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雑誌目次

雑誌文献

病院35巻7号

1976年07月発行

雑誌目次

特集 格差の広がる病院経営

医療費改定と今後の課題

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.17 - P.21

 本年4月1日の社会保険診療報酬の改定に当っては,厚生省の説明では病院が10.0%,一般診療所が8.1%,総枠では9.0%の引上げになるということである.そして支払側がのむ根拠をなした公私病院連盟のあてはめ計算では,病院は13%上がるということであった.
 しかし,改定後,間もなく,一部の病院では8%程度とか,それよりも下回りそうだという声が出始めた.

病院経営における格差発生原因と対応策

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.22 - P.27

 昭和40年代は変化の時代であった.その変化は極めて急速でかつ激しいものであったから,あるいは激動の時代と言ったほうがふさわしいかもしれない.
 生物でも社会的存在体でも,環境条件に変化が起れば,それによりどうしても変容を受けざるをえない.その変容の仕方は,それぞれの備える特性によって異なるので,そこに多様化が生まれる.変化が激しければ,多様化もいっそう促進される.昭和40年代はまた,あらゆる面で,かつて見たこともないような多様化が進められた時代でもあった.

緊急レポート医療費改定とその効果の試算

効果あった入院料改定—鳥取市立病院

著者: 坂本昌士

ページ範囲:P.28 - P.29

散々もめた末に,歯科を除いた医療費の改定が,4月1日より実施された,一昨年の10月より約1年半ぶりである.多くの病院にとって,この改定にはまだまだ不満も多いであろうが,とり急ぎその効果の試算をしていただいた.どの程度病診格差が是正されるかどうか……

破綻寸前立ち直った病院—兵庫県・湊川病院

著者: 山口敏夫

ページ範囲:P.29 - P.30

49年医療費改定と本院の経営
 昭和49年の医療費改定が,病院をその破綻寸前で立ち直らせ,その上,従業員の待遇改善,施設の維持改良,さらに入院患者の医療の向上などに対しても,ある程度貢献したことは確かです.また,その後,石油ショックに続くスタグフレーションで,再び悪化し始めた病院経営も,本年4月の医療費改定によって,一応愁眉を開くことができたと思われます.
 私どもの病院は,医療法人設立は昭和34年ですが,創設は大正4年に遡ります.また昭和28年に,同じ兵庫県下に分院を開院しています.本院は305床,従業員数120名,分院は274床,従業員数90名の規模であります.

改定影響率6.6%−1週間の置換計算より—京都第二赤十字病院

著者: 宇山理雄

ページ範囲:P.30 - P.32

 京都第二赤十字病院は許可病床564床,実働病床504床,特2類看護の総合病院であるが,このほかに救急患者専門の救急分院(許可病床100床,実働病床58床,特2類看護)を運営している.
 従来乙表を採用してきたが,その主な根拠は地理的な条件から外来患者が多く,1日1,300名を超えるので,乙表有利と判断されてきたことによる.毎年度末には甲乙点数置換作業を試み,検討を重ねてきたが,今回やっと甲表に切り替えるに到った.理由は後述するように甲表が乙表に比べて著しく有利であるというものではなく,甲乙一本化が進んできた現在において,500床以上の総合病院が趨勢として甲表採用の傾向にあるのに従ったまでのことである.なお,今回の試算には救急分院を除外した.

赤字見込まれる老人病棟—東京都・有隣病院

著者: 近藤六郎

ページ範囲:P.32 - P.33

 通称医療費とは,診療報酬,あるいは医療料金のことで,医療技術の対価を意味する.したがって,技術に格差のある限り,その料金に格差の生じることもむしろ当然であるが,それでは,社会保険という枠内操作では,煩雑で不可能だから,大ざっぱな平均値で,これに代えているに過ぎない.
 こういう基本的な制約があるから,医療費問題の起るたびに,「適正なる医療費」などと叫んでみたところで,われわれのすべてが納得できるような答が出るはずはない.

またも遠のく健全経営への夢—岩手県立中央病院

著者: 金子保彦

ページ範囲:P.33 - P.34

 県立28病院中最も規模が大きく,成人病センターを付設する総合病院で,病床は542床,職員は臨時職員を含めておおむね500名,そのうち医師は60名である.
 さて全国の病院関係者から,長い間待たれていた医療費の改定が,ようやく4月1日から実施となった.

資料

社会保険診療報酬における病院・診療所間および病院間における問題点について

著者: 健康保険組合連合会

ページ範囲:P.35 - P.40

 現在の医療制度のもとでは,病院と診療所および病院間の格差は広がる一方であるという.では,その実態は具体的にどう数字に現れているのであろうか.この資料は,今回の医療費改定に際し,その実状の具体的な理論的裏付けをなさんとしてまとめられたものである.なお,抜粋掲載を許可された「健康保険組合連合会」にお礼申しあげます.

グラフ

高度医療提供の使命を負って—長野県厚生連篠ノ井病院

ページ範囲:P.9 - P.14

 昭和41年の合併で長野市に組み込まれた篠ノ井地区は,雪をいただくアルプスの山々,りんご畑と千曲の流れという信州の風土の中で,今徐徐に市街地化が進みつつある.4万人の署名が集まるほどに,住民の病院開設への要望は強く,ようやく昭和42年に長野県厚生連・篠ノ井病院(院長・新村明)は発足した.
 内科(3名),整形外科(2名),腹部外科,脳外科,胸部外科,麻酔科,産婦人科(各1名),皮膚・泌尿器科(パート)

「万象是師」を座右の銘として 立川共済病院院長 相澤豊三氏

著者: 長谷川恒雄

ページ範囲:P.16 - P.16

 相沢先生が慶応大学病院から立川共済病院へ移られて,4〜5年になるでしょうか。たびたびお目にかかれる機会がある私には,教室時代の先生のままです.先生がわが国ではじめてN2O法を用いて,脳の循環と代謝を開発されたことは,今更,述べるまでもないことです.また今年2月に脳卒中学会ができ,初代会長になられたことも記憶に新しいところです.
 横浜で生まれ,東京で育ち,慶応に学ばれそして慶応で教えられた先生の経歴を知れば,誰もが江戸っ子気質と慶応ボーイの風格を備えた方だと想像します.しかしお会いした途端,イメージが破れ親近感に包まれて,つい時を過してしまうことになります.先生は人の和を大切にされ,これまで門下生に対しても厳しい態度を示されたことはありませんでした.自からが自からに対して勉強に次ぐ勉強を続けられ,常に自分に対してのみ厳しく対処されました.これがまた逆に門下生にとってはもっとも厳しい教えであったかと思います。このため教室には自由に学問に専心する空気が生まれ,多くの優れた業績が残されました.また老人病学では五島雄一郎教授,神経学では後藤文男教授,田崎義昭教授,浜口勝彦教授,心臓生理の渡部良夫教授などをはじめとする優秀な人脈ができ上りました.

ホスピタル・トピックス 集団検診

胃集検のmerit-demerit analysis

著者: 久道茂

ページ範囲:P.42 - P.42

 癌の集団検診は,胃癌,子宮癌検診が主であるが,最近は肺癌,乳癌などの集団検診が普及しはじめている.この欄では,胃集団検診に限って,最近特に話題となっているmerit-demerit analysisの面から考えてみたいと思う.問題を大きく分けて,(1)技術的な面,(2)受診者対象,受診回数の適正化,(3)検診体系の点について述べてみる.

医療への提言・1

医療問題のむずかしさ

著者: 水野肇

ページ範囲:P.43 - P.47

連載にあたって
 医療の問題は近年さまざまな矛盾を蔵しつつ,紛糾をきわめ,議論百出,解決の方向さえ見出しかねているのが現状であろう.そこで,本号より12回にわたり,評論家の水野氏に,医療問題紛糾の源をさぐり,議論収劍への一つの方向を提示していただくことにした.

一頁評論

現代の医学教育に思う

著者: 和泉昇次郎

ページ範囲:P.49 - P.49

 昨年の暮,新設の山形大学医学部から3人の教授が病院に見えられ,山形大学としての市中病院における臨床実習についての意見を求められた.
 私たちの病院が,年来,日本内科学会より内科専門医教育病院の指定を受けていたこともあって,昨年1月より,秋田大学医学部学生の内科系の臨床実習をお引き受けしていたためである.当時の秋田大学九嶋医学部長は,医学部の創設以来,地域に密着し,しかも卒業してすぐ役立つような医師を養成することを念願されていたのである.

医師の注意義務と保険医療との矛盾—インスリン注射の保険給付上の問題点

著者: 榊田博

ページ範囲:P.64 - P.64

 医師が課せられている各種義務のうち,治療に際して直接重大な関連をもつものに「注意義務」がある.その一つに療養指導の義務(医師法第23条)があげられる.医師は患者を診療したときには,本人またはその保護者に対し,療養の方法その他保健の向上に必要な事項の指導をしなければならない.
 国民皆保険制度の脊日の状況下では,医療保険制度にもとづく診療業務を外にして医業の成立を考えることはできない.保険医療機関が担当する療養の給付および被扶養者の療養の範囲,診療の一般方針などは,健康保険法第43条の4・第1項および第43条の6・第1項の規定に基づいて定められた「保険医療機関および保険医療養担当規則」によつて規定されている.この規則第13-15条にも,先に述べた医師法第23条に関速する療養および指導の基本準則が示されている.医療の責任を全うするため,医師はこれを遵守するのは当然のことと思われる.にもかかわらずここに一つの問題がある.というのは,このような規定を生みだす健康保険法が,医師の診療を制約し医師の義務履行を阻害する規制や行政措置を設けているという大きな矛盾である,その1例が在宅療養糖尿病患者のインスリン注射の問題である.

院内管理のレベル・アップ 労務 労務担当15年の記録から・13

‘遊び’の効用

著者: 藤田栄隆

ページ範囲:P.50 - P.51

院友会の役割と活動
 堅い話ばかり書いてきたが,労務管理も相手が人間である限り,相互融和という一面もなければならない.人と人とのコミュニケーションは組織の接着剤のようなもので,これがしっかりくっつき合っていないと組織もガタつきがちになる.
 この相互融和にもいろいろな方法があり,いろいろな媒体があるが,それはその事業場それぞれの特色もあることなので,一概には論ぜられないとして,一般的には職場内での諸行事と職場外での諸行事の2つに大別できるのではないかと思う.

会計・経理 会計・経理事務の問題点・2

AccountingとReporting—病院会計帳簿組織

著者: 吉崎信幸

ページ範囲:P.52 - P.53

 病院において,会計・経理を担当するということは,病院におけるすべての収入(医業収入,医業外収入)とすべての支出(給与費,材料費,経費,研究研修費,その他医業外費用)を正確に把握し,かつそれを常時正確に報告できるということである.すなわちaccounting (計算整理)とreporting (報告)ということが,その大切な業務となる.そしてaccountingをするためには,帳簿を作成し,またreportingのためには,毎日の日計表,毎月の合計残高試算表,あるいは年間決算における財務諸表,各種明細表などを作成することである.

医事 医事業務レベル・アップのためのポイント・2

点数解釈力向上のための具体策—特定治療材料の場合

著者: 三上晃

ページ範囲:P.54 - P.55

はじめに
 近代医療のめざましい進歩,ME機器の発展,看護レベルの向上と,日進月歩の感がする.
 しかし,病院経営の観点からみると,オイルショック以来の不況のあおりを受けて,また人件費の高騰,医療従事者の不足と経営難は,不況に強いと言われた医療業界の神話も,もろくも崩れさった様相を呈している.段階的な医療費改訂も焼け石に水の感じがしないではない.この中にあって,われわれ医療事務に携わる者としては,目まぐるしい変化(進歩)をしていく医療に,対応し処理してゆくのに常に追われている.

ハウスキーピング ハウスキーピングのすすめ方・2

院内感染の対策

著者: 八木ユリ子

ページ範囲:P.56 - P.57

 病院には種々の要因によって感染症に罹患しやすい状態の患者が多く,最近,弱毒ないし常在菌と考えられていた細菌による感染症が重要視されてきている.これに加え,多剤耐性菌の出現もあり,常在性の微生物でも高濃度に存在することは院内感染の原因となりうると指摘されていること等から,感染防止対策として,環境汚染は重要な問題となってきている.

看護

中通病院におけるナースパトロール

著者: 佐藤千枝子

ページ範囲:P.58 - P.59

 わたしたちの病院で,外来にパトロールを設けたら?という考えは以前から散発的ではあったが,もたれていた.昭和49年にまき起こった中通病院内における総点検運動後の数多くの収穫とともに,この外来パトロールは実施された.
 動機づけというと少々おもはゆいが,わが中通病院の前身である中通診療所が昭和30年に創設された当時の原点にたちかえり,医療を進めようという素朴な反省と職員の願いをもこめて出発した.

イギリス精神医療の旅・7

自治体のもつ福祉施設

著者: 金子嗣郎

ページ範囲:P.60 - P.61

 第4回目の原稿で,イギリスの精神医療における自治体の役割の大きさ,特にhome,hostel,day center,training centerなどの増加にふれたが,話をそこまでもどしたい.

病院図書館

—児玉 隆也 著—「ガン病棟の九十九日」/—荒木 貢 著—「私は狂っていない!—つくられた精神病者」

著者: 安藤昭子

ページ範囲:P.62 - P.63

再読にたえる本
 「ガン病棟の九十九日」を私はこれで2回読むことになる.最初は『文藝春秋』(昭和50年6月号)で読んだ.その時も今後何回も読もうと思って雑誌を書棚に納めた.しかしそのままになっていた。今回単行本として出版された「ガン病棟の九十九日」は主題の文章の外に"天使の報われぬ町","イシャとキシャの払いもどし","さるのこしかけ","手記","闘病ノート"など新聞や雑誌に既載の作品がまとめられている.このうち"手記"は未亡人によるものであり,また"闘病ノート"は著者が,がんセンターに入院し,そして退院してから他界1週間前までの生活の記録である.本書によって初めて発表されたものであって,そこにはただ闘病日記だけではなく,新進気鋭のフリー・ライターである著者,児玉隆也氏の根性,恐らく著者にとっては将来の著作になくてはならない資料メモとして書きつづられたにちがいないノートが添えられてあって,これを読むとき,新しい涙に誘われる.いずれにしろ本書の中心は,著者が肺ガン治療のために入院したがんセンターを舞台にして描かれた「ガン病棟の九十九日」であって,他篇もこれと素材も同じくする作品である.したがって私の評も一括してさせていただく.

病院建築・85

日本赤十字社医療センター

著者: 浦良一 ,   石島秀雄

ページ範囲:P.65 - P.70

日本赤十字社医療センター
 日本赤十字社医療センター(日赤医療センター)は今までの日赤中央病院と日赤産院の改築を機会に合体し,ひとつの組織になったもので,総病床数は約1,000床である.
 この新病院建設にあたっては日赤本社内に建築委員会が設置され,新病院の基本構想ならびに建築計画を検討した,この委員長は若松前厚生省医務局長で,委員会には建築関係では厚生省病院管理研究所石丸部長と明治大学浦良一が参加した.この委員会での検討に併行して新病院の基本設計を建築計画総合研究所で行い,千葉大学教授伊藤誠と前記浦が中心となって担当した.

ケース・レポート 地域保健活動

老齢化社会に向けて成人病撲滅へ第一歩—信愛病院における地域住民に対する教育活動

著者: 桑名忠夫

ページ範囲:P.71 - P.74

 今から20数年前には,不可能とも思えた結核撲滅の戦いに輝かしい勝利を果たしたことを思うとき,こんどは,寝たきり老人をつくらないために,脳卒中その他の成人病撲滅に挑むことこそ,20年後の老齢化社会に対する危惧の念を吹きとばす唯一の方策であろう……

医療と福祉・5

「精神障害者」のリハビリテーション—川崎市社会復帰医療センターの事例を通して

著者: 岡上和雄 ,   山田静枝 ,   狩野めぐみ

ページ範囲:P.75 - P.79

 精神科の臨床の守備範囲もずいぶん広い.私たちは,そのすべてに福祉の課題があるとは,今のところ考えていない.医療の枠組で対応できればそれでよいし,それは,むしろ,望ましいこととさえ思う.
 しかし,対象者のひとりひとりの歴史をみていると,それだけではおさまらない人が必ず出てくる.それは,不幸にして経過がながびいたのちのことである.ある人が,ある日,別の装いをした人に変貌する.いわば,広い意味の生活問題の発生である.

私的病院運営のポイント

経営実態の公開と秘密主義

著者: 遠山豪

ページ範囲:P.81 - P.85

 今年もまた,脱税ワースト3の中に医師が含まれていた.私立医大入学金が何千万とささやかれて久しいが,そのお金の工面のためにも,税務対策が必要なのだろうか.正しく健全経営,税務署に対してもまた職員に対しても,経営公開を実行する遠山豪院長に経営公開の考え方,背景,そのメリットについて解説していただいた.

レセプトを読む・7

いかに解読するか・実地編(3)

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.86 - P.87

4.医療費改訂の影響と自然増
1)医療費改訂の影響
 これまでに3病院の診療行為大別診療額の推移を中心に,その資料をどう活用するかを述べてきた.
 この診療行為大別診療額は,その病院の,その診療科の診療の実態を示すものであるが,また,この診療額の内部構成は,多くの患者の個々の症例に対し,多種多様な内容をもった適正な診療を行った結果であり,他意の入る余地のない自然なものであると考える.

講演・保健医療活動

ヘルスサービスの最近の傾向

著者: L.A.カプリオ ,   落合勝一郎

ページ範囲:P.88 - P.91

 本稿は,1975年6月ザグレブで開かれた第19回国際病院学会の"Discussion Group 1:An Integrated Health Service"(座長:F.Valić教授,R.C. Ryan講演)での講演"Recent trends inhealth service pattems"(Wortd Hospitals.11:1,1976.所載)の抄訳である.保健医療は世界的にどのような傾向にあるのか,先進国諸国ならびに発展途上国について現状と今後の方向をみる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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