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雑誌目次

雑誌文献

病院35巻1号

1976年01月発行

雑誌目次

特集 大学病院の革新

慶応義塾大学病院改革の経験

著者: 市橋保雄

ページ範囲:P.24 - P.28

わき起こる世論を背景に
 かって数年前,最高学府としての大学は,その機能を営むにいろいろな困難に遭遇し,「社会の中で大学は如何にあるべきか」とか,「大学とは何か」との問いかけが澎湃としてわき起こったことは,ご承知のとおりである.
 わが慶應義塾大学においても,昭和40年以来,この問題の検討が行われていたが,一方大学紛争の発端は,東京大学をはじめとして,医学部内にあることが多く,解決も極めて困難で,医学部の問題は根が深いと言わざるをえない.そこで昭和44年2月,時の牛場医学部長は学部改革を要求する声に応じ,まずその第一歩として,主として臨床における教育,研究と診療との関係を取り上げ,これらを混同して運営されてきた事実が当時の混乱の因となっているとの認識のもとに,改革の決意を表明され,全学の意志のもとに改革委員会が発足し,審議を開始することになったのである.

筑波大学病院の運営試案

著者: 小宮正文

ページ範囲:P.29 - P.33

緒言
 筑波大学病院は,既存の大学病院のような講座診療科制をとらないので,その円滑な運営には工夫が必要である.以下に,筑波大学の新構想を体し,病院創設準備室が試案として作製した病院運営の大綱を記して,責の一端を果たしたいと思う.
 もっとも,現状では筑波大学は病院創設準備の段階であって,まだ病院として発足しているわけではない.したがって,大学としてauthorizeされた見解ではなく,準備室が検討している案という程度に理解していただければ幸いである.

金沢医科大学病院の設備と管理

著者: 吉田清三

ページ範囲:P.34 - P.38

はじめに
 学校法人金沢医科大学は昭和47年4月1日に設置され,その臨床教育の場である大学病院は昭和49年9月1日に開院した.ベッド数800,外来1日1,000人を予定した病院である.その目的とするところは,建学の綱領にうたってある倫理観に徹し,人間性豊かな良医を育てる臨床教育,研究の場であるばかりでなく,地域医療の中心機関としての機能を発揮することである.すなわち,流動する社会の変動,病院機構の反省,そして経営上の反省を踏まえて出発したのがわが大学病院である.
 発足してここに1年,それ相応に成果が上がっているが,補正,充実すべき点も多い.ここに,わが大学病院の設備,管理の実態の大略を述べてみたい.

卒後研修の革新に向けて

著者: 水野祥太郎

ページ範囲:P.39 - P.43

よみがえる悔恨の思い
 医学の卒後トレーニングの問題を取り上げるにあたって,はしなくも私の眼前に浮かびあがるかつての情景がある.10何年もの前であろうか.阪大医学部では,学生をまじえてのカリキュラム委員会がもたれていた.もろもろの医学教育の改革の試みは,欧米からの情報として,すでによく知られていた.私たちにもであるが,学生たちにもである.学生は,まともにこれを勉強してきていて,若さのほとばしるようなことばで,時としては語気するどくつめよってさえ来た.これに対して私たちの側にも相当の理解はしめされていたものの,足並の乱れは蔽うべくもなかったのはもちろんであるし,教務委員会として何らかの反応をしめしたところで,教授会までのぼらせていくには,その根まわし段階で頑とした壁にぶつかってしまう.いちばんかたい壁は,大阪市大時代に教育改革をめざして,同じく教務委員として働きかけたときにも経験したのと同じ基礎学科であった.
 卒後トレーニングは卒前教育とは表裏一体をなすものであって,このカリキュラム委員会の学生たちもしばしばこれに論及したことはいうまでもない.私はそれより先,1955年に医学生ゼミナールでイギリスの医学教育を例にあげて,日本の医学教育の体質が,特に卒後教育において前時代的であることをあげ,するどくその改革の急務であることを説いていた(「総合臨床」5:117,1956).

大学病院の看護を考える

著者: 大塚寛子

ページ範囲:P.44 - P.48

医療の矛盾が凝集した場で
 日本の大学病院の看護部門の抱えている問題は,日本の看護のみならず,医療の抱えている矛盾や問題の縮図だといっても過言ではないと思う.病める人の病気を治すということは大切なことであり,大学病院が人命尊重のためにその先端を行かなければならないタテマエは自明のことであるが,そのプロセスにおいて病める「人」が見失われる傾向がないとはいえない.
 大学病院に勤務していると,たえずその特殊性,すなわち医学の教育研究機関であることが力説され,看護部門に対しても全画的な協力が求められる.大学病院に勤める以上は,その社会的責任と使命について否定するものではなく,その達成のために医療チームの一員として支持協力しなければならないが,その場合に大切なことは,看護婦が自分の責任は一義的には患者に対してあるという姿勢を忘れてはならないことである.これは医師の権威を侵害することではなく,専門職を志向する看護婦が当然持っていなければならない自覚であると考えている.

東大病院の看護が抱える病根

著者: 古川みと江

ページ範囲:P.49 - P.51

大学病院の使命とは
 大学病院規則の目的には,「患者の診療を通じて医学の教育と研究を行なう施設とする」とうたわれている.看護婦募集の<しおり>には,「臨床医学の教育研究機関として,学生の教育ならびに臨床研究の場であるとともに,総合病院として広く一般社会に開放されている.また医療の進歩向上という大学病院の使命を全うする一翼をになっており,高度な看護技術を修得するには最適な職場である.」と呼びかけている.看護職員の<しおり>には,
(1)患者の診療と看護(2)公衆衛生活動(3)医師または歯科医師,看護婦その他医療従事者の教育訓練(4)医学医術の研究に寄与するとされており,大学病院としては教育と研究に大きな比重をかけている.

<てい談>

目ざめよ!大学病院

著者: 小林登 ,   笹本浩 ,   小酒井望

ページ範囲:P.17 - P.23

欧米の大学病院,日本の大学病院
 小林私は大学を出て,一番最初にアメリカにインターンとして行ったのです.いったん日本に3年ほど帰ってから,イギリスにもその後数年いる機会があった.欧米の医科大学の大学病院と,東京大学の付属病院を見ておりますと,本質的な違いを感ずるのです.その重要な要因のひとつは,大学病院の歴史じゃないかと思う.
 欧米の大学病院は,病院がまず先にあって,それに大学が加わったという形が少なくない.イギリスに至っては,全部そうだといっていいくらいです.新しい医科大学は別問題ですが.

グラフ

成人病専門病院に衣更えした—川崎市立井田病院

ページ範囲:P.9 - P.14

 このところ全国的に地域の中核病院の機能整備が行われているが,川崎市においても,ごく最近,2つの市立病院が地域の基幹病院としての整備を終え,新装再オープンした.川崎市立井田病院と川崎市立川崎病院である.そこで今月は規定病床数を従来の385から625床に増床し,成人病・慢性病の専門病院として再発足した川崎市立井田病院を紹介する.
 川崎といえば,すぐ工場地帯,公害のイメージが浮かぶ.しかし,この井川病院は,もともと結核病院としてスタートしているだけに中原区井田の緑に囲まれた閑静な高台にある.が,もちろん扱う患者は気管支ぜんそくなどの公害病患者も多い.

深い思索に裏づけられた行動の人—日本キリスト教海外医療協力会会長 野村実氏

著者: 佐藤智

ページ範囲:P.16 - P.16

 野村実先生のお人柄を一言でいうならば「思索的」と申し上げたい.私が先生から教えをうけて27年になるが,その間に先生が大声で話されるのをみたことはない.いつも静かに他人の話をきかれ,一語一語を吟味して語り出される.したがって「優しい」方である一面には「こわい」「厳しい」方であると感じられる.少なくともご自身には厳しい方だ.
 内村鑑三先生の影響をうけたクリスチャンで,A.シュバイツァー博士に私淑され,その著書をたくさん出されたが.自らアフリカへ渡り博士のもとで働かれた.

ホスピタル・トピックス ME

医用機器問題懇談会の発足

著者: 郡司篤晃

ページ範囲:P.33 - P.33

 近年,医学および関連領域における科学技術の進歩は極めて急速であり,多くのすぐれた医用機器が研究開発されてきた.これらの機器は,たとえば人工腎臓のように,いろいろな意味で,医療全体に対して大きなインパクトを与えることになろう.
 医療全体が,これらのイノベーションに適応し,さらにそれを望ましい方向へ導くためには,技術開発,普及,維持と一貫したシステムが必要であると考えられる.

麻酔

手術室における微量麻酔ガス吸入の影響とその対策

著者: 岩月賢一

ページ範囲:P.38 - P.38

 吸入麻酔にさいしては,余剰の麻酔ガスが麻酔器から手術室内に出されるために,手術室勤務者は微量ではあるが長期間麻酔ガスを吸入することになり,これが健康にどのような影響を与えるかが,最近注目されている.アメリカ麻酔学会が手術室で働く麻酔科医,看護婦,技術員約5万人と,麻酔ガスに接したことのない医師,看護婦約2万4千人を対象としたアンケートの調査結果から,手術室勤務者には流産,奇形児出産,腫瘍,肝疾患の発生頻度が高いと報告してから1),この問題に対する関心が急に高まってきた.
 この報告から,これらの障害が麻酔ガス吸入の直接の結果であると即断することはできないが,実際問題としては早急に対策を講じる必要がある.対策としては余剰の麻酔ガスを排除して,手術室勤務者がこれを吸入することを防ぐことであり,そのための装置として今日種々のものが市販されているが,これを大別すると次の三種になる.

看護

小児科,産婦人科病棟の工夫と看護組織の動き—岡山大学病院

著者: 阿部寿満子

ページ範囲:P.48 - P.48

 岡山大学医学部付属病院では,かねて建設中であった中央診療棟および小児科,産婦人科病棟がこのほど完成し,竣工式が行われた.これらの施設の中で,特に,看護婦の立場から要望し,設置されたものについて,いくつかをお知らせしよう.また,中央診療棟新設に伴い,看護部の組織を一部改正したので,これらの点についてもお知らせしたい.

放射線

X線診断の新兵器E.M.I.スキャナー

著者: 中村実

ページ範囲:P.51 - P.51

 X線診断の話題としてE.M.I.スキャナーX線診断装置がある.英国E.M.I.社というと医療界では耳慣れない会社である.レコード,テープ,電子工学用品の製造が主であるが,ここの中央研究所が開発した,脳疾患診断システムとしてデビューし,X線の発見以来,最も独創的な放射線装置と評価されている.わが国にも今年の7月,東京女子医大脳神経センター放射線科に入った.51年度は国立大学12病院の放射線科にも設置されることになっているようである.
 特殊なX線装置と高度なデータ処理を行うコンピュータを組み合わせて,人体を透過したX線吸収差によって得られる画像情報を,臨床上有用な形で表現するもの.X線と反応検知器を使い,頭部内を診断するこのX線検知器は多方面のX線伝動示数を示し,高性能ミニコンピュータの助けで,頭部内の水平断層写真を示す絵に変って出される.結果は陰極線チューブ,スクリーンに個々の撮影個所が80×80cmで写し出されるか,個々の個所のX線吸収値が数字で出される.これにより障害個所および性質が判明する.

病院紹介

「総合」の中の「専門」に活路を拓く—〈座談会〉京都・桂病院の医療

著者: 山下政行 ,   緒方豊 ,   八木信三 ,   若林陽夫 ,   中山弘 ,   船津武志 ,   今井幸雄 ,   後宮文子 ,   吉村勝美 ,   森日出男

ページ範囲:P.53 - P.61

 京都西山の麓,豊富な緑と澄みわたる大気の中に桂病院はある.昭和12年,34床で出発した結核療養所松尾病院こそ,桂病院の遠い源であるが,以来大戦をはさんで名称・規模ともに変遷を繰り返した.この間,外科を主として肺結核治療にはなばなしい成績をあげたが,さらに診療科を拡大,昭和39年「総合病院・京都桂病院」となったのである.
 呼吸器(主として結核)専門として名声を馳せた同病院が総合病院となったのは,時代の必然といえよう.だが,結核の減少と肺がん,慢性気管支炎などの増加は呼吸器疾患の診療を複雑化させ,これへの対応を急きょ迫られたことも,また時代が強いたことであった.桂病院はここに勇断をもって「呼吸器総合病棟」を新設,内科,外科の専門医が共同で治療にあたるユニークな呼吸器病センターとして注目を集めている.「総合病院」か「専門病院」か,という論議がかまびすしい今日,桂病院の医療は,二者の止揚をめざすものとして見守っていく必要がある.

私的病院運営のポイント・1

少数精鋭主義による診療機構の合理化(1)

著者: 高山瑩

ページ範囲:P.62 - P.64

連載にあたって
 医療法人病院や個人病院など,いわゆる私的病院は,国公立などの大病院とはまた違った問題を抱えている.そこで特に本欄を設け,「これだけは知っていると便利」「こんなアイデアが役に立つ」など,運営のポイントを,さまざまなテーマのもとに紹介していこう.

一頁評論

老人福祉について思う

著者: 中島さつき

ページ範囲:P.65 - P.65

 いままでの社会は老人に対し冷淡であった.年をとるということは,醜くなる,使いものにならなくなる,老いの坂道を下りつつあることである.やがて土に帰っていく日もそう遠くない人間に,医療やリハビリテーションといってみたところで無駄である,といった考え方が強かった.直接生産に寄与せず,消費するだけの老人に対する施策や施設などは,必要ないと放置されていた.
 しかし,20世紀後半は宇宙時代と老人時代であるといわれるようになり,日本においても老人問題が大きく注目されるようになってきた.医学の進歩や生活の向上で死亡率が低下して寿命がのび,老人が増加し,出生率の低下により,老人人口の占める率が高くなった.昭和49年度簡易生命表によると,日本人の平均寿命(零歳時の平均寿命)は,男71.2年,女76.3年となった.今世紀の終りごろには,5人に1人は老人という事態になる.

精神障害者の自殺と暴力行為

著者: 西堀恭治

ページ範囲:P.80 - P.80

 何日かに1度は,必ずといってよいほど自殺の新聞記事が見られ,時にそれは傷ましい無理心中の形をとる.もっともらしい理由のついていることも多いが,一昔前までは神経衰弱,最近ではノイローゼ,というように,精神障害が原因にされていることも間々見られる.
 他方では,殺人などの暴力犯罪が精神障害のせいにされることも多い.特に,動機が不明で世間の耳目をひくような形の場合には,犯人が誰とも分らぬうちから,やったのは変質者だという記事になる.最近はさすがに変質者という言葉はあまり見かけないが,かつては,かかる犯罪は変質者の仕業に相違なく,変質者はすべからく離れ小島に隔離せよ,と叫ぶ有名人もいた.今でこそ新聞は,「精神医療の問題」などと,精神障害者の側に立つかのように振舞っているが,「精神病者の野放し」などと煽情的に書き立てていたのも同じ新聞だったから,真の理解に立ってというよりは,時流に乗っているだけ,というのが真相であろう.

イギリス精神医療の旅・1

4半世紀のNHS

著者: 金子嗣郎

ページ範囲:P.66 - P.67

 福祉国家の先達,医療制度の模範NHS,わが国医療の改革が迫られるとき依然として範をあおぐイギリスは,また反精神医学運動の舞台でもある.一昨年夏から秋にかけて,東京都の海外研修員としてこの国を訪れた金子氏は,公立精神病院の管理運営を研究テーマに各地を歩き実情を視察した.彼我の精神風土の隔りを見つめつつ,何を見,何を学ぶべきかを1年にわたって語っていただこう.

院内管理のレベル・アップ リハビリ リハビリテーション部門の管理・1

リハビリテーション部門の管理の問題点

著者: 上田敏

ページ範囲:P.68 - P.69

 リハビリテーション部門の管理を論ずることは難しい.その難しさにはいろいろな原因があるが,基本的には,わが国でのリハビリテーションの歴史が浅く,種々の点で未成熟で,過渡期的な性格を脱し切っていないことにあるように思われる.
 ひと口にリハビリテーションといっても,所により場により,その姿も内容もまちまちであって,「これが典型的なリハビリテーションのあり方だ」といってよいものがあまりないことと,「リハビリテーション部門」の含む範囲についての理解もまちまちであること,その他いろいろの問題がまだ流動的で,試行錯誤の段階にあるものも少なくない.したがって,その管理ということも,まだ試論的あるいは経験発表的にしか論じられない点が多いのである.ここではできるだけ問題を整理する方向で,いくつかの問題点を検討してみたい.

検査 検査部門の管理・1

検査室の人員構成をどうするか

著者: 富田仁

ページ範囲:P.70 - P.71

まえがき
 本邦に中央検査室制度が設けられるようになって約20年が経過した.20年と言えばもはや成人で,身心共に成長して固まってくる年齢であるが,検査室はどのようなものが最も理想的であるのか,どのようにあらねばならないのか一定せず,未だに流動的である.ここに検査室の人員構成をどうするのか,その原則さえも明らかでないので,若干の私見を述べよう.

薬剤 薬剤管理・1

薬剤管理概論

著者: 岩崎由雄

ページ範囲:P.72 - P.73

はじめに
 薬剤管理について,本稿より連載することにする.病院という医療の場で実際に医薬品を取り扱い,かつ調製している立場と,いわゆる薬剤管理学としての理論と応用の場から考えてみたい.薬剤管理学という学問的体系化は,なされていないといった方が正しいと思う.むしろ薬剤管理論といった方が妥当かもしれない.学問的には病院管理学1-3),そして薬剤の立場では病院薬局管理学(病院薬局学)の提唱もある4).しかし本稿では,理論の部詳細は紙面の都合で割愛させていただき,応用の部,換言すれば実際面を中心に論を進めたいと思う.
 ただ注意しなければならないのは,大病院と小病院では「薬剤」そのものに対する基本的フィロソフィは同じであっても,具体的な面では相当方法論的に違うものがある.○○大学病院のミニチュアが××病院,△△診療所というわけにはいかない(何もこれは薬剤に限ったことではない).

給食 病院給食をおいしくするポイント・1

なぜ「まずい」のか

著者: 最勝寺重芳

ページ範囲:P.74 - P.75

はじめに
 病院給食が「まずいもの」として批判の対象に取り上げられ,その代名詞にさえなっていることは,少なくともこの職にある者にとって反省はするものの,決して快いものではない.
 例の冷凍医療食が日本の病院給食をおいしくしようとしたエネルギーを=方法論において反対した立場から,あるいは同時に,病院とは何か,医療とは何か,まして食事療法の本質論を改めて考え直す機会を与えられたことも含めて現実の姿からその不評の要因を明らかにし,おいしい病院給食が1日でも早くすべての患者さんに与えられることを期待するものである.しかしながら,その後の病院給食に対する栄養士の取組み方に変化はみられたものの,結局は病院長,事務長の裁断と,その組織上の責任者,調理員の方がた,さらに看護部門の多くの人たちのかかわりがあるだけに,その協力体制ができあがらなければ成功とは言えないことを前置きしておく.

労務 労務担当15年の記録から・7

天神さん詣りの反省

著者: 藤田栄隆

ページ範囲:P.76 - P.77

 昭和35年から昭和49年までの15年間に,一時金(ボーナス)交渉で地方労働委員会のご厄介になったことが7回あった.
 前後30回のボーナス交渉のうちの7回だから,やはり,自主解決の方が圧倒的に多い.それがまた当然なのであって,労使交渉というものは,あくまでも自主的に解決するのがオーソドックスな行き方だと思う.しかし,そうだからといって,絶対に人さまのご厄介にならずに済ませるというわけにもゆかないことがある.交渉がこじれ,デッド・ロックに乗り上げて,動きがとれなくなるようなことにでもなれば,やはり,「時の氏神」にご出馬願わなければならないことだってある.

病院図書館

—水野 肇 著—「世界に誇る一流病院①」/—中村 実 著—「見えない光線」

著者: 嶋田和正

ページ範囲:P.78 - P.79

病院を舞台に医療の根本問題を指摘医師でない強み
 著者水野肇氏が,医事評論家として長年にわたり医事全般について,適確,公正な評論に健筆をふるっておられることは,ひろく知られているとおりである.私も医事各方面に浅からぬ関心を有しているものの,医師であるため特定の分野にのめりこみすぎて,医学的事象の考察にあたって全体を見渡せない制約を感ずる.これに対して水野氏は,医師でないことでかえって医事の全体をとらわれない眼で眺望することができ,その本質を洞察し発表していくことが可能となるのであろう.その強みが,本書においてもよく表われているといえよう.
 本書は,わが国におけるいろいろの意味において一流と目される病院を,具体的に紹介,解説したものである.「医学の本質を示す」国立東京第一病院にはじまり,「本格的な老人医療をめざす」東京都立養育院付属病院に終る20の病院を取り上げている.その内訳は国立1,地方自治体立7,職域病院3,医療法人,私立など9である.

医療と福祉・1 植物人間

医師として,院長として/MSWの立場から

著者: 丹野三男

ページ範囲:P.81 - P.85

意識回復のないまま,高度の医療機器や,医療従事者・家族の努力に支えられてかろうじて生き続ける「植物人間」.医学が進歩し,医師が治療に力を注げば患者は延命するが,それが患者家族の負担を大きくし生活破壊も招きかねないという悲劇.「植物人間」を31名もかかえてきた仙台市立病院での現場の苦悩の声は,医学の論理,医療の倫理の根本的反省を迫る……

レセプトを読む・1

解読の手引き(1)

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.86 - P.87

連載にあたって
 レセプトの作成は,大変手間のかかる仕事である.病院の医事担当者の苦労は並大ていのものではない.請求事務の合理化や,請求もれを防ぐ工夫については,どの病院でも努力していることと思われるが,この企画は,レセプトをそれとは全く別の角度からみてみよう,というわけである.
 レセプトには,一定期間のうちにその病院が行った医療行為の詳細が記載される.だから逆に,レセプトを解読すれば,その病院の医療の構造がわかるといえる.したがって,レセプトの分析は明日のよりよき病院管理のための指標ともなろう.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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