icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院33巻7号

1974年07月発行

雑誌目次

特集 放射線部門の問題をさぐる

病院放射線科の現状と問題点

著者: 安河内浩

ページ範囲:P.22 - P.29

 まず第1に,放射線科とはどのようなところか,という点から話を進めてみたいと思う.
 放射線科とは放射線を利用して患者の診療を行なうところと私は解釈している1).したがって,X線写真を撮影するだけのところは放射線科とはいえないので,‘X線撮影装置あり’とのみ表示すべきであり,放射線科専門医がいて患者の診療をしてはじめて放射線科と看板を出すようにすべきであろう.

フィルム管理の問題と方法

著者: 平松慶博

ページ範囲:P.30 - P.35

フィルム管理の現状
 X線フィルムの保管は,法により2年間と定められている(医療法施行規則第20条).保管とは‘保護し,管理する’ことで,したがって,フィルムの場合は,必要時にいつでもすみやかに取り出すことができる状態になっているのが本当である.しかしながら,これが満足に行なわれている病院あるいは医院は少ない.倉庫の片すみに雑然と入れられていたのでは,保管されているとはいえない.それはほとんど廃棄処分された状態に近い.
 法的な保存期間は2年としても,診療の面からすれば,フィルムは少なくとも10年,できるなら永久保存したいものである.以前に撮影されたフィルムが簡単に手にはいらないばかりに,比較的短い期間内に,再び同じX線検査が行なわれることがいかに多いかは,実際診療に携わっている人なら,よく知っている事実である.これが,あまりにも当然のことのように行なわれているので,医師もとくに前に撮られた写真を取り寄せる努力をそれほどしないで,‘もう一度撮影しましょう’ということになる.患者は,むしろこれをありがたいことだと錯覚していることが多い.

ラジオアイソトープの新しい管理

著者: 筧弘毅

ページ範囲:P.36 - P.41

はじめに
 最近わが国においてラジオアイソトープが大学病院を中心として診療に広く,しかも大量に用いられるようになってきた.このためアイソトープの管理がいろいろな点で問題となり,その強化と合理化が要求されている.
 戦後わが国でアイソトープが診療に用いられるようになってから20数年を経た.その間,私は管理体制に対して苦心を重ねてきた.最初の頃は法規も不備であり,施設のための予算も十分でなかったので,放射能による実害のないことを優先的に考え,研究や診療の実施をなるべく阻止しない方法を考えていた.

北里大学病院放射線部—その構想と現実

著者: 橋本省三

ページ範囲:P.50 - P.57

北里大学病院の基本構想
 昭和46年7月26日に開院した北里大学病院は,1)患者中心の医療を行なう大学病院2)放射線診療・臨床検査の重点配備と診断精度の向上と能率化の促進3)手術部,ICU・CCU,腎センターなどの中央診療施設の機能的な組織化と近代化4)有線テレビと大型電算機の導入による情報処理機構の確立と教育・研究への寄与5)地域医療と産業医学の将来の要求に即応して予防医学にも貢献するなどを基本構想として設計準備が進められた.
 とくに機械設備に巨費を要し,建築構造から放射線防護の細かい配慮を要する放射線部では,人的・時間的・経済的な効率が最も重要視され,必要にして十分な設備投資とそれをフルに活用する設計とシステムが要求された.これは世界的傾向であって,欧米においても真剣な論議と研究が行なわれている.この点は理論だけが先行し,実際面で立ち遅れているわが国のこれから力を注ぐべきことであろう.

インタビュー

病院における被曝管理—その正しい進め方

著者: 御園生圭輔 ,   野辺地篤郎

ページ範囲:P.42 - P.49

最近の診療技術の進歩に伴って,つぎつぎに新しい放射線器機が開発され,国民が被曝を受ける頻度も高くなってきた.一方,放射線管理の不十分さから各地で被曝事故なども頻発している時,被曝管理についての正しい知識がどうしても必要になってきた.

病院と統計 病院の部門別原価計算

理学療法部門

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.10 - P.11

 この部門は,従来のマッサージなどを主体とする病院から,かなり高度のリハビリテーション実施病院までを含むことになるので,各病院の水準がかなり異なるのに伴って病院別原価にもバラツキが大きい.この点に留意して平均値をみる必要がある

グラフ

身も心も休め憩える所として—天理よろづ相談所病院

ページ範囲:P.13 - P.19

現代医学の粋を集めて
 天理病院は現代医学の粋を集めて,昭和42年10月,認可病床1000床で開設された総合病院である.総工費は60億円と推定されている.手術用カラーテレビジョン装置,電子ナース記録装置,分娩監視装置,深部治療装置,放射性同位元素診断治療装置のほか,電子顕微鏡などを設備している.病院には医学研究所(組菌,生理,病理,生化学,電子顕微鏡,放射線の各部)および実験動物飼育室などの付帯施設を擁している.まさに医学の殿堂という観がある.
 昭和41年の建設であるが,4階以上にスプリンクラー,全舘に煙感知器,火災警報装置,ストレッチャーのまま誘導できる避難スロープなど,患者の安全を保つために万全の措置がとられていた.こういった点に,病院開設者の意図と病院管理への姿勢をうかがうことができる.

ダイナミックに,そして細心に 社会保険広島市民病院 甲斐太郎院長

著者: 中西真吉

ページ範囲:P.20 - P.20

 まず第一に,ご覧のとおりの美男子である.が,精神面,仕事面ではさらにさらに一流である.
 ほとんどゼロから今日の病院に育てられ,医学的にも医療的にも充実した病院の内容をみれば,君の精神と仕事がわかる.

時評

吹き荒れた英国の看護婦ストライキ

著者:

ページ範囲:P.58 - P.58

どこもかしこも看護婦不足
 このところ新設医科大学の病院開設のお知らせを続いていただいた.いずれも近代技術の粋をこらしたりっぱな建物である.地域医療の中核となる医師の訓練の場としての活躍を期待したい.
 しかし伝えられるところ,いずれの病院も実働病床数は予定されているものの1/4ないし1/5にすぎない100床程度と聞く.考えてみれば,巨額の投資に対してあまりにも非能率的であり,社会的責任を果たしていないといえるかもしれない.その原因はさまざまであろうが,この病床閉鎖に共通した原因として指摘されるのが看護婦不足と聞く.しろうと目には,そのことは十分予測されるものと思われるが,やはりそれでも開院しなければならぬ事情があるのであろう.理想的には,まず必要要員の教育訓練施設を開始して,卒業生の出るのを待って開院すればと思えるのだが.

シリーズ・2

検査室からの廃棄物を追跡すると…………

著者: 白戸四郎

ページ範囲:P.59 - P.61

建築設備上の問題点
1.流し
 化学検査室の流しといえば鉛流しが一般的であったが,最近はむしろその欠点が指摘されてきている.とくに最近の臨床化学検査室では,酢酸の使用が非常に多い.中規模の検査室でも年間数十キログラムくらいは使うだろう.鉛は硫酸,亜硫酸,硝酸,リン酸などには強いが,酢酸や水銀に対しては非常に弱く,これらに対してはむしろ陶器流しやステンレス流しを使ったほうがよい.SK6, SK7, SK18といった陶器流し(通称キッチン流し)をそのまま使ってもよいし,これらを組み込んだ流しユニットにすれば,見た目にもよく,使いやすいし,化学薬品に対しては最も強いといってよい(図1).
 ステンレス流しも普及しているが,一般に使われている18-8といわれているものは,Cr 18%, Ni 8%を含む鋼で,SUS 27という規格のものである.現在SUS 24からSUS 80まで,30数種のものが出ているが,この使い分けは非常にむずかしい.溶液中の腐食(湿式腐食:電気化学反応)と,ガスとの反応による腐食(乾食:化学反応)とでは性格が違うし,SUS No.の多いものがすべての点で優れているというわけではない.

--------------------

火災にそなえて—患者避難誘導対策の手引き

ページ範囲:P.64 - P.64

 全国社会保険協会連合会から毎月発行される「病院のひろば」別冊として,上記の手引書がつくられた.大倉正次郎氏(社会保険蒲田総合病院長)ら,5人の防火対策研究委員会委員が頻回の検討会を開いて,熱心に討論され,まとめられたものである.この冊子は,社保連合会の防火対策の資料として関係施設に配布された.この中から,とくに心得ておくべき点を以下に紹介しよう.

病院のクオレ

第7話 筆者の心得帳—筆者の怪我の功名話

著者: 原素行

ページ範囲:P.65 - P.65

 第1話に述べたごとく,筆者はコセコセして,八幡の社長にはなれないと批判をうけた人間であるが,それが意外にも手柄になったことがある.

病院職員のための医学知識・19

新しい放射線医療機械の知識

著者: 浅川洋

ページ範囲:P.66 - P.67

 最近,いわゆる高度医療器械と呼ばれる,さまざまな放射線機器が開発され.病院診療に活躍しているようですが,これらの機器の原理や用途について機種別に解説してください.
 医学の進歩とともに放射線医療機械も改良と開発が重ねられ,長足の進歩を遂げました.放射線医療機械は,X線診断用,放射線治療用および核医学用に大別されますが,すべてを網羅することは枚数の制限もあって困難ですので,代表的機械について簡単な原理と用途を述べましょう.また,これらの装置は高価であるので購入,保守管理に対する私見をあわせて述べたいと思います.

医療事故と法律・7

診断にまつわる事故

著者: 饗庭忠男

ページ範囲:P.68 - P.69

質問
 人間ドックで検査のさいには見いだせなかった癌について,その患者が3か月後に他の病院で胃癌と診断をうけ,その後9か月あまりで死亡してしまいました.ところがその遺族から当病院での発見が遅れたため早期に死亡するに至ったという理由で損害賠償を求めてきました.どのように考えればいいでしょうか.

請求事務適正化のためのポイント・1

適正化方策の基本問題

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.70 - P.72

はじめに
 診療報酬請求事務は事務部門だけの仕事ではなく,病院全体でする仕事である.正しい診療報酬を適正に得るためには,診療を実際に担当する立場にある医師・看護婦をはじめとする各パラメディカル部門の職員が,それぞれの分担する役割にしたがった事務処理を適切に行なうことが,そのあとで行なわれる医事部門における請求事務を正確に行なうために欠かすことのできないたいせつな要件であるからである.
 また,診療報酬は,病院の全職員の働きの成果が集約されるものであり,あすの医療のくり返しが,それによって確保されることになる.その意味においては,病院のすべての職員が診療報酬請求事務に対する理解を十分にもつと同時に,それに関する1人ひとりの仕事の分担を明らかにする必要がある.

病院建築・65

関西労災病院重症治療部

著者: 鵜飼卓 ,   芦村正昭 ,   勝部寛二 ,   細見幹子 ,   山崎京子

ページ範囲:P.73 - P.77

はじめに
 関西労災病院に重症治療部が発足してからはや約14か月が経過した.この間に内科,外科はいうに及ばず,泌尿器科,耳鼻科,眼科領域の患者まで,じつにさまなざま重症患者が収容されたが,一方この施設を見学に来られた方は,早くも350名を数えるに至り,このような医療施設に対する関心のたかまりにわれわれはあらためて驚かされた.
 この施設は院内で発生する重症患者の集中管理を行なうIntensive Care Unitとしてばかりでなく,一般の医療機関では処置しきれない重症の救急患者に門を開く救急外来部門(二次的救急センター)を兼ね備えた特殊な医療施設である.

今日の精神医療・19

こういう患者はどう扱ったらよいか

著者: 西尾忠介 ,   金子嗣郎

ページ範囲:P.78 - P.85

精神病院が,旧来の隔離状態を脱却して,社会の中にオープンで位置するようになる.これが,精神病院の近代化を意味するひとつの論拠であり,だれにも異存のないところだが,ここに生ずる個々の事態は,患者のみならず関係者の対応自体も問いつめずにはおかないものがある.患者を中心にすえ,そのおかれた状況の具体的把握から,この問題を追いかけてみよう.

トピックス

「放射線科専門医の会Japanese College of Radiology(JCR)」発足について

著者:

ページ範囲:P.86 - P.86

体系化のおくれたわが国の放射線医学
 日本の放射線科は歴史は結構ふるいが,その形は大学によって著しく異なっていた.そのため放射線医学のある部分は外国をもしのぐレベルに達したりするが,それが永続せず,また各所に断裂があって放射線医学の体系としては著しくおくれてきたことは衆目の一致するところである.
 これは,日本の医療体系が医師に自分の患者を何から何までみさせて,他の医師に相談をさせないというムダなまた低い組織レベルにとどまることを強制させてきた.いわゆる各科のセクショナリズムにもよるが,放射線科医の側にもそれを易として各自好き勝手なことをし現在の患者の全貌を見ない,外からみると内容のわからない放射線科にした責任があると思う.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?