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—水野 肇 著—「現代医療の危機」/—E.ピュツェップ 著—「手術センターの計画」
著者: 二木立1
所属機関: 1代々木病院内科
ページ範囲:P.62 - P.63
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医療危機が叫ばれて久しい.今やその解決の方法が求あられ,さまざまなアプローチがなされている.その一つに,外国の医療と対比させながら,わが国の医療をみつめる方法がある.本書は,新聞記者出身で最近,政府の各種審議会に学識者として参加している著者が,昨年のヨーロッパへの医療事情取材旅行をもとにして,わが国の医療の問題点,あり方を論じたものである.
一読しての魅力は,ヨーロッパ医療の新鮮な情報である.特に,イギリスとスウェーデンについて詳しい.イギリスのNHSのゆきづまりは,昨年末の医師の時間外拒否闘争によって,わが国でもかなり知られるようになった.NHSのアキレス腱はプライベート診療であり,このままではそれが幅を広げ,それに伴って民間保険が極度に発達するというアメリカ型に移行するかもしれない.それはNHSの敗北を意味する.そのため,政府はファミリー・ドクターを中核としたNHSの原則を守るため,国民に税金をもっと納めるよう呼びかけている.他方,スウェーデンは,総合病院を中核としたシステム化を着々と進めており,「健康管理からリハビリテーションへの一貫体制」という現代の医療の理想の年次的プランを示す唯一の国となっている.反面,官僚化,施設に金がかかりすぎている傾向もみられる.
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