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雑誌目次

雑誌文献

病院34巻6号

1975年06月発行

雑誌目次

特集 ME機器の管理

ME機器はいかに病院機能を向上させたか

著者: 古川俊之

ページ範囲:P.22 - P.26

はじめに
 エレクトロニクスという言葉が一般に使われるようになったのは,第二次大戦以後のことである.エレクトロニクスの概念は,電子の真空,ガスまたは半導体のなかでの行動に関係した科学,技術を意味するが,近年の隆盛は第二次大戦中のレーダ開発がきっかけになって,パルス技術が急速に進歩して電子計算機の技術開発を促進したことと,1948年のトランジスタの発明に続く固体電子工学の展開に負うところが大きい.医用電子工学medical electronicsは,略してMEと呼ばれることが多いが,これにはレントゲン装置,心電計のように歴史の古いものも含まれるほか,新しい電子工学の応用と言うべきものまでさまざまである.
 ここで見落してはならないのは,MEとSEの接近という現象である.SEとはシステム工学sytems engineer-ingの略語で,複雑,大規模,かつ巨大な経費を要するシステム,たとえば宇宙ロケット開発や最近の都市設計,交通管制,オートメーション工場,エネルギー制御などのために作られた新しい技術である.生体は1つの個体を取り出しても,その複雑性と大規模性,そして人命の価値を加味すると,システム工学の対象として不足はないどころか,未来の巨大プロジェクトと言ってよいが,これが構成する社会の行動もまた,システム工学的アプローチを必要としている.

ME機器の保守安全管理の現状

著者: 上林三郎

ページ範囲:P.27 - P.29

遅れている管理面の整備
 近年病院における医用電子機器の利用は著しく拡大し,病院管理者が好むと好まざるとにかかわらず,院内に導入され使用されつつある状況であるが,これらの医用電子機器の利用にあたって,利用者は,その性能,機能などについて十分の知識と理解を持つと同時に,常に正しく使用されるような管理体制を持たなければならないはずである.しかし,大部分の病院では,機器の導入にのみ力を入れるあまり,管理面の整備が遅れている感がある.
 このように,高度の機能を有する機器類の保守,安全管理は,医師,看護婦,検査技師だけでなく,専門の電気技術者,機械技術者の力を必要とする.したがって,従来のように施設,営繕関係の人の片手間でなく,医療機器の保守,安全管理を専門にするME技術者を置き,本格的な医療機器のサービスを担当させなければならない.このような管理の体制が十分にとられない場合,機器の購入のさいには,必ず保守契約を結び,機器管理の体制をカバーする必要がある.この結果,医療機器のアフターサービスの悪い会社の機器は必然的に淘汰されてゆくだろう.

ME機器管理の実際・1

生理機能検査室のME機器管理

著者: 江部充 ,   石山陽事

ページ範囲:P.30 - P.33

はじめに
 昔から現今までの病院診療の中で,ME機器が最もよく活用されてきたのは,生理機能検査の分野である.ME機器が簡単な構造の時代には,機器の管理はさほど問題にはならなかったが,最近のように目まぐるしいばかりのME機器の進歩,改良あるいは変貌は,機器を複雑な構造にし,大型化し,かつ高価なものにし,病院はあらためてこれら機器の管理について根本的な検討と解決を迫られている.
 生理機能検査は,患者から直接,目的とする機能についての情報を得て,これを診療に役立てるための検査であり,検査実施場所が中央化されているいないにかかわらず,診療機能の上で中央化されている場合もある.いずれにせよ,生理機能検査室は病院の性格,規模や医師の勤務状態など,いろいろの要因によって内容が異なってくるのは当然である.

ME機器管理の実際・2

検体検査ME機器

著者: 加嶋政昭 ,   大森昭三

ページ範囲:P.34 - P.38

 「保守」というのは,おおかたの医師にとって,なんとも馴染みのうすい用語である.日本の医療の社会ではME機器の保守は無償という慣習があったし,医師には他と比べてシステム思考に欠けるところが目立つことも否定できないし,また医師対患者という個人プレイに明け暮れているためか,檜舞台には出てこない裏方の役割の保守というものを理解することが難しいのは,あたりまえのことかもしれない.

ME機器管理の実際・3

治療用ME機器の日常管理

著者: 海藤薫 ,   佐藤光男

ページ範囲:P.39 - P.44

はじめに
 長い間,医師の経験とカンにたよってきた医療の場に,現在では多くのME機器が導入され,患者の診断や治療に活用されている.これら高度・多様化した機器は,生命力の弱った患者を対象とし,直接その身体に触れる場合が多いだけに,ちょっとした機械管理の不手際が重大な結果を招くおそれがある.しかしME機器の安全管理を熟知し,その維持を十分にやっておけば,いたずらに恐れる必要もない.
 そこで本稿では,最近使用頻度の高いME機器のなかから,レスピレーター,ペースメーカー,除細動器,人工透析器および保育器などをとりあげ,主に滅菌・消毒と電気エネルギーの面から,その維持と安全対策について概説することにしよう.

アンケート

切望されるME機器管理の強化—アンケート調査で25病院から回答

著者: 編集室

ページ範囲:P.45 - P.46

 編集部では,病院におけるME機器の保全管理の実態を知るべく,全国の国公立,日赤,社保等の300床以上の主だった病院,また,病床は200床前後でも成人病センター,がんセンターなど多くのME機器を扱っていると思われる病院,合わせて100病院を無作意抽出し,以下のようなアンケート調査を行った.
 1.扱っている機器の範囲(部門別) 2.機種の選定について 3.保守契約の有無 4.保守契約を結んでいる場合の定期点検,アフターサービスの範囲 5.保守契約を結んでいない場合の保守管理の責任者,定期点検の程度,修理の実情,夜間の保全対策,保全管理のための教育 6.機種更新にさいしてのメーカーとの関係と,困っていること 7.安全管理について 8.院内保守管理体制を敷くことへの意見
 回収総数25病院(うち無記名5)で回収率は1/4,本誌としては,あまりいい回収率とはいえないが,ME機器に関しては,機種や扱っている部門があまりに多岐にわたるため,答えにくかった点が多かったと思われる.

病院と統計 病院労動統計・6

定年と退職金

著者: 宮沢源治

ページ範囲:P.10 - P.11

定年
 定年は,定年年齢を単一に決めているところと,複数で決めているところとがある.統計上前者を「一律定年制」,後者を「○○別定年制」と呼び,○○別定年制は男女別定年制,職種別定年制というように分けている.病院の場合も,(1)一律に決めている,(2)男女別に決めている,(3)職種別に決めている,(4)職種別,男女別に決めている,ところがあるが,これについての統計がないので実態は明らかでない.

グラフ 新設医大病院シリーズ・3

地域の基幹病院としての機能を教育に生かす—聖マリアンナ医科大学病院

ページ範囲:P.13 - P.19

 新宿から小田急電鉄で16分,向ケ丘遊園で下車して車で約10分,森林にはさまれて新興ベッドタウンのアパート群が林立する丘陵地を上っていくと,モダンで,しかもどことなくソフトなムードの漂う8階建てのビル群が目に入る.これが昨年の2月に開院した聖マリアンナ医大病院である(地上8階地下3階,建築面積8,549.57m2,延床面積44,158.48m2).
 開院してまだ1年あまりであるが,医師,ナースの充足度もまずまず.外来患者はすでに1日平均700名,規定ベッド数850床の中,400床が開かれ,川崎市北部地区の基幹病院としての機能を発揮し始めている.秋にはさらに150床オープンして,ベッドサイド・ティーチングを開始するという.

豊富な経験・固い意志—日本看護協会の新会長 大森文子さん

著者: 内藤寿喜子

ページ範囲:P.20 - P.20

 先生は,行政,教育,臨床と,看護に必要などの分野においてもいつも先進的な道を歩み,固い意志と積極的な行動,母性的な包容力で時代の困難をのりきってこられました.
 日本の看護の歴史に大きな意味をもつ戦後の制度改革においても,行政の場にあってその基礎づくりに日夜ご苦労を重ねられました.その後,母校の慶応義塾大学医学部附属厚生女子学院で,また当時注目を集めていた東京大学衛生看護学科の臨床指導者として教育に携わり,さらに国立中野療養所では総婦長として,先生が看護婦となって最初に手がけられた結核看護の中に,当時話題となっていたチームナーシングを初めてとりいれ,その頃書かれた「患者に目をむけよう」という本は,今でも多くの看護婦に読まれています.そして現在は,新設の北里大学病院看護部長の職にあり,近代病院の管理者として,看護婦のみならず他の医療従事者の指導にも力を注いでいらっしゃいます.

今月のニュース

ライフ・プランニング・センター国際セミナー開かる—(7月3-5日東京都港区・笹川記念会館)

ページ範囲:P.47 - P.47

 昭和48年4月の設立以来,明日の医療システムの確立をめざして,各種セミナーなどの活動を進めてきたライフ・プラニング・センター(財団法人,会長笹川良一氏,理事長日野原重明氏)では,この5月,東京港区三山の笹川記念会館内に,近代的な自動検診設備を誇るクリニック(健診センター)を開設したが,これを記念して,さる7月3日から5日までの3日間,「医療の諸問題と医学,看護その他医療担当者教育の革新」と題する国際セミナーが開催された.
 特別講演者にデューク大学のAnlyan氏,マックマスター大学のBarrows氏ら6氏を招き,7月3,4日の両日はこれらの各氏の特別講演,さらに最終日の5日には,日野原・紀伊国両氏の司会で,日本側からは慶大の牛場教授,帝京大鈴木(淳一)教授ら7氏が加わり,パネルディスカッション「よりよき医療提供のための医療担当者のチームワーク」が行われた.

Guest just arrived

日本の医療提供システムの課題

著者: アーサーE.リクリ ,   紀伊国献三

ページ範囲:P.48 - P.52

 ‘Just Arrived’というわけではないが,アメリカのミズリー州立大学医学部教授・アーサーE.リクリ博士が,昨年10月から半年間日本に滞在,主として日本の医療提供システムについて研究された.氏は,ある国の医療を研究する場合,その地に相当の期間居住して,いわばフィールド・ワークを行うというユニークな研究者である.離日を数日後に控えたある日,東京・新宿の病院管理研究所にある博士の研究室にお訪ねした.

病院私論・6

地域医療計画(2)—医師の充足度について

著者: 守屋博

ページ範囲:P.53 - P.53

 前回にひきつづき,地域医療計画について,今度は地域別にみた医師の充足度という観点から考えてみよう.端的に言って,医師が不足している地域に医師を増やしてやることが課題なわけだ.しかし,どの地域にどのくらいの医師が不足しているか,ということを把握することは,実はそう単純にはいかない.ある病院外来では30人しか診たくない医師のところに100人も来る.かと思うと,その隣りの医師のところには5人しか来ない.医師は患者の自由選択に任されているから,医師の数だけでは割り切れない面がある.

病院職員のための医学知識・30

理学療法

著者: 松村秩

ページ範囲:P.54 - P.55

はじめに
 理学療法(Physical therapy, PT)は,リハビリテーション医学の中心的な柱であり,理学療法士は患者・障害者の身体機能を評価して治療計画を立て,治療と訓練を実施してゆく医療専門職である.
 患者・障害者のリハビリテーションを効果的に行うため,医師から理学療法に関する依頼と患者についての医学的情報を得て,発病直後の急性期から社会復帰に至る過程において,他の医療専門職種と協力して,チーム医療を行い,身体機能を最大限に回復させて,その社会的自立を可能な限り高めてゆくという,非常に包括的な業務を遂行してゆかなければならない.

医療事故と法律・18

訴訟における責任追及

著者: 饗庭忠男

ページ範囲:P.56 - P.57

医療事故訴訟では,不法行為責任と債務不履行責任との2つが併存していると考えられているようであるが,現実の訟訴では,これらの責任はどのようにして認められているのだろうか.

変貌する外国の医療・6

アメリカの新しい医療計画法

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.58 - P.59

 1975年1月4日,アメリカで新しい医療計画法が成立した.「全国保健計画医療資源開発法案」と呼ばれるこの法案は,医療提供を組織化しようと戦後アメリカが行ったさまざまな努力の現時点での集大成といった意味をもっている.
 アメリカの医療計画,保健計画にはいくつかの試みがあるが,大きなものとしてヒルバートン法,RMP, CHPが有名である.1946年にできたヒルバートン法は,病床が必要なところには,州が毎年つくる病院地図に合致した場合,連邦政府が優先的に金を出すというもので25年間に150億ドルを投入する大きなプログラムだった.

病院の新しい職種

トランスクライバー

著者: 菅谷和代

ページ範囲:P.60 - P.60

トランスクライバーとは
 "transcribe"は,「転写する,他の字に書き換える」と訳されている.聖路加国際病院では,口述録音されているテープを聞きながら,タイプして報告書を作成する.すなわち,音として収あられている文字を,目で読める文字に換えているわけである.放射線科では,外来各科あるいは各病棟からの撮影依頼で,頭から足の先まで,あらゆる部分の単純撮影,また胃腸造影,気管支造影,頭部・胸・腹部・四肢などの血管造影をはじめとする種々の特殊検査のX線写真がとられている.できあがった写真は,すべて放射線科の専門医が読影し,その所見を口述録音機(dictating machine)を使い,テープに録音する.後刻,そのテープをイヤホーンを通して聞きながらタイプするのである.
 口述録音機は,一般にみられるテープレコーダと異なり,ハンドマイクに設けられたスイッチにより,録音・停止および聞き戻し再生が,きわめて容易にできる構造になっている.またタイプするさいは,足踏みスイッチを接続することにより,テープの再生および聞き戻しが自由にできるようにもなっている.わからない個所がある時は,繰返し聞きなおせる.

座談会

病院と水質汚染—排水処理をどうするか

著者: 左合正雄 ,   児玉威 ,   北野康 ,   白戸四郎

ページ範囲:P.61 - P.71

 昨年11月,試験研究検査場の排水処理等に関する施行令が改正され,それに引続いて医療機関の規制案も現在検討中であるという.排水処理の問題は,特に大学や病院のように多種多様なものが排出される施設においては,一筋縄ではいかないものがある.そこで,現在すでにこの問題に取り組みつつある名古屋大学や都立大の例を参考にしつつ,これからの病院における排水処理の問題をお話しいただいた.昨年4回にわたって本誌に掲載した白戸四郎氏の「検査室からの廃棄物を追跡すると……」の続編としてもお読みいただきたい.(上の写真は病理検査室実験台上の有機溶媒)

精神医療の課題 座談会

病院家族会10年の歩み

著者: 鏡重太郎 ,   多田トモ子 ,   井口芳雄 ,   堀田和一

ページ範囲:P.72 - P.80

家族会が姿を現わして10年以上の歳月を経た.ライシャワー事件などをめぐり当初めざましい活動を展開し脚光を浴びた家族会も,ようやくその停滞が指摘される段階に入りつつある.今こそその本来の姿を静思するにふさわしい時ではなかろうか.今回は精神病院を中心として家族会活動を捉え,各地で苦労を重ねる4人のPSWに,その過去と現状を語っていただいた.

研究と報告【投稿】

院内感染,特に緑膿菌感染について

著者: 高橋勝三 ,   荒木威 ,   原岡潔 ,   知識研治 ,   田浦和歌子 ,   荒川文子 ,   中原久江 ,   緒方廣市 ,   松本英雄

ページ範囲:P.81 - P.83

まえがき
 院内感染の問題が論議され始めたのは10年くらい前であるが,東京都下三多摩地区で500床のわが武蔵野赤十字病院においても最近委員会が設置された.外科の末期直腸がん,脳外科手術創,気管切開創部,内科の褥創患者で緑膿菌の発生をあいついでみたからでもある.緑膿菌に限らず院内感染全体を対象とする対策委員会で,委員長(内科部長)のほか,外科部長,小児科部長,外科系病棟婦長,小児病棟婦長,医事課長,細菌検査技師をもって構成され,他科・課も必要に応じ随時委員会に加えることにしたが,脳外科の参画は必須と考えられた.
 委員会はまず緑膿菌問題をとりあげ,半年にわたり資料を集め,研究を重ね,討議を繰り返した.問題は純医学的と言うより医学・社会的な色彩が濃いが,院内の職場人間関係にまで影響を与えるほどの勢いをみせた経験は,多くの病院にもご参考になろうかと考え,われわれの試行錯誤を公にする次第である.

医療機関における診療用放射性同位元素による汚染状況の測定

著者: 浜田政彦

ページ範囲:P.84 - P.87

はじめに
 医療機関においては,放射性同位元素の使用施設,使用件数ともに年々急増し,X線診断件数に達するのも遠くないとみられている.国内で診療,研究に用いられた放射性医薬品などの総量は,昭和49年で99mTcでは500Ci,198Auおよび131Iでは100Ci,67Gaおよび133Xeで10Ciを超すに至った.
 さて,最近の放射性医薬品による核医学診断の特徴はシンチカメラの普及とラジオイムノアッセイなどの試料検査の急増であり,これによって使用される放射性医薬品の種類と量が変わり,施設の管理,安全取扱いの対策についても,なんらかの進歩が求められるのは当然である.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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