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雑誌目次

雑誌文献

病院36巻8号

1977年08月発行

雑誌目次

グラフ

わが国初の私立"がんセンター"—財団法人慈山会医学研究所付属坪井病院

ページ範囲:P.9 - P.14

「がん撲滅」--これはいまなお,われわれの悲願である.この悲願成就に向けて,多くの英知が傾注され,国や自治体が専門施設をつくり,人を育て,対がん施策に積極的に取り組んでいる.が,それだけで十分であろうか.「財団法人慈山会医学研究所付属坪井病院」の設立趣意書は語る.「……とはいいながら,まだがん専門施設及びがん専門スタッフの数が少なく,かつそれらが大都市に偏在していることなどの理由によって,十分にその恩恵に浴し得ない地域の人々もけっして少なくありません.この医療の地域格差を是正するためにはがん専門医療担当者が積極的に地域に進出して,地域の特性に密着した方法でがん撲滅をはかり,かつ優秀な機器,施設などの整備を実行することが大切なことであります.このような地域医療のレベルアップがあってはじめて国の対がん施策が真価を発揮できるものと考えます(後略)」

僻地医療と農村演劇の実践長野県立阿南病院院長宇治正美氏

著者: 若月俊一

ページ範囲:P.16 - P.16

 宇治先生が長野県農村医学会に顔を出されるようになったのはもう20年も前になろうか.まだ県立阿南病院の副院長の時代だった.ぼさぼさの長髪,ずばぬけて高い背と前かがみの姿勢.しかしいつも柔和な瞳が笑っていたのが印象的だった.僻地にいての,農村医療のまじめな実践家であるとともに,進歩的な文化人として地域活動に挺身されていることを知り,私たちの友情は急速に深まっていった.
 院長になってからは,日本農村医学会の評議員としても活躍されたが,また農村劇をとり入れての看護婦教育なとが,特に彼のユニークな活動として有名になった.昭和40年には日本児童演劇協会賞を受け,現在は日本演劇教育連盟の委員をしている.彼の随筆集「村芝居」には,空襲で千葉医大から彼の生れ故郷である信州に帰り,農村演劇活動を始めるまでのいきさつがよく書かれている.彼の恩師,石川憲夫教授から「劇の方は相変らずやっているだろうな」と駄目をおされるあたり面白い.昨年はまた,看護婦教育に演劇活動を使っての経験を随筆集「涙め引っこめ」にまとめている.

病院の窓

診療と医療

著者: 島内武文

ページ範囲:P.17 - P.17

 人間が宇宙に旅立ち,原子の火をもてあそぶ時代になった.われわれの暮しも,どんなにか楽になっただろうと思われるのであるが,いまだに食事は一口ごとにかみくだし,大小便を自ら仕末し,赤ん坊のおしめも大した進歩を示していない.われわれの身体に直接する衣食住のあり方は古代からあまり変わっていないのではなかろうか.このことは人体がまことに個性的で複雑にできていることによるものであろう.
 したがって人体を対象とする医療というものも,万人の期待するほどには進歩していない.医療という行為は古来最も人間的,個人的であったし,今日でも医師は患者の千差万別な訴えと症状について1人ごとに判断し,治療を進めねばならない.これこそが医療の最も特徴とするところであるわけである.

病院とリハビリテーション

病院とリハビリテーション医療のあり方

著者: 今田拓 ,   沢村誠志 ,   大川嗣雄 ,   五味重春 ,   上田敏

ページ範囲:P.18 - P.26

 予防からリハビリテーションまで一貫した体系が求められている現代の医療,そしてその中核をなしている病院医療--こうした状況は,いわゆる高度医療と同時に,もっと多彩な医療活動をも病院に要求しているのではなかろうか.そこで,病院とリハビリテーションの接点を探る第一歩として,リハビリテーションサイドからのアプローチを試みた.

脊髄損傷者の社会復帰について

著者: 堀口銀二郎

ページ範囲:P.27 - P.30

 脊髄損傷の治療については,整形外科を中心としてすでにある程度の成績をおさめている.また,リハビリテーションにおける基本的な原則や方法論は,すでに多くの専門書に記載され発表されている.が,なお多くの問題を残している。また,脊髄損傷といっても上位損傷,特に頸髄損傷の場合は極めてむずかしい条件が伴ってくる.四肢,体幹の完全麻痺は,現在の医療ではまさに不治の疾病といわざるを得ない.まして,これらの人々の社会復帰という点に関しては,欧米のそれに比して未だ大きな格差のあることは事実である.
 本論文においては,脊髄損傷者を中心として,重度身体障害者の社会復帰に関し私見を述べたいと思う.

ケース・レポート 地域医療

県立病院と地域の公衆衛生—実践の中から

著者: 宇治正美

ページ範囲:P.31 - P.35

 長野県の片田舎に県立病院がおかれている.このような地域に県立病院が存在する意義は,またその使命は……?本誌では,6月号のグラフ欄でこの病院を紹介したが,本稿では「公衆衛生」活動を中心に,この病院の活動をまとめていただいた.

病院のあゆみ

特権意識の崩壊—労使紛争による病院閉鎖—私的病院が持っている経営感覚

著者: 細田健二

ページ範囲:P.36 - P.39

 何らかの理由で病院閉鎖に追い込まれる病院が年にいくつかはあると言われているが,その実情はなかなか浮び上がってこない.ここにとりあげた例は,院長の時代錯誤的な労使感覚が,どろ沼の抗争を,さらには病院の閉鎖を招いたものである.逐次,その経過を追ってみることは,ひとつの警鐘となるに違いない.

ケースレポート 職場の人間関係

医師とのコミュニケーション—看護業務をとおして

著者: 江副信子 ,   三岩澄子

ページ範囲:P.40 - P.42

 チーム医療がいわれている現代医療だが,現実には,専門職間の壁は依然として厚いという.ここでは北海道大学病院のある病棟での医師と看護婦とのコミュニケーションを看護業務を通じて検討していただいた.

医療への提言・14

緊急問題(II)

著者: 水野肇

ページ範囲:P.44 - P.48

成人病予防法
 欧米各国の死亡率は①心臓病,②ガン,③脳卒中の順だが,日本は①脳卒中,②ガン,③心臓病の順である.日本の死亡率全体をみると,多少の曲折はあるにしても,ヨーロッパの各国がたどった後を追っているといっても過言ではない.結核もヨーロッパでは100年前に,いまの日本のように沈静化していたし,胃ガンも同様の傾向である.もちろん,過去に展開された結核追放運動や,抗生物質の開発なども大きな力があったことはいうまでもないが,文明の進歩とともに疾病構造が変化していくことには着目すべきである.
 現在の日本の成人病を考えた場合,うまく行政を展開すれば,脳卒中は3分の1から半分くらい減らすことが可能だとされている.無論,遺伝因子にかかわる点はどうにもならないかも知れないが,食生活と環境(暖房)の改善によって減らすことができる.さらに卒中になっても,早い時期にリハビリを開始すれば,寝たきりを防ぐことも可能になっている.こういった医学上の実績をふまえた行政を展開すべき時期がきている.

当直医日誌

Staff当直の初日

著者: 小林祥泰

ページ範囲:P.49 - P.49

4月○日,金曜日晴のち雨
 今日からStaff当直である.いままでは,何かのときにはObenがいたので気が楽であったが,今日からは自分に責任がかかってくると思うと,やはり緊張する.内科は臓器別subdivision各3単位からなるグループが3つ(3教授)で形成され,たてまえは一内科であるが,ベッド数が200を超え,内科全体を把握することが難しくなったため,2年前より各グループより1名ずつ当直が出て3人一組の当直体制をとっている.
 Staff 1名,Senior resident 1名,Junior resident 1名が当直するわけであるが,この組合せとその日荒れる科によって忙しさはずいぶん違ってくる.幸い,今日はSeniorresidentが消化器系病棟のチーフ・レジデントである.肝性昏睡と末期癌のDICをかかえて荒れているだけに,彼とのコンビはありがたい.

院内管理のレベル・アップ 診療 医療業務の標準化・2

医療業務の標準化とは何か(2)

著者: 榊田博

ページ範囲:P.50 - P.51

医療業務の標準化をどのようにして具体化するか
1.医療業務の基準がすでにできているか
 厚生省は「病院経営管理要領」(都道府県知事宛,医務局長通知,医発第1195号,昭和40年10月9日,医発第37号,昭和44年1月17日改正)を制定した.これによって,病院での業務のうち主として経営管理に関する事項およびその業務処理について一つの規準を示した.また,この要領は病院管理の改善について助言・指導を行うときの指導要領としても用いられている.しかし,この指導要領(guide line)には医師,看護婦その他の医療従事者の具体的な実務処理についての規定を示すというよりも,経営指標に基づいて管理面での規範を示すにとどまった.
 健康保険法の規定に基づく保険医療機関および保険医療養担当規則(厚生省令第15号,昭和32年4月30日.第3次改正,昭和48年10月1日.厚生省令第39号)をはじめ,健康保険診療の治療指針などが編纂されている.個々の医師の担当する保険医療の指定医療機関と保険者との契約による医療行為の範囲と責任の分担および診療報酬の取り決め方などに言及している.これは保険医療の範囲内で一つの標準化を試みた実例といえないでもない.

病理 病院病理部門の課題・2

大学病院における病理部門—東北大学付属病院の例

著者: 笹野伸昭

ページ範囲:P.52 - P.53

 国立の大学病院で病理部を備えているのは昭和51年5月現在,北大,東北大,東大,名大,熊大の6校である.まだ歴史が浅いが,順次増加の気運にあるので,最近国立大学病院病理部連絡会議を設立し,相互の連係を緊密にして内容の充実向上を目差している.昭和47年これら6大学の中で,最初に病理部を設立した東北大病院での4年間の経験をもとに,国立大学病院病理部の現状と将来について述べたいと思う.

麻酔 麻酔部門の問題点・4

ICU,CCUにおける患者管理の問題点

著者: 佐藤光男

ページ範囲:P.54 - P.55

ICU,CCUの基本的な考え方
 ICU (intensive care unit)は邦訳を集中(強化)治療室といい,急速に生命の危険を来したものおよび早急に危険が予想されるもののうち,集中治療,監視,看護を必要とする重症患者を収容する病室である.
 したがってどの科にも所属しない1つのセンター的な病室ということができ,CCUにおいても循環器内科の患者のみを扱うのでなく他科に適応患者があればそれも収容することになる.ICUが今のように盛んになった理由については次のように思う.最近の急な治療医学の進歩および機器の発達に,個々の科では追いつけなくなったことがその根底にある.すなわち分科した各専門科医師が力を出しあい近代的機器および秀れた看護力を一堂に集中し,そのような所に患者の方から来てもらうことが考えられた.こうした方が病院にとっても各科に人と物を分散するより経済的であるし治療効果もあがるというわけで,かつて手術の高度化にともない手術室が中央化されたと同じ考えである.

人事・庶務 庶務部門の諸問題・3

人事考課のあり方(その1)

著者: 岡野博

ページ範囲:P.56 - P.57

人事考課の目的
 いまさらいうまでもなく,人事考課とは考課それ自体が目的ではない.人事考課の結果が正しく人事管理諸施策に活用されてこそ意味があるのであって,終局的にその職場集団のモラル向上に役立てるためのものである.
 人間は本来自分自身を向上させたいという願望を持ち,日常生活の様々な情報や経験を通して成長し続けている.そして,自分のとった行為が果してこれでよかったかどうか,たえずその行為を自分自身にフィードバックさせながら,自分は○○ができるようになったんだという成長を確認し,同時にその成長への喜びと誇りを感じつつ,新たな目標へと挑戦し続けている.

購買・倉庫 購買・倉庫管理のポイント・6

購買倫理への提言

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.58 - P.59

購買費用は膨脹する
 病院で使用する医用材料,医薬品,検査,放射線材料,食料品,営繕,清掃,洗濯などのサービス材料は,種類も数千種に及び,その購買費も診療収益対比30-40%に達し,病院経営上の比重は,人件費に次いで著しく高いことは衆知の通りである.さらに近年は,殊にドルショックやオイルショックによる痛烈なパンチをまともに受けて以来,物価の異常な高騰による病院経営への影響は,測り知れないものがある.
 たとえば重油の使用料と金額をみると次のとおりである.

給食 病院給食をおいしくするポイント・6

良い献立の基本条件

著者: 最勝寺重芳

ページ範囲:P.60 - P.61

 おいしい条件とは,単に献立の組合せが良いとか,味付が好みに適合しているとかが対象になりやすい.確かに実際,現物としての食膳風景の良さと食い味の良さは基本的なものではあるが,それのみではなく,食事全体の条件が全て満足されるという,言い換えれば「条件の総和」の割合で決められるべきものと考えている.すなわちおいしい病院給食を演出する数多くの条件は,給食を直接担当する者に責任があるのではなく,これらの上部に属する人の多くの理解と協力によってなされるものであることは繰り返し述べた.今回は病院の食事計画の担当する栄養士の献立作成について,その条件がいかなるものかを理解していただくために,今回はその内容についての考え方を示し参考に供したい.

看護婦長日誌

内科病棟あれこれ

著者: 鈴木良子

ページ範囲:P.64 - P.64

押しつけ看護
5月○日
 患者訪問の際,4人部屋のSさんより,「婦長さん,私のことではないが,一寸したことで,先生からも看護婦さんたちからも,一人一人来室のたびごとに同じことを注意され,聞いていて気の毒だよ.こんなに,これでもか,これでもかというようにいわれなければならないのかなあ」といわれる.その一寸したこととは,肋膜炎で要安静のTさんが4階の病室より1階ホールにあるテレビを見に行ったことである.病棟内には,食堂,娯楽室の設備はなく,個室以外はテレビの持込みを禁じているのである.私は,とっさに「看護婦一人一人が,Tさんの安静を保って,一日も早く治るのを願っていたのでしょう.Tさんの気持も考えずに,申しわけないことをしたわね.」と詫びる.前からカンファレンス時に,Tさんの安静が守れないことが,しばしば話題になっていた.人間として患者をみつめ,ニードを満たすとか,偉そうなことを論じていながら,実際には,一方的な看護を押しつけていたのではないか.また医師ともカンファレンスを持ち,患者の立場になって,安静のことを考えていたら,適切な処置がとれたのではないかと反省する.
 チームカンファレンスのあり方,計画の立案,実施,評価の未熟さを痛感する.

病院建築・98

石川県立中央病院

著者: 福田朝生

ページ範囲:P.65 - P.70

まえがき
 本病院は金沢市内西北部,北陸自動車道金沢西インターチェンジの近くに位置し,敷地の西側には,国鉄金沢駅から金沢港に至る幅員50mの都市計画道路ができる予定になっている.
 在来の病院は市内長土塀3丁目犀川沿いにあるが,敷地面積も十分でなく増改築の余裕がないことから,約65000m2の当敷地にそっくり移転することに決まったものである.

私的病院運営のポイント

患者組織化のメリットと問題点

著者: 増子忠道

ページ範囲:P.71 - P.74

患者増は歴史的な必然性
 ここ10数年来多少の例外を除いて日本全体の病院を訪れる患者が急激に増加している.もちろんわが病院もその例外ではない.患者増自体は,地域における信頼度の反映という面からも経営的面からもむしろ歓迎すべきことではある.しかし患者増に対応する医師をはじめとする医療スタッフの数や設備拡充が十分うまくいっている病院は数少なく,結果的には日常の過密過重労働は全スタッフにのしかかっている.医師養成政策の立ち遅れ,看護教育等の貧困,診療報酬制度の不合理性からくる経営の不安定性,労働条件の悪化と人手不足の深刻化の悪循環など,その原因として分析することができる.だがそういう悪条件下でも個々の私的病院では,医療の質をどう向上させつつ患者増に対処するか工夫を重ねているはずである.
 われわれの病院は,20年前患者住民の医療への強い期待を担いカンパや債券等によって診療所として発足し,その後の活動も住民に支えられて発展して,現在では,医師数15名,全スタッフ160名,病床91床,外来数1日230名の病院として活動している.発足以来患者・住民の自主的な援助の伝統もあり,意見や希望がどんどん病院に出されるチャンスにも恵まれていた.そのような雰囲気の中で当然患者増が大問題となり,その本質の分析と方針の検討を行ってきた.

追悼

故藤田栄隆先生を想う

著者: 大橋良三

ページ範囲:P.74 - P.74

 藤田栄隆先生(60歳,京大昭和16年卒医博,大阪府立大手前整肢学園々長,前大阪赤十字病院副院長,大阪府医師会勤務医部会副会長)が心筋こうそくで去る6月15日逝去されました.
 先生とわたくしとは京大整形外科学教室の先輩後輩として,教室講師時代,大阪赤十字病院部長・副院長時代,大手前時代とずっと続いて関係があった.

研究と報告【投稿】

総合病院入院患者の心理について

著者: 坂部先平 ,   望月晁 ,   黒木健次 ,   鹿野寿満

ページ範囲:P.75 - P.78

 総合病院では入院患者に関するさまざまな問題の起ることが知られている.たとえば,職員と患者間,患者同志に,小は些細な不満から大は医療上の問題まで,その中には管理者にとっては深刻な問題である自殺のケースも含まれている.このことは病院の組織化,社会化に伴って増大の傾向にあることも周知の事実である.病院管理に関する研究は多様化する医療の実態,設備の工夫などについてのものに比べて,人間関係,とくにその基本になる患者の心理についてのものは精神病院におけるものを除いては,あまり行われていない.筆者らは遠隔地にある二つの総合病院においてpilot studyを試みたところ,両者の入院患者の心理に同様の傾向を認めたので,この結果を糸口にして本研究を行った.

病院環境衛生についての一考察

著者: 吉岡正夫

ページ範囲:P.79 - P.81

 病棟生活において,病床,廊下,病棟記録室の環境いかんにより患者の症状が左右されるのではないかと考えられる.
 そこで国立小千谷療養所130床南向き2階建て木造建築で検査し,小中学校の判定基準と比較検討した.小中学校の判定基準とは環境を維持管理しさらに改善するための学校環境衛生の基準である.判定基準では,温度は冬期では10℃以上,夏期では30℃以下であることが望ましい.湿度は30%以下,80%以上でないことが望ましく,最も望ましい湿度は50%前後である.感覚温度は冬期では9.5℃以上,夏期では26℃以下が望ましく,最も望ましい温度は冬期では18-20℃,夏期では25-26℃であるとしている.二酸化炭素の濃度は1500ppm(0.15%)以下である.

医療のシステム化とME技術—システム化に伴う目的関数設定と医師労働の変化(その2)

著者: 笠原清志

ページ範囲:P.82 - P.84

はじめに
 前回,システムという概念を技術史の流れの中において位置づけるとともに,そこにおける目的関数設定の問題について考察した.つまり,システムという概念が技術革新の停滞そのものの反映であるとともに,縦割りともいうべき既存の技術をいわば横につなぐことによって,新たにおとずれた限界を打破しようとする試みであるとし,戦後の第1次医療技術革新(抗生剤を中心とした輸血,麻酔,臨床検査技術等)と今日の医療システム化との間に存在する疾病構造の変化と医療技術との関連についてふれた,今回は,E技術を基礎とするシステム理論の諸前提と医師労働,および医療行為の対象である生体の構造を対比させながら,医療のシステム化に伴う医師労働の変化について考察したい.

ニュース

新しい地域医療と福祉を目ざして—東筋協主催特別講演とパネルディスカッション

著者: 編集室

ページ範囲:P.84 - P.84

 去る6月12日,東京有楽町の朝日講堂において,東京進行性筋萎縮症協会巡回検診第50回記念事業として特別講演とパネルディスカッションが行われた.この検診事業は,当初,筋萎縮症のみを対象としていたが,近年では地域保健活動の一環として全神経疾患を対象とし,在宅ケアにまでつながる事業として発展したことを記念し催されたものである.
 特別講演は「神経難病医療の現況と将来の展望」と題して,都立府中病院,宇尾野公義副院長が難病とは何か,そして難病医療とはどのようにすすめていったらいいかについて,豊富なデータで分りやすく解説された.それによると難病とは,疾病が長期化する,病因が不明,治療法がない,合併症が起りやすいという点を特徴としているという.また難病医療のあり方として,府中病院の活動と共に都・国などでの施策の変遷が紹介された.しかし,そのようなものもまだまだ不十分で,患者に対する経済的・医療的援助と同時に研究面も充実させてほしいと要望された.

ホスピタルトピックス

川崎医療短大医療秘書科見聞記

著者: 宮下美津江

ページ範囲:P.86 - P.87

 医療は高度化し,私達パラメディカル部門も非常に専門化してきました.この高度化,専門化した医療の中で,必要とされているのが医療秘書という仕事です.というのは病院の秘書は会社の秘書と違って,幅広い知識を要求されます.秘書の資格を持っていても,医学知識がなければ医療秘書とは言えず,単なる秘書でしょう.医療の中の秘書には専門化した医学知識が要求されます.残念なことに医療の中で,医療秘書という資格制度がいままでないため,秘書の資格はあっても,医学知識を持たないまま医療の中で秘書として仕事にたずさわっているというのが現状でした.現在のような秘書であったら,医師はますます雑事におわれてしまうでしょう.そこで必要性から誕生してきたのが,わが国で初めて私立川崎医療短期大学(川上亀義学長)にこの4月から開設されたの「医療秘書科」です.
 私はこの医療秘書科に関心を持つと同時に,教育内容などをもっと詳しく知りたく,連休あけの5月6日同校をたずねてみました.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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