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雑誌目次

雑誌文献

病院36巻3号

1977年03月発行

雑誌目次

特集 勤務医

私的病院における勤務医

著者: 川内拓郎

ページ範囲:P.19 - P.22

 時代の流れと科学,医学の進歩により,人の意識構造に多分の変化のあることは認めなければならない.しかし医師の患者とその病気に対する意識には必ずしも著しい変化はないであろう.物質文明における貨幣価値の恐ろしさは若い医師,特に勤務医にも価値観に多少の変化をもたらしたかもしれない.私もかつて軍隊より復員した直後より,大学の医局に入局し,同時に済生会中央病院へ出張の勤務医を経験した.もちろん終戦後の医局と戦後30年を経た今日の医局とは著しい変化もあり,大病院における勤務医の態度も変ったことであろう.しかし昔を思い浮べて,現在とあまり変っていないと思われるいくつかの点がある.また最近20年間,病院を経営してみて,私立中小病院の勤務医について,多少気のついた点もあるので合せて述べてみよう.

公的病院における勤務医—農山村病院の特殊性

著者: 冨田重良

ページ範囲:P.23 - P.28

 公的病院としては,都道府県,市町村の設立になる公立病院のほかに,日赤,済生会,北海道社会事業協会,厚生連,国保連の経営する病院があり,さらに広義には共済組合,健康保険組合等が設立したもの,また国立,公社立はもちろん,国費で設置された社会保険病院,厚生年金病院,船員保険病院などが含められ,その立地条件も大都会,中小都市,農村とさまざまで,その規模内容も多岐にわたっている.
 したがって,県立病院にしか勤務したことのない私にとって,この表題で公的病院の勤務医像全般にわたって代弁しうる自信は毛頭ないが,幸いに,都会地の高度医療機能病院である兵庫県立尼崎病院に在籍した経験もあり,かつ,現在もっとも問題を抱えた農山村病院たる県立柏原病院に勤めているので,同じ公的病院でありながら性格のまったく異なるこの2病院を対比させて,公的病院における勤務医像の一端に触れてみたい.

大学病院における勤務医—歴史のある大学病院と新設大学病院の較差

著者: 正津晃

ページ範囲:P.29 - P.32

 大学病院勤務医の実情は,国立大学と私立大学,歴史の古い大学と新設大学でかなり異なっている.一方では若手医師があふれて,少数の患者しか受け持てない.また中堅クラスの医師はよいポジションを得られず,自分の能力を十分発揮しえないまま大学病院とパートをかけ持ち,それがまた若手の昇進を妨げている現状である.他方では少数の医師で,診療,教育,研究に追われているが,近い将来卒業生が出,これを受け入れる時のことを考えると,現在は苦しくても定員増は認め難いという状況にある.しかし実状は異なっていても,大学病院勤務医は他の勤務医とは異なった共通の意識構造を持ち,自分の将来像を描いているといってよい.これらの点を含めて,大学病院勤務医の実状を述べてみたい.

大学病院における勤務医—慶応大学病院の場合

著者: 熊谷義也

ページ範囲:P.34 - P.35

大学病院の機能
 大学病院における医師の役割は大別して,4つに分けられる,主なる業務は無論「診療」であるが,他に「学生教育」と「研究」があり,これらを総合して運営させる「管理運営」がある.これに卒後の教育を加えると正確には5つの役割があると考えてよいだろう.
 それでは,これらの5つの役割ごとに医師が配属されているのかと言えば,そうではない.それらの役割のどれかに重点をおいて,各人が研究,教育,診療の3つの大きな役割を重複してこなしているのが現状であり,しかもそうでなくてはならない.教育だけをして診療も研究もしないという人は,よほどの高齢者を除いては考えられないし,研究だけをしていればよいという人もいなかろう.

勤務医の給料

著者: 鈴木裕万

ページ範囲:P.36 - P.40

 今回「勤務医の給料」というテーマのもとに原稿依頼を受けたものの,勤務医全般について取り上げるには資料不足と共に,限られた紙面のこともあり,公務員医師の給料に限定して,その基準ならびに条件設定の違いがなぜ生じるのか,またその基因するところは何か,ということを中心に検討してみることにした.
 特に,自治体病院の医師確保に際しての難易については,その病院の所在する地域によって非常に異なっており,その原因についても論じてみた.

医師のライフサイクル

著者: 中野進

ページ範囲:P.41 - P.43

 近年,各地の医師会で"勤務医対策"という言葉がしきりに使われはじめた.福岡市医師会では「きんむ医」と題する独自の部会誌を発行しているし,京都府医師会でも「勤務医の意見と要望について」というアンケートを実施し,開業医師と勤務医師との意見交流を試みている.
 医師会という組織は,そのタテマエはともあれ,実態は開業医師の集団である.その医師会がなぜ勤務医問題にまで目を向けなければならないのか?まず考えられることは,医療構造・医療技術の変化にともない病院・勤務医師との連携(病院と診療所の協力といってもよい)なくして,十分な治療がなしえなくなっていることが指摘されよう.

アンケート

院長からみた勤務医

ページ範囲:P.44 - P.46

 病院の中の人の管理で,いちばん問題が多いのは医師である.それは医師の業務が主体的,独自的であって,組織の一員として共同的に仕事をするのに合致しないためかもしれない,わが国の病院は,アメリカのように医師団を別扱いにしているのではなく,勤務医として医師を雇用しているので,勤務医に対する問題は少なくない.
 そこで勤務医に対する院長のご意見をうかがいたいと思い,アンケート調査をした.ご回答いただいたのは,300床以上の公的病院で,国立7,公立5,国保3,厚生連2,その他3の計20病院である.病院数は少ないが,生の状況を知るのに役立った.ただ対象病院が一応病院管理が実践されている病院であるので,なにか模範回答のような印象も受けるが,逆に一流レベルの病院でもこのような問題点があるということを知るのも参考となるだろう.

グラフ

遠大な構想から新たな岐路に—琉球大学保健学部附属病院

ページ範囲:P.9 - P.14

 「琉球大学に医学部を設置する」という昭和40年の佐藤総理大臣の発言に端を発した保健学部と病院の建設計画は,その後「大学病院の地域化,地域病院の大学病院化」という理念を根底に基本構想が作成された.これは新那覇病院として建設が進められたが,45年琉球大学付属病院となり,さらに47年の本土復帰に伴い,琉球大学保健学部附属病院となった.総理府から文部省管轄へというこの過程で,行政側の相違が如実に現れ,沖繩の特殊性を考案した基本構想も,単なる「本土なみ」に平均化され,200床の増床計画もコンピュータを活用した「近代化」への道も閉ざされてしまった.
 その結果,21世紀を志向した病院自体に将来への希望を失わせ,沖縄の医療のみならず日本の病院医療のリーダとして位置づけようとした機能画でも相当の欠陥が生じ,単に国立大学病院なみの,さらに医学部病院と保健学部病院との格差は,国の予算面にも病院の機能面にも顕著に現れ,保健学部の病院としての機能しか果たしえなくなったのである.

救急医療センター運営の支柱熊本赤十字病院院長河北靖夫氏

著者: 山崎徳二

ページ範囲:P.16 - P.16

 先生は,昭和6年に熊本医科大学を卒業後直ちに,当時すでに,わが国における臨床血液学の大先達であられた小宮悦造先生の門下に入られ,昭和13年には助教授に進まれたが,師弟の情の厚いことで,小宮—河北のコンビは有名であった.当然のことながら,小宮先生ご退官後は,そのあとを継がれ,昭和22年教授となられ,その後26年間にわたり,第二内科教室という大世帯の主宰者として,教育,研究および臨床に専念され,大きな業績をあげられた.ついで昭和48年ご退官になるや,救急医療を主目的として,新装なった熊本日赤病院の院長として,衆望を担って迎えられた.
 先生は,温容の示すがままに,温かく,慈愛に溢れ,人を容れ易く,しかも堅実で自らを律することのきびしいお人柄である.熊本日赤病院が,救急医療センターとして,24時間体制をとり,一丸となって,使命感に燃えながら,医療に専念している姿は,誠に感激にたえないものであるが,その精神的な統合の象徴として,先生の存在がなくてはならぬものであろう,現在のいろいろ困難な問題を抱えている救急医療において,体ゴトに,ブチ当てながら,仕事している若いスタッフを見守っておられる先生のお姿,先生の瞳は,温かくうるんでいるのではなかろうか.これは旧い門下生の独語である.

病院の窓

病院の公共性と地域性と

著者: 若月俊一

ページ範囲:P.17 - P.17

 昨年(11月23日)私は12チャンネルのテレビ番組に出された.それは特集「頼れる病院ありますか」--なぜ進まない地域病院計画--という番組である.スポンサーは健保連.司会は南田洋子.ゲストとしては医事評論家の岡本正氏と全国自治体病院協議会会長の諸橋芳夫院長と私という顔ぶれである.
 論じられたことは,国民は今,「公的病院」を頼れる病院として要求している.病院にはその他に私的病院がたくさんあるが,患者の立場からいえば,設備も高度で,専門科をたくさん具えた公的な病院がほしいのである.どうも私的病院となると,利潤追求が先になりやすく,いわゆる不採算部門に属する高度医療は避けている.頼りにする気になれない.--という一般国民の,いつわらざる感情をもとにして,さまざまな問題が議論された.

病院の協力

仙台私的病院懇話会18年の歩み

著者: 佐藤俊樹

ページ範囲:P.32 - P.33

 各地域で共通の悩みを持つ病院同士が互いに協力し,勉強会等を開いている.この仙台の例はひとつの先達である.

ホスピタル・トピックス 薬剤

病院管理と薬の安全性(その1)

著者: 久保文苗

ページ範囲:P.43 - P.43

 近年急速に進歩した医薬品には生体の機能に対する作用の強力なものが多く,それだけ優れた効果が期待できる半面,いろいろの有害作用も多く,危険性も大きいといわねばならない.
 薬の進歩の面のみを眺めると,急性・慢性の各種感染症に対する抗生剤をはじめとする化学療法の進歩,chlor—promazine以後の各種精神病治療薬の進歩,数多くの成人病治療薬の開発など,いずれも生命の尊重に貢献した人類の英知の成果として高く評価することに何人も異論はなかろう.ことにわが国民の平均寿命が,男女ともに世界のトップの座に近づきつつある裏には,医薬品の進歩が重要な役割を果たしてきたことは疑いのない事実である.

当直医日誌

突然死のあった当直の一夜

著者: 亀井徹正

ページ範囲:P.49 - P.49

○月○日土曜晴れ
 もう1年目のレジデントは1人で当直をしているのだが,偶然居合わせた私が手伝うことになった.大変な当直の一夜であった.
 午後7時30分.帰宅前に当直室の前を通りかかると,当直のDr.Hにつかまってしまった.やや興奮した面持ちで,彼は一気にまくし立てた.胸水のために夕方,一般病棟に入院した患者の脈が遅いとのレポートを受け,心電図をとったところ,脈は40/分以下で不整,良く分らない,どうしたら良いかとのことである.週末なので,相談相手が誰もおらず困っていたらしい.心電図では大変な洞性徐脈で房室逸脱が認められる.明らかな心筋硬塞などのパターンはない.患者の意識は良い,すぐCCUに移しモニターする.幸い,アトロピン,イソプロテレノールに反応したが,ペースメーカー挿入の適応と判断された.不幸なことに,きょうは循環器系専門のDr.NもDr.Iもいないのだ.僕1人ではちょっと自信がない.

院内管理のレベル・アップ 給食 病院給食をおいしくするポイント・5

温食に挑戦しよう!

著者: 最勝寺重芳

ページ範囲:P.50 - P.51

 病院給食全体の悪いイメージを払拭するのに,あとどのくらいの年月を要するであろうか,と考えたとき,われわれ直接担当者にとってはさびしい気分に包まれるのである.しかし……
 これまで指摘した要因は,病院給食部門の外周囲に目を向けたものが多かったが,今回は,温いものが食べられるための発想の転換を狙って記述してみることにした.

薬剤 薬剤管理概論・5

在庫管理(理論編)・3

著者: 岩崎由雄

ページ範囲:P.52 - P.53

管理カードによる常備量係数の求め方
 現在コンピュータ処理をしているので(ある程度以上の規模の病院では),以下に述べるような手順を手計算する必要はないが,コンピュータ導入のないところ,あるいはコンピュータがあっても,インプットデータの基本の理解のために,計算手順を一応説明する.

リハビリ リハビリテーション部門の管理・7

地域とのかかわり

著者: 今田拓

ページ範囲:P.54 - P.55

リハビリの名を借りた収容
 日本の病院はわが国の医療制度の枠の中にあって,閉鎖的にならざるをえない宿命を有している.病院が地域とのかかわりをもつとすれば,一般にはせいぜい外来という不特定の対象しか考えられない.村の役場に住民の健康台帳があって,それがそのまま病院のカルテになっているともいわれる岩手県沢内村の地域保健計画は,まことに理想的な無駄の少ないモデルと思われるが,これが私たちの一般の地域にあてはまるまでには幾多の難しい問題が介在するだろう.
 しかしリハビリテーション(以下リハビリ)というひとつの流れの上から考えると,病院は地域とかかわりあいを持たざるをえないのである.近年病院の中にリハビリ部門が設けられたり,リハビリ専門病院が誕生したり,また社会福祉施設や保険施設の中にリハビリを指向する多種のものが次々と作られている.これらの大部分は患者や対象者を収容してサービスすることが前提となっているため,表向きリハビリという標題はあっても,実際は収容ということが現実の目的となってしまっている場合が多い.長期間の入院をしていた結果,遂にその患者の住所は病院の住所と同じになっている場合は決して少なくないのである.このような場合病院は援護のみを行う社会福祉施設とあまり違わない目的しか果たしていないことになる.

診療録 カルテを「利用」するために・2

MDカラーコードによるファイリング

著者: 伊藤雄次

ページ範囲:P.56 - P.57

はじめに
当院で採用しているカラーコードに基づいた中間位桁分類法(MiddleDigit Filing System)は末位桁分類法(Terminal Digit Filing Sys-tem)と同じくかなり以前から欧米諸国の保険会社,一般企業等の資料管理の最良の方法として普遍化していたが,簡単で,迅速性があり,正確なファイリングができる利点を,大量の診療記録を有する大病院が注目し,1951年ごろからそれを採用し,現在では数多くの病院によってこのシステムが用いられている,わが国においてもこの数年来,新設医大病院を中心にこれらの方法が採用され運用されており,かなり一般化しているが,まる5年の使用例を持つ当院の使用報告を兼ね大方のご批判をあおぎたい.(なお文中に用いる中間位桁分類法はMDとし,末位桁分類法をTDと略す.)

ハウスキーピング ハウスキーピングの向上を考える・5

害虫の駆除—とくにゴキブリについて

著者: 近藤英二

ページ範囲:P.58 - P.59

『聖路加さん,あなたのところの害虫,とくにゴキブリ退治は,なかなかうまくいってるという話ですがそれを聞かせて下さいませんか.』
「いや,うまくいっているかどうか,わかりませんが,何しろ,ゴキブリは,人類がこの地球上に現れる以前,3億年も前からいるのだそうですから,そう簡単にはいかないですよ.でも,ひと時,猖獗を極めて,病院のあちらこちらでその横行が指摘され,本来,夜行性であるのが,昼間でも,見られるようになってしまった状態の時,私に何とかせよといわれ,これを完全とはいえませんが,鎮圧することができただけですよ.」

病院図書館

—芝田 進午 編—「医療労働の理論(双書現代の精神的労働4)」/—川上 武 著—「転換期の医療—低成長下の医療問題」

著者: 藤田栄隆

ページ範囲:P.60 - P.61

歪んだ医療体制への問題提起
なじめないその理論
 「医療労働の理論」といった堂々たる習作に書評を書くような柄でもないし,"病める"医療体制の中で,必死になって病院を守りぬこうとあがいてきたような私などに,このような立派な理論をとやかくいう資格はないかもしれないが,あえて私見を述べさせていただく「あつかましさ」を許してもらいたい.
 私も実をいうと,"病める"医療に対しては自分なりに「改革」の必要性,喫緊性を人一倍痛感しているつもりであるが,これを階級闘争に帰結しようとする芝田氏の理論構成にはどうしてもなじめないものがある.

中国の旅・5

中西医結合

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.62 - P.63

長江大橋
 洛陽から南京へは夜行寝台列車で行った.北京→鄭州に次いで2度目だから大分物慣れた感じで気分的にも寛いだ旅である.食堂車での夕食をゆっくり済ますと,ベッドの一隅にたむろして,またもや見てきたあれこれについての議論に花が咲く.中国産のブランデーが一座の空気を一層賑かにする.
 列車には「軟車」と「硬車」がある.われわれ外人はすべて軟車らしい.日本流にいえばグリーン車であろうか.これの寝台は「軟臥車」である.寝台のない普通の「硬座車」の方は大分混んでいる様子だ.

一頁評論

心理学者から見た医師

著者: 早坂泰次郎

ページ範囲:P.64 - P.64

 何年か前,まだ幼稚園児だった息子を抱いてある大学病院の救急外来に駈けつけたことがある.うちの食堂で椅子ごとひっくりかえって頭を打ち,様子がおかしくなったのだ.素人目にも脳振盪を起したらしいとわかった.私は平素看護婦さんたちと接触が多く,その病院でも総婦長をはじめ婦長やスタッフに知人はたくさんいた.誰かに電話を入れておけば心強いのだが,ちょうど日曜日で,ままならなかった.しばらく様子を見ていたが,やや状態が落着いたので,念のためにみておいてもらおうと,車で駈けつけた.
 病院に着き,やっと呼ばれて診察室に入ると担当の若い医師が全く無愛想にこちらの説明を聞いていたが,それでもレントゲンを撮ってくれた.現像ができるのを待つ間に,こどもはいつもの元気をとり戻していた.現像ができ,再び診察に呼ばれて,レントゲン所見では何も異状が認められないことが告げられてホッとしている私には全く無断で,その医師は立会っているナースにこう言った.「ルンバールの用意して.こどものルンバールできるかい?」ナースは一言も答えなかった.私はその無言が自信のなさのせいであるのを感じた.

病院建築・93

病院の騒音

著者: 伊藤誠 ,   山田由紀子

ページ範囲:P.65 - P.70

1.はじめに
 騒音というには当らない程の音でも心理的には相当気になることがある.それが高じて苦痛になることさえあろう.病院では,ことに入院患者からこのことがしばしば言われる.この問題に建築の側から対応しようとしても,微妙な心の動きにかかわる問題だけに解決はなかなかむずかしいように思う.
 しかし,これとは別な騒音--物理的に明確にそれと認めることのできる音--についても現に問題は多い.全館空調の採用,新しい機器の導入,診療の多様化に伴う職員や患者の移動の増加等々,院内の騒音源は著しく増加してきている.それに加えて,交通騒音など外部からの問題も深刻になりつつある.それにもかかわらず,これらを解決するのに必要な基礎データは未だにはなはだ不十分である.

医療への提言・9

社会的選択を迫られる医療

著者: 水野肇

ページ範囲:P.71 - P.74

 医学が発達すればするほど,社会との接点が難しくなってくる.医療技術としては可能なレベルに達していることでも,それを実施していいものかどうかをめぐって議論がおきる.臓器移植や人工臓器の国際学会では,提出される議題の60%以上が社会との接点をテーマにしたものである.この問題は,1960年代の終わりに「心臓移植」が実施されて以来,引きつづき議論の対象となっているが,全般的には,心臓移植手術は実施されていない.しかし,このような医療の根本を考えさせられる問題は,このところ非常に増えているように思われる.このような問題は快刀乱麻に解決できるものではないと思うけれども,考え,悩み,模索することによって,医療に対する心がまえのようなものができてくるのではないかと思う.そこで,このような問題をいくつか考えてみよう.

私的病院運営のポイント

看護婦養成に関する諸問題—事務長の体験から

著者: 千葉諭

ページ範囲:P.75 - P.77

 私が准看養成の問題に取り組んだのは,病院に勤務して2年目の今から約15年前のことである.
 遠く岩手県,青森県下まで足をのばし,寒風吹きすさぶ中,あるいは吹雪の中を若さにまかせて歩き回った.当時の准看養成の主力はなんといっても中卒であり,各地区の職安との連係プレーによって幾多の中学を訪問し,相当な成果をあげた.いま,東京で養成された彼女たちはそれぞれ故郷に帰り,結婚をし,かつ家庭と看護職を両立させていると風の便りで聞いている.それから数年間,中卒の准看養成者の募集は続いたが,時代とともに募集も少しずつ困難になり,奨学資金制度による2年間の義務年限が資格取得後の定着に災いしたのか,義務年限終了とともに退職,帰省というパターンができ上り,それが,病院の内部,特に看護婦上層部より養成期間と資格取得後の勤務年限との関連,あるいは,その間の教育努力等に対する批判が起り,長年の准看養成を打ち切らざるをえない状態にたちいたり中断を余儀なくされた時代があった.

精神医療

外来診療とデイ・ケア—世田谷リハビリテーションセンターの経過から

著者: 蜂矢英彦

ページ範囲:P.78 - P.82

精神障害者のための中間施設として昭和47年10月に開設された都立世田谷リハビリテーションセンターは,わが国には例の少ない試みだけに注目されている.4年間の報告から,主にデイケアのあり方を探ってみると……

研究と報告【投稿】

MGHの放射線科システム—コンピュータによる予約,フィルム保管

著者: 稲本一夫

ページ範囲:P.85 - P.87

 X線フィルムの完全な保管と利用は,放射線診療にとって久くことはできない.その前提として,1患者1番号制の採用が必要であり,ファイリングの方法として,Terminal Digit方式が提唱されている1)
 フィルムを集中保管すれば,その利用と検索が能率よく行われるが,ファイルの貸出し,移動を正確に把握し,迅速に診療側の要求に応じていくには,非常に熟練した事務員の忍耐とモラルが必要である.日増しに増加するファイル量に応じて業務は多忙になり,やがては単に人員の増加だけでは解決できず,より能率のよい方法が求められる.コンピュータを利用したシステムが必要となるのである.そこでこの方画では,現在最も進んだシステムを有するMassachusetts General Hospital(MGH)2-4)の放射線科システムを紹介し,参考に供したい.

読者の声

病棟計画のPPC指向,他

著者: 勝村一郎

ページ範囲:P.88 - P.89

 入院病棟というと患者が1日中ベッドで横たわっていると思いがちだが,現実には多くの自由に動き回れる人達がいて暇を持てあまし,廓下を動き回っている.ほかに場所がないから食事・談話・読書・喫煙・テレビ・ラジオ・ゲーム等から着替えまですべて自分に与えられたベッドとその回りの狭いスペースで行っている.このような現実が病人にとって望ましいのか,不満はないのか,病棟に何が欠けているかを探る必要があると思う.
 現在の病棟は看護単位により成り立っている.看護単位は直接病棟の計画を左右し,その変遷と共に変化する.戦後わが国の病院は大きく変革したが,同時に病院建築にも大きな変革を要求した.しかし歩行患者の割合が75%にのぼる現状の中で,患者の1日24時間の生活の場として病棟を見直す時期に来ているのではなかろうか.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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