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病院の窓
リハビリテーションとその医療
著者: 長谷川恒雄1
所属機関: 1伊豆韮山温泉病院
ページ範囲:P.801 - P.801
文献購入ページに移動 リハビリテーション(以下リハ)という言葉は現代すでに日本語として通用しているが,その本質についてはまだ十分な理解が得られていないように思われる.一般には病後の保養を含め,機能障害に対して機能訓練を行って,できるだけ身心の機能を改善することであると考えられている.しかしそれだけがリハではない.障害者の日常生活,社会活動を考慮するとき,医療問題,福祉問題,経済問題その他さまざまな周辺問題があり,これらの改善もリハに含められる.すなわち障害者自身が対処する問題と社会的援護の問題が合理的に処理されて,全人的立場で幸福の再建が行われるところにリハがある.援助する側には障害者を中心に家族,親戚,友人,職場,医療関係者が直接,足りない部分を補う態勢があり,その周囲に地域社会の援助組織が,さらにその外輪に国の支援体制が存在しなければならない.またそれらが有機的に結合されて適正に運用されてはじめて目的が達成できる.このリハの体系は福祉のそれと共通し,相違がしばしば問題になるが,リハは福祉の一部であって,次の立場をもつと考えられる.障害者が自から社会的有用性の回復を目ざす精神に原点をおき,自発的な行動,行為を遂行することであり,足りざるを他からの援助によって補充し,人間としての尊厳を保った生活を送ることである.したがって主体は障害者自身の自立である.
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