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雑誌目次

雑誌文献

病院36巻2号

1977年02月発行

雑誌目次

グラフ

大阪東南部に堂々たる呼吸器病センター—大阪府立羽曳野病院を訪ねて

ページ範囲:P.9 - P.14

 近年,官公立病院の第二次,第三次医療施設としての機能整備が進められている中で,国公立の結該療養所は,わが国の結核人口の減少とともに大きな転換を迫られているといえるが,現状は必ずしもうまくいっていない例が多いようである.その点,ここに紹介する大阪府立羽曳野病院は,結核診療の進歩に合わせて,結核対策の変換を図るとともに,一般呼吸器疾患,アレルギー,膠原病を3本柱とする関西地区のセンター病院に見事な転換を遂げた好個の例とみることができよう.
 羽曳野病院は大阪府にある4つの府立病院(大阪成人病センター,大阪府立病院,羽曳野病院,中宮病院(精神))の一つで,昭和30年代には1,000床を有する府立療養所羽曳野病院として,関西地区における結核対策の技術的な中枢であったが,昭和38年頃より,結核患者の高齢化とともに合併症や慢性閉塞性肺疾患などの増加傾向が見えはじめたので結核の他に一般内科,小児科,皮膚科,眼科,耳鼻科などを逐次増設していった.昭和48年には地上12階,地下1階の堂々たる新病棟を完成,病棟とは別棟の診療棟(本館4階建)にはRCUをはじめ,オンラインシステムで作動する各種医療器機を配置して呼吸器病センターとしての陣容を整え,現在入院患者は結核700床,一般300床でほぼ満床,風光明媚な河内平野(大阪府東南部)の一画に新設医大なみの威容(敷地57,316坪)を見せている.近い将来研究所の併設も子定されている.

人間味あふれる知性で三重県の医療行政をリード三重県・遠山病院院長遠山豪氏

著者: 吉岡観八

ページ範囲:P.16 - P.16

 寡黙,潔癖,小事にこだわらずまた花を愛し思いやりのある硬骨漢.しかし,いったん口を開くと理路整然,何ものも恐れず格調高き論理を展開する.医の倫理を説き,人の道を実践し,自ら名利に走ることを忌み,条を枉げることに加担しない.近年ますます重厚さが加わってきた.
 あの眼光紙背に徹する瞳,理知的な思慮,古武士の風格はこのことを物語っている.氏は,医学者であり,医療社会学者であり,また人間哲学者であり,識者の評価は極めて高い.三高より昭和10年京大医学部を卒業後,真下,辻教授らの指導にて内科学を専攻,21年三重大学教授として遠山内科講座を開講,昭和30年大学人であることを捨て,遠山病院を開設し,地域医療福祉に全力を傾注し三重県の医療行政の顧問格として多くの職責を完遂している.

病院の窓

天下り院長の功罪

著者: 守屋博

ページ範囲:P.17 - P.17

 病院活動の成否を決定するものは,その集団組織力の威力のいかんによるものである.集団の中心は何といっても院長でなければならぬ.院長の采配いかんによって,病院活動が伸びるも止まるも,我々はしばしば目にしているところである.
 院長の起用にはいろいろのパターンがあるが母校の停年教授をそのままもらってくるのもその一つであり,むしろ一番多いケースではないだろうか.大学の有力関連病院の場合に見られる.これらの有力病院は,各大学にとって付属病院と同様に研究,教育の場であり,各部長は教授級の大物を配置しているので,当然大学の大物教授を充てねばおさまらぬ.

ケース・レポート 老人医療

地域病院における老人医療—京都・堀川病院の間歇入院,訪問看護から

著者: 竹澤徳敬 ,   谷口政春

ページ範囲:P.18 - P.22

 老人医療費無料化の頃から,この病院も他の例にもれず,老人によるベッド占有が行われ,地域の中核病院としての機能が麻痺寸前の状態に追いこまれた.しかし,その後,地域ぐるみの老人問題研究会が生まれ,間歇入院,訪問看護,在宅卒中患者の会などの活動を進めていく中で真の老人医療への道が拓かれてきた.

組織と教育

病院の職員教育—その理論と体験

著者: 岡田玲一郎

ページ範囲:P.23 - P.27

 職員教育とは誰のためにするのか.労務管理の一環として,院長のために院長に都合のいい教育をするのだろうか.それとも患者によりよい医療を提供するための教育だろうか.中小私的病院では経営抜きにものを考えることはできないから,確かに経営効率を考えた教育が行われるかもしれない.しかし,原点は何人かが働くこの病院,この組織が生き続けていくためにという発想ではないかという.

病院災害

水害から病院を守って—土佐市民病院の経験

著者: 下保登喜夫

ページ範囲:P.28 - P.32

 一昨年夏,土佐湾を襲った台風5号と6号によって土佐市民病院は地階と1階水びたし,病院機能の全面的マヒ状態という,かつて経験したことのない被害を蒙った.その被害の実状と困難をきわめた復旧作業の生々しい経験をレポートしていただいた.

ホスピタル・トピックス

病院給食の根本的な質改善を目指して—福祉食品流通研究会開かる

著者:

ページ範囲:P.27 - P.27

 昨年11月21日,東京都茗荷谷にある拓殖大学ホールにおいて,全国の病院栄養士,調理士など病院給食関係者を集めて,福祉食品流通研究会(代表世話人:榊田博日本バプテスト病院長)が開催された.この研究会は日本病院会,日本栄養士会が共催し,日本ボランタリーチェーン協会,流通システム開発センターなどが後援している.
 近年,病院給食の貧困化の原因として,医療費に占める給食費の低さ,院内給食部門の地位の低さなどが,大きくクローズアップされている中で,従来の病院給食を食材流通などの面から根本的に見直し,病院給食の質向上を目指して,その全面的なシステム化を図ろうというものである.当面,病院給食の現状分析をもとに,食品流通改善のためのマニュアル作成を急いでおり,システム・マニュアル作成委員会(委員長岸根卓郎京大農学部教授)が発足している.

建築

明治村の病院(2)—名古屋衛戍病院

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.64 - P.64

 明治村には,赤十字社病院のほかにもうひとつ病院がある.名古屋衛戍病院である.これは現存するわが国の病院建築の中では恐らく最も古いものであろう.なにしろこの建物が名古屋鎮台病院として名古屋城内三の丸跡に建てられたのは明治11年である.鎮台はそれより少し前,明治6年に置かれたものであるが,21年になって陸軍はその制度を大きく改め,近衛ならびに第1から第6までの師団編成とし,東京・仙台・名古屋・大阪・広島・熊本の各市にそれぞれ師団司令部をおいた.これに伴って鎮台病院も衛戍病院と改称された.そして,これらはやがて陸軍病院,戦後は国立病院へと引継がれてきたのである.
 ブロックプランは,正に典型的なパビリオンタイプで,正面中央に管理診療棟をおき,そこから北に延びる2本の渡廊下からそれぞれ3棟の病棟が東と西に張り出されたものであった.昭和39年,国立名古屋病院の構内から,ここ明治村に移築されたのは管理診療棟と病棟の一部ならびにそれらをつなぐ渡廊下のごく一部分である.

海外レポート

カナダ,アメリカの小児循環器医療とシステム

著者: 大国真彦

ページ範囲:P.33 - P.37

 現時点において,循環器疾患の診療のためのスタッフと設備が良くそろった病院を最も多く持つところといえば,まず第1にアメリカをあげることに異論を唱える人は少ないであろう.世界的に名の通った人も多く,また世界各国よりこれらの施設に留学する人が非常に多いことからもこれはうかがえるものである.
 そういうことから,このたび小児循環器医療施設および小児救急医療施設視察団が結成され,1976年8月に2週間をかけて6つの病院を訪問したので,その際見聞したことおよび感じたことについて述べる.

アメリカの医療を垣間見て

著者: 小野肇

ページ範囲:P.36 - P.37

 昨年の夏,われわれはU.S.A.Health Service Survey Tourを組織し,アメリカの医療施設などを訪問したので,その印象を簡単にご紹介する.
 ニューヨークメジカルセンターにおいてMr.Joseph V.Terenjio(Pre-sident of United Hospital Fund),Mr.Irvin G.Wilmot(ExecutiveVice President)その他から講義を受けたが,大学病院等の管理運営や救急医療などはmedicare;medicaid対策として出発したPSRO,保健計画,資源開発法などに大きく影響されるであろう.これらの法律を無視して大学病院の経営はありえないと言い,AMA, AHAに対して言外に不満を述べていた.Mr.Wilmotはレセプションの席上,私に日本も数年後には米国同様,入院制限の方向に向うのではないか,米国の轍を踏まないようにすべきであると語った.

座談会

都市と救急医療

著者: 西邑信男 ,   岡村正明 ,   平石浩 ,   戸川達男 ,   古川俊之

ページ範囲:P.38 - P.47

 都市においては,人口の集中とともに,種々の医療施設なども集中し,一見便利なように思われるが,その複雑化はさまざまな歪みを生じ,特に救急医療などシステム化を要する分野では,とかく問題を複雑化しがちである.ここでは主に東京都が抱えている救急医療の実態を分析し,都市における救急医療体制の道をさぐっていただいた.

当直医日誌

はじめての連直

著者: 亀井徹正

ページ範囲:P.49 - P.49

○月○日土曜日晴
 2日連日で当直を組まれることは普通ないのだが,今日,明日は僕の始めての連直である.と言うのは,一度経験したかったし,また,受持ち患者の一人が状態が悪く,のんびり週末を過ごすわけにはゆかないからである.幸い,新人のレジデントが2日とも付いてくれることになっている.その一人のDr. Mが鼻歌を歌いながら当直室に入って来た.今日は,めずらしく静かな当直なのだ.この数日,当直は荒れに荒れて,外来に精神分裂病が飛び込んで来たり,入院患者が頓死したり,心臓神経病の患者から毎日のように電話で明け方に起されたりしているのである.
 土曜日というのは不思議な日である.翌日病院が休みであることが患者を不安にするのか,夜中になって電話の問い合わせや,比較的軽症の外来受診が多いのである.しかし今日は,夕方に急性胃炎の患者があっただけで,午後9時過ぎの今まで何もない.病棟も落ち着いている.

院内管理のレベル・アップ 放射線 放射線部門の管理・5

フィルムのマイクロ化の試み

著者: 榊原聰彦

ページ範囲:P.50 - P.51

 医療高度化に伴って,X線診断の行われる機会が増加し,それと共に撮影されたフィルムの蓄積も急速に大きくなりつつある.フィルムは撮影された時点の患者の状態を客観的に示しうる貴重な資料であり,したがってカルテその他の検査データと共に日々診療にあたって,有効適切に使われなくてはならないことは申すまでもないが,また一方後日の再使用のためにも注意深く整理保存されるべきであろう.つまり十分な診療記録の管理を行わなくてはならないのであるが,これら資料の量は膨大であり,現物のままそれを保持するには大きな格納スペースと多くの人手を要するので,このような希望を実現することは必ずしも容易ではない.
 さて在来,現像室を出た撮影フィルムは,主治医のもとに送られて利用され,保管され,当面不要となれば順次倉庫入りとなって,一定期間経過後は事情に応じてしかるべく処分されることが通常であったと思う.しかし,そのやり方では,相互連絡の困難さのために担当医以外のフィルム利用の円滑を欠き,不要の撮影の原因となり,あるいは紛失散乱を来たし,また不統一に倉庫に送られたフィルムは雑然と山積みされて死蔵としか申しえぬ状態になってしまうこともしばしばあった.加えてフィルムは診療上の資料であるばかりでなく,教育にも,研究にも得がたい財産であるため,もし可能ならば法定期間などに関わることなく,そのすべてを長期間保存したい希望がある.

リハビリ リハビリテーション部門の管理・6

中規模一般病院でのリハビリテーションの運営—代々木病院理学診療科

著者: 二木立

ページ範囲:P.52 - P.53

代々木病院理学診療科の概況
 財団法人代々木病院は渋谷区千駄谷にあり,内科・外科を中心に10診療科,195床の中規模一般病院である.創立は1946年で,民間病院としては比較的古い.が,リハビリテーションの歴史は浅く,意識的に取り組み始めたのはこの数年であり,まだすべての面で小規模である.
 スタッフは,半専属医(内科と兼任)が1名,非常勤(週3回)の理学療法士,作業療法士がそれぞれ1名,半専属のソーシャル・ワーカーが2名,それに3階病棟(後述)所属の看護婦が13名である.訓練室は病室を改造したごく小さなもので,平行棒や訓練用ベッドなどを置くのがやっとである.そのために,歩行訓練や階段昇降訓練はまだ病棟の廊下,階段を利用して行っている.もちろん理学診療科の独立した病棟はなく,内科病棟である3階病棟(35床)の一部,大体10床前後をあてており,年間の入院患者数も30名強にすぎない.患者は大部分が脳卒中片マヒで,しかもその過半数が65歳以上の高齢者である.その他,パーキンソン氏病,慢性関節リウマチ,多発性神経炎等を少数扱っている.

施設 施設部門の管理・6

病院の災害防止対策(基本編)

著者: 辺見九十九

ページ範囲:P.54 - P.55

 「災害は忘れたころにやってくる」とか「地震カミナリ火事オヤジ」などという名言があるが,火災,風水害あるいは地震または各種の災害が頻発して,尊い人命や財産が失われており,静かで安らかであるべき入院生活に大きなショックと不安を招いている.火災の場合ほとんどが人為的な原因により発生しており,しかも施設の不備のため出火するに至っている経緯などの多くを見るので,火災の予防に対する人々の認識とその実践こそ防火の礎をなすものであると思う.したがって私たち医療従事者はいかなるときでも絶対に病院の火災は起さない,また起すべきでないと深く痛感するものである.
 当院の防災対策ともいうべき消防計画の大要を述べる.病院または診療所などの防災対策の基本として参考になれば幸いと思う.

購買・倉庫 購買・倉庫管理のポイント・5

物品管理のコンピュータ化

著者: 寺田清

ページ範囲:P.56 - P.57

 病院の業務は診療を中心として,多種多様に分かれ,いくつかの部門が形成され,これらが相互に関連し,日常多くの情報が頻繁に往来伝達されているが,その複雑な活動の中心となる情報の発生源は患者であり,情報は医師と患者の対応によって発生する.そしてこの患者に関する情報が,各部門に伝達されながら加工処理されると共に部門固有の情報として蓄積され,さらに関連部門へと伝達されて行く.すなわち,情報の発生源,収集元である患者を中心として病院の運営管理が展開されるのである.
 近年,新しい情報革新時代を迎えて,医学・医療ことに病院運営の領域にコンピュータを導入して新しい形の病院管理システムを開発し,活用しようという気運がみられるようになった.

麻酔 麻酔部門の問題点・2

麻酔医の養成と人員管理

著者: 浅山健

ページ範囲:P.58 - P.59

 専門の麻酔医の足りぬことがようやく表立ってきた.たとえば51年8月15日付の朝日新聞は「大阪大学法医学教室が全国43施設で調べた最近10年間の医療事故死474人の内訳をみて,麻酔によるものが180人と最も多いこと…」,この調査を担当した四方教授の「麻酔専門医が不足しているため」との記事を掲載した.他方,武見日医会長は"安心できる救急医療"(昭和51年8月20日付日医ニュース)で救急病院で手術を行うには,麻酔医がいなければできないと記した.
 さて,需給が緊迫しているところにはさまざまの狂い現象が生じる.たとえば悪名高い麻酔のアルバイト診療であり,自分の勤務する大学の医局や大病院での麻酔需要を横にみて,他の中小病院へ出張して報酬を受け取ることが行われている.このアルバイト麻酔医を受け入れる中小病院では,麻酔医が"人員管理"の外に置かれている好ましくない現象が生じている.なまはんかに管理権を持ち出せば,翌週からこのアルバイト出張がなくなって,病院の手術ができなくなるのを恐れるわけである.

病院図書館

—菅谷 章 著—「日本医療制度史」/—M.Jones 著 鈴木 純一 訳—「治療共同体を超えて—社会精神医学の臨床」

著者: 砂原茂一

ページ範囲:P.60 - P.61

病院の役割を考える基礎に
 今日の医療にはあまりにも問題が多すぎる.そのため私たち医療人は目の前に山積みされたムジュンとのカクトウが精一杯である.医療の,ことに日本の現代医療の形成の歴史を振り返って,そこに今日の矛盾の源泉を探るだけの余裕をほとんどもっていない.

中国の旅・4

自力更生

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.62 - P.63

上海の病院
 上海は東京やニューヨークと並ぶ巨大都市である.北京をワシントンに譬えれば,上海はニューヨークに当る.もっともこんな比喩は中国にとって不本意かも知れない.
 話をわかりやすくするために,医療施設をも含めて上海と東京とを比べてみよう.

病院建築・92

所沢市市民医療センター

著者: 浦良一 ,   波多野雅彦

ページ範囲:P.65 - P.70

はじめに
 市民医療センターの前身,市立所沢病院は,昭和5年に伝染病院として開設されたものである.その後,一般患者に対する診療もあわせて行われるようになったが,最近にいたってその老朽化は著しく,市民の間から,都市化に伴う救急医療体制の確立と医療施設の整備・充実が強く望まれるようになった.
 そこでここにあった国立所沢病院の移転新築を契機として,跡地(27,218 m2)を利用した新病院の建設が企画され,市民医療センターが発足した.私はその設計に参加する機会が与えられたので,以下本医療センターの設計上問題となった諸点について述べたい.

医療への提言・8

医療のタテ社会的要素(II)

著者: 水野肇

ページ範囲:P.71 - P.74

"全力投球"を要求される医師
 「医療」のなかには,論理だけで割り切れないものが存在していることを前回指摘した.それは,ある場合には,科学プラスアルファと呼ばれたり,別の見方をすれば,プラシーボや自然治癒,あるいは医師と患者の人間関係のなかに,それが存在しているともいえる.こういったものを医療のタテ的な要素と呼ぶことができるのではないかと思う.私自身の考えをいわせてもらえば,医療の場合,どうもこのタテ的な要素が"核"のようになっているように思える.すべてのことには,多かれ少なかれタテ的要素がからんでいるのは事実だろうが,多くのことは論理で割り切ることができる.別のいい方をすれば,契約社会的なものとしで割り切れる.
 医療の場合も,医師の側から,医学を科学と規定して,その範囲内だけの論理で割り切れば,それほどなまぐさい,ぎらぎらしたものにはならない,たとえば,コンピュータ診断で,コンピュータのはじきだした数値が現代医学の限界だと考えれば,割にらくに診断をつけることができる.その範囲を越えたものは,致し方ないのだと思えば,なやみは少ない.ところが,医療がややこしくなるのは,いつの場含でも"全力投球"を医師に要求されることである.全力投球はできる範囲以上のものを期待されることもある.しかし,科学の世界では,できるものとできないものとの間には厳然として区別がある.そこを区別があるとは,なかなかいえないわけである.

私的病院運営のポイント

院内情報伝達のあり方

著者: 中山耕作 ,   大塚暢

ページ範囲:P.75 - P.76

 病院が成長発展することは,病院をささえるすべての職員が,共通の目的のもとに一糸乱れることなく結集して,積極的に医療活動を展開することにより初めて可能となる.
 ところがこのような歩みを積み重ね,順調に発展し,大病院と呼ばれるようになった病院が,突然ゴタゴタを起し,活力を失ない,沈滞してしまうことがある.

研究と報告【投稿】

病院内感染防止委員会の設立と活動

著者: 藤岡一郎

ページ範囲:P.77 - P.81

 諸種の医事紛争が激化を続け,病院内感染に原因するトラブルも近年次第に増加して,将来が憂慮される.院内感染の被害は,外科,内科,産科など特定の分野に止まらず,全部の領域に発生しうる.患者の安全防護を前提とする"医の倫理"に照らしても,感染軽減の対策実行は病院全体の共同責任である.この重要課題を再認識する病院が,ようやく増加中とはいうものの,わが国各地の現状から判断するに,組織管理上の観点から適切な措置を講じている病院は未だ限られている.
 院内感染の予防対策は,限定された部署のみで行われても目的を達しえず,全部門で調和よく総合的に実施する必要がある.したがって,対策推進の第1着手は,感染防止委員会の結成から開始すべきである.

読者の声

もう一度後方を振り返れ/病院図書室のかたすみから

著者:

ページ範囲:P.83 - P.83

 最近できる病院は,みな実に立派で,特に大都市の病院は,われわれ地方の病院にくらべるとまるで別世界のような感じがする.冷暖房完備で,ICUとかCCUとかいった設備も整い,医療機械なども,1台何千万から何億もするようなものが揃っている.そのために,建設費や運営費にも莫大な金がかかるようになり,それが最近の国民医療費の急増の大きな原因にもなっている.この勢いがこのまま続いたらどうなるだろうかと思うと空恐ろしくさえなる.
 確かに,それは病院医療の進歩と言ってもよいだろう.しかし,社会全体として見た場合,果たしてそこに問題はないかどうか.もう一度反省してみる必要はないだろうか.前進することはいい.また必要でもある.しかし,もしそれによって,後方の部分に対する配慮が失われ,そこでの働きの重要性が忘れられることになったとしたら,社会は,得たものよりも余りにも大きなものを失うことになるだろう.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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