や水質検査などを中心とした自動分析装置を開発している企業であるが,このたび「生存と社会」といういささか深遠にすぎるかとも思えるテーマを掲げたことにはそれなりの必然性があろう.病院の検査室に自動分析装置が普及したのは,1960年代にはいってからだが,かかる機器の高性能化と多様化は医療に多くの恩恵をもたらすとともに,これらを広く医療の体系のなかにどう位置づけてゆくかという深刻な問題をも提起したのである.また,現在いわゆる‘環境の破壊’による人類の存続の危機は,多方面からのさまざまな警告を呼んでいる.こうした状況のなかで同社が,‘人類の生存’という広大なテーマを視野に入れたシンポジウムを企画したことは,企業の社会的責任という意味もこめられているものと思われる.

キサマとオレと日本バプテスト病院長 榊田 博 天理よろづ相談所病院長 山本利雄

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.20 - P.20

 昭和24年,敗戦後の混乱のまださめやらぬころ,お2人はそろって京大医学部を卒業された.榊田先生は内科,そして山本先生は胸部外科と専門とする分野はちがっていても,同じ思いを胸に刻みこんだ大学生活だった.学生運動に身を投じ,全国国立大学の自治組織をつくり上げたり,互いの下宿に押しかけては明け方まで天下国家を論じたり.この動揺の時代が,ロマンを求めてやまぬ2人を引きあわせ,国づくりに,世なおしにとかりたてたのだ.
 "山本はお坊ちゃんだよ"天理教教会本部の本部員の家に生まれた山本先生を榊田先生はこう評す.彼は常に整えられた環境に身をおいていながらも,反逆者だったと.自分の求める純粋なものをあくなく追求しつづける."いちれつきょうだい"の実践のために,ラオスやコンゴをとび回る."おまえはロマンチストのさびしがりやや"孤独に耐える強い芯をもちながらも,かけひきのない素朴な人間関係をいつも恋こがれていると.

時評

女高生の看護婦意識調査から

著者: せん

ページ範囲:P.49 - P.49

依然として続く看護婦不足
 社会保険診療報酬の空前の引き上げがなされても,看護婦についてとくに大幅なベースアップや手当の改善がなされても,病院の危機は依然として看護婦不足である.特類など看護加算の格段の引き上げは,看護部門の赤字を多少は軽減しようが,かえって基準の引き上げが看護婦の奪い合いになりかねないし,いくら待遇改善してみても,年々やめる者を引きとめる効果もなさそうである.だいたい,看護婦が絶対的に不足している以上,数をふやさない限り問題は解決しないわけである.
 看護婦不足対策には国も都道府県も,そして直接の被害者である病院も懸命に考え努力してきた.潜在看護婦の発掘というグッドアイデアもナースバンクとして制度に乗ってきた,しかし‘潜在’とは名ばかりでいっこうに顕在化しそうにもないのが現実である.

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外科部長の雑学 12章

著者: 佐藤太一郎

ページ範囲:P.50 - P.52

 経験20年,勤めも古くなると自然に部長の椅子が回ってくるものだ.しかしいくつかの問題を抱えている何かと気苦労の多い立場である.診療科をボイラーにたとえれば,院長は石炭を投げ込み,部長は風を送る.風を送りすぎれば火は消える.風が足らねば燃え上がらない.
 わかっていても‘適当’とはなんとむずかしいものだと,自分を反省するこの頃である.在職期間が長くなるとどうしてもマンネリズムに陥り,イージーゴーイングに流れるのが人の常.そこで私は武者修業の旅に出た.

院長日誌

著者: 鈴木喬

ページ範囲:P.60 - P.60

自殺
 <某月某日>午前4時電話のベルで起こされる.電話があれば良いことはまずない.青山脳病院長であった歌人斎藤茂吉のいうPhobia-telephonica.
 ‘当直の先生にかわります’という事務職員の緊張した声.さて今度は何事か.医師の声を聞くまでの数十秒の長いこと.やはり入院患者某君の自殺であった.夜勤職員は深夜トイレにはいったのは分っていたが,水道の水音を高く立てておいてベランダへ出て縊首したのだという.

病院の駐車場(後日談)—駐車スペースをどう配分するか

著者: 上林三郎

ページ範囲:P.66 - P.69

地価の暴騰が庶民の心を震撼せしめている今日,密集地に位置する病院にとっては,駐車のためのスペースを確保することは,ほんとうに頭の痛くなる一大事.限られた土地をいかに効果的に各人の満足感を得ながら利用するか……聖路加病院の駐車場委員会が体験したことをここに紹介する.

日本病院学会迫る—第24回日本病院学会日程表

ページ範囲:P.87 - P.87

 第24回日本病院学会のプログラムは先号(3月号P50-52)でお知らせしましたが,3日間を通じての全体のスケジュールは,以下のとおりです.なおホスピタルショウも併設されます.多数ご参加下さい.

小児病院設置に関する諸条件(その1)

著者: 小児総合医療施設連絡協議会 ,   尾村偉久 ,   北野博一 ,   小池宣之 ,   庄司常次 ,   須川豊 ,   平田美穂 ,   森彪

ページ範囲:P.88 - P.91

 国ならびに地方自治体の福祉政策推進に伴い,小児病院設置の気運はようやく全国的に高まりつつあるが,まだその設置基準は確立されていない.本稿は小児専門総合医療施設の中核となる小児病院がその機能を発揮するために必要な諸条件に限定して記述した.これは昭和45年,尾村氏が病院管理学大系第5巻(医学書院)「小児病院」において記載したところを緯とし,既設の小児病院の実情とその経験とを経とし,さらに若干の具体的な要件を加味したものである,
 なお小児総合医療施設連絡協議会は本稿に続き,小児病院の運営と密接に関連する事項に関し,「小児総合医療施設のあり方」を発表する.

病院のクオレ

第4話 協力診療(その1)

著者: 原素行

ページ範囲:P.53 - P.53

協力診療という言葉
 協力診療という言葉は,あまり広く用いられていない.戦後,聖路加病院の橋本寛敏院長の口から出た言葉であったと記憶する.しかし,言葉が新しくとも,主治医が他の医師の意見を入れて診療の正鵠を期する方式は,在来から行なわれていた.病院以外では,対診として,しかし,対診と言えば,なんとなくギコチない.いや,時には,われこそは……という場面があったという.院内では,患者を他科の医師に一時回して,意見を求めることは常識であり,時には,他科の診療が適当であるとすれば,患者をそちらへ移す.ともかく,1人の患者が,1人の医師または1つの科で診療を受けることが建前であった.主治医権ということになる.主治医が議長となって,他の医師と会合し,問題提起を行なって診療の正鵠を期することが,協力診療である.橋本先輩は,この方式の経験者である.

英国で学んだ病院管理・4

‘合理的’と低コストの意識

著者: 関武矩

ページ範囲:P.54 - P.55

 ‘合理的’な洗濯工場
リージョナル・ホスピタル・ボード(RHB)の下にホスピタル・マネジメント・コミティ(HMC)によって病院群が管理運営されていることは前に述べたとおりであるが,この管理方式の中で,非常に合理的であると思われたものの1つに現業部門の洗濯工場がある.個々の病院がおのおの洗濯工場をもたずに,HMCが基幹病院に,あるいは独立した規模の大きいセントラル・ランドリーを設備して,グループ病院の洗濯を一手に引き受ける仕組みである.
 4000床を有するHMCでは,300人の従業員が働く洗濯工場を見たがベルト・コンベアーによる流れ作業で1日に8万点を処理している.仕上がったリネン類は,工場の輸送用トラックで毎日定期的に各病院に配達されるし,病院から工場に送る洗濯物の回収も同様である.そして驚くことは,洗剤を6か月分も一括購入して割安にしており,設備の中央化とともにコストを著しく下げている.数年前にアメリカの病院界で提唱され,種々実行されている’ME—RGE’のことを思うのだが,100床の病院でも,1000床の病院でも洗濯設備が必要なのであるから,さらにこれを統合することによって,人・物・金の節減ができれば,合理的といえる.

病院職員のための医学知識・16

病理学とは

著者: 金子仁

ページ範囲:P.56 - P.57

病理学の簡単な定義を教えてください
 病理学とは,病気の本態を究明する学問です.それも,病的部分を肉眼で観察したり,顕微鏡で検べたりして病気の診断をするのです.

医療事故と法律・4

解剖の有無が術後死亡の訴訟に与えた影響

著者: 饗庭忠男

ページ範囲:P.58 - P.59

質問
 入院中,不慮の出来事で患者が死亡したとき,解剖の申し出をしたが聞き入れられなかった.あとで手術にミスがあると思われるから損害賠償を求める,という申し込みがあった.病院としても原因を知りたかったが,その手段も無くなった.こうした場合,解剖の有無はどのような影響があるだろうか.

病院建築・62

農協共済中伊豆リハビリテーションセンター

著者: 田中正美 ,   友野邦美

ページ範囲:P.61 - P.65

センター設立の趣旨
 農協共済の全国組織である,全国共済農業協同組合連合会(全共連)が,かねて共済事業のアフターサービスとして,とくに交通事故障害者を中心に,身体障害者の社会復帰をはかるための優れたリハビリテーションセンターを設立する構想を持ち,その実現化を進めて来たが,昨年春に西の別府,東の中伊豆と2か所のリハビリテーションセンターが開設の運びとなった.
 現在わが国では厚生省の推定で約140万人の身体障害者がおり,そのうち約100万人がリハビリテーションないし治療を必要とし,約23万人は早期治療を受ければ機能を回復できると考えられている.これに対し施設の現状は,全国で肢体不自由者施設はわずか62施設,収容定員約3400人,リハビリテーションベッド約3000とはなはだしい立ち遅れを示している.民間団体である全共連の今回の企画は,このような現状をみるとき,非常に意義深いものであると言えよう.

座談会

われわれは病院を海に放つ

著者: 美馬恭一 ,   赤松雅彦 ,   角田幸信 ,   川崎俊夫 ,   梅田政吉

ページ範囲:P.70 - P.78

瀬戸内海をめぐる検診船‘済生丸’については本誌でも1973年7月号に紹介した.ここではその続篇として,この活動に直接かかわっている6つの済生会病院の院長にお集まりいただき,現場の声をお伝えしよう.10年余のあいだ怠りなく検診活動を持続してきたことが,関係者にとっては大きな自信になっていると感じられた.

連載・3

病院における物品搬送設備の概要とその導入状況(3)

著者: 栗原嘉一郎 ,   中野明

ページ範囲:P.79 - P.83

わが国における導入状況
はじめに
 わが国においては1950年代後半になって,2・3の病院で小型の気送管装置が導入されたのを手始めに,次第に搬送設備が用いられるようになってきてはいるが,全般的には欧米に比してまだまだその導入率は低いと思われる.
 そこで,その実体を知るために各種搬送設備の病院への導入状況の調査を行なった.以下,その結果を若干の考察を加えて紹介するとともに,現在のわが国としては最も機械化された搬送システムをもつ2病院について,その概要をまとめて紹介することとしたい.

今日の精神医療・16

沖繩の精神病院事情

著者: 岩佐金次郎

ページ範囲:P.84 - P.87

本土復帰の頃
 昭和46年(1971年)5月15日午前0時をもって,沖縄は本土復帰したが,その時点(人口94万5111)で,在院患者についての諸資料を,鈴木は次のように報告している(精神衛生,8.1973;沖縄精神衛生協会).
‘10施設(政府立2,財団法人立1,個人立7)の全在院者数は,2113名で,住所不詳17名を含んでいるが,本土に住所があることが明らかな者は,1名もいない.男女比は100:57.3,平均年齢は男33歳,女36歳.15歳以下は2名で0.1%,15-19歳4.5%,65歳以上は73名で3.4%.入院年月不詳者を除いた1691名の1人平均在院日数は1194日で,5年以上の在院者は894名(52.87%)いる.1691名の在院者中約67%は昭和35年(1960年)以降の入院者である.診断の確定している2113名の疾患名は,いわゆる内因性1842名(87.17%),老年性疾患89名,中毒性74名,器質性32名,発育障害31名,神経症11名,精神病質7名,その他27名となっている.在院者の78%が20km以内に居住地を持っている.精神病床が所在する自治体(市町村)は38中,4市3村である’

霞が関だより

昭和49年度厚生省予算について

著者:

ページ範囲:P.94 - P.95

総需要抑制型の政府予算案
 昭和49年度政府予算は現在参議院で審議中であるが,本誌がでる頃には審議が終了していると思われる.この政府予算案は昨年12月末に閣議決定をみたものであるが,予算の編成時前には,例の中東戦争の余波からアラブの石油戦略による世界のエネルギー危機というかつてみない異常な事態,さらにはそれに触発されて,すでに進んでいたインフレが狂乱とまでいわれるように加速化された.経済的・社会的に異常な雰囲気のなかで編成が行なわれたものである.
 したがって,インフレ抑止という看板をかかげて,総需要抑制という措置が前面におしだされた予算案である点,とくに公共投資については減額ないし横ばいとなっている点にわが国のおかれているきびしい状態が反映されている.実際に一般会計予算総額は17兆0994億円で前年の14兆2840億円にくらべて2兆8153億円の増となっているが,割合にすると119.7%の増にとどまることになったのである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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