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雑誌目次

雑誌文献

病院33巻9号

1974年09月発行

雑誌目次

特集 近代化する病院組織と医師

病院のなかの医師—その日本的存在形態,とくに"離脱現象"についての勝手気ままな感想

著者: 砂原茂一

ページ範囲:P.22 - P.25

隙間風
 一般の市民常識では,病気になって医者にかかる場合,その医者がたまたま個人開業医であったり,病院の医者であったりするだけの話だろうから,病院というのは医師のひとつの,いわば偶然的な存在形態だということになろう.つまり病院即医師という常識がそこにあるようである.
 ところが編輯子は医師の病院からの離脱について申し述べよという.離脱という表現が適当かどうか知らないが,今まで一体と考えられてきた病院と医師との間に近ごろ,何かの形でまた何かの程度に隙間風が吹きはじめたということなのであろう.

診療技術部門における医師の働き

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.26 - P.29

 臨床医学の進歩に伴い,医師は専門分化し,また医療を分担ないし協力する医師以外の専門職種が出現し,その職種の数も次第に増加の傾向にある.かつては1人の患者の医療は1人の医師だけで行なったのが,異なった専門の医師が協力し,いわゆるグループ診療の形態が生まれ,さらにパラメディカルの職種がこれに協力するという形態に変わってきた.そしてこれらパラメディカル職種を指導・監督して医療を分担する医師,患者を受持たない医師が現われた.
 第二次世界大戦までのわが国の総合病院は,総合とはいうものの専門各科がただ軒を連ねた寄り合い世帯で,総合の機能はほとんど果たされていなかった.しかし戦後,欧米医学,とくに米国の医学がわが国に紹介され,医療の著しい進歩に即応するためには,専門分化と,かく専門化された各科の協力が必要となり,総合病院は‘総合’の実をあげることが要求された.そして‘病院管理学’なる聞き慣れない言葉が使われるようになり,病院機能を能率化し,また高あるために中央部門が置かれるようになった.この中央部門の中に,ここでいう診療技術部門が必要となったわけである.この部門で働く医師の数も次第に増加しつつある.

診療機能の分化が生む裏方医師の問題点

麻酔科医の立場から

著者: 美濃部嶢

ページ範囲:P.30 - P.33

はじめに
 医学の進歩と医療の発展により,病院組織が近代化され,診療機能の細分化によって多くの専門分野の医師が誕生してきた.
 わが国における麻酔科の独立分化は,昭和27年に東大に麻酔学教室が開講されたのを基として,昭和35年には特殊標榜科目としての麻酔標榜医制度が,また昭和38年には麻酔指導医制度が定められ,制度としても完成されたわけである.麻酔科医の誕生は,従来外科系医師がたんに手術中の患者の痛みを除くためにかけていた片手間の麻酔では,侵襲の大きい手術での患者管理が不可能となって生じたものである.したがって現在では,外科医は手術に専念し,麻酔科医は患者の全身管理を第一義的に考えて疼痛の除去,良い術野の提供をもあわせ行なっているのである.

病理医の立場から

著者: 金子仁

ページ範囲:P.33 - P.36

はじめに
 私に与えられたテーマは,病理医の立場から裏方医師を論ずるのであるが,いったい病理医は‘裏方’であろうか.
 ‘裏方’というのは‘演劇で舞台裏で働く人’である.つまり舞台に出ないで,芝居の筋書きとはそれほど関係なくコツコツ働いている人である.しかし,芝居全体からみればきわめてたいせつな,必要欠くべからざる人である.‘裏方’の重要性は十分にわかるし,‘裏方’として徹底した偉大なる人物も知っている.

生理(機能)検査室の医師の立場から

著者: 江部充

ページ範囲:P.36 - P.40

 ‘生理機能検査医の立場から’日頃痛感している諸々の問題をとりあげてほしいとの編集部のご意向であるが,ここでいう医師がどんな専門をもつものか,またどんな種類に属する医師をいうのかその意味がよくわからない.おそらく病院の中で生理(機能)学に関係した検査室を一括して管理している医師か,あるいはこれら検査室である種の検査に専従している医師を指していると解釈してみた.
 わが国では病院の管理運営の上からいろいろなセクションについてできるかぎり中央化をしようという考えがある.生理(機能)検査室も実は‘患者から直接に診療上の情報をうるため’の検査室を一括している病院が多いようである.したがってその内容は種々雑多であるが,検査室の特色としては,入院や外来の患者が出入りする,医師が直接または間接に検査に関与している,ME機器が多いことなどをあげることができる.中央システムという合理性に基づくならば,患者側,検査を施行する医師陣,および病院経済の3者にとってのメリットが基盤になければならない.とくに患者にとってのメリットが最優先することは当然である.

座談会

専門医師はどこまで活用されているか

著者: 土屋雅春 ,   中村嘉三 ,   小笠原道夫 ,   川北祐幸

ページ範囲:P.41 - P.48

医学の進歩と細分化は,さまざまな分野にいわゆる専門医を生んでいるが,現実の医療の場において,はたして,その専門性はどこまで生かされているであろうか.また専門分化による弊害はみられないであろうか.大学における最近の医学教育に対する批判を含めてお話しいただいた.

病院と統計 病院の部門別原価計算・9

入院・外来別患者1人1日あたり原価・収益

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.10 - P.11

 病院において最終的に原価を負担するものは患者であり,各部門の行為にともなう原価はそれぞれの部門の利用度に応じて患者単位に総合化され集約される.患者は診療上も,経済上も入院・外来に大別されるので単位を1人1日あたりとし,それぞれの原価・収益を算定した.
 入院・外来患者1人1日あたり原価・収益を図1a, bに示す.病棟・外来直接部門の原価・収益には,すでに述べたように,計算上の都合により,この部門で行なっている注射,処置,検査,分べんを含んでいるが,この部門の収益中には乙表処方料,X線診断読影料は含んでいないものである.

日赤病院長連盟の会長に就任 大阪赤十字病院長 小山三郎先生

著者: 柳武夫

ページ範囲:P.13 - P.13

 大阪赤十字病院長小山三郎先生は,昭和4年京大医学部を卒業,昭和8年大阪赤十字病院にご就職.後に原,菊地両院長時代の副院長を経て,昭和44年病院長に就任現在に至っている.
 すなわち就任以来40余年の経歴が示すごとく文字どおり生え抜きの赤十字人である.

グラフ

地域医療のひとつの実験場として—県西部浜松医療センター

ページ範囲:P.14 - P.19

わが国では最初の本格的なオープンシステム病院として,はかりしれない注目をあびて誕生した「浜松市医師会中央病院」は,事実,開拓者としての輝かしい業績を残しておよそ10年後,昭和48年4月,「県西部浜松医療センター」に合併移行した.さらに同センターは,国立浜松医大の関連教育病院の役割をも果たすべく現在増築整備中である.浜松地域の医療にこのように劇的な変化を強いてきたある得体のしれない力を思うとき,あらためて,今日の日本医療の混迷を想起せずにはいられないのである.(病院建築らんもあわせてご覧ください)

今月のニュース

「病院火災時対策」に関心集まる—第12回日本社会保険医学会/昭和49年度病院管理研究会開かる

ページ範囲:P.20 - P.20

 9月26,27の両日,東京の明治記念館で第12回日本社会保険医学会が開かれた.同学会は全国社会保険協会連合会,原生団,船員保険会の連合組織であり,全国に1万人の従業者をかかえている.今回は高木忠信社保中央総合病院長を会長に,約600名の会員が参加した.
 病院各領域でのグループ別研究報告のほかに,舘林宣夫全社連理事長,木本誠二東大名誉教授,饗庭忠男弁護士の特別講演,「病院火災時対策」をテーマにした特別シンポジウムなど,盛り沢山の内容であった.

時評

医療費改訂16%アップへ

著者: せん

ページ範囲:P.50 - P.50

 本年は2月に,つづいてこの10月から16%のアップが行なわれることになった.1年間に実に36.3%の引き上げになったわけである.昨年秋以来の狂乱物価,暴騰賃金に見合うものという理由であるが,背景には,病院の財政悪化,とくに高機能優秀病院がいずれも破滅状態に陥っているという非常事態があったからである.

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こども病院における看護体系の特異性とその対策の検討

著者: 平田美穂

ページ範囲:P.51 - P.60

まえがき
 欧米では,小児総合病院についての発想の歴史ははなはだ古く,すでに1802年にパリにおいてその第一声が唱えられ,爾来,各国に小児総合病院が続々と建設されはじめた.そして今日では,成人は一般総合病院で,小児は小児総合病院で診療を受けるというのが,国民のまったく日常の常識となっている.そして英国・ソ連等では,一般総合病院(General Hospital)から小児科という診療科目は漸次なくなりつつある現状である.
 さてわが国でも,従来の小児科(内容的には小児内科)の患者だけを収容してきた,小児科病棟という診療科単位の考え方・形態より脱却して,病児は診療科目にかかわりなく,看護単位を中心とした考え方の小児病棟に収容する傾向が次第にふえてきつつあったが,近年この考え方をさらに進めて,成人の総合病院と同じような機能・構成をもつ小児総合病院が必要不可欠であることがようやく認識されてきた.そして昭和40年(1965)にはじめて東京に国立小児病院が誕生して以来,今日までに大阪・神戸・神奈川・愛知・東京清瀬と,6つの小児総合病院が開設されたことはまことに喜ばしい.

ノルウェーの医療的諸問題

著者: 岡埜和弘

ページ範囲:P.86 - P.88

病院制度の新しい基礎
 ノルウェーにおける病院と他の健康管理施設の必要数を充足,確保していくための責任を定めた新しい病院法は,1969年6月19日に国会で制定され,1970年1月1日から施行された.
 この新しい法律が施行されるまでは,つまり,医療上の責任について,国と各州との間における負担制度が定められる以前においては,各保健地区内で実質的に活動,寄与していたのは,任意的な民間組織であった.

病院図書館

—島内武文著—「病院管理学・管理概論編」

著者: 小野田敏郎

ページ範囲:P.60 - P.60

 島内教授がこんど「病院管理学(管理概論編)」を上梓された.
 病院管理学の初版が出されたのが,昭和31年である.昭和23年,東北大学に国立大学としてはじめての病院管理学の講座が設けられたとき,ときの病院管理研究所長を兼任されていた坂口康蔵先生のおすすめで,島内博士はこの新しい講座の教授として赴任されたのであった.

—大段智亮 著—「わたしの助力論—病気のなかの人間関係」

著者: 姉崎正平

ページ範囲:P.68 - P.68

人間理解への正しいアプローチを教示
 著者は,大正15年生まれ,現在48歳である.京都府立医大予科から京都大学に転じ,文学部哲学科および教育学部に学び昭和28年に卒業と略歴に記されている.終戦直後から,主として結核のため10余年間に数回の入院をくり返したというので,著者は20代の初めから30代初めにかけて,その大部分を療養(闘病)生活に費したことになる.上記医大を予科でやめたのも恐らく病気のためであろうし,大学生活も療養の合い間に学校に出るような状態ではなかったかと察せられる.
 このような療養(闘病)の体験とその間の読書を素材に,大学において専攻した哲学,教育学の素養を加えて,昭和33年,創元医学新書の1つとして出版した「病気の中の人間--医療の人間学序説」が著者の処女出版であろう.これは現在まで10回版を重ねている.その‘まえがき’で,著者は医学の専門家ではないが,病気の専門家,病人の専門家として,その切実な体験により,現代の医学・医療の批判の上に立って,‘医療の人間学’を構築するのだと記している.その後,著者は,「人間の看護」,「親子関係の人間学」,「面接技術の人間学」,「看護のなかの人間」,「医療のなかの人間」,「死に向かいあう看護(共著)」を著わし,ここに紹介する「わたしの助力論・病気のなかの人間関係」が最新の著作で,著者の今までの活動の1つの‘まとめ’といえよう.

病院のクオレ

第9話 看護婦不足問題

著者: 原素行

ページ範囲:P.61 - P.61

 看護婦不足対策として,多数養成必要論がかしましいが,そこには理論がないと思う.10×10=100という程度にすぎまい.
 たとえば月給を上げるということ.100×50%=150は,算盤の玉をはじいて出てくる数字である.しかし,問題は多分算盤では解決できそうもないと,筆者は筆者なりにそう心配している.人間には心がある.ナースの場合は?社会的地位に難点がある.いまだに社会通念はナースを医師の下請け人と見ているらしい.医師もまたそう考えている場合が必ずしも稀ではない.そこに問題の焦点があると,私はそう考える.

病院職員のための医学知識・21

HB抗原

著者: 桜田教夫

ページ範囲:P.62 - P.63

抗原とはどういうものをいうのでしょうか.
 生きている人や動物の体内に主として非経口的にはいり,抗体を作る物質を抗原といいます.抗原はそれに対応する抗体とのみ反応します.これを特異性といい,感染症の診断に欠くことのできない沈降反応,凝集反応,補体結合反応などの血清診断は,この特異性を応用したものです.
 抗原になるのは主として蛋白質ですが,多糖類やポリペプチドも抗原になり,脂質や核酸も蛋白質と結合した状態で抗原になります.抗原となる条件は原則として侵入する宿主にとって異物であることと,一定以上の分子量(1×104dalton)を有することです.

医療事故と法律・9

治療の過程で生じた事故

著者: 饗庭忠男

ページ範囲:P.64 - P.65

質問
 医師が不在中に生じた事故について,医師や病院側が配慮していた措置はどの程度評価されるだろうか.具体的な例でご教示いただきたい.

請求事務適正化のためのポイント・3

正しい点数算定とミス原因

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.66 - P.67

正しい点数算定
1.正しい知識
 算定システムの核心は,いかにしたら正しい点数を算定できるかにつきるが,これがなかなかむずかしいところに問題がある.そこで今回はこの問題をさらに掘り下げて検討してみることにする.
 ‘正しい点数算定’は,これまでにも述べたように,正しい点数知識を正しくもつと同時に,多くの算定経験を積むことがたいせつである.正しい知識とは,点数算定に関する約束事を正しく理解することであるが,これは簡単なようでむずかしいことは実際にこれを経験したものであればわかるはずである.しかも,多くの医事職員が,この点数算定に関する基礎的知識について十分に理解していない面があるのは残念なことである.

病院建築・67

県西部浜松医療センター

著者: 柴田貞雄 ,   内田勝彦

ページ範囲:P.69 - P.73

激しい変化を経験した病院
 病院建築の考え方として‘成長と変化’が大きく取り上げられているが,ここに紹介する浜松医療センターは,その典型的なものと思われる.オープンシステムというバックボーンを貫きながら,経営主体や病院の性格・規模の変化が,これほど短期間に生じた病院は珍しいのではなかろうか,これは関係者の英断によるものではあるが,社会の移り変わり,住民のニードを今さらながら再認識する次第である.
 この病院は,成長というより,衣替えしながら大きくなってきたといったほうが当を得ているかもしれない.最初は全国でも珍しい医師会病院として脚光をあび,次いで県西部の中核病院として大規模な整備がなされ,時をあけずに関連教育病院としての拡充が始まるという超スピードの発展である.

シリーズ・3

検査室からの廃棄物を追跡すると……

著者: 白戸四郎

ページ範囲:P.75 - P.79

気体・蒸気・粉塵などの廃棄
 液体性廃棄物と違って意識的に捨てるものは少ないが,数えあげてみると次のようなものが常時廃棄されている.

今日の精神医療・21

精神科の救急医療体制—アメリカの実情から

著者: 中久喜雅文

ページ範囲:P.80 - P.84

はじめに
 救急医療という言葉から連想されるのは,救急外科疾患,とくに交通事故・その他の事故による外傷,急性の内科的疾患などによって生体が生命の危機にさらされている状態に対する緊急の医療であろう.したがって従来の救急医療室での治療も,主として外科ないし内科的治療が中心をなしていた.アメリカでは大学病院または総合病院(ことに公立の)にはたいてい救急医療部があり,それは入院病棟や外来とは別個に専属のスタッフによって独立して運営されている.このような救急医療部には,最近精神科のスタッフも参加して,毎日24時間救急精神科医療に従事している.
 このように精神科が救急医療にのり出してきたのは,過去10年間のことである.筆者が1962年コロラド大学医学部で精神科のレジデントをしていた時,病院の当直医が夜中に連れてこられる緊急患者の治療や処置にあたっていたが,63年ごろから救急精神医療部門が独立し,専任の精神科医,ソーシャルワーカー,看護婦,レジデントなどがチームを組んで活躍するようになり,病院当直医は入院患者だけにその責任領域をしぼることができるようになった.このように救急精神医療部門が独立したのには,それなりの歴史的背景がある.

主張

人事院勧告を批判する—民間給与との単純比較は所得体系を混乱させるだけ

著者: 太田清一

ページ範囲:P.89 - P.91

‘人事院の給与調査にきましたが……’
 ‘これまでも行政職と民間の相当職給与の比較資料を基準として勧告するというが,そして対象の民間企業は抽出するのだそうだが,どだい本俸中心主義をとる公務員給与の組み立て方と民間のものとは根本的にかなり違う.したがって,それからは正確そして公平なものは得られないし,理念的にもこれまでの調査方法そのままでは応じられない……’と応えた.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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