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雑誌目次

雑誌文献

病院34巻11号

1975年11月発行

雑誌目次

特集 病院と光熱水

エネルギー危機と病院

著者: 清水釤太郎

ページ範囲:P.22 - P.24

エネルギーはマンパワーに次ぐ重要な要素
 課題をみて改めて,病院における熱エネルギーの利用を見直してみると,おおよそ次のような状況である.病院運営に必要な経費(除人件費)の6.3%が光熱水の支出にあてられており,そのうち41.1%が重油,39.6%が電気,15.7%が水,3.6%がガスに使用されている(北里大学病院実績).
 電力のうち,動力用に使用される割合が最も多く,冷暖房機器の運転,搬送設備の運転,給排水設備の運転などが主なもので,その他医療機械の駆動,一般照明,コンセントに電力が消費される.その消費割合をみると,57.5%が冷暖房機器の運転に,18.2%が搬送設備・給排水設備に,16.9%が照明・コンセント用に,7.4%が医療機械の駆動に使われており,患者1人あたり(入院患者延数+外来患者延数)に換算して1日14.6kWが消費された(49年度実績).

都市病院における水道料金値上げの影響

著者: 辺見九十九

ページ範囲:P.25 - P.29

はじめに
 東京では,去る7月都議会において,上下水道料金の値上げを9月分料金から実施することを発表した.
 今度の値上げは,上水道2.59倍,下水道3.79倍と,あまりにも急カーブである,この主な理由は,最近東京においては,生活様式の変化や,下水道の普及,および高層ビルの増加などによって,水需要がどんどん増え続け,水道事業が膨大な赤字財政となり,その赤字解消と新規事業設備投資のための値上げであるといわれているが,この値上げの幅はあまりにも大きく,1日も欠かせない「水様」だけに,直接または間接的に生活をおびやかすこと大である.

光熱水と設備転換—省エネルギー時代の病院設備

著者: 麻生鄙呂次

ページ範囲:P.34 - P.40

はじめに
 一昨年に始まった石油危機以来,省エネルギーの問題が多方面で取り上げられてきた.しかし現実には,その具体的実例として取り上げられているものは未だに少なく,今後の道行を探っている状態といえる.本稿では,エネルギー源の転換というよりも,エネルギーの使用方法とその節約に主眼を置くことにした.
 それにはまず現実のエネルギーの使用状態を分析し,その分析による省エネルギーの方法,今後に対する考え方を見い出すことが第一と思われる.病院においては,医療上簡単に省力できない部分も種々あるが,社会的観点および病院の経営管理の点からも,省エネルギーは現実の大きな問題であることは明らかである.本稿は省エネルギーに関し,建築(設備)計画上比較的実現可能と思われる諸方法について述べ,大方の検討の資としたい.以下標題の順に従って具体的に述べる.

光熱水・節約あれこれ

節約断想—財団法人・住友病院

著者: 大島民郎

ページ範囲:P.24 - P.24

 以前私がある金融機関に勤務していた時,「経費節約」の大号令がかかって,支店長以下幹部諸公鳩首打合せをしたことがあった.その時にしゃしゃり出た総務係長曰く.
 「よい方法がおまっせ,顧客用の電話ボックスにみな故障の札を貼りましょ.そうしたら経費節約イチコロや」.

電気料金節減の工夫—済生会宇都宮病院

著者: 郡司岩造

ページ範囲:P.29 - P.29

 当病院は敷地面積が3,956m2,建物13,974m2,ベット数432,職員数425人の総合病院である.まず光熱に関する電力であるが,当院の受電設備は,電灯用動力用併せて,980kVA,それに非常用自家発電が125kVAの設備をもっている.

光熱水費節約対策—東京都立豊島病院

ページ範囲:P.33 - P.33

 いうまでもなく,一般事業所と比して病院という施設の特殊性を考慮し,患者サービスの低下を極力避けるという基本的方針をもとに,以下の節約を行っている.

光熱水経費の年次推移

名古屋・名鉄病院

著者: 阿久津慎

ページ範囲:P.30 - P.31

病院の成長を加味して
 病院は,年とともに成長してゆくものである.その成長が外部成長の場合でも,内部成長の場合でも,病院の光熱水経費に影響を及ぼしてくる.しかし,この光熱水費の変動を,ただ年次別に追って金額の増減を比較しても,変動の実態を明らかにすることはできない.というのは,申すまでもなく病院の成長に影響されるところが極めて大きいからである.
 そこで,この年次経費の比較をする場合に,何か基準となるものはないかと考えてみる必要がある.

東京・聖路加国際病院

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.32 - P.33

 表1は,聖路加国際病院において昭和37年から同49年にいたる13年間に,重油,電気,水道,ガスを使用した量および額である.また表3は,それらの単価の推移と,昭和37年を100とした場合の年次別の指数の動きを示している.
 なお参考までに,これだけの量を使用している本建物の総面積は約9,000坪(病院6,000坪,看護大学その他の付属施設3,000坪)である.

病院と統計 病院労働統計・11

看護婦の勤務体制

著者: 宮沢源治

ページ範囲:P.10 - P.11

 看護婦の労働条件,とりわけ夜勤問題は,昭和40年5月24日に出された人事院総裁の「看護婦・准看護婦および助産婦の夜間勤務規制に関する行政措置要求の判定」をモメントとして,労使交渉の重要な案件となってきた.この人事院判定は,①夜間勤務看護婦の2人配置,②月8回以内の夜間勤務,③産後1年間夜勤禁止,④休憩,休息時間の明示等の労働条件に関するものである.
 法的には国立の病院・療養所に対する行政措置として出されたもので,その他の公的・私的病院を規制するものではないが,問題が婦人労働者の健康と生活リズムにかかわるものであって,その内容が婦人労働者の保護を目的としたものであるだけに,これらの問題はいわゆる「ニッパチ問題」として公的病院から私的病院に波及し,10年を経過した今日も,看護婦不足がからみあい解決の困難な労使問題として労使交渉が継続されている.

グラフ

わが国初めての感染症専門病院—都立駒込病院感染症部門をみる

ページ範囲:P.13 - P.19

 医療の高度化が進む中で,病院間の機能分化は必至の形勢であるが,美濃部都政が,都内の8つの都立病院の整備を始めて数年を経た."都立病院を公立病院らしい病院に"という声は,久しく医療側にも行政側にもあった.この"公立病院らしさ"とは,けっきょく第一に不採算医療を担うことであり,第二に一次医療は扱わないこと,つまり一般の医療機関からの紹介患者を原則とする,というものである.都立養育院病院が,すでに老人専門病院として発足して3年を経ようとしているし,都立府中病院は主として身障者,結核,救急医療を担っている.やがて広尾病院や大久保病院などの機能整備も進むだろう.その一環として,この5月,新設医大クラスの規模で,がんおよび感染症の専門病院として,新装オープンしたのが,都立駒込病院である.
 都立駒込病院は,14階建の1号館と10階建の2号館がエレベータ・ホールを両側から狭んだ形で建っている.14階の棟が,がん関連部門,10階の棟が感染症関連部門で,専門の違った2つのセンター病院が結びついた形をとっている(写真①がんおよび関連病床600床,感染症および関連病床300床).この2つの機能のうち,特に感染症部門は,わが国初めての感染症専門病院で,建築的,設備的,機能的と,あらゆる面を考慮して対策が施されているので,本グラフでは,特に,この感染症部門について柳下徳雄感染症部長の解説をまとめてみた.

最後の手術

ページ範囲:P.64 - P.67

日赤医療センターのグラフ(10月号)取材中のわれわれの耳に,最後の手術のニュースが飛び込んだ.日露戦争中に三井家から陸軍省に寄贈され,日赤の手に移されて以来70年.関東大震災の際に一部破壊し,多少の修復,増築の手は加えられたものの,尖塔,屋根の明かりとりなど,明治のニオイをプンプンとただよわせたまま今日に至った手術室.ここで展開された「最後の手術」は,しかしわれわれの気負いをよそに,意外なまでに冷静に,いつもどおりに行われた.

医療社会化への闘志を燃やす医療生協・中野総合病院長 藤森 岳夫氏

著者: 黒川泰一

ページ範囲:P.20 - P.20

 医療生協・中野総合病院は昭和7年新渡戸稲造,賀川豊彦両先覚により創立された.『医療組合は病人だけの運動ではない.健康者の寿命を長くするための運動である.病弱者とともに健康者も加盟して,一国の死亡率を引下げ,民族の寿命を延長する運動である』(賀川豊彦)というのが創立の根本精神である.しかし,病院は戦時中「医療団」に徴用された.終戦後返還された病院の経営は,その傷跡深く壊滅の危機をつづけた.『由緒深い生協病院の灯を消すな!』と全国の農協・生協より救援の火の手があがった.再建運動の選手として推され,自らも進んで咋年1月院長として着任したのが藤森岳夫博士である.彼はその就任の日,『医療とは医療技術者と患者とが,同じ仲間意識を持って,同じ目標に協力することだ.病気という不幸に陥った人を,仲間として,友人として扶け合って行くのが医療であって,そのために医師も看護婦もパラメディカルスタッフも,そして事務の人々も存在の意義があるのだ』と宣言した.
 彼は昭和19年東大医学部卒,労働科学研究所,保健所を経て,28年東京医科歯科大助教授(16年間),44年長野県厚生農協連佐久総合病院内科医長.大正8年生まれ,55歳の働き盛り.経歴が示す通り医療社会化への闘志を燃やし,創立の精神はそのまま彼の信念でもあった.

一頁評論

病院医療の工程とゆとり

著者: 赤星一郎

ページ範囲:P.41 - P.41

 初めての患者さんが,玄関を入って受付の在り処を尋ねることから数えて,お医者さんに診てもらい,検査やレントゲン写真などによる診断を受け,説明を聞き,投薬やら注射をしてもらって,病院の玄関を出るまでの工程(?)がいくつになるか,考えてみたことがある.
 20ないし30にも達することがあり,一番少なくて5であろうか.5工程というのは,お医者さんに診察室で診察を受け説明を聞き,検査も投薬もなくて済む場合である.

棒のついたヘルメット—身障者リハビリテーション・プログラムの課題を考える

著者: 高橋孝文

ページ範囲:P.80 - P.80

 ロンドン郊外にあるストークマンデビル病院は脊髄損傷の専門病院で,100人近い車椅子の患者が入院している.今まで元気だった身体が,不意の災害事故のため一瞬にして車椅子の患者になってしまった人びとの精神的ショックは,計りしれないものがあろう.
 ここの病院長で神経内科医のグットマン博士は,患者を受傷のショックから早く立ち直らせ,不自由を克服して社会に復帰する自信を持たせるために,車椅子でできるスポーツを次々と開拓し,すでに20有余年がたった.この競技をストーク・マンデビル・ゲームといい,毎年1回,世界中から車椅子の選手がここに集まって国際競技が開かれる.入賞者には,この病院の患者が鋳造した金,銀,銅メダルが贈られる.

ホスピタル・トピックス 建築

アメリカの病院における診療部門

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.42 - P.42

 病院について話しあう場合,非常にしばしばアメリカの例が引き合いに出される.もっともそれは病院に限ったことではない.何かにつけ「アメリカでは」という姿勢に対しては,いろいろと批判もある.しかし,私はこれを必ずしも悪いことだとは思っていない.戦後30年の歩みを顧るとき,管理や建築の面で,日本の病院がアメリカから学んだところは決して少なくないと考えるからである.しかも,今日なおわれわれには,少なくとも施設に関する限り,まだアメリカから吸収しなければならない面がたくさん残されている.そのいくつかを知る意味で,かれらの病院の診療関係部門の現況を分析してみた.
 資料としては,米国病院協会に加入している病院のリスト(病院総数7,407)*1を用い,その中から100床以上の,急性疾患*2を対象とする一般病院(計2,794)*3を選んだ.

てい談

医学教育と病院

著者: 榊田博 ,   中川米造 ,   山本利雄

ページ範囲:P.43 - P.52

ここに,ひとりの優秀な臨床医がいるとする.もちろん彼は,日々の絶えざる研鑽によって知識と技量をみがくことで,辛うじて「優秀」たりうるのである.医師の生涯にわたる教育を論じるとき,教育の場として,病院が大きく浮び上がるであろう.さらに,地域の医療体制がどれだけ教育を保証するか,という課題も視野に入れねばならない.登場する3氏は,昭和24年京都大学卒業の同級生.この問題に一家言ある気鋭の士である.

病院私論・11

医薬分業をはばむもの

著者: 守屋博

ページ範囲:P.53 - P.53

 医薬分業の歴史は古い.明治2,30年頃からすでに議論されてはいるが,依然として行われていない,諸外国の多くが医薬分業を実施しているのに比べると目につきやすいらしく,戦後駐留軍が第1に発言したのがこの問題についてだった.そして法律として通過もさせたのだが,実施はまだされていない.いったい何が医薬分業をはばんでいるのか.

病院職員のための医学知識・35

心電図

著者: 春見健一

ページ範囲:P.54 - P.57

 心電図は心臓の何を表わしているのでしょうか.その原理についてやさしく解説してください.
 心臓は非常にたくさんの心筋細胞からなっています.心筋細胞は活動をしていないときには,細胞の外側を構成している細胞膜の所で,外側は電気的にプラス(+),内側はマイナスになっています.外からこの細胞に電気的とか機械的とか,またその他の刺激が加わると,細胞の膜のところで複雑な生物物理化学現象が起きて,プラス,マイナスの関係がなくなります.この状態を細胞が興奮したといいます.
 興奮した細胞の内外は電気的にほとんど0であり,まわりの興奮していない細胞の外は(+),内は(−)の状態は続いているので,興奮した細胞と未興奮の細胞の境目に電位差を生じ電流が流れます.このようにして起きた生物電流が次の細胞を興奮させ,次々と興奮が広がり,最後に心臓全体が興奮します.興奮の極期を過ぎると,細胞膜のところで再び外側が(+)に,内側が(−)にしだいに戻ってゆき,元どおりになります.これを興奮が回復したといいます.心臓の興奮,興奮過程のさいに相当大きな生物電気が発生しますが,この電気を,体の表面に電極を当てて心電計を用いて記録したものが心電図です.

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第2回日本病院会学会・開催要旨決まる—川崎医大病院で,明年5月21日から3日間

ページ範囲:P.57 - P.57

 第2回日本病院会学会は,川崎祐宣氏を会長に,来年5月21日(金)から3日間開催されることが決まっていたが,このほどその要旨が同事務局より発表された.また,演題募集の詳細も,全国の病院長にあてて発送されたという.川崎氏は一診療所から始めてついに医科大学をつくり上げた異色の人であり,医科大学付属病院を会場に行われるという珍らしさと相まって,何かと話題の多い学会となりそうである.

医療の道は自己啓発の道—兵庫県立柏原病院 山本 善信院長にきく

ページ範囲:P.68 - P.74

 医療の高度化の波を受けて,経営に苦慮する地方の自治体病院が多い中で,兵庫県北部の山間にある県立柏原病院では,理想的な形の医療が行われているということをたびたび耳にしていた.今回機会を得て,山本院長その人に実情をうかがうことができた.噂にたがわず,ここには医療の本来の姿がひっそりと息づいているように思われる.

労務担当15年の記録めから・5

団交ルール,死文化する就業規則

著者: 藤田栄隆

ページ範囲:P.58 - P.59

第1話団交はビジネス
 団交というと,管理者はたいてい嫌な顔をする.どうもあまり愉快なものではないようだ.団交とは,労使が対等で労働条件その他について交渉をする場ということになっている.しかし,実際にはあまり「対等」とはいえないようなケースが多い.どちらかというと労働者側が衆をたのんで,使用者側をつるし上げる場といったイメージが強い.
 私が労務担当になった頃は,300人近い従業員が,鉢巻をしめこんでゴザの上に坐りこみ,口々に使用者側委員,特に院長や副院長,事務長などを口汚く罵倒し,大いに気勢をあげていたものである.これでは正直のところ,まともな交渉ができるはずはない.といって,やみくもに団交を拒否すると,労組法第7条とかで「不当労働行為だ」ときめつけられる神もっとも,人によっては,組合員にじかに真意を伝えることのできる格好の場だなどと人を喰ったようなことを言う人もいるが,通常の神経の持主には,いささか耐えがたい雰囲気である.

病院の新しい職種

義肢装具製作者

著者: 松田宏務

ページ範囲:P.60 - P.60

 現在,わが国において,義肢装具製作者と呼ばれている人たちは,民間・公立を問わず,病院と離れた場所に作業場を持ち,週に何度か病院に出張して,義肢や装具の製作修理などを行っている場合が,ほとんどである.しかしながら,障害者の早期リハビリテーションに重きを置いた場合,義肢装具製作者が病院に常駐して,入院時からの患者の状態を把握しながら,義肢装具の製作に結びつけることが必要と考えられる.
 義肢装具製作者が,病院に常駐した場合の利点をあげると,①入院時から退院時まで常に患者と接触することができるため,患者の身体的心理的な状態を把握しやすい.②手術を見学することにより,手術の方法や断端などの状態が把め,義肢装具を製作する時の参考になる.③仮合せ後の歩行訓練中などにトラブルがあった場合,調整までの間のブランクが少ないなどである.また当センターで行っている術直後義肢装着法では,義肢製作者が必ず病院に常駐し,医師,セラピスト,ナースなどの医療スタッフと常に連絡をとりながら,断端や仮義肢の管理を行うことが原則となっている.

今月のニュース

第29回世界医師会総会開かる—10月6日−10日東京・帝国ホテル,他

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.61 - P.63

 第29回世界医師会総会が10月6日かじ,10日まで帝国ホテルで開催された.昭和22年にパリで第1回総会が開かれて以来,日本で総会が持たれたのは今回が最初である.
 6日の開会式では,スウェーデンのニルソン前会長のあとを受けて武見太郎日本医師会会長が世界医師会会長に選出された.今回の総会の主題は「医療資源の開発と配分」であり,この問題は現在の日本の医療界が当面している喫緊の課題であるばかりでなく,世界的なスケールで各国が悩んでいる命題であり,今後の医療を改善進歩させてゆくためには根本的なメスを入れなければならない問題である.この主題が設定された背景には,医療の基本理念を支える哲学が盛りこまれている.このことは武見新会長の就任挨拶のなかで,人類の生存の秩序のなかで,生存資源としての医療問題を考え,文明の進歩とともに生存資源としての医療資源が重要さを増したことを強調し,資源の開発と配分について世界的な新しい工夫が必要であることを説いていたことにも端的に示されていた.

精神医療の課題

慢性分裂病か分裂病後遺症か

著者: 金子嗣郎

ページ範囲:P.75 - P.79

入院中心から地域中心への流れのなかで
 精神医療の転換,すなわち入院中心主義から地域中心主義への転換が叫ばれてすでに久しい.
 このような入院中心から地域中心への転換は,精神医療において始まったというよりは,むしろ精神科以外の一般科(と呼んでおく)に始まったものであり,またわが国において叫ばれ始めたというよりは,むしろ医療の組織化がすでに進んでいたイギリスから始まったのである.昭和38年の日本医学会総会でイギリスのBanksは,入院中心主義から地域中心主義の医療への転換を説いていたが,当時,私を含めて精神科および一般科の臨床医にしても,どれだけその必要性を感じていたかは疑問であろう.

連載研究・3(最終回)

病院と騒音

著者: 原素行

ページ範囲:P.81 - P.83

V病院の窓と外界騒音遮断との関係
——4病院の現地報告——
 病院を襲う外界騒音は,自動車および電車,汽車による場合がその主体である.また時には航空機,特にジェット機の騒音による場合がある.後者は,ジェット機の通路の場合に被害を蒙る.本章には,これらの騒音による被害の対策として,窓の構造によって成功した4病院の場合を,現地報告として紹介したい.当然建築・設備計画の参考としても役立つ.

研究と報告【投稿】

病院における医療機器の管理方法

著者: 間部弘 ,   若井一朗 ,   安間秋靖 ,   太田裕祥

ページ範囲:P.84 - P.87

はじめに
 ここ数年の変化から見て,世界の動向である医療産業界を背景とした医療の技術革新のもたらした結果として,国産・輸入を問わず,病院の医療機器数量の増加は驚異的である.また一方,病院各所における医療機器の取り扱いは,手術室や透折室などにおいて,医師・看護婦のほかに,職業的資格をもたない技術員により行われている例が多いという報告がある1).整備のゆきとどかないことの多いこれらの医療機器は,病棟・手術室・外来などで使用されるとき,特に緊急的な使用の場合に,部品不足や故障の発見などにより,使用中止を余儀なくされる場合がしばしば見うけられる.特に,保守点検・調整修理を業者に依存している病棟機器では,このような困難が増大している.
 これらの困難は,医療機器の設置される場所の人的構成に原因のある場合のほかに,管理(病院運営方針の上で)の方法,特に保守要員の位置づけにその因が見いだされる場合が多い,医療機器の適正な利用のためには,管理場所と管理方法が適切であり,さらに保守要員の業務内容が彼にとって明確であり,熱心に,かつ確実にそれを実行できる体制がない限り,緊急使用に間に合わないような事態を防ぐことはできないであろう.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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