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雑誌目次

雑誌文献

病院33巻8号

1974年08月発行

雑誌目次

特集 病院のムダ

高度医療器械はどこまで使われているか—自治体病院の調査から

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.22 - P.25

 高度医療器械とはどのような器械をいうのであるか,その定義,範囲を定めることは困難であるが,ここでとり上げるものは,1)相当高額の医療器械であること.2)使用頻度は少ないが,高い水準の診療を行なうためか,または診療上の安全確保のために必要とする医療器械であること.
 この2つの条件を満たす医療器械をいうこととする.したがって,医学研究のための器械は除かれる.

クスリのムダを考える

著者: 田知花康二

ページ範囲:P.26 - P.28

はじめに◇
 ムダを考えるばあい,合理性と経済性の両面から論議を進めていくべきであろう.
 とくに医療の中でのムダを考えるばあい,とかく主観的な判断に陥りがちで,客観的にはとらえがたい面がある.したがって,ムダの考えがすぐには経済性に結びつかないことも多い.医療の中でのムダを考えるときには,合理性と経済性の両面から考えを進めていくことによって,比較的問題の所在が把握しやすいのではないだろうか.医療上のムダは,まず理論があり,それに伴う実践があって,さらにその延長線上に,はじめて結果として経済性の問題が出てくると考えられるからである.

てい談

病院のムダを洗う

著者: 上林三郎 ,   平野栄次 ,   倉持一雄

ページ範囲:P.29 - P.39

病院のように複雑な機能のからみ合う組織の中では,一口にムダといっても,なかなかとらえ難い面がある.また最近のように装備の近代化が進む中では,ムダの内容も従来とはかなり変わってきていると思われる.そこで病院の中のムダを新しい視野から洗い直してみよう.

病院と統計 病院の部門別原価計算

外来部門

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.10 - P.11

 外来部門は医科,歯科に区分し,医科はさらに,一般,救急に区分して調査した.ここでは,医科外来の原価・収益について述べる.外来部門の原価は,外来診療室において行なったすべての医療行為に要した原価である.この行為のなかには診察のほか,外来診療室で,外来部門配置職員によって行なわれた注射・処置・検査等を含むものであり,収益も原則的にはこの原価算定の対象とした行為に対応するものである.
 医師の給与については,病棟内診療以外の部門(たとえば手術,検査部門等)において診療に従事した実時間に伴う給与額を控除した全額を医療法に定める算定基準により,病棟内診療1に対し,外来診療1/2.5(耳,眼1/5)とし,それぞれの延患者数に乗じた計数により按分したものである.

グラフ

欧米の病院を訪ねて

ページ範囲:P.13 - P.19

 ヨーロッパやアメリカの病院を見てこられた方々の数は,今日ではもう大変なものになるだろう.しかし,立場立場によって,その視角にはずいぶんと違いがあるようだ.ここでは,過去何回かにわたる旅行の記録から"建築家の眼"で見た各国の病院の一端を紹介しよう.われわれの病院を少しでもよくするために,学べるところがあればどんどん取り入れていきたいものだ.

看護の両巨頭を迎えて—東海大学医療短大部長 内田靖子 東海大学病院看護部長 前田マスヨ

著者: 笹本浩

ページ範囲:P.20 - P.20

 東海大学では,長年の希望であった医学部の設立が正式に認可され,昭和49年4月1日から大学のメインキャンパスである湘南校舎(平塚市)で開学した.これに伴って伊勢原市に医学部および病院を建設中で,昭和50年2月開院の予定である.同時に医療技術短期大学も発足した.
 病院の最も枢要なポジションのひとつである看護部長(一般の総婦長)には,社会保険小倉記念病院の総婦長であった前田マスヨ君,医療技術短期大学の部長には公衆衛生院看護学部長であった内田靖子君に赴任していただいた.

時評

医療の危機への取り組み—3週間のヨーロッパの旅から

著者: あい

ページ範囲:P.40 - P.40

 ヨーロッパのさいはての国,フィンランドから始まって,西ドイツ,英国を経て,南のはずれのポルトガル,スペインなどの医療事情をさぐって3週間ばかりのかけ足旅行の印象を,大ざっぱにまとめてみる.

病院建築・66 てい談

最近の病院建築をめぐって

著者: 伊藤誠 ,   松本啓俊 ,   栗原嘉一郎

ページ範囲:P.42 - P.52

本誌の‘病院建築’らんの連載も先月(7月号)で65回を数えた.この間,多くの医療施設を紹介し,また病院の設備について様々の論究を試みてきたわけだが,今回は,こうした過去の蓄積のうえにたって,さらに病院建築の潮流を内在的にとらえるべく,その道の専門家三氏に語り合っていただいた.今後このらんがさらに強力に発展するための契機ともしたい,と希う.

病院のクオレ

第8話 異人さんの話

著者: 原素行

ページ範囲:P.53 - P.53

フリーガード・ショック
 ニクソン・ショックを知らぬ人はあるまいと.くに,財界人にはきびしく感ぜられたという.しかし,フリーガード・ショックといっても,ほとんどの人が知るまい.一部の--わずか100人足らずの病院人,とくに病院ハウスキーパーが知っているはずだが,かれこれ20年前のことであるから,忘れられていると思う.老人は,最近のできごとを忘れるものだが,昔のことは記憶に残っているものだ.ここで,老生の書生論を昔の物語として,書き残しておきたい.
 守屋博氏の発案によって,日本病院学会東京地方会ができた--後に,解体して東京病院協会の仕事になったというが,現在はどうなっているか,私の耳にはいっていない.守屋氏が,筆者を代表世話役に祭り上げ,とうとう受諾したが,毎回のテーマは,ほとんど守屋氏案で,筆者はロボットのお使い役になっていた.

医療事故と法律・8

治療の過程で生じた事故

著者: 饗庭忠男

ページ範囲:P.54 - P.55

質問
 当院で昨年生まれた子供が,生後あまり経過がよくなく,別の病院で診てもらったところ脳性マヒと診断された.患者の家族は,この原因は病院が生後,生理的黄だんではなく核黄だんであったのをあやまり,適切な措置を講じなかったことによるとして,損害賠償を求めてきた.なお,記録をみると患児は帝王切開で生まれたものであり,生後新生児メレナで治療可能な他院へ転送させた事実はある.
 損害賠償に応ずべきだろうか.

請求事務適正化のためのポイント・2

診療管理システムとその処理方策

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.56 - P.57

 病院が考えるべき診療費管理システムを,筆者は図1に示す4つのシステムに分けたい.
 第1の伝達システムは,診療と看護,その他のパラメディカル部門間における指示・実施・結果報告を中心とした相互の伝達行為と,次の算定システムにつなげる実施情報の報告行為を機能的に整えるものであり,その方向は前回で述べたが,この問題は伝票制度の問題としてとらえることになる.

病院職員のための医学知識・20

輸入伝染病

著者: 柳下徳雄

ページ範囲:P.58 - P.60

近年の海外旅行ブームに伴って,さまざまな伝染病が日本に上陸しているとうかがっていますが,実際にどんな伝染病が,どこの国から持ち込まれているのでしょうか.
 いろいろな病院で扱っていますので全数はわかりませんが,私たちの病院の経験や諸報告を総合してみますと,最も多いのは,細菌性赤痢です.次はサルモネラ腸炎・腸炎ビブリオ腸炎・アメーバ赤痢・チフス性疾患などの腸管系伝染病です.
 これを推定感染国別にみると,最も多いのは韓国で,次いでインド・タイ・香港・台湾などです.そして注目すべきことは,①細菌性赤痢は日本にもありますが,これは近年はソンネ菌を病原とする軽症型が多いのです.それにひきかえ,低開発国から輸入された赤痢はシガ菌やフレキシネル菌による重症型が多いのです.②腸チフスやパラチフスは東南アジア諸国のほか,イタリアやフランスからも持ち帰っています.これは名物料理の‘生ガキ’が原因のようです.③細菌性赤痢やサルモネラ腸炎などは,人が持ち込むほかに,輸入動物(サルやカメなど)が感染していたり,輸入の食肉や卵,家畜の飼料などに菌が混入していることもあります.

今月のニュース

—健康と病気の境界を探る—日野原氏が人間ドック学会で特別講演,他

ページ範囲:P.61 - P.63

ドック検診の結果‘健康’か‘病気’かの断定を下す行為の背後にはどんな問題がかくされているのか--去る8月23日,東京・市ヶ谷の私学会館で行なわれた第15回人間ドック学会(会長=堀内光済生会中央病院院長)の席上,日野原重明・聖路加国際病院内科医長は豊富なデータをもとにこの課題に肉迫,注目をあびた.
 はじめに氏は‘健康’と‘病気’とはいったいどこで分かれるのかと問い,人間として社会的な義務を十分遂行しながら生活できる人は‘健康’だといえようが,そうした状態と彼がもつ医学的データの接点には,ドック検診においてつねに微妙な問題が秘されており,各医師が適用する‘正常値’と‘異常値’のモノサシの違いにより被検者は‘健康人’にもなり‘病人’にもなる,というチグハグな実情を指摘,「日本は最高の病人作りの国」という批判をもあえて甘受せねばならない素地があるとして講演を開始した.

ホスピタルマンパワー

患者給食に楽しさを添える・京須寿雄さん—駿河台日大病院栄養科調理主任

著者: 平野栄次

ページ範囲:P.64 - P.64

根っからの調理マン
 京須寿雄さんは現在61歳,われわれの病院が昭和38年に装いを新たに再発足したときに,そごう百貨店食堂部副司厨長の職から,この病院に調理主任として迎えられ,はじめて病院給食の道に足を踏み入れた人である.以来今日まで京須さんはそれまでに培った調理についての豊富な知識と,鍛え上げた技術を基盤として,新しく取りかかった病院給食の面における調理の分野の開拓に頭を使い体を張ってきた.
 病院はホテルや旅館と同じように多くの人を収容し,食事を提供している施設であるが,ホテルや旅館ではかなり高額の代価を前提に,高級な材料を使って,各種の料理を客の求めに応じて調製できるのに対し,病院は定額でしかも低額の料金の制約のもとに,多種多様,しかも一定の栄養量の枠内で,長期に継続して喫食する相手に,治療のために3食を飽きずに食べさせるという厳しい条件が与えられている.

連載・5

病院における物品搬送設備の概要とその導入状況(5)

著者: 栗原嘉一郎 ,   中野明

ページ範囲:P.65 - P.72

4.ベテランズ・アドミニストレーション病院
 米国のワシントンにある710床の総合病院.開院1966年.種々の自動化システムを採り入れており,オートメーション化された病院と言いうるが,そのうちで物品搬送システムは気送管装置・ボックスコンベヤー・トレイコンベヤー等の組み合わせで構成されている.
 気送管装置については,自動交換式の集中分配方式によって,69ステーション間で処方箋・X線フィルム・ファイル・書類・小物品等を搬送している.気送子としては長さ18インチのものが使われている.

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院長日記

著者: 鈴木憲輔

ページ範囲:P.73 - P.73

看護婦不足は「作られた不足」
 今看護婦不足に悩んでいない病院といえば,都心の繁華街の2,3の有名病院くらいなものであろう.他のほとんどすべての病院の院長,事務長,婦長らは看護婦不足のために,日夜悩みに悩み続けているというのが現状ではあるまいか.私どもとても,ただ食ってゆくこと,優雅な生活を送ることだけが人生の目的ならば,何もこんなことで苦労する必要はない.だが地域住民に対する病院としての社会的な責任を考えると,看護婦不足はまったくどうにもならない問題として,私どもの上にのしかかってくるのである.看護婦不足問題こそは,今や地域医療の死活にかかわる最重点課題といってもけっして過言ではない.
 ところがこの深刻な看護婦不足にもかかわらず,看護婦志願者は不足どころか,その反対であるというのだから不思議というより他はない.厚生省の調べによれば,看護婦の志願者は全国で46,700人余で,看護婦学校採用人員の3ないし5倍あるというのであるから,文字通り呆れてものが言えない.まさに去年の暮の石油危機以上に不可解な「作られた不足」である.

招待席

日赤人52年間の境涯

著者: 神崎三益 ,   石原信吾

ページ範囲:P.74 - P.81

 石原 先生はお歳をとられませんね.ほんとうに最初にお会いしたときとちっとも変わられないですね.
 神崎 私は全力投球ができなくなったら,責任ある位置にいるものではないという考えできたんです.そういいながら,まだ元気だとは思っていたんですが,もうあと何日かで肩の重荷が取れるんだと思うと,なんだかすっかりくたびれちゃったような気がするんですよ.

今日の精神医療・20

精神衛生審議会は何をしてきたか

著者: 元吉功

ページ範囲:P.82 - P.87

はじめに
 昭和40年の精神衛生法の改正で,各都道府県に地方精神衛生審議会(以下地精審と略称)が設置されることになり,厚生大臣の諮問機関である精神衛生審議会は中央精神衛生審議会(以下中精審と略称)と改められた.
 40年の法改正に関する答申以後,中精審に対して厚生大臣からの諮問は1回もないが,今までどのような問題が審議されたか,本稿執筆にあたり,厚生省精神衛生課に資料の提供を求めたが断わられたので,筆者の手許に保管してあった議事録,各委員に配布された資料,筆者のメモなどに頼らざるをえなかった.重要事項を見落してはいないつもりであるが,多少の粗漏はあるかもしれない.紙数の関係で省略した事項もある.

研究と報告【投稿】

老人医療の問題について

著者: 渡辺芳子

ページ範囲:P.88 - P.89

はじめに
 近年,老人人口の増加と老人医療の無料化に伴い,老人入院患者が増加する傾向にある.ところが,そうした問題をまっ先に受けとめるべき医師や看護婦の側では,まだ無対策に等しいことが多い.しかもまた,核家族化とか家族間の断絶という現象も著しく,老人患者をめぐって家庭と病院との関係についても,さまざまな問題が生じている.こうして,家庭と患者と病院との間に立って,看護上の問題点も急速にふえてきているので,それらをどのように改善していったらよいかを,実際経験を通して,身近でしかも最も必要なところから考えてみたい.

看護婦宿直料設定の一考察—宿直料と時間外賃金の併給

著者: 白瀬昌夫

ページ範囲:P.90 - P.91

はじめに
 北海道社会事業協会は,医療法第31条によって厚生大臣の指定された公的医療機関であって,北海道内に7病院を開設し,病床数2134を経営している.しかしながら中心都市に設置されている4病院については,看護婦等の採用はきゅうくつながらも,どうにか定数を充足しているが,郡部に設置している病院については,近時医療技術者の確保はますます困難さを加えてきており,看護体制も看護婦の不足から基準看護の実施は望めず,宿直制度によらざるをえない実情にある.
 最近,国立など公立の医療機関においては,夜間看護手当を従来の1夜350円から1000円(2時間未満の場合は8割)と大幅なアップを行なった.このためわれわれの病院においても,国の措置に追従して夜間看護手当の増額を余儀なくされたのである.その結果宿直制の病院看護婦との間に手当の額に大きな差が生じ,この不均衡を改善すべきであるとの意見が高まってきた.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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