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雑誌目次

雑誌文献

病院35巻3号

1976年03月発行

雑誌目次

特集 過疎地域の医療

過疎地域の医療対策を考える

著者: 柳沢利喜雄

ページ範囲:P.17 - P.20

過疎地域保健医療の現状
 問題の解決には,まず問題の現状を知る必要がある.そこで最近の「国民衛生の動向」(厚生省,昭和50年)から2,3の過疎地域保健医療の事実を検討してみる.

過疎地医療における保健婦のもつ可能性

著者: 上村聖恵

ページ範囲:P.36 - P.40

 地域社会の急激な変動のなかで,過疎地域における無医地区の問題が,クローズアップされてから数年になる.とくにへき地や離島における医療の問題は深刻である.
 こうしたなかで,保健所再編成が提示され,へき地保健婦や駐在保健婦問題が論議されている.しかし,過疎地域の人びとにとっては問題点のみを,どのように論議されても,それが具体的な健康支援や,医療の確保につながらなければ,関係のない論議である.

ソビエト連邦の農村・辺地医療

著者: 橋本正己

ページ範囲:P.41 - P.44

 ソ連の保健システムhealth systemについて国際的な関心が寄せられ,情報が豊富になったのは,第2次大戦後のことである.特に1960年前後からWHOの旅行セミナーによって,この領域の各国の専門家がソ連を訪問する機会が増大し,これらが契機となってWHOにより多くの刊行物が出されたことが,この時期における急激な社会変動の進行と関連して,いっそう各国の関心を深めているといえる.
 筆者に与えられた主題は,特集「過疎地域の医療と病院」の1部としての「ソ連の過疎地帯における医療」ということであるが,最初に若干の点についてご理解を得ておきたい.まず,過疎地帯ないしはremote placeという概念は,いずれも相対的なものであり,背景となる国あるいは地域の条件によって一律に論じられないことは明らかである.辺地・へき地の医療は,各国の切実な今日的課題であるが,国際的な場で日本の実情を紹介した場合,それがきわめて日本的なものであることを思い知らされた経験は,決して筆者だけのものではないだろう.ソ連との対比においては特にこの点が重要である.次に,ソ連の保健システムの最大の特色は,文字どおり健康増進からリハビリテイションまでを包括する国家システムstate systemが形成されていることである.

過疎地医療の試み

豪雪地域の医療—新潟・津川病院の遠隔診療

著者: 鈴木寛

ページ範囲:P.21 - P.25

 現在のわが国は各種医療保険制度の整備や,公費負担制度の拡大により経済面では医療が受けやすくなり,他面公衆衛生の向上や医学の進歩により,死亡は激減し戦後短期間に世界第2位の長寿国になった.この意味では現在の医療保険制度や医療は高く評価されるべきであろう.しかし現実には「いつでも,どこでも」十分納得のいく医療を受けたいと思う国民の基本的権利や素朴な願いは守られず,医療や医師に対する不満は日ごとに増大しているの感がある.
 医療需要は年々増大しているに反して,医療の供給は過疎地では経営や生活に対する不安から医師の定着が難しく,最低の医療すら受け難い地域が全国的に増大している.都市部でも医師や医療従事者の意識の変化による労働時間の制限により,休日,夜間診療はもちろん救急医療は完全には実施されず,ますます国民の医療不信を招いている.

離島の医療対策—国立長崎中央病院

著者: 川嶋望

ページ範囲:P.26 - P.30

 長崎県には東支那海に面した五島列島や朝鮮海峡に接した対馬を含め,東西213km,南北307kmの広い海域に大小570余の離島が散在し,うち84の島々に県人口の20%に相当する約30万の住民が生活している.島の地勢や規模がさまざまであることは表1にも示したごとくであり,面積の大きい本島を中心に数島ないし十数の島が散在して離島群を形成している.したがって医師の絶対数不足に地勢や海域を合わせて考えると医師分布は極めて少なく,離島群における医療過疎の現況が想像されよう.
 離島の医療対策といえば,一般には点在する小離島を対象に医師や保健婦が巡回船で診療することが想像されようが,長崎県が難渋している離島の医療問題は,離島住民の健康管理をいかにするかということと共に,離島群の中でも中心となる本島に医師を定着させ,専門科を含めた総合医療が離島群の中で行えるようにすることである.

富山県の過疎地医療—富山県立中央病院

著者: 中瀬真一

ページ範囲:P.31 - P.33

 過疎地医療の危機が叫ばれてからすでに久しい.しかし多くの先人の善意と努力にもかかわらず,今日なお満足すべき解決が得られていない.福祉国家における医療の目標は「だれでもどこでも安心して受けられる医療」でなければならない.過疎地医療のさらに強力な対策が望まれる.
 私は富山県における現在の過疎地医療の実態をもとに,その問題と今後の対策について検討してみたい.

高知県の保健医療—高知・宿毛病院の巡回診療

著者: 大山純夫

ページ範囲:P.34 - P.35

 高知県立宿毛病院は高知県の西部の3市町村,宿毛市,大月町,三原村を診療圏としており,この地域を幡多郡の西部といい,略して幡西地域とよんでいる,この地域の面積は487km2,人口37,500人である.

グラフ

都心に栄える新しい形態の外来総合病院—豊島ハイツ・グループ・クリニックおよび東十条グループ・クリニック

ページ範囲:P.9 - P.14

 医療の高度化・専門分化と医療需要の増大は,今後さまざまな形で,従来の病院や診療所の形態を変えていくことが予想される.欧米の例として,開業医が集まって病院を作る例やチェーンストア式の病院の出現の例など,すでに本誌でも紹介したことがある.わが国でも開業医や勤務医が集ってグループ・クリニックを開設する例が,ここ数年来散見されるが,必ずしも,うまくいっていない例が多いと聞く.その点,ここに紹介する豊島ハイツ・グループ・クリニックおよび東十条グループ・クリニック(両者は同一系列)は,他の大病院や診療所がもつ欠陥を補って,きわめてユニークな運営を誇っている数少ない例として注目に価しよう.

この超人的なエネルギーはどこから—聖マリア病院長 井手一郎氏

著者: 赤星一郎

ページ範囲:P.16 - P.16

 夜ひる問わず,年間4,092名救急搬入,救急手術330の救急医療センター,同様,未熟児556,危急新生児517,年間計1,073名収容の新生児センター.
 高危険度手術とICU的集中透析,自己管理・家庭管理など腎不全治療システムの中心施設たるべき腎センターの増築,3月完成,在来の外来透析と併せて56床.今や腎移植を志向した第一歩をふみ出した.

ホスピタル・トピックス 給食

病院給食のトピックス

著者: 松本敦子

ページ範囲:P.33 - P.33

 成人病を予防するにあたっては,食事が大きな役割をしめることが多い.従来は主に病気になってからの,治療としての食事療法が中心であったが,成人病においては,病気にならぬように,日頃から予防することが,最も大切と考えられる.
 最近は老年者の延命とともに,慢性疾患の患者が多くなってきている.退院した患者が入院中と同じように,食事療法を行いながら社会復帰して行くことが多い.そして外来を訪れる患者の検査で,好ましくない結果が多いのが実状である.これらの患者は,病気に対する自覚や意志の強さを必要とするが,それ以上にたいせつなことは,指導する栄養士が,患者側にたっての相談がなされることではなかろうか.これまでの経験を通じて感ずることは,①老年者における理解力の低下,②女性の場合,数値にとらわれやすいのに,その理解力が弱い.③栄養士が自分のペースで正確な数値を求めようとする傾向が強い.④食事指導のパンフレット,リーフレットなど,患者側の実際面にたったものが少ないなどがある.従来はとかく患者側にたつことが,少なかったように考えられる.

ハウスキーピング

問題の多い病院ハウスキーピングの現状

著者: 寺本千枝

ページ範囲:P.40 - P.40

 病院環境の重要性は,今までにもよく云々されてはいたが,その割には配慮が少なく,むくわれてない.その地味な裏方の業務が,病院ハウスキーピングである.社会の成長テンポとともに,病院の近代化も急速に進み,建物,諸設備は高度のものがつぎつぎに装備され,病院機能の専門分化はますます多くの職能群を生み,表面的には見違えるほど立派になって来た.しかし,それに比してハウスキーピングの面は,アンバランスである.マンネリ化した人手不足,老齢化もさることながら,新しい建物の管理には,より専門的知識と技術が必要になり,作業も難しくなってバイタリティーある年齢の人が要求されてきている.また好むと好まざるとにかかわらず,管理上専門業者の導入を余儀なくされているが,職員組合,予算面の厳しさもあって,満足すべき導入は行われておらず,それだけにいろいろな問題を含んでいる.
 塵芥の処理については,集積方法,焼却にしても一般社会同様の問題を提起しており,病院なるが故に,より厳しい批判も受けるし,また,その覚悟で対処しなければならない.衣料の面でも次々に開発される新しい化学繊維が,寝具類,リネン,被服,医療資材にまで浸透し,品質管理の面にも運用面にも難しさを加えている.

建築

東洋医学総合研究所

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.64 - P.64

 明治8年,医師の資格試験が西洋医学によって行われるように決まってから,長い間日本の医療を支えてきた中国系の医学は日陰もの扱いになってしまった.それがここ数年来,改めて漢方を見直そうとする気運がにわかに高まり,一部では秘かなブームをさえ呼んでいる.漢方には確かに西洋医学の盲点を補う優れた面があることは大方の認めるところであるが,他方,必ずしも分析的な手法に乗らない,いわばベールに包まれた部分があることも事実である.
 この東洋医学を組織的な研究の軌道に乗せた上で,必要とあらば随時西洋医学との比較検討も行っていこうという趣旨で設立されたのが東洋医学総合研究所である.場所としては北里研究所の構内で付属病院に隣接する位置が選ばれた.

レセプトを読む・3

解読の手引き(3)

著者: 尾口平吉

ページ範囲:P.45 - P.48

2.診療行為別分析
 2.1収益管理・資材管理のための診療行為別統計の作成および活用(この項前号よりつづく)
 3)注射料 注射料収入は投薬収入についで病院収益に占める比率は高く,甲表では9.5%,乙表では14.4%(昭和49年社会医療調査)となっている.注射料収入は甲,乙両表の差異,採算性,採算性の病院格差と病院採算管理に及ぼす影響度等は投薬収入によく似ている.ただ投薬料と異なり,患者1人1日あたり点数は患者の出面数に対応するもので,外来投薬のように出面数に対し,投与日数が2以上になることはない.

一頁評論

巨大病院社会の中の無医・無看護地区—あらためて「病者のための人権宣言」を思いおこして

著者: 高橋孝文

ページ範囲:P.49 - P.49

 ユーモラスで,しかも鋭い評論で茶の間の主婦たちに人気の高かった医事評論家の石垣純二さんが1月30日に腎不全で亡くなられた.昨秋,私の友人の結婚式の仲人をされた時,私は親しくお目にかかる機会を得て,「うれしいことです.あなたはわが党の士です.心身障害児のために存分にご活躍下さい」との励ましを頂いたことは,私の脳裡に深く刻み込まれるものとなった.披露宴(カクテル・パーティー)で,杖を手にして立たれスピーチをされたあとは,終始椅子にかけたまま,参会者と楽しげに話を交しておられたが,今にして思えば,その時,石垣さんは病の小康をおして媒酌の労をとっておられたのだろうか.心からご冥福をお祈り申し上げたい.
 医学や医療福祉の世界は,本来,病人をいやし,救うための重責を担っている.それにもかかわらず,患者の扱いの上では,人権にかかわる社会問題として取りざたされる報道があとを絶たない.医療保護下における患者の人権が問われた朝日訴訟もそうであったが,水俣病,サリドマイド訴訟や,最近の大腿四頭筋拘縮症の多発,各地に起こった救急患者タライ回し死亡事件など,それぞれにさまざまな社会的センセーションを巻き起こしている.

院内管理のレベル・アップ 労務 労務担当15年の記録から・9

「労務管理」と「労組対策」

著者: 藤田栄隆

ページ範囲:P.50 - P.51

 「労務管理」というと,すぐ「労組対策」ととる人が意外に多い.特に年中行事のようにスケジュール闘争を繰り返している,わが大阪赤十字病院のようなところでは,ついその方の対策に追われて,まともな「労務管理」に手をつけるいとまもないというのが,偽らざる実態であろう.
 しかし,これは実に情ない悪循環であり,救いがたい「いたちごっこ」ではないかと思う.だが残念ながら15年もかけて,結局はこの悪循環を断ち切ることはできなかった.

給食 給食をおいしくするポイント・2

給食の基本的考え方とイメージ・チェンジ

著者: 最勝寺重芳

ページ範囲:P.52 - P.53

 前回,「まずい病院給食」の原因や,批判の対象となっている項目を列挙し,その改善策や,組織機構上からくる基本的な壁などについてふれてみた.病院給食の良否が,単に献立内容やサービスの問題だけでなく,解決するには多くの要素,すなわち病院給食をどう考えているかについての討議や研究が甘く,単に大衆的集団給食か町の食堂と同一視したような目で考えられては困る,ということをはじめに強調して筆をすすめたい.

精神病院 精神病院管理の諸問題・1

精神病院の労働問題(1)

著者: 岩佐金次郎

ページ範囲:P.54 - P.55

 私立病院が多く,病床数から言えば中規模病院以下が多いこと,労働組合結成率は病院規模が大きくなるほど高い(病院の組合結成率平均約22%)などからみれば,精神病院に特有な労働問題は見当らないかにみえる.
 精神病院に特有な労働問題があるとすれば,一般病院にはほとんどいない,男子看護者にかかわる事柄くらいであるから,特に採りあげる必要はないようであるが,組合がある場合,その委員長,副委員長と書記長(いわゆる組合3役)は男子看護者が占めていることが多い(大部分の一般病院では,エックス線技師,薬剤師,検査技師や事務系職員がこれらの地位を占めている)ことを思うと,精神病院の労働問題には,それなりの特徴があるとも言えるだろう.

放射線 放射線管理の問題点・2

放射線科における人間関係—技師の立場から

著者: 大谷英尚

ページ範囲:P.56 - P.57

 人間関係という言葉は,社会学などにおいて専門的な意味で使われるだけでなく,日常の社会生活においてもごく普通に使われるものである.たとえば,家庭においても夫と妻,親と子,兄と弟などの人間関係があるし,店に買物に行けば,店員との間に人間関係ができて,サービスの良し悪しが問題となる.これらは等しく人間関係とよばれるが,それぞれ違った状況のもとで発生している.
 ここでは,一定の職場組織—放射線科—の中で,その組織を構成して,それぞれ専門の職務を担当している人々の間に形成され,かなり長期間にわたって継続する人間関係について考えてみたい.

検査 検査部門の管理・2

検査スタッフの教育

著者: 小林種一

ページ範囲:P.58 - P.59

 法律で定められている臨床検査技師の業務は,微生物学,血清学,血液学,病理学,寄生虫学,生化学,生理学の部門の諸検査である.この広範な検査技術は3年間の技師学校教育でマスターできるものではない.また近年臨床検査技術の発展がめざましく,検査法の自動化,機械化がすすみ,新しい検査法の開発や検査法の改良などが日々行われている.学校を出て間もない新人技師はもちろん,古くからいる技師についてもその実状に合ったtrainingが必要である.講習会,研修会による計画的な教育もあるが,職場において日常業務にたずさわりながら,専門技術を習得することも職場教育の見地から考えてみたい.

イギリス精神医療の旅・3

NHSの再編成

著者: 金子嗣郎

ページ範囲:P.60 - P.61

 さてここで,1974年のNational Health Serviceのreorganizationの要点を述べておこう.

病院図書館

—William A.Nolen 著 横山 邦幸 訳—「外科医の誕生」/—近藤 廉治 著—「開放病棟」

著者: 植村研一

ページ範囲:P.62 - P.63

人格豊かな外科医が育つまでの過程描く
医師としての人間性の育成を重視
 この本は,米国外科学会の特別会員であり,ミーカー・カウンティー病院の外科主任である著者が,かつてタフト医科大学を卒業して,ニューヨーク市立ベルビュウ病院で1年間のインターンと4年間の外科のレジデントの卒後教育を受けて,一人前の外科医に育った過程が詳しく説明されている.それは,単に外科医に必要な診療技術の修得の過程の説明ではない.患者の心理や社会的境遇,看護婦の心理や立場,他の医師との協調精神,医療制度や病院の運営方針,といったものすべてを配慮しつつ,一人一人の患者に外科医として最も適切な判断を下し,最も適切な処置ができる「人格豊かな外科医」が誕生していく過程が,彼の実際の体験を通してありありと描き出され,読む人の心を打つところに本書の真価がある.
 医学部を卒業し医師免許を受けたばかりの「医師」が,患者にとって危険極まりない存在であることは世界共通の事実であり,何科を専攻しようと,立派な臨床医になるためには優れた卒後臨床修練が必要である.日本では多くの場合,大学病院の医局に入局しそこで数年間を過ごすことにより「卒後教育」を受けたことになるが,少数の例外を除き,修練期間,修練内容,修練方法,評価方法を明記したカリキュラムが存在するわけではなく,いつとはなしに診療技術が伝授されている.

病院建築・81

農協共済別府リハビリテーション・センター

著者: 吉田あこ

ページ範囲:P.65 - P.68

 この別府リハビリ・センターは,別府市の中心地から北東へ3キロほど離れた通称「やまなみハイウエー」沿いの名所,海地獄に隣接し,標高800メートルの扇山を背に別府湾を展望できる,温泉に恵まれた景勝地に建てられた.敷地総面積28万平方メートル,このたび建てられた施設の使用面積は,本館,エネルギープラント,職員宿舎,道路,造園など含め57,500平方メートルである.
 リハビリ施設の立地条件は,まず環境が重要視されるが,ここは恵まれた自然環境を生かしながら自然の傾斜地をそのまま活用し,環境の調和と眺望をマッチさせることに意を払った.それは,傷つけられた心に明るさを取り戻すために特に必要だからである.

病院と研修

内科医を育てる—内科医がみた京都市立病院内科10年の歩み

著者: 高木誠

ページ範囲:P.69 - P.73

 毎年秋に発表される内科専門医合格者の所属病院をみると,必ず京都市立病院の名が目につく.ここでは,どのような内科医創りが行われているのであろうか.

対談

医療事故・防止の論理

著者: 日比逸郎 ,   川島みどり

ページ範囲:P.74 - P.79

 医療事故は,しばしばショッキングな話題となって社会を揺るがせる.これをいかにして未然に防止するかは,医療従事者にとって,おそらく今後の最も重大な課題に思える.科学技術としての医学が,その存在根拠を問われる場だからである.

医療と福祉・3 順天堂大学眼科リハビリテーション・クリニック

リハ・クリ12年のあゆみ

著者: 赤松恒彦

ページ範囲:P.80 - P.85

 能に登場する「盲」は悲劇のまさに典型である,「盲」それ自体はひとつのハンディキャップに過ぎないのに.だが光を失うということは,その時死をも選びかねないほどの悲劇であるかもしれない.だから失明宣告の場に立ち会うことは厳しく辛く,逃げ出したくなるのも無理はない.失明というひとつの「悲劇」を死というとりかえしのつかない「喜劇」に終わらせないために,この厳しい場に身をおいていった人たちの心の中に宿るものを,「愛」と呼んでもいいのではなかろうか.

「視力なき健常者」への道

著者: 松井新二郎

ページ範囲:P.86 - P.88

ご自身も中途失明者ですね
 日華事変の徐州作戦で失明しました.直ちに東京の第一陸軍病院・戦盲病棟に送り込まれました.
 そこには,各地の戦場で傷ついた兵隊が収容され,一応当時の第1級医療を受けていましたが,目が見えるようになって原隊に復帰していった人はあったにありません.傷痍軍人をだいじにするのは当時の国策として当然だったわけで,オーバーサービスとも思えるほどの手厚い看護を受けていました.ところが医師は失明宣告をほとんどしませんので,患者たちは治療への夢や期待を持ち続ける.そして,ひとつ治療を受けるたびに絶望を重ねていくのですが,光への望みはついに絶てないんです.

私的病院運営のポイント

少数精鋭主義による診療機構の合理化〔3〕

著者: 高山瑩

ページ範囲:P.89 - P.91

 外来,病棟,手術室の合理化と標準化について前回述べたが,何を実行するにも,各主任クラスから最高責任者である院長に至るまで,新しい機構と標準化による合理化の姿勢を根深く押し出さなければ,何事も解決できるものではない.最も重責にある院長にポイントのずれがあるとすれば,改善への道は不可能と言わざるをえない.また逆に無能な管理職の集団があったとすれば,いかに院長が努力しても全く空回りをするのみで何の役にも立たない.病院には,しばしばこの両面の姿がありがちなのは残念である.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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