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雑誌目次

雑誌文献

病院36巻12号

1977年12月発行

雑誌目次

グラフ

小児専門病院へ転換—国立療養所香川小児病院

ページ範囲:P.9 - P.14

 国立療養所の重要な柱の一つであった結核対策は,医学・医療の進歩により年々実績をあげ,患者も減少してきた.その結果,現在,全国の国立療養所はその進路を検討し,新しい歩みを始めつつある.その中でも,早くから時代の趨勢を先取りし,また地域の医療ニードを的確に把握して,ユニークな転換を図ったのが国立療養所香川小児病院(久保融院長)である.
 この病院は,明治30年第11衛戌病院として創立され,その後,陸軍病院に,昭和20年に厚生省に移管され戦後設立の国立善通寺病院の伏見分院となり結核,精神神経科を担当した.さらに昭和31年に結核療養所に転換し国立香川療養所と改称,そして昭和50年4月より,国立で二番目の小児專門医療機関である国立療養所香川小児病院として新たに発足したものである.

抜群の経営手腕で静岡日赤を盛り立てて20年静岡赤十字病院院長 細川 一郎氏

著者: 渡辺進

ページ範囲:P.16 - P.16

 君は,私にとって文字通りの畏友である.年齢は私の方がだいぶ上だがほとんど時を同じうして同僚たるの栄を担い,それ以来その識見といい,経営の実力といい心から兄事して今日に至っている.このような友人を有することがまた私の誇りとも言えるのである.
 秀峰に囲まれた信州の出身.上田中学を経て慶応大学医学部を昭和11年に卒業された.自ら言われるように福翁独立自尊の理念を親しく体得されたことが,後年のご経歴と,故郷の山河と相俟って君の玲瓏たる人格の形成に役立ったものと思われる.内科教室では西野,大森,平井の3人の名教授の薫陶を受けられ,次で北支の戦塵を数年にわたって体験された.戦後は,引佐(いなさ)赤十字病院長から,須賀川の公立岩瀬病院長たること数年,その経営手腕を認められて昭和32年現在の静岡赤十字病院の2代目院長に就任されたのである,同病院は東海地方の名門であるが,当時その経営はほとんど危殆に瀕しているとでも形容できる状態であった.

病院の窓

ヘルスプランニングに思う—ソフトウェアの開発こそ急務

著者: 橋本正己

ページ範囲:P.17 - P.17

 交通と情報科学のめざましい進歩によって,世界は時間距離的にますます小さくなり,また資源,エネルギー,環境問題を契機として生態学的に"地球はひとつ"の理解が急速に拡がりつつある.加えて発展途上国の人口爆発,世界的な不況等によって南北問題は深刻の度を深めている.これらの動きは世界の保健問題にも鋭く反映し,今日WHOの最重点政策はプライマリ・ヘルスケアを焦点とするヘルスプランニング(以下HP)とヘルスマンパワーの開発を志向している.私は海軍軍医として約6年従軍し,復員後外科医から公衆衛生に転じ,その後30年を一貫して公衆衛生とくにcommunity health actionの立場からの実際活動,行政,研究および教育に取組んできた.このためWHOなどを通じて,世界各国の保健システムを見聞する機会に恵まれ,とりわけ最近の10年問はHPとヘルスマンパワー問題を主題として,各国を訪ね,あるいは国際的なワークショップやプロジェクトに参画する機会が多い.
 HPについては,60年代半ばにWHOが大きくとりあげるようになって以来,客国において失敗を含む多くの経験が積まれており,これらについてのWHOや各国の刊行物はすでに多数に上っている.とりわけHPのテクノロジーについてはジョンス・ホプキンスのグループ等によって,優れた成果が世に問われている.いうまでもなくHPへのアプローチも,それぞれの国の社会経済と政治的な条件を反映して決して一様ではない.

精神医療

病院の医療評価資料の調査

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.40 - P.49

 医療評価の必要性が叫ばれて久しいが,その難しさのために未だ実行の段階には至っていない.本調査は,まず医療評価の前段階ともいうべき評価資料の判断の基準を求めようと行われたものである.81病院から45項目について回答を得た.

座談会

精神医療—戦後の流れと今後

著者: 目黒克己 ,   竹村堅次 ,   後藤彰夫 ,   金子嗣郎

ページ範囲:P.18 - P.25

 精神衛生法が制定されて四半世紀以上経過する.その間,精神医療は発展してきたが,他方では医師と患者との関係を基底にして,さまざまな問題を招来してきた.それでは,今後行政の立場では何にどう対処し,また医療の側は何を課題として精神医療をすすめるのか.ここでは,戦後の精神衛生行政の流れを素描し,今後の課題を考察する.

ケース・レポート

新しい精神医療を求めて—同和会千葉病院での実践の中から

著者: 仙波恒雄

ページ範囲:P.26 - P.29

 まず,鉄格子と鍵をはずすことによって病院の旧態と取り組み,日常直面する問題に一つ一つ対応する.その実践を通じて,治療者と被治療者がお互いを信頼し,互いの鍵をはずすことによって,病院の体質を変えてゆく.

精神病院と地域医療

著者: 荒木邦治

ページ範囲:P.30 - P.34

 精神医療においても地域医療は必須のものとなっている.ただ,どこから,どういう形で着手するかとなると,まだまだ検討されねばならない.病院の開放ひとつにしても,社会の偏見と厳しい目とがある.では,熊木県では,どんな方法で地域精神医療を進めているか.事例を通じて報告していただく.

研究と報告

松沢病院における入院病棟の現況—ある民間病院との比較にて

著者: 高浜淑子

ページ範囲:P.35 - P.39

 東京都立松沢病院は,1879年に東京癲狂院として上野に創立され,現存の最古の公立精神病院として現在に至っている.
 近年の精神医療の動きとともに,そのあり方,役割が内外で論じられ,とくに児童専門の梅ケ丘病院を別とすれば,唯一の都立精神病院として,その動向が注目を集めている.

医療への提言(最終回)

医師づくり(II)

著者: 水野肇

ページ範囲:P.51 - P.54

人気職業ではすまない医師
 医師は生涯教育である.しかし,もともと能力のない者が,いかにコツコツと努力しても,医師として十分な力を発揮できるものではない.そこで,医師として将来やっていくためには,最低,この程度のレベルは持っていなければならないということをテストするのが,医師国家試験である.それに合格したところから「医師」という長い努力を必要とする職業がスタートするわけである.だから医学部の教育は,一人前の医師にするための教育なのではなく,医師として最低必要な知識と技術(それと人格なのだが,このほうは教育されていない)を教育しているわけなのである.
 周知のように,日本では高校を卒業して医学部に入学すると6年間(他の学部より2年長い)医学教育を受け,卒業すると医師国家試験の受験資格が与えられる.それに合格すると,医師免許証が交付され,そのあと2年間の卒後研修が病院で行われ,それからあとは一人前の医師として活動するというたてまえになっている.実際には,2年ぐらいの卒後研修ではとても一人前にはなれないので,免許をとってから少なくとも数年間は修業しなければならないのが現実で,多くの開業医は早くても卒業後10年ぐらいたってから開業しているのが現実である(この点は欧米とはかなり差があり,欧米は早い).

当直医日誌

国際電報

著者: 福井次矢

ページ範囲:P.57 - P.57

6月○日水曜日,晴れ
 昨日から62歳のアメリカ人,Mr.Fにかかりっきりである.9か月前にボストンで急性骨髄性白血病と診断され,化学療法により寛解を続けていたが,5日前商用で来日して以来,発熱と右上肢に皮下出血をきたし,ショック状態となって都内のホテルから運ばれてきた.入院時,典型的な敗血症性ショックの症状を呈し,種々の治療にもかかわらず血圧はどうしても80mmHg以上とならない.意識はやや鈍で下痢が続いている.今日一日中,医長のDr.Iがボストンの主治医と連絡をとったり,血小板輸血の準備をしたりで完全に振り回されてしまった.
 このような状況でも,当直の時間になると救急受診を求めて容赦なく電話が鳴る.梅雨に入ったせいか急性胃腸炎の症状を訴える者が多い.病棟の仕事で手を離せないことを説明し,来院しても場合によって少し待たなくてはならないことを納得してもらう.学生時代には胃腸炎などという病名を聞いたことはあるにせよ,なんら興味を示して勉強した覚えのない身にとって,臨床の場に来た当初は,最も多く遭遇する病気の一つであることが皮肉に思えたものだ.

院内管理のレベル・アップ 人事・庶務 庶務部門の諸問題・6

福利厚生のあり方

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.58 - P.59

福利厚生の現状
 福利厚生は法定内福利と法定外福利とに分かれている.ここで取り上げる福利厚生とは法定外福利と解釈して,以下その実態と問題点について述べてみる.
 福利厚生の内容は複雑多岐にわたっていて,これを明確に定義することはむずかしい.本来は使用者が被使用者に対して恩恵的に行っていたものであったが,これが最近では,①賃金をカバーする,②職員の定着性を図る,といった役割を従来よりもより多く果たすようになってきたことから,労働組合が賃金や労働条件の向上と並んで権利の要求として団体交渉事項にしつつあるのが現状である.

薬剤 薬剤管理概論・8

在庫管理(各論3)

著者: 岩崎由雄

ページ範囲:P.60 - P.61

購入注文書の適正度について
 前節(36巻10号,56頁)までは,経済的発注量は発注期間中の平均使用量より大きいという想定(過去のデータよりの実務的仮定)のもとに考えてきた.
 経済的発注量が10単位,補充期間中の平均使用量が3単位に過ぎない例は既述のとおりであるが,経済的発注量が補充期間中の予定使用量以下になることはままあることである.このようなケースでは,継続棚卸票からは,望まれる情報のすべては得られないのが現実である.

麻酔 麻酔部門の問題点・6

麻酔と医療過誤

著者: 青地修

ページ範囲:P.62 - P.63

麻酔科医独立の原点
 手術侵襲から患者の安全を護り,手術者の独断専行に対するcheck systemとしての地位を確立することが麻酔科医独立の原点である.さもないと手術前評価の不十分,術前準備の不足,手術着手時期の不適切,手術管理の不完全,過剰侵襲などの重大危険が存在することが経験的に知られているのである.だから麻酔技術の進歩は麻酔科医独立の原点からすれば二次的なものであると考えるべきである.かかる観点からこそ麻酔科医は手術室の内科医とたとえられたり,手術チームというオーケストラのコンダクターと評されたりするのであって,この原点に立つ限り密室の不祥事は起り得ないはずである.しかしながら麻酔がまた医療技術である以上麻酔に起因する偶発症を生じたり,医療過誤を起すことも避け得ない現実である.しかも麻酔科医が手術室外においてもその活躍の場を拡大している現況ではますます他科と同様な医療過誤の危険にさらされる状況を生じているのである.

病理 病院病理の課題・6

臨床家は病理医に何を望んでいるか—内科医の立場から

著者: 小田島秀夫

ページ範囲:P.64 - P.65

 内科医の立場から病理に対する要望ということであるが,内科医といっても,病理検査体制のしっかりした高度な病院の内科医,体制の不十分な病院の内科医,また個人診療所での開業医としての内科医と,その立場によって非常に大きな差違がある.筆者のいる国立仙台病院は,入院病床670,研究検査科の職員は34名,そして何より心強いことは,病理医3名を擁している.まず,この現状に到るまでの歴史的過程をふり返ってみる.
 まず病院病理医の業務を大きく分けると,剖検の業務,生検・組織診などのSurgical Pathologyの業務,および細胞診検査に区分されるが,後2者は,他の領域の臨床医からも触れられると考え,私はここに剖検の分野から考えを進めたい.

リハビリ リハビリテーション部門の管理・8

リハビリテーションにおける中間施設の意義

著者: 上田敏

ページ範囲:P.66 - P.67

 リハビリテーションの目的が患者(障害者)を社会復帰させることにあるのは,いまさらいうまでもない.ただこの場合の社会とは,病院から外に出さえすればよいというものではなく,その患者が本来属していた地域社会(家庭と職場を含んだ)に,できるだけ以前に近い座と役割とをもって,いわばもっとも有意義な形で復帰するのでなければならない.このような意味での社会復帰を促進するために,リハビリテーションの体系の中で重要な位置を占めてくるのが中間施設である.
 中間施設という言葉は現在厳密な定義がないままにかなりルーズに使われている.つまり,病院などの純粋な医療機関ではなく,一方老人ホームや託児所のような純粋な社会福祉施設でもない,その両者の中間にあるような性格の施設をすべて中間施設と呼んでいることがかなりあるのである.その場合には特別養護老人ホームや障害者授産所のようなものも含まれ,非常に広い概念となる.ここでは社会復帰という見地から,「病院から地域社会への復帰の中間における通過施設」の意味に限定して述べることにしたい.このような意味での中間施設には①デイ・ホスピタル(day hospital),②ナイト・ホスピタル(night hospital),③ハーフウェイ・ハウス(halfway house)の3者が含まれる.

看護婦長日誌

教育担当婦長として

著者: 内藤寿喜子

ページ範囲:P.72 - P.72

10月○日
 今日から看護婦対象の講習会"救急蘇生法シリーズ"が始まる.教育担当婦長に就任してはじあての本格的プログラムなので,その成果が気になる.日ごろ,現場からきこえてくる声を中心に,救急に関する内容を1回1時間半で6回に分けてみた.
 対象は,経験1年から1年半くらいの看護婦約30名.このような講習は1回行えばそれでよいというものではなく,毎年毎年繰り返されなければ効果はないと思う.

私的病院運営のポイント 座談会

私的病院の現状と今後の方向

著者: 高山瑩 ,   福井順 ,   岩井宏方 ,   一条勝夫

ページ範囲:P.73 - P.79

 本欄も初期の目的からすると不十分ながら,約2年に亘り,運営のポイントを紹介してきました.連載終結にあたり,私的病院の運営に活躍なさる三先生にお集りいただき,私的病院のもつ問題点と今後のあり方についてお話しいただいた.

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「病院」 第36巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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