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雑誌目次

雑誌文献

病院36巻7号

1977年07月発行

雑誌目次

特集 各部門の能率の図り方

部門管理の問題点と能率評価の考え方

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.43 - P.46

 古くは医師のSolo practiceから発した医療も,医学医術の進歩の結果,近代的病院医療という高度に専門分化した,技術の複雑かつ精緻な組織的行為に発展してきた.限りなく専門化し分業化した結果,多くの技術部門と多種類の専門職種とが形成され,それぞれがひとりの患者を中心とした医療の一節を担当し,それなりに高い機能と役割とを分担するようになった.専門化,分業化は,社会産業の事業遂行における大規模生産,能率化,合理化に伴う自然的必然的動向であり,近世における経済的発展の基本条件であった.医療もこの例外ではなく,医学医術の進歩発展,そしてその社会的適用としての医療の質的向上の原因でもあり,結果でもあった.
 しかし医療の分野における専門化,分業化は,一般産業部門のそれとはいささか異なった傾向がある.それは,一般産業における技術的分化にくらべて,各専門部門における自己発展と進歩の動機が強いことである.

1.検査部門

内部,外部要因の点検と解決

著者: 水田亘

ページ範囲:P.19 - P.22

 中央検査室制度が全国的に普及し始めたのは昭和30年頃からであるが,この時期が医療の急激な進展と重なったため最近10年余の間に臨床検査は質,量とも対数的増加を示し,翌年の仕事量を予想することすら困難な現状である.仕事量をカバーすべき技師の増員は,病院の現況からなかなか思うにまかせないのが各病院検査部の共通の悩みであろう.幸いなことに,この間衛生検査技師,臨床検査技師制度も生まれ技師のレベルの向上,尿検査に始まる簡易検査法の進歩,検査試薬のキット化,ディスポ器具の普及,検査機械の進歩など年々能率化の材料も豊富に出回ってきたので,どうにか潜在的な人手不足にも耐え,不満足ながらも医療の一員としての責を果たしているといえよう.当科10年間の集計をもとにして,能率化のために投じた手段とその評価について次に述べる.

2.放射線部門

自動化と患者サービス

著者: 虎渡勇二

ページ範囲:P.23 - P.28

 「放射線部門の能率の図り方」について書けと編集の方に言われた時,一瞬戸惑いを感じた.なぜかというと,放射線業務は(一部を除き)ほとんど患者さんが相手であって,検査物や検体ではないからである.
 一般企業の言葉に聞くような生産管理を完璧にしさらに合理化することによって,生産を上げ,利益の増大を狙うような形態を医療の中に受け入れることは大変難しく,サービス業としての医療においては,いろいろ批判もあって困難ではないかと思う.
 しかしそれでは能率を上げるための合理化をすることはできないかどうか,を考えて見ると,現在の段階でも結構自動化されたものが相当数ある.将来はさらに合理化に向うのが必須である.

3.リハビリ部門

リハ医療の正しい理解が前提

著者: 三島博信

ページ範囲:P.29 - P.32

 このテーマの目的は,「総合病院のリハビリテーション診療部,あるいはリハビリテーション専門病院を運営する時に,どのように能率化したらよいのか,またあなたはどんな基準で自己評価をしているか」ということだと思う.
 こんな明白なことを,あらかじめ前置しなければならない理由には,①"リハビリテーション"に対する人々の考え方があまりに多様であり,その認識に差異がありすぎること,②その運営の能率化とは何を指向しているかという点についても,いろいろな多角的な面からの評価があるはずだからである.たとえば,医療水準の向上を図るためにするのか,リハビリテーション部門の効率的な利用を考えるのか,より経済性を重視しているのか,というような点についてさえ,社会的なレベルでする場合と,1つの病院や総合病院の1部門の立場からする場合とがあると思う.

4.薬剤部門

薬品費の効率と調剤待時間の短縮

著者: 田口英雄

ページ範囲:P.33 - P.34

 病院の薬剤部門の仕事は,患者に良い「くすり」を正しく用いられるように提供することであると思う.そのためにこの部門の職員は,薬品の管理,調剤,製剤,試験・研究,薬品に関する情報活動などの仕事に従事しているが,ここでは,薬品費の効率を上げることと,外来患者の最大の苦痛である調剤待時間の短縮について考えてみようと思う.

5.給食部門

量よりも質の改善

著者: 鈴木啓二

ページ範囲:P.35 - P.38

 病院における給食部門の能率の図り方と自己評価について述べる前に,病院給食の現状を理解されその上に立って本論に入らなければ,単に能率を図ることがすべての改善につながるという誤った方向で理解される危険性が病院給食部門の場合,考えられやすいので特にお断わりしておきたい.

6.医事部門

各単位事務別の検討

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.39 - P.42

医事部門事務の能率とその内容
1.医事業務の能率とは
 病院のあらゆる部門にわたって行われている医療事務は,医療と患者に関する事務を総称しているが,医事部門で扱う事務はそのうちの一部であり,医療事務のうち主として同種で多量のものを中央化したものである.この医事部門事務を通常医事業務と呼んでいるので,以下,医事業務という用語を使うことにする.
 医事業務が医療事務の中央化したものであるならば,それ自体が本来合理化の所産ということになり,そこで行われている事務は合理的処理を目的としているものと考えてよいものである.病院内に医事業務システムがとられて早や20数年を経ているはずであるが,われわれが当時経験した医事業務と現在のとではあまりに大きな変化がないことに気がつく.本来,合理的処理が目的であった医事業務システムに変化がないということは,医療それ自体の進歩を考えると,医事業務が遅れていると考えてもよいものである.医事業務は,患者や医療に関するもろもろの事項を取扱うところにその特色があり,しかも,それを能率的に処理することに存立意義を見い出すことができるのである.本題の自己評価を考える場合には,そこにポイントをおくことになる.

グラフ

新しいシステムのオープン病院—仙台市・鶴ケ谷オープン病院を訪ねて

ページ範囲:P.9 - P.14

 仙台の市街地から北東へ向けて,車で20分も行くと,10年ほど前までは雑木林にすぎなかった地域に広々とした団地群がひらけてくる.起伏の多い広大な土地に,さまざまな規模,形の団地の棟が広がり,各ブロックの中心には市民センター,小中学校,ショッピングセンター,銀行,郵便局などが集中している.これらに近く街路樹の美しい舗道の一角に,内科,小児科,産婦人科,眼科,耳鼻科,歯科などいくつかの診療所の建物がモダンな装いを競うように並んでいるのが目につく.わが国初の公設民営といわれる鶴ケ谷オープン病院は,3つのこのような診療所群に囲まれて建っている.しかしこの病院はこれら3つの診療所群のみのためのセンター病院として構想されたわけではなく,仙台市の全医師会員のためのオープン病院として,仙台市が土地と建物を提供し,その管理運営は医師会主導の公益財団法人に委ねられるという,いわば新しい型の医師会病院である.したがってこのオープン病院に対する医師の登録は任意であるが,仙台市医師会会員546名の過半数に及ぶ285名に達している.鶴ケ谷オープン病院はシステム化を志向した地域医療の拠点として,またグループ診療による医師会員相互の新しい卒後研修の場として,全国的に注目を浴びており,昨年7月のオープン以来,見学者の絶えることがないという.

慈父とも慕われ病院と共に46年福井赤十字病院院長柳武夫氏

著者: 小山三郎

ページ範囲:P.16 - P.16

 温厚篤実という言葉は先生のためにあるように思う.接する者をすべて温く抱擁して溶けこませる.慈父のごとく慕われ,先生のいる限り全力投球で勤務すると誓う職員が多いというほどの強い指導力の持ち主である.
 大正15年京大医学部を卒業後松尾内科に入局,昭和5年7月に福井日赤病院の内科医長に着任以来46年,その間院長職にあること28年,人生の大半を福井日赤病院の発展のために歩み,国ならびに地域医療に貢献された功績は枚挙にいとまない.46年の在職中には火災,震災,戦災と度重なる災厄に会いながら病院を復興して今日の隆昌に導いた.その偉大な業績は厚生大臣賞を始め,知事,市長,日赤社長,県医師会長の度々の表彰,藍綬褒章,勲三等瑞宝章の受章が証明している.現職の日赤病院長中の長老,常にわれわれを指導,啓発してくれ,われわれの敬愛の的であって日赤には無くてはならぬ貴重な存在である.

病院の窓

病院機能とコミュニケーション

著者: 堀内光

ページ範囲:P.17 - P.17

 科学は常に分化の方向を辿る.医学もまたこの方向を辿り,現在病院には多くの診療科目が並んでいる.同じ診療科目の中でもあるいは臓器別,あるいは疾患別に専門を分けている.医学が発達した1つの姿と考えられている.確かに昔は治らなかった疾病が現在は治るようになり,多くの人がその恩恵に浴している.一方医学の発達とともに病院の機構も次第に複雑さを増してきた.病院ほど多種類の専門職を擁する企業はないと思われるほどである.高度に発達した医学を医療の場に適用するには,それに応ずる組織,体制が必要であり,それに応えた組織医療の姿である.
 しかしここで問題となるのは専門職のもつ欠点である.専門バカという表現もあるように,自分の専門以外のことに関心が少なく,専門以外のことを知ろうとせず,理解のないものが増えている.人間社会において,ある狭い分野だけが他と関係なく独立して存在するということはありえない.まして患者という人間を相手とする医療の場においては,いかなる職種にあろうと医療という大きい目的を達するために,それぞれ責任を分担しているのである.組織医療は組織全体が医療の目的に動いてはじめて達成される.そのためには専門職である各人が組織の中でいかなる位置にあるか,いかなる任務をもっているかを自覚しなければならない.

ニュース

—合同後はじめての学会開かる—第1回診療録管理学会

著者:

ページ範囲:P.32 - P.32

 去る5月20,21日の両日,東京平河町の砂防会館ホールにて,第1回診療録管理学会(会長日野原重明聖路加看護大学校長)が開かれた.今回の学会は従来,別々に学会を開いていた日本診療録管理士研究会と日本診療録管理士協会が合同してはじめて行われたもの.2日間で一般演題18題,特別講演,パネルディスカッション等が行われた.若い診療管理士を中心に診療録管理に関心のある医師,看護婦が集まり,会場からの発言も相次いで活発な討議が進められた.
 1日目の特別講演「職業とコミュニケーション」(国際キリスト教大学斎藤美津子氏)は,コミュニケーションの重要性について表現豊かに話され,聴衆を魅了していた.また2日目のパネルディスカッション「診療記録は誰のものか」は,大渡順二氏が診療録は患者のものである,ただしその意味は患者と医療機関の人間関係ができた上での共有であること,そしてこの診療録管理を受身から能動的なものにして健康台帳を作ることを提唱された.それに対し,各パネラーからは診療録が患者のためにあるのは事実だが,患者のものとは言いきれず,病院に属するのではないかとの発言が多かった.その他診療録管理士から,誰でもわかるような書き方をしてほしいという初歩的な指摘もなされた.

読者の声

看護管理は武士道か—大谷昌美の婦長論

著者:

ページ範囲:P.42 - P.42

 偶然,病院(第36巻第5号)の大谷昌美の巻頭論文だけを読んだ.第一に,編集部がこの論文を巻頭においたことに注目させられた.そして,アンダーラインをひきながら読んで行ったが,真に楽しく,わかりがよく,教示深いものであった.どこ一つ省略すべき点もないと思ったし,しかも,一部の考え方を述べられたものとも思った.わかりがよいということは一見,平凡なものになろう.『真の思想家とは「一見,自明な平凡なもの」に見える』ということで,マルクスもカネッティもそういう人にあたると着田行一が書いていたが,この論文を読んで岩田の言葉を思い出した.
 看護管理の技術と看護婦同志の人間関係についての問題を特に述べていられると思ったが,この二つをはっきりと区別しておられるのかどうか,その点が疑問として残った.「学習の終極の目的は自己啓発であり」というところの「自己啓発」の中に何か倫理も含めて言っていられるように感じたのは私の間違いであろうか.技術と倫理,科学と倫理の区別,これについて,マルローの言葉を申し上げたい.

当直医日誌

—産婦人科当直日誌より—「新しきもの」その2

著者: 正田滋信

ページ範囲:P.49 - P.49

 2月○日日曜日どうやら外妊破裂をきたしたらしい.ただちに輸血を開始する.麻酔医は,アメリカ帰りのDr.Oである.Dr.Oは,覚醒状態で挿管するという.awake intubationである.full stomackの患者の気管内挿管において,挿管前に嘔吐して誤嚥することが最も恐ろしいからである.麻酔の教科書に書いてあったのは覚えていたが,実際にみるのは初めてである.最近は,同じawake intubationでも,NLAなどをうまく用いることにより,患者の苦痛をかなり取り除き,しかも患者の協力も得られる方法が確立してきたが,当時はまだ完全覚醒状態での気管内挿管が一般的であった.
 それはさておき,意識のある状態で気管にものを入れられるのであるから,それは患者にすれば苦痛極まりない.見ているこちらも,喉にものがつかえた時の苦しさを思い出してしまった.そうしているうちに,Dr.Oは難航しながらも無事挿管をおえ,麻酔に入った.Dr.Kの指示により,再度ダグラス窩穿刺を施行,今度は20mlの血液が難なくひけた.腹部の膨隆状態からすると,2,000ml以上の腹腔内出血が疑われたため,血液銀行に連絡,血液の追加を頼む.いつものことながら,救急手術になると血液銀行のTさんが呼び出されるのであるが,嫌な顔一つせずわれわれに協力してくれる.

院内管理のレベル・アップ 診療 医療業務の標準化・1

医療業務の標準化とは何か(1)

著者: 榊田博

ページ範囲:P.50 - P.51

医療業務の標準化はなぜ遅れているのか
 医師は医療チームにおける中心的役割を果たす責務に任ぜられる.診療計画の設案,診療業務の処理にさいして,医師も組織の一員として組織体の管理のもとにおかれる.したがって診療業務も目的に応じて情報を集めて対処するよう看護部門その他とのコミュニケーションを密にして,その業務処理過程を合理化すべきである.
 病院ではつとに,看護部門において包括医療のうちに位置する組織と,24時間を通じた勤務体制のもとに,業務の標準化,組織化につとめ,患者の状況に応じて段階的に看護する管理体制を確立している.これに反して医師の診療は,医師個人の判断や裁量に任されていて,医療の近代化に即応しない面がある事実を否定できない1).むしろ医療業務は,その都度,個々の状況に対応して判断を必要とするので,標準化の原理を持ち込むのは不適当であるとの考えが支配している.

病理 病院病理部門の課題・1

病理科の設置と病理医の認定制度はなぜ必要か

著者: 石河利隆

ページ範囲:P.52 - P.53

はじめに
 数年前,日本内科学会が,内科専門医を育成できる病院の資格条件として,内科の剖検率50%以上,年間剖検数20体以上という項目を取り入れたことがきっかけとなって,一般病院の病理解剖が急に増加した.しかし,病理医の数は,剖検数に比例して増えるわけではないので,病院病理医にかかる負担は急に重くなった.また大学が病理医を育成し,病院へ派遣することも,すぐには実現できない状況下で,病院で孤軍奮闘している病理医の悩みは,深刻なものとなった.
 その頃,日本病院病理医協会の主催で病院病理医業務振興に関する討議会が開かれた.

会計・経理 会計・経理事務の問題点・6

資金繰り表作成上の留意点(1)

著者: 酒泉春雄

ページ範囲:P.54 - P.55

 現在の病院財政のように資金が恒常的に窮屈な場合には,資金繰り表の果たす役割は極めて重要であるといえよう.
 すなわち金融繁忙の時こそ資金繰り表はより一層の正確さと緻密さを要求され,また一歩これを誤れば経営の破綻を来すこととなる.

診療録 カルテを「利用」するために・4

診療録室と医局の交渉上の問題点

著者: 三竹年世子

ページ範囲:P.56 - P.57

診療録室の成立事情の日米の違い
 日本に診療録管理ということが台頭してきた昭和30年代には,診療録は医師個人の所有物という考えが強く,その頃,ある新設の病院で診療録の中央化をうたったら,その病院への赴任をとりやめた医師があったというほど,診療録の中央化ということに対して医師の理解がなかった.しかし,20年を経て診療録管理が普及した今,その中央化というのは常識になってきているが,その内容の細部に及ぶ理解となると,事務部門はもちろん,医師側にさえどこまで理解されているか疑問である.診療録室がどんな活動をし,またどんな風に発展していこうと考えているかということについて,今後診療録士の一人一人が医師にダイナミックに接して,その理解度を深めてゆかなければならないのではないだろうか.
 アメリカの診療録管理は,その歴史的事情から見ても,専門医養成といういわゆる医師側の必要性から発達してきたものと思われる.それに対して日本の診療録管理というのは,どうも多くは各病院でカルテの置き場と整理に困ったという次元の低い所からおきてきたような気がする.その辺の発祥のちがいから,医師の診療録室への協力と結びついて来ないのではないかと思われる.

薬剤 薬剤管理概論・6

在庫管理(各論1)

著者: 岩崎由雄

ページ範囲:P.58 - P.59

在庫の分類
 一般的な在庫分類について述べよう.ABC分類制度(重点品目分類)でABC systemといわれているものである.その基本はQCのパレート図法の適用である(注:原著は,H.F.Dickie:Factory Management and Maintenance.Six Steps to Better Inventory Management, 1953).結論を図1に示す.
 ABCの各品目グループは表1のとおりである.たとえば,在庫使用金額の70%を占めているグループをA,20%を占めているものをB,10%(残り)をCグループとする.

放射線 放射線部門の管理・7

放射線技師の確保とその教育

著者: 大内周信

ページ範囲:P.60 - P.61

日本病院会での勉強の歴史
 日本病院会放射線部会の定例勉強会の中で,「新人確保とその教育」について昭和45年に,次いで,昭和49年には「放射線技師の確保とその教育」,さらに昭和51年,新人技師の採用と定着性」と過去3回同じような内容の勉強会が繰り返し行われました.
 昭和45年最初に勉強会が行われた頃は,新規卒業の技師数が医療施設の需要に全く追いつけず,限られた数の技師を多くの施設で奪い合いをしていた時代である.それが2回目の勉強会を行った昭和49年になると新規卒業の技師数が若干増えて,採用状況は好転しはじめたが,定着性が悪くどのようにして定着性を良くするかを考えなければならなかった.昭和51年3回目の勉強会では,大病院,中病院における技師の採用にはあまり困難を伴わない時代となったが,一部の小病院では,現在もなお,技師不足は解消されないままの状態が続いているようである.3度繰り返して行われた勉強会の中で,一番問題になった点は,「医療の質を確保するために」パラメディカルの一員として診療放射線技師は何をなすべきなのかという点である.

看護婦長日誌

人と人との間—手術部

著者: 近森芙美子

ページ範囲:P.64 - P.64

母親になった看護婦
4月○日
 「おはようございます」とC子が爽やかな顔で私の机の前に立った.いつになく早い出勤(?)と,思う間もなく,「おかげさまで産後の育児時間が終りました.今日から平常勤務になります.どうも長い間ありがとうございました」という.「ああ……」と私も,瞬間,納得の笑顔になり,「これからも頑張ってね」と彼女を励ましながら一種の感慨が胸の裡をよぎった.
 ちょうど去年の今頃,C子をはじめとして,私の職場の若いナースが次々と結婚し,ほとんど同時に3人が妊娠した.3人目から,妊娠の申し出があったときはさすがの私も大きな息をつかざるを得なかった.横浜市の場合,妊娠と同時に1日1時間の時差出勤が認められ,産前8週間,産後8週間の産休,そして生後1年3か月までは毎日1時間の育児時間が認められている.働きながら出産,育児をするのだから当然これだけのことは考えてあげてもいいのだが,3人重なるとなると,これはキビシイ.しかも3人とも,手術室を出たくないという.私も覚悟を決めて,自分なりにこれを受けとめてみようと決意した.限られた人員の中で,これらの3人が孤立しないためには,他の同僚との間に本物の連帯感が問われることになる.私は,この出来事を,妊娠者側と,これを受けとある側と,双方いずれも大差ない若者同志であるだけに,今後相互の関係にどんな変化が起るかを注意深く見守ることにした.

今月のニュース

アジアで初めて開催第20回国際病院学会

ページ範囲:P.65 - P.67

 第20回国際病院学会(20th Inter-national Hospital Congress)が,去る5月22日から27日までの6日間.ホテルニューオータニ(東京)を主会場として開催された.国際病院学会はロンドンに本部を置くIHF (国際病院連盟)が2年に1度開催するもので,世界の病院・医療関係者が,研究の成果を発表し互いの情報を交換して病院の使命の遂行と医療の進展に貢献しようというもの.
 今回は,アジアで初めての開催であるが,フランス,オランダ,ブラジル,アメリカ,オーストラリアなど海外から60数か国,約1,600名が参加した.

"看護の限りない可能性を求めて"をテーマに—ICN第16回大会開かる

ページ範囲:P.68 - P.69

 世界看護婦協会(ICN)第16回大会(会長ドロシー・コーネリウス女史)は去る5月30日から6月3日までの5日間,東京・千代田区九段の日本武道館を主会場に世界80数か国から1万2千人の参加を得て開催された.今回の大会はアジア地区でははじめてのものであり,また新しい試みとして国際看護学生大会が開かれるなど,話題多い大会となった.
 5日間で,開会式,会員協会代表者会議,学術集会など多彩な催しが行われたが,特に6月1-3日の学術集会の全体会では「世界の国々の新しい看護」「看護教育の変化とその方向」「看護婦の専門職業人としての責任の新局面」の3テーマがとりあげられ注目された.

「'77国際モダンホスピタルショウ」幕とじる

ページ範囲:P.70 - P.70

 "のびゆく医療,明るい未来"をテーマに,去る5月26日から31日の6日間,東京・晴海の国際貿易センター新館で開催された「'77国際モダンホスヒタルショウ」は,折からの国際病院学会,国際看護婦協会大会の参加者をも多数集め,かつてない盛り上りをみせた(主催:社団法人日本病院会・社団法人日本看護協会・社団法人日本経営協会).展示規模も,出品社139社,展示実面積約2,000m2,出品点数約5,000点と,前回を大幅に上回り,特に米国,英国,西独,フィンランド(政府参加)からは14社の直接出品もあって,名実ともに国際的な催しとなった.入場者についても総数171,600名.そのうち海外70か国からの来場者は3,680名であった.
 特に多くの人の足を止めたのが「世界の看護展」——約40か国から寄せられた看護学校教科書や,制服のミニチュア,写真パネル等が展示されていた.そのほか付帯事業として①「モデル病室展」,②「日本の鍼コーナー」,③「医療情報システム展」,④「病院建築パネル展」,⑤「家庭ホスピタルコーナー」,⑥「献血コーナー」,⑦「医療関係図書コーナー」が行われた.

病院建築・97

北海道立小児総合保健センター

著者: 浦川満

ページ範囲:P.71 - P.76

基本構想
 北海道衛生部において基本構想が立てられた.その要旨は以下の通りである.

医療への提言・13

緊急問題(I)

著者: 水野肇

ページ範囲:P.77 - P.80

早急に策定されねばならぬ医療政策
 「医療」には,世界中の国が苦悩している.激増する医療費と,変動する社会への対応策に鬼手妙手がないためである.20世紀の後半,世界中から"社会福祉の星"と仰がれたイギリスは,いまや重症の英国病におそわれ,頻発する医師の"ストライキ"に対して,経済の弱さから打つ手を持たず,一方では国民は重税に泣いている.もうひとつの社会福祉王国であるスウェーデンは,超近代的な病院が林立してはいるものの,総医療費のうち半分が老人医療費で占められ,国民の負担は大きく,中堅サラリーマンでは,収入の50%以上が所得税,年金,保険税,地方税で天引きされて,重税にあえいでいる.
 医療の社会化には,健康保険制度などにみられるように,歴史の必然性のような面があることは事実であるが,医療国営の国では,効率の悪さのようなものが前面にでていることは否定できない.イギリスでも,NHS (ナショナル・ヘルス・サービス)は"第二の国鉄"になるだろうとの識者の指摘もあり,四分の一世紀前には"バラ色"であった社会化は,むしろ反省期に入ったという見方もではじめている.ここには医療のすべてを国がまかなうということは,たとえ重税を課してもうまくいかないのではないかという考え方につながりつつある.

私的病院運営のポイント

私的病院と大学医局—その現況と今後の方向

著者: 中野進

ページ範囲:P.81 - P.83

 先年の「医学部紛争」において,"造反学生"の主要攻撃目標にあげられたものに"大学医局制"がある.彼らはいろいろの意味あいをこめて『医局解体』を叫んだ.
 たしかに大学の医局には講座制百年の"垢"=大学病院を中心とするヒエラルキーがこびりついている.が,ちょっと視点をかえて"医局"をみれば,そこは単なる"医師のたまり場"にすぎない.そこで,広辞苑を参照すると,『医局:医務を扱う室,または病院などで医師が詰めている室』という.一般の人々のとらえる"医局像"はそれで事足りるであろうが,われわれ医師にとってこの医局での生活は個人史の中で大きな位置を占めており,また医師として生きていく上でも種々の関係をもつ対象であるから,今少し明確に認識しておく必要がある.しかし,実際には"医局の実像"はまだはっきりした映像となってわれわれの前に浮び上ってはいない.個個人の私的体験とある種の教室の歴史的習慣とをミックスさせたものが順おくりに受けつがれてきていると言ってもよい.

研究と報告【投稿】

大都市通勤圏と医療施設

著者: 大久保正一 ,   村上圭司 ,   久保喜子

ページ範囲:P.86 - P.90

 医療サービスの量は人口に比例する.医療施設立地条件の第一も人口である.医療と人口との関係は密接である.大都市の人口は量的に膨大であるばかりでなく質的にもいろいろな特徴がある.
 ①都心をめがけて多くの通勤者が集り昼間人口が激増する.通勤距離を最短にしようとする結果である.人は一歩も余計に歩きたがらない.

病院における注射剤管理

著者: 川内拓郎 ,   花山雅昭

ページ範囲:P.91 - P.92

 現在,当院における病棟注射剤管理は定数制とし,処置簿の使用量より補給を行っている.しかし定数が狂ってきて,ある薬品は多くなり,またある薬品はなくなってしまうこともあり,他にもっと良い管理方法があるのではないだろうか,と考えてみた.
 わが国では伝統的に患者の治療には注射剤を用いることが多く,医薬品総生産額のうち注射剤は18.7%,医療用医薬品生産額の26.0%を占める.米国では総生産額の10%に満たないので,ほぼ2倍に近い状況である。そして注射剤使用の状況を統計資料(国立大学病院年報より)により観察すると次のようになる.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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