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雑誌目次

雑誌文献

病院36巻1号

1977年01月発行

雑誌目次

特集 医療法と病院

戦後の病院と医療法の功罪—医療法と病院の30年

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.19 - P.24

 戦後急速な病院の発展を見るようになった.これは単にわが国のみではなく,世界的の現象である.それは社会・経済の進化に従って,医療においてもより充実した医療形態への需要が高まった結果である.すなわち,医学・医術の進歩は医師の専門分化と医療設備の重装化を促進した.それのみならず住宅の合理化は患者の収容施設の需要を増大せしめ,そして特に世界的傾向として,今世紀各政府は,社会保障・社会福祉・公衆衛生の伸展につづき,医療の社会政策を発展せしめるようになり,ここにいわゆる近代病院の普及を急速に推し進める結果となった.
 この現象は第2次大戦後の顕著な歴史的現象である.時あたかも終戦直後の昭和23年に医療法が制定せられ,わが国としてはじめて病院と診療所を法制約に機能分化し,病院の発展の基礎が与えられたことは意義が深いといわねばならない.しかしその後の30年間の情勢の変化にもこの方法は良く対応しえたものかどうか,そして今後もこれで良いかというと多くの議論がある.この法は医師法・歯科医師法等の医療関係者の身分法に対し,医療の施設法といわれるものであるが,その内容には病院と診療所のあり方および公的医療機関問題等を含めた医療提供の仕組みに関係した問題を含んだものであるから,医療制度の基本問題の旧民的コンセンサスが前提とならねば根本的改革はありえない.

人員基準の問題点・1—医師

著者: 小笠原道夫

ページ範囲:P.25 - P.26

 「病院は,省令の定めるところにより,左の各号に掲げる人員及び施設を有し,且つ,記録を備えて置かなければならない.但し,政令の定めるところにより,都道府県知事の許可を受けたときは,この限りでない.
 1.省令を以て定める員数の医師,歯科医師,看護婦その他の従業者」(以下略).

人員基準の問題点・2—薬剤師

著者: 古川正

ページ範囲:P.26 - P.27

 医療法が制定されてから,30年近くなり,その間に医薬の進歩とともに種々の変化があり,実情に添わなくなったものに,薬剤師の人員の問題がある.

人員基準の問題点・3—看護婦

著者: 小島ユキエ

ページ範囲:P.27 - P.28

 医療法施行規則第19条4項は,入院患者数と外来患者数に対する看護婦および准看護婦数を規定している.
 つまり入院患者4人に対し,看護婦,准看護婦1人,その端数を増すごとに1人とし,外来患者数30人に看護婦,准看護婦1人,その端数を増すごとに1人というものである.

人員基準の問題点・4—栄養士

著者: 山本辰芳

ページ範囲:P.28 - P.29

 まずはじめに考えたいことは,医療関係法律の立法の精神である.すなわち,憲法で保障された生存権および「国民の社会的進歩向上に努める国の義務」を受けて,「だれでも,いつでも,どこでも,平等に標準的医療を受けられる」という国民の権利を守るためのものであり,中でも医療法は,その中核である病院等に刻する規制法として定められているものである,との認識の上に立って問題点を考えてみたい.

病院等の定義の今日的適合性

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.38 - P.40

法の妥当性適合性
 法律はそれ自身のもつ規範性の故に,社会を一定の方向に導く面のあることは否定できない.特に社会制度に関連する法律については,そういうことが言えると思う.そこで,ある法律の中にある事柄についての定義が掲げられているような場合には,大いに注意してその内容を検討してみることが必要である.そうすれば,その法律にこめられた制定者の意図なり考え方なり,あるいは事柄の理解の仕方なりを,そこにかなり明瞭に読みとることができる.
 あるひとつの法律の妥当性あるいは時代的適合性が,歴史的見地に立って考えられるべきものであることは言うまでもない.ある時期においては妥当性や適合性をもって社会をリードしえた法律であっても,そこにおける諸条件が大きく変化してきた場合においては,その妥当性や適合性を失うことになることも十分に考えられる.そのような場合には,法律自身の内容を変更する必要性も当然出てくるであろう,そうでなければ,その法律は社会から遅れることになり,その規範性さえ維持できなくなることも考えられるからである.

広告制限と病院のあり方

著者: 紀伊國献三

ページ範囲:P.41 - P.43

広告制限思想の源
 昭和23年に制定された医療法は,その69条第1項に以下のような医療機関の広告制限の規定を掲げている.すなわち,「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関しては,文書その他如何なる方法によるを問わず,何人も左に掲げる事項を除く外,これを広告してはならない.1.医師又は歯科医師である旨2.第70条第1項の規定による診療科名3.病院又は診療所の名称,電話番号及び所在の場所を表示する事項4.診療に従事する医師又は歯科医師の氏名5.診療日又は診療時間6.入院設備の有無7.その他都道府県知事の許可を受けた事項」となっている.これが有名な広告の制限に関する法律である.
 この法律の目指すところについては,公衆は,医師,歯科医師がどこに存在し,どのような疾病の診療に従事しているかを知ることは便宜ではあるが,これを全く放任する時には虚偽誇大の広告に流れやすく,ために無知の患者を誘因することになって,公衆衛生上の害があるのみでなく,たとえ事実に合致する事項であっても,これを広告することで医師,歯科医師の品位を害するおそれのあるようなものであれば,これを広告させないことが望ましいと考えられているからである(医療法,医師法解による).

医師の宿直義務と救急医療

著者: 宇山理雄

ページ範囲:P.44 - P.46

宿直義務の法的根拠
 病院に勤務する医師に宿直義務を強制する法的な根拠は見当らないが,医療法第16条は,「医業を行う病院管理者は医師を宿直させなければならない」と定めており,病院管理者はそれぞれ就業規則により職員に宿日直を義務づけている.したがって,医師が病院に就職する際に誓約書に署名捺印した以上は,病院管理者に対して宿直の義務を負うことになる.
 病院の宿直医師の業務内容と救急医療の問題は,労働基準法を守る点において大変難しくなってくる.労基法によると,宿直勤務は断続労働の一様態として施行規則第23条にあげられており,常態としてほとんど労働する必要のない勤務のみを認める趣旨で,所轄労働基準監督署長の許可を要件としている.

公的医療機関等である病院の開設等の制限

著者: 米田啓二

ページ範囲:P.47 - P.49

公的病床規制の概要
医療法第7条の2の概要
 病院の開設にあたっては,医療法第7条の規定により都道府県知事の許可をうけなければならないこととなっており,都道府県知事は,申請された施設の構造設備およびその有する人員が医療法の定める基準に適合するときは,許可を与えるものとされている.しかしながら,昭和37年9月に成立した医療法の一部を改正する法律により,新たに第7条の2の条項が設けられ,この条項が新設されたことにより,地方公共団体,日本赤十字社,済生会,厚生農業協同組合,各種の共済組合,社会保険団体等の病院,いわゆる公的病院が病院の開設,増床・転床(病床種別の変更)をしようとする場合,申請された病院の所在地域の既存の同種の病床数がすでに一定の必要病床数を超えているとき,または超えることとなるときは,都道府県知事は許可を与えないことができることとなった.
 なお,公社等の開設する病院については,厚生大臣に協議または通知をしなければならないものとし,同一の効果を期待し,国の開設する病院については,法律によらなくても同様の措置が可能との見地から,閣議決定により,公社等と同様協議等で行う旨定められている.

座談会

管理者はなぜ医師でなければならないか

著者: 曽田長宗 ,   松下廉蔵 ,   蕪木廣 ,   稲田龍一 ,   守屋博

ページ範囲:P.30 - P.37

医療の場である病院の管理者は当然医師であるという「常識」の意味と源をたどり,現実にいまどんな管理能力が必要とされるのかを考えていくとき,「常識」も揺らいでくる.医療法の立法に携わった方,現場からの声をもとに「常識」をまないたにのせてみると……

グラフ

沖繩の医療の中枢として—県民と共に発展した沖繩県立中部病院

ページ範囲:P.9 - P.14

 「今まで,苦しまぎれに何とかやってこられたのは,医師やスタッフ,患者の協力があったからてすョ」と言われるとおり,中部病院の歴史は,沖繩の世情と通するものがあり,県民と苦労を共にして発展したといえよう.
 中部病院は,沖繩各地の戦争孤児や傷病者を収容,治療するために,沖繩戦中に設けられたテント小屋なとが前身である.その後,米軍は,この施設を県民の正式な医療施設とするため,コザ市(現在の沖繩市)に病院を新設し,沖繩中部病院とした(1946年,ベッド数500床).さらに,1952年10月には新たに病院を建設,オープン病院として運営を開始(ベッド数180床).また'55年には76床の結核病棟を竣工,'56年には那覇病院の新設に伴いコザ病院と改称した.

期待すべき病院人国立埼玉病院院長左奈田幸夫氏

著者: 野村秋守

ページ範囲:P.16 - P.16

 スマートでハンサム.本当の意味での慶応ボーイかピッタリする人柄である.
 病院協会には「制度委員会」という委員会があり,その統卒は順天堂大学の守屋博元教授で,メンバーは病院管理研究所の橋本寿男氏を始め錚々たるもの.先生はこの中にあって甲論乙駁をうまくまとめ上げ分り易く発表する能力を持ち合せておられる数少ない方で,そのためか知らず知らずのうちに左奈田先生か中心的存在となってしまった.

病院の窓

病院て何だろう

著者: 砂原茂一

ページ範囲:P.17 - P.17

 患者中心看護関係の雑誌などを見るとしばしば「患者中心の看護」という文句に出会う.ところが医師向けの雑誌では「患者中心の医療」などというスローガンにお目にかかったことはない.今さらそんな宣言をすると今まで患者を忘れていたことを告白するようなもので,いささかスネに傷もつ身として気がひけるということであろうか.「患者中心の看護」という言葉にしてからが今までは看護婦中心であったことを進んで告白し悔恨の情を表明したものとも思えない.むしろ医師中心の医療に対する日頃のウップンをいくらか上品にかつ遠回しに言いあらわしている趣きがないではない.病院がお金もうけのために存在するのではないことを一応自明のこととしてしばらくおいて,いったい病院とは何をするところなのだろうか.病気を治すための施設には違いないけれども,病院でなければできない高度に科学的な診療の場と考えていいのであろうか.それでは患者中心ではないと批難されることになるのであろうか.
 癒しと支持と慰め「ときに癒し,しばしば支え,つねに慰む」というのは昔トルドー療養所の患者たちが所長のトルドー個人に捧げた讃辞であるが彼らが病院に期待していたものを言いあらわしていると考えてもいいだろう.ことに当時は病院に入っても病気そのものが治ることをあまり期待できなかったが,そのような場合でも苦痛をやわらげ生きることの支えが得られたし,それも難しい場合でも病院に入っていれば慰めだけは与えられたということであろうか.

ホスピタル・トピックス 歯科

虫歯予防にハブラシ運動を

著者: 岡村ミヨエ

ページ範囲:P.29 - P.29

 近年歯科医療は,めざましく進歩し,かつ歯科医療従事者の努力にもかかわらず,日本の齲蝕罹患率は,厚生省医務局昭和50年歯科疾患実態調査によると,乳歯+永久歯(5—15歳未満)97.2%と今日なお齲蝕発生は急速に増大し社会問題となっている.
 新潟県では,昭和46年6月「子供の歯を守る県民大会」が発足し,世界保健機構(WHO)により公認推奨されている上水道にフッ素添加されるまでにはいたっていないが,フッ素により洗口(集団利用法)が新潟大学歯学部附属病院予防歯科の指導で県内一部の保育所,小学校に実施され着実な成果があげられ,院内においてもフッ素塗布,刷掃指導などリコールシステムにより予防効果があげられている.しかし,フッ素使用について,一部の人々により反対意見が出され,齲蝕予防運動に努力されている人々の運動が阻害されているむきもあるが,これについては,予防専門歯科医師に任せ,素直に耳を傾けるべきと思われる.

自治体病院

院内保育所の設置

著者: 米田啓二

ページ範囲:P.54 - P.54

 看護婦等医療従事者の確保に悩む病院等において,その対策の1つとして最近保育所を設置する病院が増えてきているが,全国自治体病院協議会で調べたところによると,自治体病院においてもここ数年間で急速に保育所の整備が進められてきたことがわかった.すなわち,昭和46年6月現在で調べたところによれば,都道府県立では13%,市町村,組合立では8%の病院に設置されていたが,昭和51年4月現在では都道府県立では38%の79病院で,市町村,組合立では17%の109病院に設置されており,著しく増加している.
 なお,運営の責任者についてみると,昭和51年4月現在の調査によると,病院の開設者が行っているところは,都道府県立では13%(10病院),市町村,組合立では26%(28病院)病院自体で行っているところは,都道府県立では47%(37病院),市町村,組合立では46%(50病院),職員組合または労働組合で行っているところは,都道府県立では13%(10病院),市町村,組合立では5%(5病院),その他で行っているところは,都道府県立では25%(20病院),市町村,組合立では22%(24病院),不明は,都道府県立,市町村組合立各2病院となっている.

医療への提言・7

医療のタテ社会的要素(I)

著者: 水野肇

ページ範囲:P.51 - P.54

医学と科学の距離
 「現在の社会で,いちばんうまくいっていないのは医療と教育だ」という意見がある.もちろん,医療と教育だけがうまくいっていないのではなくて,特に目立つという意味である.教育のほうはともかくとして,医療には世界中が頭をかかえている.しかも,それは,医療費の問題だけではなくて,医療そのものについて,医師にも国民にも不満が大きいといえる.この原因はいろいろとあげられているが,実は「医療」そのもののもつ本質的なところにあることは,意外に指摘されていないように思う.
 「医療は医師対患者の人間関係の上にのみ成立する」といわれる.このことは,医療問題を考える場合,極めて重要なことだと私は思う.かっては,病気がなおったとき,「あの先生になおしてもらった」といった,しかし,いまは違う.「あの薬が効いた」という.薬という科学に対する信頼だといってしまえばそれまでだが,それが逆の目に出ることもある.私たちは医学を科学と考え,たいていの病気は医学という名の科学によって解決されると思っている.だから,入院したり診療を受けたりしても,十分になおらないときには,もっと優秀な医師にかかればなおるのだと思う.しかし,実際には転々と医師を変えてみたところで,なおらないものはなおらないというのが現実である.

当直医日誌

静穏のち多忙の一日

著者: 亀井徹正

ページ範囲:P.57 - P.57

9月○日休日晴れ
 今日は祭日.長い一日が始まる.日曜,休日の当直は,朝9時から翌朝9時まで,平日は午後3時,土曜日は午後2時からが当直時間である,当院では,内科,外科,産婦人科,小児科が常時当直医を置き,それぞれの病棟入院患者,救急外来および電話での問い合わせに関して責任を負っている.また,当直はレジデントが行っており,お互いに診療の依頼などを気軽に行えるのでたいへん便利である.
 午前9時.当直室にて前日の当直医より引き継ぎのレポートを受ける.前夜の出来事,重症患者の状態および治療方針などである.今朝2階病棟のNさんが死亡したらしい.胃癌の再発で,腹膜炎を併発していた患者だ.担当のフレッシュマンのDr.Yは,今日いっしょに当直することになっているのだが,9時過ぎから剖検の予定で,まだ姿を見せていない.夏明けの今頃は,各科ローテーションを終えた一年目レジデントの当直見習い時期でもある.

院内管理のレベル・アップ 麻酔 麻酔部門の問題点・1

麻酔の現状と将来

著者: 岩月賢一

ページ範囲:P.58 - P.59

近代麻酔の誕生
 わが国における近代麻酔の発端は,昭和25年に開かれた日米連合医学教育者協議会(The Joint Meet-ing of the Japanese and Ameri-can Medical Educators)にあるといっても過言ではない.真夏の東京での4週間にわたるDr.MeyerSakladの麻酔についての話は,若い医師に深い感銘を与え,わが国の麻酔の遅れをとりもどすことの必要性を痛ゆして,何人かが卒先して欧米に留学した.やがてそれらの人々が帰国して,各地に近代麻酔の根がおろされた.昭和27年には東京大学,28年には東北大学に麻酔学講座が生まれ,29年には日本麻酔学会が発足した.わが国における近代麻酔の誕生である.

診療録 カルテを「利用」するために・1

診療録管理の現状と課題

著者: 高橋政祺

ページ範囲:P.60 - P.61

 「カルテは病院の宝である」とは,どの医師でもいうことで,病院の管理者ともなればこの保管の問題を考えない人はいない.カルテには病院で行われた医療のすべてが記載してあり,診療上はもちろんのこと,病院管理上,教育上,研究上,法律上,公衆衛生上欠くことができない重要書類である.
 ところが大切だ大切だといいながら,いわゆる「宝の持ちぐされ」で,せっかくの重要記録が倉庫に保管されたまま,ホコリをかぶっていることが決して少ないことではない.診療録管理の目的は「保管されるカルテから,利用されるカルテへ」ということであって,上に述べたようないろいろな利用目的を満足させるような管理体制を布くことにある.

購買・倉庫 購買・倉庫管理のポイント・4

生鮮食料品の購買倉庫—生鮮食料品の生かし方

著者: 佐野倫子

ページ範囲:P.62 - P.63

 いきいきと新しい食料品が生鮮食料品であることは申すまでもありません.
 生鮮食料品である以上,その新鮮さを給食に生かすことが技術であり,管理ではないかと考えます.

施設 施設部門の管理・5

空調時間(期間)をどう決めているか

著者: 石原英世

ページ範囲:P.64 - P.65

 病院において医療を行うためには高度の医療・看護の専門技術,各種医療設備の必要なことはいうまでもないが,病院の環境ということも間接的には医療に欠くことのできないものであり患者にとっては生活の場である室内環境についても医療サービスの面からも重要視されなければならないと思う.室内の環境は空気調和を人工的に行い快適なものとするわけだが,その空調を実施するに当っては空調開始の時間,停止する時間をどう決めるか,また空調をする期間をいつからにするか,終了はどうするかを決めることは管理上からも大切なことであり病院経営の面からも必要なことである.しかし病院の特殊性から考えると画一的に決めつけることもできないし,また設備の相違・地域・気候の差によって同一視できない難しさがある.

精神病院 精神病院管理の諸問題・4

院内作業の向上のために—併設精神科での一つのあり方

著者: 関本武司 ,   赤坂守保

ページ範囲:P.66 - P.67

 精神病院での配膳,保清,洗濯等等が作業療法という美名のもとに,病院の人手不足を補う,いわば労務,使役として行われていないかという疑惑がしばしば聞かれる.
 それはもちろん,外勤作業,院内作業も含めて,果たして「作業療法」なのか.当院精神科医師の見解では,それらの行為を「療法」と呼ぶことに疑問を述べている.しかし,職員とともに人間関係,疎通性,積極性,自発性等を改善する広義の精神療法活動の一環として,その意義は認めている.総合病院併設精神科とはいえ,併設の利点(全科の協力,外来が多い等)のほかに,単科精神病院のもつ機能をもあわせもつ,当院でのあり方を報告したい.

病院図書館

—松倉 豊治 著—「医事紛争—医療側の問題」/—天羽 敬佑 著—「ICU重症患者の看護と治療」

著者: 藤岡萬雄

ページ範囲:P.68 - P.69

教訓を与え反省を促す好著
 今や医事紛争は,われわれ医療に携わる者にとって,ゆるがせに出来ない大問題である.ことに最近の著しい紛争の激化と賠償金請求の高額化は,まことに寒心にたえない重大な社会問題である.本書の著者,兵庫医科大学法医学教授松倉豊治氏は,徳島大学から大阪大学に転じ,さらに現職に就かれた方で,大阪府医師会医事紛争処理委員会のメンバーとして,多数の事例の処理を手がけられたと承っている.本書は著者の深い学識と多数のケースを処理された多くの経験に裏打ちされた好著である.

中国の旅・3

熱烈歓迎

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.70 - P.71

北京市児童医院
 中国旅行の全体を通じて,大体,午前中は病院見学,午後は農村や工業団地,そして住宅・学校・図書館・工場,または名所旧蹟めぐりといったスケジュールであった.朝はたいてい8時から8時半に迎えの車が来る.普通ならまだしも,前の晩必ずといってよいほど何か行事があるから,日頃あまり早起きでない人間にとっては結構つらい.改めて日記を繰ってみると,各都市ごとに必ず行われる歓迎晩餐会のほか観劇・映画等々で,全く自由な夜は半月の間にわずか1晩だけであった.
 さて今日は北京市児童医院の見学である.ここは1953年から55年にかけて建設された小児専門の病院.言うまでもなく,15歳未満の子供を対象とする,北京市には,このほかにも区立の病院(120床程度)がいくつかあるらしいが,ほかの都市,たとえば南京や上海でも児童医院は必ず見かけた.わが国最初の小児専門病院として東京世田谷の国立こども病院ができたのが1965年であるから,この方面で日本がいかに遅れていたかを改めて思い知らされる.

トピックス

新しい病院形体の一例—埼玉県東岩槻診療所

著者: 岡田玲一郎

ページ範囲:P.72 - P.72

 われわれ社会医療研究所では,病院の経営や運営のみならず新しい病院形体や経営主体等について研究・開発している.病院形体や経営主体についても発想の段階では,数10のパターンが生みだされているが,その実現となると簡単にできるものではない.
 それは,われわれは研究機関であり,現実の病院の中で生活し,生産し,賃金を得ているわけではない.いわば,よそ者の発想だからである.しかし,理解のある経営者は,われわれの発想を買ってくれる.その1例が本例である.

病院建築・91

倉敷中央病院の中央滅菌材料センター—その計画と運営について

著者: 石原道子 ,   辻野純徳

ページ範囲:P.73 - P.79

使用者管理者の立場から
基本方針
 病院改築にあたって中央滅菌材料室の活動の基本方針を,より確実な滅菌処理,安定した物品の供給,作業能率の向上を目差すこととし,次の実施目標を作成した.
中材業務に対する信頼性の向上適性在庫管理の確立清潔管理の確立病院内他部門との効果的関連性の確立衛生材料,各種器材の標準化省力化運営経費の削減

私的病院運営のポイント

パート医師の集め方,使い方

著者: 岡山義雄

ページ範囲:P.80 - P.83

 今日,全国の多くの病院が慢性的ともいわれる医師不足の波をもろにかぶり,常勤医師の欠員をカバーするため病院管理上のさまざまな問題を克服し,ある程度の採算を度外視して,パート医師を雇用し,診療活動の補完に努めているのが現実の姿である.
 近年医育機関の増設が進み,やがて医師不足に終止符を打つ時代も,そう遠くはないが,現時点で日本の病院の常勤医が院長を含めわずか4名であることを考えるとまだ当分の間,特に私的病院でのパート医師の果たす役割は大きく,高く評価せねばなるまい.しかしまた病院運営上いろいろの難問が介在していることも否めない.

資料

東京都内精神病院の実態

著者: 土居健郎 ,   武井麻子 ,   白浜真理子 ,   鉅鹿健吉

ページ範囲:P.84 - P.89

 医療費,薬剤費,救急体制,医療過誤,副作用事故さらには人体実験問題など,医療全般にわたる深刻な問題が近年あいついでいる.その中でも精神医療の分野は,以上の問題に加えて,とりわけ,直接的に人権の問題がからんでいる.具体的にはその精神医療の実践の場としての精神病院が,これらの諸問題の批判の対象となっている.
 これらの批判は個別の病院や症例について,当の病院の姿勢や表面化した過誤を告発,追及する形をとることが多かった.この傾向はここ1,2年のあいだに,個々の症例の診療とくに薬物の使い方,看護,精神療法のあり方,そのための教育,実習のあり方というミクロな面の見直しへと深化されつつあり,一方マクロな方向では,不祥事件が発生する背景,それを許す教育や精神医療の社会的システムのあり方の検討へと視野が広がってきている.

読者の声

どのように院内のコミュニケーションを図るか,他

著者: 井上興嗣

ページ範囲:P.90 - P.91

 およそ病院ほど閉鎖的な部屋が数多くある職場はないように思われる.私どもの病院は,一般病床が250床の小さな病院であるが,たとえば,外来部門は各診療科別,事務部門は各部屋別というような分けかたをすると33のセクションに分けることができる.少し大きい病院になると,50から60くらいのセクションに分けられると思う.
 このように分かれ分かれになって日々の仕事に追われている人たちを,どのようにしてまとめ,どのようにしてそのコミュニケーションを図るか,これについては,どこの病院でもトップグループの方々の悩みの種であろうと思う.そのためには,機構の上で縦の命令系統を明らかにするだけでなく,各種の会議や文書による通知連絡・放送・掲示等いろいろの手段でカバーしようと努めているのが一般的である.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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