icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院34巻5号

1975年05月発行

雑誌目次

特集 新生児医療の展開

未熟児医療から特殊新生児医療へ

著者: 小川雄之亮 ,   小川次郎

ページ範囲:P.22 - P.27

はじめに
 新生児,特に低出生体重児(以下通称に従い未熟児という)の養護は大きく変化した.すなわち最少操作(minimal handling)から濃厚治療(intensive care)へと変遷し,その結果,救命率の上昇はもちろんのこと,intact survival (後遺症なき救命)を得る率も上昇してきた.
 新生児のintensive careを行う施設,すなわちneo-natal intensive care unit (NICU)やintensive care nursery (ICN),さらにはperinatal care centerと呼ばれる施設は,欧米においてぞくぞくと設立されており,今やこれらの施設は指導的病院のstatus symbolとなっている.

特殊新生児病棟の施設と医療機器

著者: 中村敬

ページ範囲:P.28 - P.31

はじめに
 周生期の胎児および新生児の取り扱いがいかに重要であるかということは,乳児死亡率の半数以上が新生児死亡であることから考えても明らかである.そこで,生命予後および後遺症に関して危険性の高いと考えられる新生児,すなわちhigh risk baby (at risk)に対して,集中して特殊な医療を施すことが最も効率の良い方法である.Neonatal intensive care unit (NICU)は,設備面では従来の未熟児室と本質的にはあまり差がないが,機能面および運営面で大きな差異がある.すなわち呼吸障害,循環障害,代謝異常,けいれんなど中枢神経系異常,出血や感染によるショック,外科手術前後の重症で緊急を要する新生児を対象としており,患者は常に継続して監視される体制におかれ,異常が発生すれば,ただちに各専門医が適切な処置を施すということが必要条件である.

High Risk Infantに対する医療体制

著者: 小宮弘毅

ページ範囲:P.32 - P.35

はじめに
 衛生統計書1)を一見すれば明らかなごとく,新生児期はもっとも生命の危険の高い時期である.戦後30年を経過し,わが国の新生児死亡率は著しく低下してきているが,それでも昭和47年には出生1,000人について7.8人が生後4週未満に死亡している(新生児死亡率7.8).
 新生児期の疾患やそれによる死亡は,妊娠中の胎内での異常や分娩時の侵襲によるものが少なくないため,妊娠,分娩,新生児期を通した一貫した医療が必要であり,胎児または新生児に危険の考えられるものに対しては,積極的にそれを予防,治療していくことが大切である.そのような考えから,high risk pregnancy, high risk infantという概念が抬頭し,またそれに対する特別の養護が積極的に行われるようになってきた.

新生児医療の現状と問題点—特に母子医療の面からみた新生児医療

著者: 石塚祐吾

ページ範囲:P.36 - P.41

はじめに
 新生児を体重の面から成熟児と未熟児とだけに分け,前者を産科病棟の新生児室で産科医が管理し,後者を未熟室(棟)で小児科医が診療する,という形態は,すでに時代遅れのものとなっている.
 近年の進歩した新生児医療の世界的傾向は,成熟児,未熟児を問わず,high risk babyことにintensive careを要する新生児に重点を置き,人と物をつぎ込んで治療しようという方向にある.わが国でも,ようやく最近になって,これができる小児医療施設がポツポツ現われてきた.近い将来において,さらに増加し,充実されることが期待される.

病院と統計 病院労働統計・5

病院の諸手当

著者: 宮沢源治

ページ範囲:P.10 - P.11

 病院の諸手当は,昭和30年代まで縮小整理する方向を示していた.しかし,昭和40年代にはいると情勢は再び諸手当の多様化への途をたどりはじめ,全国病院労務管理学会の49年度調査によると,その種類は50数項目という多きに達している.

グラフ 新生児医療の最前線

神奈川県立こども医療センターの新生児未熟児病棟—その運営と診療の実際

ページ範囲:P.13 - P.17

 こども医療センターは,高度または困難な疾患を有するこどもに,専門的な,高度な医療を提供する小児総合医療施設として,昭和45年に設立された.新生児未熟児病棟においても,同年5月の診療開始以来,神奈川県内の医療機関から紹介された未熟児や,疾患を有する新生児の「後障害なき生存」を目指して,日夜診療が行われている.
 当センターは,わが国の最高水準の小児医療施設のひとつとして活動を続けており,新生児未熟児病棟もその重要な一部門として,高度な医療内容と優れた治療成績をあげているが,設立以来5年を経過し,今後さらに改善されるべき点も少なくない.

今月のニュース

第1回日本病院会学会開かる—「あまねく照らせ医療の光」をテーマに/AHF (アジア病院連盟)理事会開かれる

著者: 川北祐幸

ページ範囲:P.18 - P.19

学会印象記
 東京は杉並の普門館で,去る5月21日から3日間,晴天に恵まれたなかに3,000人近い人が集まって,第1回日本病院会総会ならびに学会が沢崎博次学会長(関東逓信病院長)の挨拶で定刻開幕された.5,000人を収容する会場は参加者に心のゆとりを与え,発表や討論に国際学会なみの雰囲気で参加できたのは,私のみではなかったであろう.
 第1日目午前に行われた沢崎学会長の特別講演では,4つの場面から医学の進歩と世の中のニードをうまくかみ合わせ,しかもそこにたえず臨床を主軸とした一貫性をもたせ,病院管理者(もちろん医師としても立派な)として対処してこられたお話をうかがい,実践に基づいた病院管理の真髄に触れ,感銘深いものがあった.

九州にこの人あり浜の町病院長・九州大学名誉教授 操 担道先生

著者: 澤田藤一郎

ページ範囲:P.20 - P.20

 白髪の老紳士である.明治26年1月生まれなので82歳になり,日本内科学会の最長老になったことと思う.
 鹿児島県大島郡出身,七高から九大卒業,初め約6年生理学教室で石原誠教授のもとで生理学を勉強せられ,のち九大第一内科に移られた.同内科は稲田,井上教授のワイル氏病病原体発見で有名であり,従ってその方面の研究が盛んである.また前述の生理学教室におられたので,心臓疾患の研究も得意とするところである.

焦点

筋肉注射の波紋—患者と医師の信頼関係を

著者: 本誌編集委員会

ページ範囲:P.42 - P.42

 第78回日本小児科学会総会は,大腿四頭筋拘縮症をめぐり,患者支援の医師や学生の抗議があり,武見日医会長の特別講演も中止ということになった.もちろん患者の救済には十分な対策が施されなければならないが,ここでは新聞紙上にみられた各方面の意見について考えてみたい.

精神医療の課題 座談会

精神衛生相談員の活動

著者: 桜井素子 ,   佐々木光昭 ,   小林智子 ,   鈴木俊寿 ,   菅又淳

ページ範囲:P.43 - P.52

精神衛生法の大幅改正がなされて今年で10年,入院中心から地域精神衛生に重点を移し,その荷い手として新たに登場したのが精神衛生相談員と呼ばれる職種であった.各保健所に2名という当初の計画は,その後依然として計画にとどまり,現場での活動に大きな制限を加えているが,まかれた種は芽をふき,着実に伸びつつあるようである.

トピックス

作業療法の点数化反対を決議—第72回日本精神神経学会総会

著者: 金子嗣郎

ページ範囲:P.52 - P.52

 本年5月の日本精神神経学会総会において,「精神科の作業療法は療法とは認めず,点数化反対」との決議がなされた.

病院私論・5

地域医療計画(1)—その日本的土壤

著者: 守屋博

ページ範囲:P.53 - P.53

担い手は住民か行政か
 地域医療計画も計画であるかぎり,計画・実行する責任者がいるわけだ.アメリカの地域計画は,すべて住民のコンセンサスの形で自主的にやっているが,日本では住民の意志をひとつにまとめるということが不慣れなため,医療に限らず学校計画や交通計画にしても行政がやることになる.行政が主導権をにぎる場合と住民がやる場合とでは,できあがるものが非常に違う.地域住民はなんでも役人に責任をかぶせておいて,揚げ足をとるというパターンになる.日本には地域全体のパワーが実って医療施設ができていくパターンはないわけだ.
 そこで,わが国の地域医療計画だが,昭和30年頃から医療機関の適正配置の第一歩ということで,県単位での現状の把握は行われてきた.それに過疎地域の実態把握が加わっているが,全体的にみて現状把握の段階から出ていない.

病院職員のための医学知識・29

CCU

著者: 渡辺凞

ページ範囲:P.54 - P.55

 "CCU"の言葉の意義,またいつ頃からできたのか,歴史的な経過をお話しください.
 CCUとはCoronary Care Unitの略語で,死亡率の高い急性心筋硬塞患者を特別な監視設備をもつ専用病室に収容し,熟練した医師・看護婦が,厳重かつ連続的に監視しつつ適切な治療を行うシステムです.
 CCUは,近年の蘇生術の進歩と,心筋硬塞の死因解明を基礎として発展しました.心臓の働きが止まるのは,心臓が全く動かない心静止,あるいは心臓各部がバラバラに細かく動き,血液が全く駆出されない心臓細動が起こるためです.蘇生術とは,かかる循環停止時に,心マッサージ・人工呼吸を行って,最低限の血液循環を維持しつつ,電気的除細動・薬物などを用い,心臓の収縮活動を回復させる方法です.当初は,心臓を露出しなければ行えませんでしたが,1956年には胸壁上からの電気的除細動が,1960年には前胸壁圧迫による心マッサージ法の有効なことがわかり,除細動器さえあればどこでも即座に施行しうるようになりました.しかし蘇生術は心静止・心室細動発生後,1-3分以内に行わなければ成功は難しく,心リズムは回復しても,循環遮断に弱い脳に傷害が残ります.

医療事故と法律・17

鑑定の評価

著者: 饗庭忠男

ページ範囲:P.56 - P.57

医療事故訴訟においては,鑑定が非常に困難であるうえ,鑑定人が得がたいという問題もしばしばある.鑑定はきわめて重要な役割を有しているのだが,それを裁判所がどう評価するかは,もちろん裁判所の自由な裁量に属する.つい最近,鑑定人は被告である医師側が多少の責任をとるべきとの意見を述べたのに,判決ではこの意見を採用せず被告の責任を否定したというケースがあった.

変貌する外国の医療・5

アメリカでみたfor profitの病院

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.58 - P.59

 アメリカで3種のfor profitの病院を見てきたので紹介する.
 第1の例は,ニューヨーク,ロングビーチのBrunswick Hospital Centerである.ユダヤ人の放射線科医師が開設した個人病院で,私的病院としてはアメリカでも最大級という.最初は3人の友人とともに始めたが,後に,友人たちの株を買収して,個人の病院としたものである.

私的病院からのレポート・31

—京都市・四条外科病院—病院間の協力体制を模索する—中野進院長にきく

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.61 - P.68

 四条通りといえば古い京都の中心街,それと戦後開けた堀川通りが交差する地点に四条外科病院がある.60床の救急外科病院というからまさに最前線の病院である.この町特有の伝統に根ざしたまとまりの中で,病院間の協力体制,薬の共同購入など,新しい病院運営の方向を模索しつづける中野院長(写真)にその実情をうかがってみよう.

座談会

病院組織のなかの手術部

著者: 伊藤誠 ,   山下九三夫 ,   松本昭彦 ,   都築正和

ページ範囲:P.69 - P.79

中央化された手術部の持つ性格,長所と短所を浮彫にし,将来のための指針とする

--------------------

中国医療の展開

著者: 陶易王

ページ範囲:P.80 - P.83

はじめに
 中国の医学について,ハリ麻酔や断肢再植(切断された手足をつなぐ手術),はだしの医者など,トピックニュースが断片的に紹介されているが,詳しいことはあまり知られていない.都市の総合病院におけるトップレベルの医学水準は,日本や欧米のそれと大差ない.
 人工心肺を用いる直視下開心手術などを見学していると,器械や術式は,私どもが行っている方法と同じようなので,北京の病院であることを時どきふっと忘れてしまうのであった.しかし,医療--特に農村における医療は非常にユニークな形をとっている.中国の人口の80%以上は農民であるといわれるが,農村を中心に中国の最近の医療についてご紹介したいと思う.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?