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雑誌目次

雑誌文献

病院36巻9号

1977年09月発行

雑誌目次

特集 世界の病院医療の動向

経済的側面から見た病院医療の動向

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.23 - P.27

 「世界は一つ」という言葉は,単なるスローガン的なものから,いまや急速に現実的響きを帯びたものに変わってきている.政治にしろ,経済にしろ,その他の社会的現象にしろ,社会のあらゆる面での問題が,最近では広く世界的規模で起っているのである.交通面,情報伝達面での目覚ましい発達がそれに大いにあずかっていることはいうまでもない.
 医療の分野も,もちろんその例外ではない.そこには現在,われわれがこれまでだれも経験したことのないような大転換が大変な勢いで起りつつあるように見えるが,それはまたすべての先進国に共通の世界的現象であると見てよいと思われる,筆者は今回の第20回国院病院学会に参加して,そのことをじかに膚に触れて実感できたと思った.

大都市における医療の問題点

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.28 - P.31

都市の発展
 人類が自然と調和し,快適な生活を営みながら,健康を増進していくには,世界の人口は20億が限界とされている.しかしすでに世界の人口は37億となっており,紀元2000年には70億を突破するものと予測されている.
 このような人口の増加が,地球の上に広く分散されればよいのであるが,20世紀の末までには,世界の人口の約半数が都市の居住者になるという.人口100万以上の都市は1960年には75であったが,20世紀末には220以上になるだろうと予測されている.

病院建築の近代化

著者: 長澤泰

ページ範囲:P.32 - P.36

 戦後,わが国の木造の病院はつぎつぎと鉄筋コンクリート造に建替えられてきたが,実際には建物自体の耐用年限をはるかに下回る年月で再び全面的もしくは大規模な改築が行われている.最近新築された病院といえども,工事が完了した時点ですでに時代遅れといわれ,病院機能の恐るべき変化の速さに施設,設備面で取り残されないよう必死になっている観がある.1000床を越すベッドを抱え,職員を含めると何千人という人々を擁して動いている大病院も珍しくない.当然,高額の医療機器を導入し,ランニングコストも膨大なものになる.
 さて,このような"病院の近代化"の傾向は,今後わが国にとって望ましいものなのでろうか.将来への予測なしに目前の需要を満たすことのみに追われてはいないだろうか.

看護職と他の専門職との関係

著者: 矢野正子

ページ範囲:P.37 - P.39

 医療職種間の関係や同一職種内の関係について,その理想像を論じているものは沢山あるし,またアメリカなどでは,チームアプローチという形で10名前後のメンバーからなる学際的チーム(multidisciplinary team)によるケア・サービス改善のための研究が,地域の小児疾患プログラムとか,心臓患者のケア,急性期のケア,家族ケアなどの分野で盛んに行われているようである.
 ヘルスケアの中心は患者であり,それは患者のニードを満たすという点に焦点がしぼられてきており,患者にとって最適な健康状態を実現するために,関係専門職のチームワークによるアプローチの重要性が叫ばれてきている.今後,患者の医療に携わる職種や学問領域はますます増える傾向にあると思われるし,それに伴う複雑で急激な社会の変化によって,新しい役割が看護婦に要求されてくることも大いに予想される.

保健補助者および保健チーム

著者: 紀伊國献三

ページ範囲:P.40 - P.42

 「保健補助者および保健チーム」の問題は世界の国の中で,豊かでない国,いわゆる発展途上国において,いかに医療および保健における公平さと効率性を求めるか,という問題に対する一つの試みである.
 国際病院学会の開会式においてノッサル教授が指摘したごとく,現在,急速な医学および関連科学の発展にもかかわらず,実際に地域の住民に提供されている医療との間には大きなギャップがある.それは,発展国の内部におけるギャップでもあるが,地球全体の立場からみるならば,より大きなギャップがあることを認めざるをえないであろう.たとえばノッサル教授は,WHOが現在進めつつあるTDRと呼ぼれる熱帯病の研究および教育のプログラムについて紹介したが,このTDRでとりあげている六つの熱帯地域にある医療問題,すなわちマラリア,住血吸虫,フィラリア,トリパノソーマ,リィーシュマニアおよびらい病の六つの疾患に対して,近代医科学はただの一つの効果的なワクチンも持っていないことからも明らかなように,過去における専門家たちの立てた優先順位は,必ずしも地域の人々の医療に適用されたものではなく,かえってそのギャップを大きくしてきたともいえるかもしれない.

エレクトロニクスの展望

著者: 三宅浩之

ページ範囲:P.43 - P.47

 病院医療とエレクトロニクスの関係は,大別して次の二面からみることができる.一つは,エレクトロニクスを手段として取り入れることによる病院内の医療行動を含む各種業務の変化についての問題であり,他の一つは病院内各種業務が取り入れたエレクトロニクス機器の保守管理の問題である.もちろん,これらに関連して工学面からは,提供しうる電子工学技術リソースの問題があろうし,病院医療経済画からは対費用効果の問題提起となり,医療担当者からは機器の信頼性と機能の限界の問題が起ってくる.
 いろいろな議論があるにもかかわらず,日本の病院を含めて,世界の病院医療の中へ,電子機器の導入利用が急速に進みつつあるのが一般的な傾向で,これは外見的にはちょうど,わが国の家庭にカラーテレビ,電気冷蔵庫,電子レンジ,デジタル時計,ポケット電卓,その他各種の電子機器が普及してゆく状況と同様であるが,果たして内容的にも同様のものと考えることができるだろうか.まずこの点を明らかにするために,今春,東京で開催された第20回国際病院学会の第2分科会「医療サービスのための電子機器の利用」の各演者の論旨を紹介することから始めよう.

インタビュウ

病院医療と医学研究

著者: ノッサルグスタフ ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.18 - P.22

第20回国際病院学会を機に,国際的な免疫学者であるG.Nossal教授が来日された.教授はこの学会の「ルネ・サンド博士記念講演」で「科学研究と医学の進歩(Scientific Re-search and Medical Progress: Nemesis or Nirvana?」と題する特別講演を行った.この講演は,現在の病院医療がかかえる問題点を指摘したのみに止まらず,今後の病院のあり方への提言もあり,聴衆に多くの感銘を与えた.まず,インタビュウは,講演内容から始まる……

資料

大都市における医療

著者: 高橋勝三

ページ範囲:P.48 - P.51

 今年5月23日から5月27日にかけて東京で第20回国際病院学会が開催された.テーマの一つに大都市における医療問題が選ばれ,3日間にわたり全世界の100万都市から13の演題が討議された.この部会はBridgman(フランス)とCust (イギリス)の司会,報告で行われ,筆者も東京都の救急医療について報告したが,極めて有意義な部会であったと思う,そこで,その印象および本問題に関する諸外国の数字を東京の場合とならべ私見を述べてみたい.なお数字は学会発表に用いられたWorldHospital誌(13巻1号および2号,1977)より引用,東,京都の数字は東京都衛生局からいただいた.

グラフ

アルコール症基幹施設として—期待される国立療養所久里浜病院

ページ範囲:P.9 - P.14

 現在わが国のアルコール症推定患者は150-210万と言われているが,専門病床,専門スタッフとも非常に少なく,他の先進諸国に比べ,その立遅れは著しい.52年度からは,国も精神医療の大きな柱として酒害対策に取組む方針であり,その中枢として最も期待されているのが国立療養所久里浜病院である.
 国療久里浜病院は,戦前は海軍病院,戦後は一時期結核を主とし,その後精神病を中心とした総合病院という歴史をもっが,病院のアルコール症との出会いは,昭和38年,專門病棟(37床)の開設に始まる.それ以後,一般的に"久里浜方式"と呼ばれる開放病棟方式で集団精神療法を用いる独自の治療法を生み出し,さらに本年5月には特殊診療棟(15床)を開設して,全国唯一のアルコール症基幹施設としてアルコール症の診療・研究に携わるとともに医療関係者に対する教育・研修に乗り出そうとしている.

民間社会福祉の功労者和歌山県・堀口整形外科病院院長堀口銀二郎氏

著者: 榊田博

ページ範囲:P.16 - P.16

 昭和19年慈恵医科大学卒業.昭和24年9月和歌山医科大学講師.34年4月堀口医院を開業.46年5月,第3代和歌山県病院協会長に就任し現在にいたる.日本整形外科学会評議員,県行政審議会委員,県社会福祉協議会副会長その他の要職を兼ねている.日本病院会代議員会議長として,協会法人格の取得,地方組織づくりに貢献するなど,医界,学会,行政に縦横の活躍を続けている.
 そもそも,単科(整形外科)で200床の規模の病院を経営するのも他に類を見ない.病院を経営(昭和34年4月,医療法人堀口整形外科病院と改ある)するのも「医道に徹する」の理念を貫く.病院経営の利益はすべて社会に還元している.とくに身体障害者が生き甲斐を見出す社会づくりを目指してきた.その一環として琴の浦リハビリテーションセンター,身体障害福祉工場を開設した.

病院の窓

病院管理の超科学的側面

著者: 山本善信

ページ範囲:P.17 - P.17

 私たちの奉職する柏原病院は,いわば丹波という僻地にあるだけに,かつては慢性の看護婦不足に苦しんできた.看護婦の平均年齢が進み気鋭若年の看護婦を迎えることの不可能が見越されたので,昭和46年度に構内に3年制の高等看護学院を設立することになった.限られた正看護婦の中から3名を選んで講習を受けさせ,他力をかりずに専任教員を充足した.昭和48年には,厳しい看護婦不足に遭遇したが,全員の理解ある頑張りによって持ちこたえ,今では病院の約120名の看護婦のうち半数近くが卒業生によって補充され,看護部の運営は羨まれるほどに安定してきた.よくあれほどの無理が凌げたものと,今では全く有難いと思っている.
 学院を初める前に私は,それまでの高等看護学院卒業生が,えてして理論に溺れ,臨床看護を志向しないことを懸念していたので,本学院の発足に当たっては,できるだけ心の豊かな視野の広い看護婦を育成したいと念願した,そして人格の尊重とその錬磨育成とを主な実践理念として掲げ,職員ともどもに向上に努める姿勢をとった.病院の職員食堂を拡張して学生の食事を職員と共に摂らせることとし,職員にはすべて,彼女たちのよき先輩でありよき友であってほしいとお願いした.あたかも柏原病院では日頃から職員間の心の交流が豊かで日常の挨拶が淀みなく行われていたので,彼女たちにその大切さを教えると,純真であるだけに驚くほど立派にそれを身につけてくれた.

医療への提言・15

「診療過誤」について

著者: 水野肇

ページ範囲:P.53 - P.56

診療過誤の先進国アメリカ
 いまの医療のなかで,世界中の医師がいちばん気にしているのは,「診療過誤」の問題であるといっても過言ではないだろう.アメリカの医師の間では,「初めて,紹介なしにやってきた患者は,うかつに診療できない」とささやかれているという.ちょっとしたことでも,すぐに裁判に持ち込まれ,多額の賠償金を請求され,しかも裁判では,多くの場合,医師の敗訴に終わっているという.
 数年前の話だが,18年前に手術した虫垂炎の手術が悪かったために腹膜炎を起したという理由で,2万ドルも医師が払わされたケースもある.いうまでもなく,18年前の手術の結果と,現在おきた腹膜炎との間には18年間という歳月があって,因果関係など医学的にわかることはまずない.しかし,結果は敗訴になったわけだ.このケースには,当時の雑誌にコメントがついていて,アメリカの裁判制度が陪審制度のため,陪審員が医学には関係のない人で,きわめて主観的に判断されるという理由があげられていた.もちろん,権利意識の向上したのが基本的な理由ではあるが,それに裁判制度がからんでいるというわけでもある.

ニュース

「スタッフの構成と病院の地域機能」をシンポに—第5回日本医師会病院学会

著者: 編集室

ページ範囲:P.56 - P.56

 第5回日本医師会病院学会は,去る8月13日,東京・日仏会館ホールで,雨中にもかかわらず各地から多くの参会者を得て盛況裡に行われた.本学会は,第1回から今回まで国民医療の展開をどうするかという問題意識のもとにテーマが決定されているが,今回は特別講演「病院における医学管理の工学面と財政面」,講演「プライマリー・ケアと看護」,シンポジウム「スタッフの構成と病院の地域機能」が行われた.
 注目された午後のシンポジウムでは,まず東京日野市における医師の連携,千葉安房医師会病院の健康情報システム,東京東村山市のねたきり老人訪問看護,済生会中央病院の糖尿病教室,社保埼玉中央病院の腎センター,の例が取り上げられ,その各々につき活動と問題点,スタッフの構成などについて,報告がなされた.地域医療の効果的な展開を図るためにはスタッフの構成およびスタッフ相互の連携が肝要であるが,現在ではモデル的地域においても主導型であったり,一部スタッフの善意に頼っているなど問題があり,住民・患者・家族を含む広いチーム作りは今後の課題として残されているようであった.なお最後にコメンテーターから情報間の連携と統合化およびこれからの医療チームのあり方について発言があった.

当直医日誌

—産婦人科当直日誌より—「新人レジデントとの多忙な一日」

著者: 正田滋信

ページ範囲:P.57 - P.57

 われわれは,今年2人の新人レジデントを迎え,1人は他科へのローテーションへ,他の1人は当科に残り,修練を積んでいる.当科では,新人レジデントは勤務初めの4月より約3か月間,上級医師と副直を行い,7月よりオンコール付きの1人当直に入ることが通例となっている.だれもが経験することであろうが,私の心の隅には,初めて1人当直をしたあの日の不安と緊張感が鮮やかに残っている.その日を数日後にひかえ,当科で研修を続けているDr.Mが最後の副当直についた日の出来事である.

院内管理のレベル・アップ 診療 医療業務の標準化・3 各論1

診療業務処理機構の合理化

著者: 榊田博

ページ範囲:P.58 - P.59

医師の分類
 医師は医師法第2条および第6条により医籍に登録されている.医師でなければ医業をなしてはならないことはいうまでもない.しかし同じく医師と称していても,その仕事の任務の分けあい方と仕事をする場などによって,組織の中での位置づけが異なる.
 診療面における医師の業務は,診療行為そのものの他に,診療行為をなすための管理業務とのかかわりも無視できない.診療機構の調整や診療計画の確立,他部門との調整,業務処理の標準化など,診療が能率よく施行されるために,医師がそれぞれの識見,能力と立場において階層化されている.

病理 病院病理部門の課題・3

大学病院における病理部(その2)—日大板橋病院の例

著者: 桜井勇

ページ範囲:P.60 - P.61

はじめに
 大学附属病院では日常の診療の他に,教育と研究という使命が課せられている.日常診療で,診断予後の推定・治療方針の決定に対して病理医の果たす役割は大きい.また剖検を通じて,診療各科所属医師の卒後教育の一端を荷っている.したがって当然病理医の働ける場所,組織,人員が病院内に配置されるべきである.しかし,わが国では必ずしもこの考えがすべての大学にゆきわたってはいない.多くの大学では未だ,剖検・生検業務に従事する病理医の定員が病院内にはなく,講座定員の範囲内で病院へのサービス業務を行っている.
 大学附属病院における病理医絶対数の不足は,一般病院ほどではないが,講座定員は病院での業務のない他の基礎医学教室と同数であり,剖検・生検業務が大きな負担になる.

労務 労務管理の考え方・2

一つの労務管理観—医療人としての立場から

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.62 - P.63

復元力に期待する
 人間社会,とくに日本人の特性なのか,復元力というすぐれた潜在能力がある.この能力は一つの事象に対して,常に中道的な立場を維持しようという意識を満たすことから出ているようである.もっとも,この場合の中道的立場とは,常識的にみた場合の正常な位置というべきものであって,復元力とは,その正常な位置からずれた場合に対して元の位置に復元しようとする力ということができる.
 労務管理とは,最終的には人の問題になるが,病院における労務管理を考える場合,正常な位置は何かをまず考えるべきであろう.いうまでもなく病院は,よい医療をより良い条件のもとで患者に提供することがその目的であるが,これを満足のいくように達成するためには,必要な資金と資材が常に補充され,人の意思(知恵)が適正に行使されることが不可欠となる.

人事・庶務 庶務部門の諸問題・4

人事考課のあり方(その2)

著者: 岡野博

ページ範囲:P.64 - P.65

病院のとりくみ方
 前回は人事考課導入にあたって考慮しなければならない,病院的組織風土の特性について触れたが,その実態をふまえてどのようにとりくんでいったらよいのだろうか,導入への考え方を述べてみたい.

会計・経理 会計・経理事務の問題点・7

資金繰り表作成上の留意点(2)

著者: 酒泉春雄

ページ範囲:P.66 - P.67

資金繰り表作成上の留意点
(7号より続く)
3)入出金に時間的なズレがないこと
 現金収支は月間の合計額ばかりでなく,月中のどの時点においても均衡が保たれており,かつ収支間に時間的なズレがないように注意すること.
 たとえばある期間を通しての収支総額では十分均衡がとれていても,その期間内の一時点において支払が入金よりも先行しているとすれば,その時点では一時的な資金不足を生じ,「いわゆる勘定合って銭足らず」ということになる.

診療録 カルテを「利用」するために・5

診療録管理体制変換の実例(その1)

著者: 三宅裕子

ページ範囲:P.68 - P.69

はじめに
 「カルテは情報の宝庫である」.このカルテを「保管されるものから,病院管理上,教育上,研究上,法律上,公衆衛生上に利用されるものへ」もっていくことが診療録管理の目的である.そしてこの目的を達成するためには,目的を満足させ得る管理体制を敷くことが大切である.
 わが国では診療録管理業務が実施され始めた当初,医師をはじめ病院管理者のこの業務に対する認識の薄さ,加えて適切な教育機関のなかったことが原因して,一部の病院でその管理体制に不備な面がみられている.

看護婦長日誌

神経科・泌尿器科病棟

著者: 佐々木悠子

ページ範囲:P.72 - P.72

ある日の当直のこと
6月○日
 夜,病棟巡回時,ポケットベルが鳴る.「今夜はよくこのベルが鳴るなあ——」と思いながら急いで連絡をとる.救急病棟からの呼び出しだ.内科系の当直医が電話に出て,「今,救急車で入院した患者のことで困っているのですぐ来てくれないか」とのこと,急いで行ってみる.事情をきくと,旅行病人で警察の方で身寄りをさがしているが,患者は家人の来院を拒み,その上治療を受けることもいやだと言って,こちらの言うことをきかない,ということである.とりあえず拒んでいる理由を問うと,「家から勘当されている身だから……それにボクは元気にならんでもいいんです」とすねたようにいう.治療の必要性を再三にわたり説明してもなおのこと拒否してくる.そうしているうちに母親が来院した.患者の顔をみるなり「こんなア,人に迷惑ばかけよって……,なさけなか.先生ば言うこっきいてようならんと.どげなことになっても知らんけに--」といって帰ろうとする.その母親を別室に呼んで医師とともに話をきいてみることにした.こんな時に今さら親子関係について述べたところで……とむなしさを感じる.しかしなんとかしてこの若い患者に適切な治療をしなければというK医師の熱意が通じたのか,やっと母親が患者のそばにいてくれることになった.母親の涙をみた時,私は「やっぱり親子なんだなあ,母はやさしいんだなあ」と一瞬胸が熱くなる.

病院建築・99

社会保険徳山中央病院

著者: 坂本克己

ページ範囲:P.73 - P.77

はじめに
 徳山中央病院の建築について,とのテーマでの執筆依頼であるが,本欄は建築専門家のページであると承知している.私のような,建築に関してはずぶの素人への依頼,という編集者の意図を推察すると,病院長は病院建築に関してどんな夢を抱いているのだろうか,また使用開始後1年経過したが,当初の夢が果たして満たされたのか,あるいはこわされた点があるのか,等の点を知りたいのではないだろうかと考え,専門家の目からみれば,馬鹿らしいと映る点も多々あることと思われるが,恥を忍んで筆をとることにした.

私的病院運営のポイント

職員教育のすすめ方と問題点—院内教育10年をふりかえって

著者: 町田久子

ページ範囲:P.78 - P.81

我孫子中央病院の沿革
 昭和40年,千葉県我孫子町に星野邦夫院長が民家を改造して病床4床の我孫子中央診療所を開設.診療科目,内科,外科,産婦人科.
 昭和41年,我孫子中央病院と改称.許可病床数26.

研究と報告

大都市通勤圏と医療施設(2)

著者: 大久保正一 ,   村上圭司 ,   久保喜子

ページ範囲:P.82 - P.86

研究成績—大阪
1)人口密度と通勤密度
 大阪府各市区町村の人口密度と通勤密度分布図を描くと図9となる.両密度とも区部に高く府下に低く周辺に至るほど低い.区部の中心では通勤密度が特に高く人口密度は低い.通勤密度の最高は北区48,489,ついで東区44,459,南区37,261,西区18,780の順であって都心に高い.人口密度の最高は西成区26,253,ついで生野区26,242,東成区24,493の順であって都心に低い.
 通勤密度と人口密度との相関を区部と府下に分けて計算する.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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