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雑誌目次

雑誌文献

病院34巻9号

1975年09月発行

雑誌目次

特集 病院と研修

病院と新しい研修システム

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.22 - P.23

まえがき
 病院というものは,その発端の姿は慈善事業的サービスをする中世の寺院的性格をもつ病人の入院施設であったが,医学が近代化し,看護が専門化するにつれて,医療の専門家(professionals),すなわち医師,看護婦その他のあらゆる医療従事者のティーム医療の場となりつつある.そして,そこでは,ある特殊な専門家のソロ・プラクティスではなく,総合された組織医療がなされるというのが真の近代病院の姿であろう.
 病院が,地域社会の中で適正な医療を提供することができるためには,医師や看護婦だけでなく,病院の各分野の医療スタッフや病院管理者がすべて専門家であるということを自負し,そのことによって組織医療の高い水準を維持するために,病院全体のスタッフの生涯教育が必要である.

医師—沖縄県立中部病院

著者: 真栄城優夫

ページ範囲:P.24 - P.27

 医師は学部卒業後2年以上,教育病院で研修しなければならない.しかし,その内容は病院によってさまざまであり,理想からは程遠い面も確かにある.ここでは,アメリカ仕込みのユニークな研修を展開している沖縄県立中部病院をとりあげる.

看護婦—東京・三井記念病院

著者: 尾本良三

ページ範囲:P.28 - P.31

 看護婦の卒後研修は,その必要性が叫ばれながらも,未だまとまった方向は出てきてはいない.が,文字通り医師の片腕たりえなければならない専門分野では,いくつかの萌芽がある.ここでは,東京の三井記念病院のICU専門ナースの研修を紹介したい.

栄養士—慶応大学病院

著者: 松本敦子

ページ範囲:P.32 - P.33

 病院栄養士の研修は,一部の熱意によって細々となされている状態である.筆者の松本氏は,東京において病院栄養士の質の向上をめざす活動の先端を担っている.

診療録管理士—聖路加国際病院

著者: 栗田静枝

ページ範囲:P.34 - P.36

 「日本診療録管理士協会」が発足したのは,つい昨秋のことであった.専門職としての名を恥かしめないためにも,技能の向上が望まれる.栗田氏は同協会の会長であり,この道の草分けのひとりである.

サイト・スクリーナー—大阪府立成人病センター

著者: 松田実

ページ範囲:P.37 - P.40

 サイト・スクリーナーは,病院では比較的新しい職種だが,主にがん医療の一翼を担う人びととして期待は大きい.日本でこの研修をしているのは,東京の癌研付属病院と,ここに登場する大阪府立成人病センターである.

MSW—淀川キリスト教病院

著者: 森野郁子

ページ範囲:P.41 - P.44

 医療ソーシャル・ワーカーは,その研修においては医療専門職のうち,最も遅れているうちのひとつである.研修を実施している病院は全国になく,わずかにここに紹介する淀川キリスト教病院その他2,3で,学生の実習を規定よりも期間も長く,ていねいにやっている,というのが救いである.

国際研修—東南アジア諸国等看護婦指導者病院研修

著者: 永野貞

ページ範囲:P.44 - P.47

 最後に国際研修をとりあげる.時おり病院に東南アジアの人らしい看護婦さんなどを見かけることがあるが,どのようなルートで,どんな勉強をしに来ているのだろうか.

病院と統計 病院労働統計・9

週休2日制

著者: 宮沢源治

ページ範囲:P.10 - P.11

週休2日制の採用状況
 何らかの形で週休2日制を採用する企業が,引き続き大幅な増加を示している.一般産業の場合,企業数では63.9%(図1,2)に達し,全労働者の3分の2の者が,週休2日制の適用を受けるようになった.しかし,病院における週休2日制の採用は,昭和49年7月の全国病院労務管理学会の調査によると14.6%(図3)で,その採用率は一般産業の導入率を大きく下回っている.
 全産業の採用率64%の内容をみると,大・中・小企業では,その普及率においてそれぞれ80%,50%,25%と大きな違いがあり,また装置型産業(鉄鋼・化学等)や一般製造産業(食料・繊維等)では導入率が高いが,自然依存型産業(農林業等),公益型産業(運輸・電気等)では,その導入率が低い傾向を示している.

グラフ 新設医大病院シリーズ・4

日独文化交流の歴史を礎に立つ近代的な大学病院—獨協医科大学病院

ページ範囲:P.13 - P.19

 わが国の近代化の発端となった明治文化が,ドイツの学術文化の吸収によって培われたことは周知のことである.明治14年,北白川宮を総裁に仰ぎ,西周(哲学者,帝国学士院長,初代学長),品川弥二郎(駐独特命全権公使,内務大臣,初代警視総監),青木周蔵(駐独公使,大使,外務大臣,枢密顧問官),桂太郎(二代校長,内閣総理大臣,陸軍大将)らが中心となって,獨逸学協会が設立された.ドイツ文化の移植によって日本文化の興隆に寄与しようというものであった.それから2年後の明治16年獨逸学協会学校が設定された."獨協"はこの獨逸学協会学校の略称で,以来90年の歴史をもつ,したがって,獨協医大の歴史的地盤は古い.
 明治26年に発足した獨逸学協会学校中学は,ドイツ語を必修とする日本最初の中学で,徹底した英才教育で知られていた.この中学の卒業生からは官界,財界,医学界などに名士を輩出したが,中でも医学の分野では,わが国医学界の中核となった医学者(佐々木隆興,呉建,坂口康蔵,高木憲次,高橋明,太田正雄,田村憲造,内村祐之,鈴木遂ら)や医師を数多く輩出しており,その影響は現在に至るも,極めて大きいという.

地域保健,地域医療の歴史を生きる 神奈川県立こども医療センター長 須川豊氏

著者: 湯澤信治

ページ範囲:P.20 - P.20

 病棟や待合室でこどもたちに声をかける姿はいかにも良いおぢい様,白髪がトレードマーク.兵庫県でもこども病院を企画し,神奈川県へ来られてこのセンターを建設し,現在その運営にあたられる.自治体立の「こどもの城」の第一人者.執念の人である.
 昭和10年京城帝大医学部卒.衛生学者.戦後は,郷里和歌山県の保健所長をはじめ厚生省環境衛生課長,多数の県で衛生部長を歴任される.都市清掃事業に対し,国の立場でまともに取り組んだ初めての人である.「蚊とはえのいない生活」運動の始唱者.新潟時代はこの運動の実践指導者でもあり,静岡では結核対策のために婦人会を結集するなど,生活運動の教祖的存在.つとに地域保健,地域医療の組織化に意を致され,各地で独創的な成果をあげる.このセンターが徹底した紹介予約制度で,全県的視野から利用されているのもその一端であろう.目下,そのスケールにおいて比類のない異常児発生要因調査の取りまとめに精進されるとともに,母子救急対策を含めて,救急医療の全県的システム化の推進にあたられている.

私的病院からのレポート・32

—三重県津市・遠山病院—私的病院の存在価値を求めて—遠山豪院長にきく

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.49 - P.57

 遠山病院は,かつて三重医大教授であった遠山豪博士(写真右)が,ゼロからつくったものである.「日本のMayo Clinicたらんと努力したが,この国の医療風土の中では,とても無理だったようだ」と遠山院長は語るが,それでも,学問する心を尊ぶ気風は随所に見られ,検査部門の充実には目をみはるものがあるし,図書室は研究の宝庫である.三重県の医療のひとつの中心と言っても,過言ではあるまい.日本病院会の副会長をはじめ公職も多い院長は,しかし,ほんとうは診療と医学研究の虫なのである.

精神医療の課題 座談会

PSW,CPの現場での悩み

著者: 宇賀勇夫 ,   真下弘 ,   中里弘 ,   西尾友三郎 ,   安藤隆彦 ,   大島侑

ページ範囲:P.59 - P.68

 精神病院にPSW (精神科ソーシャルワーカー),CP (臨床心理士)が登場してから幾多の歳月が流れた.しかし,業務の不明確さ,法的経済的裏づけの不備からか,依然として不安定な待遇にあるようである.今回は特に,「現場」での経験豊かな方々にお集まりいただき,日頃抱いている悩みや問題点を,ざっくばらんに語っていただいた.それは結局,精神病院のかかえる悩みや問題を明らかにすることになったが,「現場」で苦労を続ける多くの方々のご意見をいただき,新たな議論をまき起こす材料になれば幸いである.

病院私論・8

大学病院(1)その機構の特殊性教育,研究,診療の三権について

著者: 守屋博

ページ範囲:P.69 - P.69

大学病院の目的
 一般にわが国の大学病院は,他の総合病院と比べて,組織運営上,必ずしもうまくいってない.その原因を探っていくと,大学病院のもつ組織・機構上の特殊性につきあたる.その特殊性というのは,一般病院が地域住民の診療を第一の目的としているのに対し,大学病院は教育を第一義としているところから生ずる.
 この教育目的を達成するために,大学病院はどのように運営されてきたであろうか.まず大学と付属病院との関係を明らかにしなければならない.

病院職員のための医学知識・33

神経内科

著者: 田崎義昭

ページ範囲:P.70 - P.71

 昭和50年6月25日付の「医療法の一部改正」で,診療科名として神経内科が新たに標榜できるようになった.まだ耳新しい科名で,病院によっては診療部門として独立していないところも多いと思われるので,簡単に解説してみよう.

労務担当15年の記録から・3

管理職の範囲,一方支給で四面楚歌

著者: 藤田栄隆

ページ範囲:P.72 - P.73

第1話実態がモノいう管理職の判定
 労使関係でよく問題になるのは,管理職の範囲である.どこの事業場でも就業規則などで管理職の範囲が規定されている.病院などでも,部長,副部長,課長,婦長までを管理職と規定しているところもあれば,いわゆる病院三役(院長,副院長,事務長)だけを管理職と規定しているところもあって,いろいろさまざまだが,問題は,組合員,非組合員の範囲でもめることがよくあるので,できれば組合との間で,このことについての協定を結んでおいた方がよいと思う.
 しかし,組合の方では,できるだけ非組合員でなければならぬ管理職を限定しようとするし,病院の方では逆にその幅を広くしようとするから,なかなか話し合いはつきにくい.

変貌する外国の医療・1

ザグレブの国際病院会議から

著者: 紀伊国献三

ページ範囲:P.74 - P.75

 第19回国際病院会議が6月15-20日,ユーゴスラビアのザグレブで開催された.今回は,その話題を拾ってみよう.
 ユーゴは,共産圏といっても独自の道を歩んでいるが,やはりこの会議が,初めて社会主義国で行われた点がまず注目される.そのユーゴ自ら準備したテーマのひとつが「統合化された保健サービス」であった.単に病院だけでなく,より広い視野から包括的な保健サービスを国民に提供しよう,その中に病院を位置づけようとする動きが,東西を問わず,病院の持つ国際的な問題であることを,改めて痛感させられた.

病院の新しい職種

透析療法士

著者: 柴田猛

ページ範囲:P.76 - P.76

 人工透析は,1945年Kolffらにより急性腎不全の治療法として臨床応用された.その後,1960年Qunton,Scribnerらの動静脈シャントの考案によって,長期の反復治療が可能となり,慢性腎不全患者の治療法として,急速な進歩をとげた.
 わが国で透析療法が広く一般臨床に普及されるに至ったのは,透析治療が更生医療の対象となった1972年からである.現在,全国の慢性透析患者数は約10,000名で,今後さらに増加して,最終的には50,000名前後に達するものと推定されている.これらの患者の治療を行うには,現在の透析方法では,少なくとも約20,000台の治療設備と,これを上まわる透析従事者が必要となってくる.このため今後,病院では早急な医療体制の確立と,それに伴う透析従事者の養成を行わなければならない.

病院建築・77

愛媛県立中央病院

著者: 大角昭

ページ範囲:P.77 - P.80

沿革
 敗戦の傷跡もなまなましい昭和20年9月,しかも戦災を被むった直後の松山市に,市内唯一の公的医療機関として,北持田町に日本医療団「愛媛病院」が開設された.同22年1月に市内三番町6番地に本病院を移転新築し,診療科10科の総合病院として,松山市を中心に中予地区における医療センターとしての役割を果たしてきた.翌23年6月,日本医療団解散に際して全施設を受け継いで,県営に移管のうえ「県立愛媛病院」として発足した.その後数次にわたる施設の改修と医療陣の充実とにより,病床数400床の規模を有するに至っている.
 しかし,近年都市地域における疾病の多様性と,それに伴う医療技術のめざましい進歩に対応するには,現状の敷地および規模では限界に達したため,現状の打開にとどまらず,将来予想されるさまざまな事態に対応すべく,現敷地への移転と大規模な拡充が決定された.

連載研究・2

病院と騒音

著者: 原素行

ページ範囲:P.81 - P.86

Ⅲ 病院騒音に関する諸家の研究
 筆者が本稿を草する究極の目的は,病院における騒音の防止にある.第Ⅲ章には諸家の研究の要旨を記し,その卓見の紹介に努める.ただし,筆者不敏にして広く研究報文を集めかね,わずか5篇に止めた.日本病院学会における報告2篇と,病院設備誌上に登載された3篇に過ぎない.特に,重要なる研究調査のデータはこれを転載して,読者各位とともに研究する資料とした.
 本Ⅲ章に次いで,騒音防止に関する病院設備などの選びかた,および利用の方法などを第Ⅳ章に概説して,本章に紹介する報告を活用する道を辿る.また,4病院における騒音防止の建築・設備は,これを現地報告の形式として第Ⅴ章にまとめる.現地報告は,いずれも病院設備誌に寄せられた原稿から,図表を主体として抄録した.

研究と報告【投稿】

救急医療における大学付属病院災害外傷部の役割—頭部外傷急性例をめぐって

著者: 宮崎雄二 ,   高橋八三郎

ページ範囲:P.87 - P.91

緒言
 頭部外傷例中には種々の頭蓋内病態と重症度の症例がある一方,頭部外傷例の生命予後および機能予後を左右する因子は,頭蓋内血腫発生の有無と脳挫傷の部位,範囲および程度である.頭蓋内血腫に対する血腫除去は,血腫による直接的または間接的な脳幹圧迫を解除することが目的であるため,脳幹機能障害が出現しない時期,進行しない時期または可逆的である時期に血腫除去が行われねばならない.また脳挫傷例においては,初期の徹底的治療によって挫傷部周辺浮腫の拡大を可能な限り防止し脳浮腫を限局化させることによって,脳幹圧迫や脳循環障害を防止しなければならない.
 こうして頭部外傷に基づく頭蓋内病態は時々刻々変化するが,これらの変化を観察する医師が脳神経外科的対処を行いうる医師でない場合に,専門的知識をもって処置しうる医師へ連絡搬入しなければならない.このような頭部外傷に対し専門的処理を行いうる医療機関のひとつとして大学付属病院脳神経外科の活動が期待される.

ホスピタル・トピックス

診療費のとりもれとモラル

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.91 - P.91

 古いようで新しい話題として,最近特に注目されている診療費のとりもれ問題は,病院の経営責任者である院長,事務長はもとより,医事担当者の関心を広く呼んでいる.
 しかし,この問題の取り組み方には,両者の間に微妙な違いをみせている.院長,事務長側では,とりもれの実態を知ると,「病院財政危機の根源の1つだ」とばかりに,その改善に躍起となる.一方,医事担当者側では,多少当惑顔に「そんなにあるわけはないんだが」と首をかしげる.その結果,真面目な担当者は自病院の実態を洗い出す努力をするし,そうでない担当者は何もしない.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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