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雑誌目次

雑誌文献

病院34巻7号

1975年07月発行

雑誌目次

特集 病院間の協同

協同の必然性とその方向をさぐる

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.22 - P.25

問題の背景
 生物界では適応が生存の原理だという.もろもろの社会的存在体にとっても,これは例外ではない.そして,1個の社会的存在体である病院にとっても,もちろん例外ではない.
 適応の必要性は,環境条件の変化によって引き起こされる.生物に対して,あるいは社会的存在体に対して,自然的環境条件あるいは社会的環境条件は絶えず変化している.その変化は,それぞれの個体または集団の存立あるいは機能を促進する方向にも現われてくるし,また逆に,それを制約する方向にも現われてくる.適応が必要となるのは,後者の場合である.

病院協同事業の実際・1

給食材料の購入—広島県病院協会

著者: 正岡旭

ページ範囲:P.26 - P.28

動機
 当協会は創立の翌年にあたる昭和39年,会員病院の給食業務の合理化と経費の軽誠を図る目的で,県農業協同組合と提携し,給食材料共同購入事業を実施すべく計画したが,当時はまだ病院側の認識が浅く,その実現を見るに至らなかった.
 一方,社会は技術革新の転換期を迎え,近代化の進む中で病院給食は開始されて20有余年を経ながら,なお各病院が個々に限られた低医療費で,複雑,多様,かつ困難な業務を日夜繰り返し,合理化,機械化が進みかねていた.また,年ごとの物価および人件費の上昇,ならびに人口の老齢化に伴う給食要員の確保も年々困難になり,病院給食業務の運営はまことに容易ではない.

病院協同事業の実際・2

電算機による薬品管理—全国自治体病院協議会

著者: 米田啓二

ページ範囲:P.29 - P.31

実施の経緯
 自治体病院の経営は,他の病院と同様最近悪化の一途をたどってきている.当協議会は,この対策として診療報酬体系の是正と物価,人件費の上昇に対応する改訂の即時実施などの運動を強く行ってきているが,病院自体の経営合理化も是非必要であるとの見地から,研修会,研究会の実施にも力を入れている.また最近は,薬品などを低廉に供給する必要があるとの考え方から,従来,共済資材部で斡旋の形で行ってきた薬品について,(株)自治体病院共済会を設立したが,売上も順調に伸びてきている.
 この稿の主題となっている電算機による薬品管理の共同事業についても,主としてこのような見地から取り上げられたものである.すなわち,今後の病院経営は科学的な管理が必要であり,さらに省力化を考えた場合,電算機の導入は必至であると考えられることから,病院事業に対する電算機の導入について検討中のところ,会員病院の岩手県立の28病院が,電算機により給与計算,試算表の作成,薬品管理について集中化して行っており,特に薬品管理については昭和46年から実施して成果をあげていることがわかり,岩手県医療局の協力を得て,昭和48年10月から電算機による薬品管理共同事業の実施に踏み切ることになったものである.なお,委託先は,全都道府県と市町村が出資して設立されている財団法人地方自治情報センターにお願いしている.

病院協同事業の実際・3

経営分析・求人・教育情報—神奈川県病院協同組合

著者: 小野肇

ページ範囲:P.32 - P.34

神奈川県病院協同組合の運営方針
 当組合は,昭和34年創立,病院だけの協同組合としては,本邦嚆矢であろう.しかし,組合員は,中小11病院(うち総合病院2)のみで,その規模は同種協同組合中,最小のものである.
 当組合の管理運営方針は,組合自体の拡大を全く考えず,組合員病院の病院管理,特に経営分析・求人活動・教育情報活動に重点を置いている.このことは,中小企業等協同組合法第1条の目的から若干外れるおそれもあるが,この種の運営は,設立の主旨および組合員の総意によって,いろいろの行き方があってもよいと考えている.

病院協同事業の実際・4

薬剤の購入—厚生連病院

著者: 吉崎芳雄

ページ範囲:P.34 - P.36

地域病院としての厚生連病院の経営
 都道府県厚生農業協同組合連合会の経営する農協の厚生連病院は,現在,北海道をはじめ24県に118病院,40診療所が所在している.
 昭和26年,日赤・済生会病院とともに,医療法に基づく公的医療機関の指定を受け,地域住民の医療福祉に寄与してきたが,経営的には全く独立採算で,わずかに国・県の運営費の一部補助を受けているに過ぎない。しかも,その立地条件は,中小都市や人口5万人未満の市町村に位置するものが多く,医師をはじめ医療技術者の確保難と,立地的に経営環境も劣悪で,赤字経営で苦悩している病院も多い.

病院協同事業の実際・5

薬剤の購入—京都・協同組合薬剤センター

著者: 中野進

ページ範囲:P.37 - P.39

まず病院長の立場から
 筆者の四条外科病院が"協同組合薬剤センター"に加入したのは,センターが発足して2年後の昭和38年4月のことである.
 当院は外科中心の特殊性から,薬品の購入量は必ずしも多くはないが,グループによる大量購入,結束の強さからくるメリットなど,ふと気づくと「大きな力」ができあがっていることに今さらながら驚いている.

アメリカにみる協同・1

協同化の背景

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.40 - P.41

85%の病院が協同化を指向
 アメリカにおいては,「病院の協同化」は最近のはやり言葉とも言えるほどである.協同化ということは,さまざまな方法により実行される.ここでは,協同化を仮に2個以上の病院組織が協同してサービスを提供する,と定義づけて考えてみよう.
 アメリカ病院協会が1973年4月に調査した病院における協同についての実態調査によると,7190の病院のうち実に85%の病院が,病院の協同化に対して何らかの試みをしているという回答をしている.この場合の協同とは,病院が協力してさまざまなサービスの提供を行うものであるが,1つの病院が他の病院と協同して行うサービスについては,1から73のサービスがあげられており,平均すると6.2のサービスを協同して行っているとの報告がみられる.それらの多くは管理的な業務であり,特に物品の共同購入が最も多い.

アメリカにみる協同・2

シカゴの事実

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.42 - P.44

アメリカからの手紙
 次に記すのは,シカゴ郊外のシャーマンホスピタルに勤務する,私の畏友小林玄一氏に,最近のシカゴのshared serviceの実態について間合せた私の手紙に対する氏の回答の一節である.
 「御承知のことかと思いますが,米国では目下,econo-mic recession(日本もヨーロッパも同じことかと思いますが0)やVietnum Refugeeで毎日の新聞,テレビをにぎわかせていますが,医療のフィールドでも,例のNHI(National Health Insurance)を前提にかまえた新しいhealth lawが次々と連邦議会を通過して,病院界に対するプレッシャーは増加の一途をたどるばかりです.通過した法律のなかでめぼしいものを拾ってみても,

アメリカにみる協同・3

サマリタン・ヘルス・サービス

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.45 - P.47

Mergerの動機
 病院は,おかれた地域の医療需要の大きさで,その規模が決められるものである.数十万という都会では,何百床でも,あるいは1,000床をこえる大病院でも成立つであろうが,人口が数千のところでは病院どころか診療所でさえ経営できないであろう.
 アメリカ合衆国アリゾナ州の首都人口56万のフェニックスにあるThe Samaritan Health Service Incor-poratedの会長Morris氏は,「アメリカ全人口のうち3,500万人が5,000人から10,000人の小さな町に住んでいる.こうした小さな町でもアメリカのように広くちらばっているところでは,それぞれに病院が必要である.だからアメリカの病院では100〜125床ぐらいの小病院が多く,500床以上の病院は5%にもみたない.

協同への提案・1

検査部門

著者: 斉藤正行

ページ範囲:P.48 - P.50

検査はほんとに黒字か
 「臨床検査は儲かるもの」というイメージは今でも根強い.しかし,ほんとうに臨床検査にタッチしてみるとこんなに人手がかかり,設備や消耗品の必要なものがと不思議になってくる.
 患者中心に診療のタイミングに合うようにやればやるほど,この疑問は強くなり,さらに最近のように人件費や物価が高騰すると,「できるだけ外注した方が出血は少ない」と逃げたくもなる.

協同への提案・2

放射線部門

著者: 梅垣洋一郎

ページ範囲:P.50 - P.52

放射線被曝の問題を契機として
 医療への放射線の利用は増大する一方であるが,最近では医療による国民の放射線被曝の量が無視しえなくなってきたので,これに何らかの方法で歯どめをかけることが,真剣に考慮されるようになった.国際放射線防護委員会(ICRP)は,1969年にX線診断における患者の防護」と題する報告を出し、すべてのX線診断は主治医と放射線医の話し合い(consultation)の上で行われること,放射線医を増強することを勧告している.
 日本でも,医療被曝の対策について真剣な検討が行われるようになり,その実態の把握と対策について報告が出されている.これらの検討結果を見ると,近い将来に何らかの形で放射線の医学利用が制限されることは必至と考えられる.

病院と統計 病院労働統計・7

福利厚生費

著者: 宮沢源治

ページ範囲:P.10 - P.11

法定福利費と法定外福利費
 病院の福利厚生費は,大別すると,法定福利費と法定外の福利費に分けることができる.法定福利費は,健康保険・厚生年金保険・雇用保険料の事業主負担分と,労働保険および法定保障費の合計をいう.また法定外福利費は,①住宅,寮②医療③生活援護(給食,購買,被服,運動,託児,育英,家族援護)④慶弔共済⑤文化,体育,レクリエーション⑥その他の6つに分類される.
 昭和48年日経連の「福利厚生費調査」によると,人件費総額の中に占める福利厚生費の割合は11.4%で,そのうち法定福利費の占める割合は5.2%,法定外福利費は6.2%になっている.ここ数年間の傾向をみると,人件費中に占める法定福利費の割合は漸増する傾向を示している(図1).

グラフ

残された機能で健常人の生活をめざす—琴の浦リハビリテーションセンター

ページ範囲:P.13 - P.19

臨床と福祉の接点を求めて
 「希望にみちて,たくましく」.皇太子殿下行啓記念碑の碑文である.社会福祉法人「琴の浦リハビリテーションセンター」の志向する目標は,このことばの中に示されている.
 リハビリテーションの構想は,堀口銀二郎理事長が,整形外科医として,大学における研究生活から,臨床医として実務活動(開業医)に入るとき,すでにその心のなかに秘められていた.「整形外科医として多くの疾病,外傷と取り組んできた.しかし,すべての患者を社会復帰させることが不可能であり,これらの人に,いかにして生きる喜びを与えるべきか」が,患者とともに歩む医師としての課題であった.

医療技術者のチームづくりを背負って 日本医療技術者団体連絡協議会会長 中村 実氏

著者: 佐久間正

ページ範囲:P.20 - P.20

 人間関係を非常に大切にし,責任感の強い熱血と情熱のかたまりのような人と言えば中村博士この人のことであり,三重大学に昨年まで26年間籍をおき,数多い研究業績をのこして三重大学の放射線科に中村実博士ありと国際的に知られている.四日市の出身で今も在住,常に「不可能を可能にすることが真の努力である」と言い,卓越した識見と強固な信念,そして包容力を生かし,永年国際放射線技師学会議理事の実績をつみ,この間アジアで初めて1969年秋開催された第4回国際会議(東京)を主催し,世界の放射線技術の進歩発展に大きな貢献をした.戦後,日本放射線技師会,日本放射線技術学会理事,副会長を歴任,昭和43年より会長に就任以来,特に「医療放射線被ばく軽減は,放射線を取り扱う専門職の最大使命である」として,技術的究明と改善に執念を傾け,国民の理解と協力を深める運動を提唱,積極的に進めていることで各界に高く評価をされている.また現代医療は「チーム医療が絶対必要である」と主張し,昨年医療技術者団体連絡協議会を発足させ会長に推された.そして加盟9団体医療技術者のチームづくりを背負って超人的な行動力と指導性を発揮し,信頼と期待を高めている.
 講演と原稿をかくことが「楽しい」と言い,驚くべき時間帯で精力的に行動している人であり,医療技術者にとってなくてはならない人である.

病院私論・7

地域医療計画(3)—病院の配置計画

著者: 守屋博

ページ範囲:P.53 - P.53

 前回は医師の配置計画について考えてみたので,今回は施設の配置計画について考えてみよう.医療施設の配置も全く白紙の時点から始あるのなら,話は比較的簡単だが,現在すでに個人経営的に動いている診療機関を含めて考えようというのだからひと筋縄ではいかない.

病院職員のための医学知識・31

ペインクリニック

著者: 若杉文吉

ページ範囲:P.54 - P.55

ペインクリニックは,いつ頃からどんなキッカケで始まったのでしょうか.
 まず,ペインクリニックとは,神経ブロック法を主体として,主に痛みの疾患ですが,痛み以外の各種疾患も診断治療するクリニックであります.したがって,神経ブロック法によらない,単に薬物,理学,ハリ療法等によるクリニックをペインクリニックとは呼びません.それでは神経ブロックとは何かといいますと,ブロック針で神経に直接,あるいはその近くに薬液を注入して,神経の興奮伝導を化学的に遮断する方法であります.
 このような神経ブロックが行われるようになったのは,1850年代に注射器と注射針が発明されてからで,1884年にはKarl Kollerが,すでに診療に応用しております.ペインクリニックという言葉は,1936年,E. A. RovensteinがニューヨークのBellevue Medical Centerに開設したのが,はじまりといわれております.各国で注目されるようになったのは第二次世界大戦以後で,わが国においては昭和37年8月,東大麻酔科に設立されたのが最初です.

労務担当15年の記録から・1

院内報には金を使え

著者: 藤田栄隆

ページ範囲:P.56 - P.57

本シリーズを始めるにあたって
 労務を担当して15年になる.その間には実にいろいろなことがあった.
 「労」と「使」という相対立した組織の一方に身を置いて,医療労組と四つに組んで体験してきたさまざまな事例や教訓を,そのまま独り占めにしておくのは,なんとしても惜しいし,またもったいない.

柏原病院からのレポート・1

農山村病院と若手医師

著者: 冨田重良

ページ範囲:P.58 - P.59

I君への手紙
 長らくご無沙汰しました.私がここ柏原病院(昭和48年に兵庫県立病院柏原荘が改名)に勤めるようになってから,はや2年.あっと言う間に過ぎ去った2年間でしたが,最近になってやっと心の余裕もできたようで,この前,貴兄から戴いたご質問にお答えする気になりました.
 ‘あれだけ情熱を傾け,そして,あそこまで高度に成長した尼崎病院をやめ,家族と離ればなれに生活する不便を忍んでまで,なぜ片田舎の柏原病院に移ったのか’確かに不思議に思われても仕方がないでしょうね.でも買いかぶらないで下さい.シュウァイツァー博士のような,そんな崇高な動機ではないのですから.

病院の新しい職種

呼吸療法士

著者: 古賀良平

ページ範囲:P.60 - P.60

呼吸不全患者の増加
 わが国における肺結核の減少は著しいものがあるが,一面,非結核性呼吸器疾患の増加は年を追って目立ち,特に大気汚染,環境汚染などによる呼吸障害は大きな社会問題とさえなっている.欧米における慢性気管支炎・肺気腫・気管支喘息などの慢性閉塞性肺疾患(C.O.L.D)は心臓疾患に次いで初老期以上の労働能力を失う疾患として第2位にランクされ,つとに注目されている.たとえば,米国においては,年間約45,000の新患が生じているとさえいわれる.この傾向はわが国においても近く招来することは必至である.その他,手術後や外傷などに伴う急性呼吸不全の治療も難しいもののひとつである.
 このような呼吸不全患者の苦痛を軽減し,リハビリテーションをはかることは呼吸管理医学として,直接生命に結びつく最も重要な点である.このことは看護婦のバイブルともいうべきヘンダーソンの「看護の基本となるもの」の第1が「患者が楽に呼吸できるようにする」ということでも十分肯けることである.

病院建築・75

病院と災害

著者: 浦良一 ,   伊藤誠

ページ範囲:P.61 - P.65

はじめに
 済生会八幡病院における不幸な事故が,われわれに改めて火災の恐しさを思い起こさせ,また海の向こうでのことながら,ロスアンジェルス地震による病院倒壊のニュースが,近代建築に対する新たな不安感を人々の間に呼びさました.このところ,病院の防災対策がにわかに方々で論じられるようになったのも当然である.そして,それは皆で論じ皆で考えるに値する重要な問題であることに間違いはない.
 ところで,これに関して聞かされるさまざまな議論の中には,いささか疑問を感じるものもなくはない.

招待席

病院管理学は医療学と考えたい

著者: 島内武文 ,   今村栄一

ページ範囲:P.66 - P.74

島内氏は,戦後30年を病院管理の道ひとすじに歩んできた生き字引的な存在である.日本で初めて東北大学に病院管理学の講座を開いた氏も,幾星霜をへて今春退官,秋田労災病院長として新しい境地を開くことになる.とはいえ,まだまだやり残したことも多いと,研究を続けんとする意気も盛んとみえた.

読者の声

砂原論文(本誌4月号)を読んで

著者: 津田順吉

ページ範囲:P.74 - P.74

 今度のもの,「偏見」と断わっていることを注目したい,不信なき偏見だと思った.看護婦独立王国論の中の死亡者に対すること,尿計量時間のこと,この2つだけでも,その事前の医師の態度こそ問題があって,医師が自分でこまごまと話し合っていればなんの支障もなかったと思う.それだから,偏見という文字が使用されたのだろうと思う.患者さんを中心に医師と看護婦との連絡のしあい,よし不幸にして2人が不仲であっても,患者さんを考えて話合いをするしかない.こういうことは,2000年も前からのことである.
 AとBとの図解は楽しく有難いものであるが,それは図でしかない.しかし,こういう解説は,何か理解できたように思わせてくれる.実は幻と思う.

胃集団検診の現状と問題点

胃集団検診作業とその成果

著者: 高橋淳 ,   中条秀夫 ,   岡田昌之 ,   原威道 ,   高橋勇夫

ページ範囲:P.75 - P.77

胃集検における3つの作業
 健康管理という概念がある.これは枠が広すぎるきらいはあるが,なんとなく一般に受け入れられている.胃の集団検診も確かに健康管理という概念の枠の中にはいるものである.
 胃集団検診の作業は,3つの課程に分かれている.まず胃がんを中心とした疾病の掘り起こし作業があげられるが,これはcase-findingといわれるもので,メインの作業であることは言うまでもない.

座談会

胃集団検診体制の現状と病院の機能

著者: 淵上在彌 ,   中馬康男 ,   久道茂 ,   田村浩一 ,   愛川幸平 ,   高橋淳

ページ範囲:P.78 - P.87

 従来の病院医療は,とかく治療医学にのみ専心しがちであったが,最近,地域医療の概念の下に,ようやく予防を含めた包括医療の方向に動きつつある.このような時点で,相変わらず,国民の死因の上位を占める胃がんの集検体制について,特に病院医療との関わりの中から論じていただいた.

精神医療の課題

精神科における医学管理料の考え方

著者: 亀井康一郎

ページ範囲:P.88 - P.92

まえがき
 精神科における医学管理料をいかに考えるかということは,われわれ精神医療に携わるものにとって,非常に重大な問題である.これは,単に入院時医学管理料として,各科共通に保険制度の中に組み入れられている対象のみに,論点を限定することができない複雑な要素を,われわれの領域は包含しているからである.そこには,「入院時」という言葉をはずした医学管理を必要とされる場合が,あまりにも多く存在している.
 この問題を,基本的立場と,その具体的展開の両方向より考察する必要があるが,現時点ではなかなか困難な課題である.

連載研究・1

病院と騒音

著者: 原素行

ページ範囲:P.93 - P.97

まえがき
——病院騒音防止の動向の展望——
 騒音が人の生活および生活機能に及ぼす影響については,今さらこれに論及するには及ぶまい.原則的には,病院の場合においても同じことが言えよう.しかし,特に「病院と騒音」なる主題の下に一文を草するゆえんは,病院機能の複雑性と特殊性とに鑑み,病院医療活動の正鵠を期する課題のひとつとして,これに応えんとすることにある.すなわち,病院の近代的管理の動向に歩調を合わせて,展望のかたちで号をすすめる.
 新しい動向とは革新の歩みであるが,一概に従来の軌跡を無下に斥けることはできない.ここに病院機能の特殊性がある.ただ問題の焦点として指摘されることは,フィロソフィーの如何にある.これを一言にて尽せば患者とは何ぞやということに帰し,病人そのものを一律に見たり,また取り扱うことに問題があるとされている.一人ひとりの病人はそれぞれ一様ではなく,十人十色というべき相違性の持主である,端的に物を考えると,旧思想では病気を治すということであったが,すでに病院医療に限らず,医療は病人を治すことなりと見つけるに至ったことである.

研究と報告【投稿】

コンピュータによるカナレセプト作成の合理的な方法

著者: 安達孝彦

ページ範囲:P.98 - P.99

はじめに
 コンピュータを使用して病院の窓口即時処理を行い,レセプトを作成する病院は,しだいに多くなってきている.このような現状で最もネックとなっている点は,カナレセプトの場合,頭書きといわれる部分で,保険の記号番号,保険者名,患者名,病名,開始日である。この部分を,コンピュータによりレセプト作成後月始めの一時期に行おうとすると,かなりの時間が必要となる.
 そこで最近は,漢字によるレセプトを,という声が多くなってきている.しかし,漢字レセプトはコスト高となること,また病名の変化によりタイミング上作業が多くなるなどのデメリットも考えられる.そのうえ,今年4月までには国保分と公費分の請求業務が一本化されるとか,健康保険組合の符号がコード化されるなど,少しずつではあるが漢字であったものが数字に変わってきているので,漢字レセプトの必要性が少なくなっていきつつある.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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