icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院35巻8号

1976年08月発行

雑誌目次

特集 病院と輸血管理

病院における輸血管理

著者: 村上省三

ページ範囲:P.17 - P.20

 輸血学の基礎領域における知見の最近の増加は極めて著しい.その結果,身近の問題のみをとり上げてみても,今まで原因の解明が十分にできていなかった副作用に,新しい解釈を加えることができたり,またある血液成分をコンパクトに製剤にすることができるようになって,今までできなかった手術が可能になったりで,極めて多彩なものであるということができる.
 それにもまして重要なことは,最近までわれわれが極めて安直に考えて行ってきた"全血輸血"がいかに不合理で,しかも将来にいろいろと問題となってくるような禍根を作っていたかなどを知ることができ,"血液成分療法(blood component therapy)"すなわち患者には,その人が必要とする血液成分だけを与えることを原則としなければならないという必要性が認識されはじめてきたことである.

大学・病院における輸血学・輸血部のあり方

著者: 野田金次郎

ページ範囲:P.21 - P.24

まず輸血について
 血液が,人の生命維持上神秘的作用を蔵しているという考えは,かなり古くから人の頭にあったらしい.たとえば古代の権力者が,その生命をより長くと願い——これは権力保有状態のままでの願望であったろう——若者の血を啜ったりという話もあったようだ.
 しかし現今の輸血の原形と言えば,前世紀頃からのことであるらしい.

輸血部の最新のシステム

著者: 臼井亮平

ページ範囲:P.25 - P.29

 日本における輸血センターの開祖は昭和25年日赤中央病院の一部に設立された.その後民間血液銀行が発足し,大学病院などにも輸血部ができて輸血が枕元輸血から病院の一組織として機能化されるようになった.当時はごく少数の知人,家族を除けばほとんどが売血の供血者であり,保存血も売血者より調製されていた.昭和37年から売血供血者による社会的批判と輸血後肝炎の発生の多いことから献血による輸血用血液の確保が国家的見地から解決されるようになり,日赤が中心となって現在の制度に移行したのである.
 大学病院,大病院には輸血部が設立されるようになり日赤血液センターとの業務提携のもとで円滑な輸血ができる体制下にあるが,最近血液成分療法(blood compo-nent therapy)について日本医師会,日本輸血学会から血液の有効な利用と全血輸血による副作用が指摘された.輸血の革命ともいうべき時期に到来したのであるが,成分輸血の行われている病院はまだ少数であって,全輸血量から見ればこの問題は,これから積極的に適応を選んで推進すべきである.血液成分療法が全輸血量の何%を占めているかによって,その病院の治療内容の格づけになるとまでいわれている.

輸血管理体制の実態—アンケート集計より

著者: 山崎順啓

ページ範囲:P.31 - P.34

 輸血という特殊な医療行為がスムーズに行われるためには,一連の管理体制が非常に重要であることは論をまたない.この場合,管理とはいったい何かという素朴な質問に対してまず考えてみる必要がある.ちなみに管理という言葉を辞書でひいてみると「物を保存し取り締ること。受け持ってめんどうをみること,管轄し取り締ること,事務の処理や経営をすること」などとあるが,輸血の管理の場合にもこれらの意味がすべてあてはまると考えてよい,というのは図1に示すごとく,採血から患者に輸注されるまでにいくつかの過程と人手を経てはじめてその実をあげることができるからである.こうした輸血管理の実情を考える場合,管理過程を採血機関におけるものと医療機関におけるものとに大別し,性格・規模・構成メンバー・業務内容等一つ一つを取りあげてみても各機関それぞれその特徴を持っており,そこから生れてくる個々の機能と同時にこの関連性が非常に重要な意味を持ってくることは当然である.
 さらに一歩すすめて輸血管理体制を論じる場合,忘れてならないことは個々の問題を掘り下げ,さらに大きな流れをとらえ,その中で個々の問題を再び考え直さなければ,現状の把握と将来の展望につながらないということである.では大きな流れとは何かと言えば,それは一口で言えば国の施策であり細かく観じくれば厚生省の方針であり,文部省の考え方であり,大蔵省の血液事業に対する力の入れ方であり,さらに輸血学会の推進力である.

わが病院の輸血管理

広大な地域の輸血業務を担う—北海道・遠軽厚生総合病院

著者: 阿部清

ページ範囲:P.35 - P.36

 「瀕死の患者を前に血液を待つあの気持は2度と味わいたくありません」とある医師は語った.医療従事者にそんな思いをさせてはならないし,また何よりも患者をそんな立場に立たせてはならない.そのために各病院はどのように血液を確保し,輸血の管理をしていったらいいのか.5病院と1診療所にその実態を紹介していただいた.

事故防止へきめ細かな対応—東京都・北品川総合病院

著者: 錦織ハナ子 ,   森山邦子

ページ範囲:P.36 - P.37

 当病院は救急指定の355床をもつ総合病院である.救急車で搬送されてくるケースは種々であるが,特に失血性のショックに陥った患者に対する救急処置の第1に輸液・輸血ルートの一刻をきざむ早急な確保が,人命救助に絶対必要である.

地域に根づく血液相談室の活動—高知市立市民病院

著者: 有沢芳郎

ページ範囲:P.37 - P.38

保存血液と共に23年
 高知県にいち速く呼吸器の胸部外科を取り入れたのが国立高知療養所(初代所長坂本昭現高知市長)であり,第1回の手術は昭和24年であった.しかしこの頃は冷蔵庫がいまだ製産されず,血液の保存ができなかったのでもっぱら枕頭輸血で切りぬけた.26年度は手術件数が103例に達し,保存血液が不可欠となってきた.28年に入ると外国製の冷蔵庫が入手できたので療養所の医師を東京に派遣して保存血液の製法を習得し,院内血液銀行を開設するや手術件数が急増し,西日本で上位にランクされるようになった.
 筆者は院内血銀の運営に専念したのが血液と関わりをもつ始まりであった.29年売血が全盛時代に入ると県下全域にわたり銀行血を取扱い,売血が廃止され献血時代を迎えると献血の委託取扱いに転じた.44年献血が直配制になったのを機に高知市立市民病院(院長飯塚治)と委託契約を結び,院内血液の管理に専念して今日に至る.

日赤との連携で恵まれた今の態勢—東京都・第一病院

著者: 野村益郎 ,   宮内待顕

ページ範囲:P.39 - P.39

 輸血管理上の問題点としては,供血者,給血者の検査,供血液の保存管理,輸血中および輸血後の医学管理に分れると思う.

緊急時の管理に工夫—埼玉県・越谷市立病院

著者: 谷中誠

ページ範囲:P.40 - P.41

 当院は昭和51年1月12日新設開院したばかりの病院で,開院後約5か月間を経て診療体制が軌道に乗りつつある状態である.開設当初の計画では成人病中心の専門病院で外来は紹介患者のみと予定したが,現在は成人病部門として消化器内科,循環器内科,消化器外科,放射線科,婦人科があり,救急部門として救急内科,救急外科,脳神経外科,小児科がある.成人病部門の外来は全部紹介外来制であるが,救急部門は救急と紹介外来を兼ねている.病棟は300床を予定しているが,開院当初90床で,4月より120床に増床し,漸次要員が確保でき次第増床する予定である.
 以上のような開院間もない病院での輸血体制について述べたい.

院内血液備蓄という福音—東京都・大村産婦人科

著者: 大村清

ページ範囲:P.41 - P.42

産科救急の内容
 分娩管理を換言すれば(母体側),出血対策をどうするかの一語に尽きるといっても過言ではない.それほど産婦人科の医師は,分娩をはじめ,外妊(流産)など産科救急に対し,病院,診療所とを問わず出血を警戒し,予防(予知)や対策に腐心している.
 一方,「案ずるより生むが易し」という社会一般の通念は根強く存在するばかりか,産婦人科以外の医師,パラメディカルにもこの考え方は強く,1例をあげれば,厚生省の救急医療の対象に産科はなく,救急医療学会のテーマに産科救急を含めるよう日本母性保護医協会(日母)が申し入れたにもかかわらず,念頭になかったとして除外される始末である.

座談会

病院輸血管理の問題点

著者: 遠山博 ,   渡辺晃 ,   川北祐幸 ,   徳永栄一 ,   鳥居有人

ページ範囲:P.43 - P.50

 一昔前の血液不足は解消され,ある地域では血液過剰状態まであると言われる一方,依然として連休中の血液不足とか,輸血ミスのニュースが流れる.献血者の貴重な血液が多くの人の手を経て,患者の身体に入れられるまでの過程に何か問題があるのではなかろうか.血液の確保,院内の管理,事故防止の工夫などについて,血液センター側,病院の中の管理者,血液を使う医師,それぞれの立場から問題点をさぐっていただいた.

グラフ

新装なった川崎市立川崎病院

ページ範囲:P.9 - P.14

 川崎市立川崎病院は,昨年9月,従来の病院の東側に鉄筋コンクリート地上6階,地下2階の堂々たる新病院を完成(延面積18,131.63m2),12月に移転を完了した.
 旧病院は老朽化もひどく,また近代的病院としての機能を果たせる構造ではなく,外来をはじめ手術場,検査室なども手狭になったため,これらすべてを新病棟に切り換えるとともに,病室5病棟(増床417床)をこれに加え,総ベッド数968床の大病院となったが,実際の稼動は現在,その6割ほどにしか達していない.

成田騒動時の見事な采配は昔の杵づかか—成田赤十字病院院長 渡辺進氏

著者: 小野田敏郎

ページ範囲:P.16 - P.16

 成田空港の建設で大騒ぎがあったとき,続発する負傷者を成田日赤に収容し,適応ある患者をヘリコプターで東京に移送した——あのあっぱれな措置は,砲煙の間司令部付として働かれ,武運つよく帰還ののち陸軍軍医学校の教官として軍陣の診療体系管理について教鞭をとられたその昔の杵づかによるものと拝察をした.千葉大学高橋外科から陸軍に進み,戦後国立山形病院長を経て古河鉱業足尾鉱山病院長に就任,この時代硅肺結核の研究からその予防を確立する仕事をされた.
 恩師の初代院長の後を継いで成田赤十字病院の院長になられてから18年間,物心ともにこの病院の今日を育成された.さる年,千葉県の病院視察旅行でこの病院を見学させていただいた折,空港に予定されている三里塚御料牧場にご案内をいただいた.亡き橋本寛敏先生がご紋章の輝く馬車に乗られ,渡辺院長が鞍上ゆたかに騎馬で広い牧場を回られた.それは陸軍大御所の御曹子の氏が名匠遊佐幸平氏に師事し天覧馬術に選手将校として吹上御苑に出場されたその姿であった.日本病院会常任理事,日赤院長連盟副会長.俳句をよくし論愚と号す.かねて伝統ある軍医団雑誌の編集長をなされたが,いま新生日本病院会雑誌の編集委員長をされる.これも昔とられた杵つかというべきか.

ホスピタル・トピックス 薬局

病院薬局のGMP

著者: 高野正彦

ページ範囲:P.24 - P.24

 わが国の製薬業界のGMP(GoodManufacturing Practice)は,日本製薬工業協会での「JGMP」の制定,厚生省の「医薬品の製造および品質管理に関する基準」(厚生省GMP)の公表などに基づいて,最近ようやく堅実に,また着々とその定着化が行われつつある.
 これに呼応して,病院薬局のGMPへの対策も急がれている.折しも厚生省医務局国立病院課では,「調剤および製剤過誤防止のための手引と薬品管理事務」(1975)について詳細な注意事項を発表した.これは病院薬局の業務に大いに参考となるもので,ここでは,従来とかくゆるがせにされてきた汚染防止の面に焦点をあててみようと思う.

給食

病院給食における原材料の流通近代化と,そのシステム

著者: 福祉流通近代化センター

ページ範囲:P.82 - P.82

深刻化する病院給食
 病院給食のあり方が見直されている.いうまでもなく病院給食は,学校給食などのような一般的な給食と異なり,非常に多くの特殊性をもっている.治療の一環としてはもとより,患者が快適な病院生活を送る上でも重要な役割をもっているわけだが,こうした特殊性により,病院経営の面からみると,コスト的にも,労務的にも非常に大きなウェイトを占めている.加えて世界的な食糧資源事情の悪化,材料費の値上がり,公害食品問題,あるいは週5日制をはじめとする労働環境の変化等々,厳しい環境変化が,病院給食問題を一層深刻なものとしている.
 これからの病院運営にとっては,給食問題の解決,合理化こそ,最も重要な課題のひとつである,と言っても過言ではない.言い換えれば,必要とする給食材料を質的に,量的に,またブランド的にも,価格的にも十分に満足しながら,いつ,いかなる時にでも確保できるような体制づくりが急務といえよう.

自治体病院

自治体病院の経営と薬品購入の合理化

著者: 米田啓二

ページ範囲:P.88 - P.88

 自治体病院の経営は43年頃から年々悪化してきており,50年度の約1,000の自治体病院の決算額を推計すると,一般会計から700億円繰入れても650億円の赤字を生じ累積欠損金は,1,800−1,900億円にも達しようと推定される.この原因について経営合理化に問題がないかと指摘されてもいる.
 ここでは,医業収益の25.9%を占める薬品費の合理化についてみよう.49年2月の診療報酬改定の際,厚生省から引上率算定のため中医協に提出された資料によると,薬剤料収入と薬剤購入支出との収支差額率について,病院0.2900,一般診療所0.3078,医科平均0.3049とみて,自然増中の薬剤使用変化による収益増分を算定している(いわゆる潜在マージン).

医療への提言・2

医師と患者の間

著者: 水野肇

ページ範囲:P.52 - P.55

 医療問題が世界中でむずかしくなってきているのは,財政問題が大きな理由のひとつにあげられているが,実は財政問題のかげにかくれているものとして,医学の発達による医師と患者の人間関係の喪失ということがあげられるだろう.決して財政問題のように焦点という形をとらないが,実際には深刻であるだけでなく,医療を根底からゆるがすような要素をもっているのではないかと思われる.そこには医師の倫理,科学に対するものの考え方,国民の医療への権利と,その裏側にひそむエゴイズムなどが,複雑にからみ合って,結果として医師と患者の間に,一部には相互不信さえ起きている.

一頁評論

小児医療システムの未来像

著者: 甲賀正聰

ページ範囲:P.57 - P.57

 これからの病院は疾病治療だけでなく,地域住民の健康管理と医療を行う包括的なシステムが望まれよう.特に小児科領域ではその必要性が痛感される.
 小児の重症疾患は減ってきた.最近10年間の乳児死亡率をみても,昭和40年に出生1,000に対して18.5だったものが,昭和50年には10.7と大きく減少した.ある報告によると,昭和40年に10年後を予想して,はじき出した数字は17.5であったから,実際には予想をはるかに下回ったわけである.今やわが国の乳児死亡率はスウェーデン,オランダに次ぐ世界のトップ・グループである.私どもの小児科での15歳未満の全小児科年齢の年間死亡数もこの10年間で約4分の1に減った.しかも死亡総数の減少だけでなく,年齢別死亡数にも変化がみられ,衛生統計上の新生児期である生後4週までのものが全体の約7割を占めるようになった.言い換えるならば,感染症が激減した今日,幼児以上の小児は悪性腫瘍などのいわゆる難病以外では死亡することがなくなったのである.これらの変化は小児病棟のベッド利用を低下させた.特に年長児のベッド利用率は明らかに減少した.一方,外来部門の年間受診者数は地域人口の増加も手伝ってか,この10年間あまり大きな変化をみていない.結局,入院を必要とする症例は減ってきており,外来で治療できるものが相対的に増えている.

病院における患者の分類について—動的患者分類法の提唱

著者: 守屋博

ページ範囲:P.72 - P.72

 経営学において経営の内容を表すのに,いろいろの統計を用いる.統計を作るためには作業や製品を分類しなければならない.病院も大量の患者を扱う経営体であるならば,同様に統計が必要である.この場合,統計の対象は患者である.進歩的な病院は必ず病歴室が整備され,そこでは必ず日常作業として,患者の病名分類がなされている.これによってそこでどんな医療が行われているかがわかるようになっているが,一般に診療科別に経営されている関係上,科別患者分類の方が多く用いられている.しかし科別と疾病別では必ずしも一致しないことがある.
 その他いろいろの分類がある.たとえば年齢別に10歳区切りで分類することもあるし,小児と老人を別にまとめることもある.また慢性病と急性病を区別することによって,慢性病院と急性病院に分けることは,病院経営では必要なことである.

院内管理のレベル・アップ 労務 労務担当15年の記録から・14

マッカーサーの遺産

著者: 藤田栄隆

ページ範囲:P.58 - P.59

生理休暇は日本だけ?
 労働基準法第67条にこんな定めがある.
「使用者は,生理日の就業が著しく困難な女子又は生理に有害な業務に従事する女子が生理休暇を請求したときは,その者を就業させてはならない」

施設 施設部門の管理・3

炊飯にはどんな装置がよいか

著者: 住垣聰子

ページ範囲:P.60 - P.61

炊飯についての知識
 ご飯とは,簡単にいって,米の状態のβ澱粉がα澱粉に変性された状態をいう.おいしいご飯は飯粒に光沢があり,直立して空間があり,釜の中央部が盛り上がっている.このようなご飯を炊くには,火加減が必要である,また釜の型状は,半球型で対流を起こしやすいことが必要である.
 土元,高木らの行った炊飯実験による調理科学的な考察によると,5kgの米を炊いた場合,水容量比1.1であることが最もよく,強火20分,中火5分,弱火5分がよかった.食缶の蓋および炊飯器の蓋はよい米飯を炊くためには必要なもので,これがないときは食缶からの水分の蒸発が多く,飯の表面は干飯のように乾燥してしまう.

ハウスキーピング ハウスキーピングの向上を考える・3

床材と清掃

著者: 小田桐信子

ページ範囲:P.62 - P.63

 最近病院の建物も,一般のビルと同様高層化したり,新建材を取り入れた広面積の近代建築となり,その清掃方式も科学的に管理する方法を採らざるをえなくなっている.そして建築材料の急激な技術的進歩により,床材の多様化が著しくすすみ,これに伴って清掃用化学資材も各種の新製品が開発され,また清掃器具,機械も非常に改良進歩しているので,合理的,科学的な床の管理を行うには,それぞれの床材に適した清掃用化学資材を選択し,改良された器具,機械を使いこなすことが不可欠である.
 そのためには,まず多種多様な床材を系統的に理解し,次いでその特徴を知り,その特質に応じた清掃の仕方をしなければならない.

薬剤 薬剤管理概論・3

在庫管理(理論編)

著者: 岩崎由雄

ページ範囲:P.64 - P.65

 在庫管理を論ずるには,基本的にOR (operations research)の理論を理解する必要がある(ORについては「管理学」のベースとなるもので,本稿では割愛するが,ぜひとも必要なものである),と同時に数学的解析なくしては理論問題は解きえない.微分・積分などの基礎数学はもちろん,行列,線型代数,集合論群論などの一通りの理解が望まれる.そして応用数学としての推計学の導入は必須である.しかしここでは紙面に限りがあるのですべて別の機会に譲り,直接在庫管理に必要な推計学の応用を述べることにする.
 病院において薬品・衛生材料などその都度購入して使用すれば在庫は常にゼロですむ.たとえその都度でなくとも,ある程度まとめて購入すれば,消費量と購入(発注・受注)調達期間が常にコンスタントであるなら,一皮購入したものが在庫ゼロになったとき,即時受注できるようにできるなら欠品という現象を起さず在庫管理ができる.しかも最も経済的である.しかしこれは特別の条件下で可能であって,通常は欠品によって病院における医療に支障をきたさないように,いわゆる予備的在庫(最低常備量)により薬品管理を行っているのが現状である.最低常備量は単に経済的問題のみでなく,在庫に要する倉庫面積,出納に要する人員(労働・作業)問題との相関がある.

リハビリ リハビリテーション部門の管理・4

肢体不自由児施設の運営—子鹿園

著者: 江口寿栄夫

ページ範囲:P.66 - P.67

時の流れ
 肢体不自由児施設は,昭和17年に東京の板橋に整肢療護園が発足したのが始まりであり,昭和22年の児童福祉法の規定により,「すべての国民は,児童が心身ともに健やかに生まれ,且つ,育成されるよう努めなければならない」という理念から,漸次各都道府県に設置されるようになった.具体的には,長期間の治療・訓練と教育が必要である肢体不自由児に療育を行うのであり,病気を対象と考えることから,病人すなわち肢体不自由児を対象として考えた施設であり,日本におけるリハビリテーション医学の嚆矢といっても過言ではない.
 子鹿園は昭和31年10月に73床で発足しているが,その頃のすべての肢体不自由児施設がそうであるように,入園対象児は主に骨関節結核,先天性股関節脱臼,ポリオ,脳性麻痺(以下CPと略す)その他で,整形外科的治療を必要とするもので,整形外科医を中心にして訓練士(理学療法士,作業療法士の仕事をしていた).看護婦,義肢装具製作者(子鹿園では当初から現在も,施設外から定期的に来園している)のパラメディカルスタッフがあり,入園中の生活指導は保母あるいは指導員が行い,また教育は地元の普通小・中学校の分室で始められた.

イギリス精神医療の旅・8

精神病院の看護体制

著者: 金子嗣郎

ページ範囲:P.68 - P.69

 イギリスの看護制度はなかなか複雑であって,理解しにくいのであるが,ここで概略を述べておく.

病院図書館

—川上 武 著—「流離の革命家国崎定洞の生涯」/—室谷光三 他著—「病院病理学」

著者: 赤星一郎

ページ範囲:P.70 - P.71

国崎の生涯を浮き彫りに
医学徒としての出発
 国崎定洞,明治27年熊本生まれ,対馬で小学校終了,埼玉県川越中,一高,東大医学部を大正8年25歳で卒業している.
 中学以後は,姉の嫁ぎ先の弁護士宅に寄寓しており,壮士などが弁護士のもとに訪れたりして,その間の応対などに子供時代接したことも,人柄形成にいろいろと影響があったのであろう.

病院建築・86

肢体不自由児施設の再検討—整肢療護園の病棟改造をめぐって

著者: 小池文英

ページ範囲:P.73 - P.78

はじめに
 整肢療護園は故・高木憲次東大名誉教授が大正の頃から着想し,多年の努力・苦心の末に,昭和17年5月に現在の地に創設したものである.
 2万坪の敷地(現在は1万2千坪)に105床の施設で,当時としては良く整ったモダンなリハビリテーション病院であったが,終戦の年に軍事工場と間違えられ,再度にわたって焼夷弾の集中攻撃を受け,建物すべてを烏有に帰してしまった.わずかに焼け残った看護婦宿舎を改修して少数の肢体不自由児を収容し,細々と療育の灯をつないできたところ,戦後,児童福祉法が制定され,この中に児童福祉施設の1種として肢体不自由児施設が座を占めることとなった.

医療と福祉・7

福祉事務所からみた医療

著者: 杉村宏

ページ範囲:P.79 - P.81

 極限状況が問題の本質を露呈させる場合がある.患者が病院に来るところから治療が始まるという前提も,生活保護者の生活を見れば,来院自体いかに困難かがわかる.待ちかまえていてほどこす医療の貧困がここに現れる.患者の命を預る側が,まず患者の利益を代弁するところから問題解決がはかられると訴える.

私的病院運営のポイント

医師の意欲を盛りたてるには

著者: 河野稔

ページ範囲:P.83 - P.85

 今,病院で一番の問題は,職員教育をいかに行い,仕事に対する意欲をもたせていくかだという.職員の教育に成功するかどうかが病院運営のポイントと言って過言ではない.今回は,特に医師に絞って,独自のトレーニング法を実践する北品川病院の院内教育を紹介していただいた.

レセプトを読む・8

地方の中規模病院の実態—新潟県立十日町病院

著者: 小野塚彰

ページ範囲:P.86 - P.88

 本院の所在する十日町市は,新潟県の西南端に位置し,人口5万の絹織物を主産業とするまちで,冬季間,1日の降雪量が時には150cmを越える豪雪地である.本院は,昭和46年11月,従来の木造病棟を取り壊した跡に,鉄筋コンクリート造,地上6階建の病棟を竣工した.敷地面積12,300m2,診療棟,管理棟などを含め,建物延べ面積9,165m2の規模となった.病床数は,一般223,結核37,伝染18の計278床の総合病院である.診療科目は内科,呼吸器科,小児科,外科,整形外科,産婦人科,泌尿器科,耳鼻咽喉科,眼科の9科で,このうち小児科は医師欠員のため休診となっている.
 職員総数219(うちパート8)で,医師16(うちパート3),看護婦,准看護婦120(うちパート2),その他となっている.医師の科別構成は,内科4,呼吸器科1,外科4,整形外科2(うちパート1),産婦人科2,耳鼻咽喉科1,泌尿器科,眼科はそれぞれパート各1の構成である.点数表は乙表を適用し,基準看護は一般が特2類,結核が1類の承認を得ている.

海外レポート

欧米の病院および臨床検査所見聞記

著者: 小野猛

ページ範囲:P.89 - P.91

 昭和48年10月にアメリカの医療の中で特にコンピュータ利用と,臨床検査所をみてきた.また昭和50年7月にはカナダ(第9回国際臨床化学会出席),西ドイツ,イタリア,フランス,スウェーデンと回り,自働分析機と種々の病院を見学してきたので紹介する.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?