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雑誌目次

雑誌文献

病院37巻12号

1978年12月発行

雑誌目次

特集 CCUの現状とその経済性

CCUの経済性に関する問題点—医師の立場から

著者: 大林完二 ,   西邑信男

ページ範囲:P.984 - P.986

はじめに
 1962年米国とカナダでCCUが創設されて以来,その普及は著しく,欧米はもちろん,わが国においても数多くのCCUが現在活動している.東京都内だけでも,その数20余という.しかし,一方,開設はしたもののスタッフの確保が難しい,患者数が少ない,採算が合わないなどの理由でその維持が困難で,CCU本来の活動を行いえないという施設も多いと聞く.いずれにしても,わが国のCCUの歴史は未だ浅く,一般開業医や,国民の心筋梗塞や,CCUについての関心や理解も深いとはいいがたく,CCUの真価が十分発揮されえないでいるのが現状であろう.
 近年,ようやく救急医療システムの充実が叫ばれてき,大都市ではCCUのネットワークの整備,充実について,機会あるごとに討議されるに至ったことは喜ばしいことである.

CCUの経済性に関する問題点—事務の立場から—部門別原価計算よりの考察

著者: 中村彰吾

ページ範囲:P.987 - P.990

はじめに
 CCUの歴史的経過や意義ならびに機能については,いまさら述べるまでもない.死の淵に立たされた虚血性心臓病,心不全,不整脈などの患者を,一刻を争い,救命しているその役割は大きい.
 しかし,CCU治療システムの診療効果が,認められれば認められるほど,そこには固定的な専門治療チームの存在と,高度,重装備化された設備と機器類が用意されなければならなくなる.

わが国のCCUの現状

日本医科大学附属病院のCCU

著者: 高野照夫 ,   大林完二 ,   西邑信男

ページ範囲:P.974 - P.976

 Coronary care unit (CCU冠疾患専門治療病棟)の登場によって,急性心筋梗塞患者の不整脈による死亡率は大きく減少した.また急性心筋梗塞に伴う心原性ショックによる死亡率も,新しく開発されたカテコールアミン製剤や大動脈内バルーンパンピングおよびこれらと血管拡張剤とを組み合わせた治療などにより減少の傾向にある.急性心筋梗塞,重症狭心症と重症不整脈は発作時の死亡率が高いので,できるだけ早く適切な治療ができる専門施設へ収容することが必要である.CCUの対象となる患者は連続的な監視を要するもので,患者の内わけは急性心筋梗塞がもっとも多く,つぎに重症狭心症(胸痛発作を何回も繰り返す不安定狭心症,時に致死的不整脈を伴う異型狭心症)やアダムス・ストークス症候群であり,ICUの対象となる患者は心臓病以外の疾患で重症肺疾患や糖尿病性昏睡などである.
 わが国においてもCCUを設置する医療機関が増加しつつあるが,現状ではスタッフや経済的な問題があり,まだ十分ではないようである.しかし現在,東京都にはおよそ20施設のCCUが運営されており,それぞれ本来の機能を十分に発揮するに至っている.

榊原記念病院のCCU

著者: 松田三和

ページ範囲:P.977 - P.979

はじめに
 CCUがその機能を十分に発揮するためには使い易い構造,優秀な設備,熟練したスタッフが必要なことはいうまでもないが,何といっても,もっとも重要なポイントは,これら全体をどのように適切に運用していくかという所にある.現在では,わが国においても方々にCCUが設置され,十分な実績をあげている施設が多数みられるが,一方,優秀な設備をそなえながらスタッフが揃わないとか,スタッフも設備も準備されながら運用面のまずさから完全な機能を発揮できないという施設も少なくないようである.しかも救急患者受け入れの手順(外部よりの連絡をどこで受け取るか,入院の判定をだれがするか,部屋のやりくりをどのようにするかなど),受け入れ直後の処置,急変時の対応の仕方,外科との連携など細部にわたってきめ細かい計画がたてられなければ円滑な運営はおぼつかないといえよう.
 われわれの病院は設立されてからようやく1年を経過したばかりで,どうやら運営も軌道に乗り始めた段階であり,CCUについても今後さらに設備,運用の面で改善を重ねていく予定であるが,現時点における当院のCCU状況について述べることにより,将来,よりよいCCUへ発展させるための足がかりにしたいと思う.

桜橋渡辺病院のCCU

著者: 井原勝彦 ,   南野隆三

ページ範囲:P.980 - P.983

はじめに
 当院CCU (coronary care unit)は,昭和46年4月に10床(うち1床はICU)をもって開設,次第に充実させ,昭和50年6月にはPCU (progressive care unit)3床を増設,救急指定を受けており,昭和52年には年間76例の急性期心筋梗塞症例を含め約300例の心臓救急患者を収容するまでになってきた.
 心筋梗塞は急性期,とくに発症数時間に救命しうる重症不整脈による死亡率が極めて高い疾患である.理想的には,不安定狭心症または切迫梗塞の段階でCCUに収容することが望ましいが,心筋梗塞救命の最大のポイントは,患者をいかにしてCCUへ迅速に搬入するかということである.そこで病院の立地条件と搬入システムが問題となる.当院は大阪の表玄関である大阪駅に隣接しており(図1),国鉄,私鉄,地下鉄,主要幹線道路や高速道路の出入口に近く,市内および郊外からの患者輸送に極めて有利な立地条件にある.一方,当院は第2種救急指定(心臓病のみの救急指定)を受けているので,大阪府の救急情報センター(大阪市の救急センターと隣接市町村とがネットされていてコンピュータを駆使して救急活動を行っている)とは専用電話回線をもって結ばれており迅速な搬入システムが確立されている(図2).

患者用病院図書室

患者用病院図書室の現状—英米の図書館活動と日本を比較して

著者: 菊池佑

ページ範囲:P.991 - P.995

 書物が人の心に影響を与え,時として治療的効果をもたらすことを人類は古くから気づいており,医師や牧師が患者に適書を処方したのが病院図書館の始まりであるといわれている.図書館蔵書の中身は,宗教書中心から娯楽書,一般書中心へと変化し今日に至っている.
 本稿では病院図書館活動の先進国である英米を最初にながめ,次に日本の現状について言及することにする.

京都南病院図書室の患者サービス

著者: 山室真知子

ページ範囲:P.996 - P.998

はじめに
 京都南病院は地域住民の健康を守り,総合的に疾病を管理するために設立された小規模の一市中総合病院である.
 当病院の図書室は昭和41年,医師とパラメディカルスタッフのために医学図書室として開設された.その後一般図書も蔵書のなかに加えられるようになったのは,一般職員からの希望と,"病院の図書室は病院の全職員によって活用されるものでなければならない"という当時の院長の方針からである.

読書と治療の関係—医師の立場から

著者: 樋口正元

ページ範囲:P.999 - P.1001

はじめに
 一般に,書物の人に与える影響にははかりしれないものがある.有益なもの,有害なもの,時にはある書物が人の一生を変えてしまうというようなこともありうるのである.
 これほど重大な影響力を持つことのある書物が病んでいる人間,すなわち病人(患者)にどのような働きかけをするのであろうか.

グラフ

リハビリテーション—今日から明日へ—中伊豆温泉病院

ページ範囲:P.965 - P.970

 新幹線を三島駅で捨て,ローカル色豊かな伊豆箱根鉄道に乗り込むと,10月下旬の日差しはいかにもやわらかであった.単線のため上りの電車待ちしながら30分余,車窓に広がる田園風景を眺めたり,見え隠れする狩野川の流れを追っていると修善寺駅に着く.ここからさらにタクシーで10分余,清流すだく大見川右岸の小高い山の中腹に,淡い紅葉を背景として,コンクリートの地肌をそのまま生かした建物が建っていた.外壁には,開設以来の風雨の跡が刻まれており,アプローチの簡明な構成と相まって,素直に好感をいだかせる.これが,脳卒中を中心とするリハビリテーション病院として全国に知られる中伊豆温泉病院である.

第5回日本病院会学会会長秋田赤十字病院院長竹本吉夫氏

著者: 能登彰夫

ページ範囲:P.972 - P.972

 11年前,二進も三進もゆかなくなった秋田赤十字病院の再建のために,院長として象牙の塔から赴任されたとき,やれるかな,と危惧の念を抱いた者が多かったと思う.新潟大学第一内科助教授で,数多くの業績があり,人望も厚く,将来は…と誰もが認めかつ期待していた人が,一転して泥まみれになる現場の責任者になったのだから.しかしやはり大した人物である.綿密な調査検討のもと,驚くべきエネルギーで,秋田赤十字病院のすべてを一新し,立派に復興させてしまった.
 大学人が院長職につくと,とかく独尊的になるか,あるいは全くの飾り物的になるか,ともかく地域の中で浮き上ってしまう例が多い中で,出色の院長である,地域医療はいかにあらねばならぬか,その中での病院の役割,そして医師像について医療人として確固たる信念をもった人である.

病院の窓

医療と福祉

著者: 野村実

ページ範囲:P.973 - P.973

 医療行為は医学と医術との応用であると同時に福祉行為であれといいたい.
 こういうと,社会福祉六法でうたわれている福祉事業,すなわち生活困窮者,児童,母子家庭,精神薄弱者,老人,心身障害者に対する特別な援助を連想する向きが多いのではあるまいか.しかし,これらの福祉事業には母子家庭を除き,それぞれの制度に医療にかかわる規定があって,医師が直接担当すべき分野が少なくない.その場合は医師の行為がそのまま福祉事業であるということもできようが,わたしが冒頭に記したことは,そのような福祉事業のことではない.

学会から

三学会で救急医療問題を討議

著者: 編集室

ページ範囲:P.983 - P.983

 救急医療が社会問題化して以来,すでに数年を経たが,その体制整備など対策は遅々としている.ここでは,今秋,行われた学会から救急医療に関するシンポジウムと特別講演を紹介する.

脳卒中は予防できる—自治体病院学会から

著者: 編集室

ページ範囲:P.990 - P.990

 第17回全国自治体病院学会は,去る11月1,2日の両日,全国の自治体病院の医師,看護婦,薬剤師などを集め,松江市島根県民会館で開催された.学会では,自治体病院が積極的に取り組むことが望まれている救急医療,老人医療に関する二つのシンポジウムおよび二題の特別講演,臨床医学・看護・栄養など7分科会での105題に及ぶ一般演題の発表が行われた.ここでは,特別講演のうち,家森幸男島根医科大学教授の「実験医学からの福音—脳卒中は予防できる」の概要を紹介する.
 氏は,まず「WHOは今年を,世界高血圧予防年として高血圧予防の運動を行っており,今秋,わが国でも国際シンポジウムが開かれた」と冒頭に述べ,モデル動物の高血圧症ラットによる実験研究の成果が,脳卒中の成因,予防,予知から地域医療にまで,どのように貢献しうるか,豊富なスライドを使って解説した.

精神医療をめぐって—病院精神医学会総会・国立病院療養所医学会「精神神経部会」から

著者: 編集室

ページ範囲:P.1037 - P.1037

開放化と地域活動
 「開放化と地域活動」を基本テーマに,第21回病院精神医学会総会が,去る9月21-22日の両日,仙台市・市民会館で開かれた.今回は19回,20回総会の論議を踏まえ,二つのテーマ「開放化と地域活動」および「開放化に伴う諸問題」のもとに一般演題の報告とシンポジウムがもたれた.
 「開放化と地域活動一地域活動を通して病院活動を考える」をテーマとした第1日は,一般演題の発表およびシンポジウムが行われた.一般演題では,病院は地域にどこまで出て行けるのか,開放化を進めるにあたって地域の側をどこまで病院に入れることができるのか,また両者の接点はどこなのか,などの問題に関連して,病院の開放化の具体的な事例,デイ・ケアの問題,院外の単身患者とのかかわり,保健所の精神衛生活動,郡山市の「あさかの里」の実践,沖縄の精神医療などが報告された.

ニュース

第2回日本診療録管理学会

ページ範囲:P.986 - P.986

 第2回日本診療録管理学会(学会長:吉岡観八・新千里病院長)が,さる10月18,19の両日,大阪コクサイホテルで開かれた.「診療録と医事紛争」(松倉豊治・兵庫医大教授)と「人間教育」(葉上照澄・比叡山延暦寺大僧正長﨟)の特別講演,「診療録管理士に望むもの」(座長:田中敏行・大阪逓信病院副院長,平田稔郎・兵庫県立柏原病院副院長)と「診療録管理を円滑にするには」(座長:高橋政祺・杏林大教授,高木二郎・住友病院部長)のシンポジウムと充実した企画で,一般演題数も25にのぼり,初日から500余名の参加者を集めた.とくに「診療録と医事紛争」では,医事裁判において診療録がどのように使われているかを豊富な事例を通じて詳しく紹介,診療録の法律的評価の側面が啓蒙された.また,診療録の開示・提出と守秘義務との関連や開示・提出のあり方が具体的に述べられ,参加者の関心を集めた.一般演題では,コンピュータ導入による診療録の管理・利用に質疑が集中した.
 第3回学会は,高野昭・宮城県衛生部保健管理課長を学会長として,9月18・19日(希望日),仙台市で開かれる予定である.

第4回日本病院会学会開かる—大阪ロイヤルホテルに延べ四千名の参会者

著者: 編集室

ページ範囲:P.1026 - P.1027

 第4回日本病院会学会(学会長:内藤景岳南大阪病院長)は,10月20−22日の3日間,多数の病院医療関係者が参集して,大阪・ロイヤルホテルで開催された.今回は,「生命と医療の調和一病院その未来への展望」をテーマに,病院経営管理,診療管理,地域医療・救急医療,看護,コンピュータ利用など20分科会で125題の一般演題が報告された.また,シンポジウムは「病院財政の諸問題をめぐって」「地域医療,特に救急医療の実態と問題点」「病院看護のあり方」の3題,特別講演は亀山正邦京都大教授による「わが国における老人医療の現状と問題点」松下幸之助氏の「長寿国日本と老人福祉」など4題,招請講演は朴景華氏(東原保健院長)が「韓国の共同生活体健康管理に関する新アプローチ事例報告」を行った.各シンポジウムとも多くの参加者を得たが,特に最終日のシンポ「看護のあり方」および松下氏の講演では,立錐の余地がないほど会場を埋め尽した.
 特別講演「わが国における老人医療の現状と問題点」で亀山正邦氏は長年の臨床経験に裏づけられた,きわめて格調の高い講演を行った.まず先史時代から現代にいたる人類の平均寿命を概説した後,はたして人間は何歳まで生きられるかという問題を提起し,老年医学はあくまでも予防医学であって,寿命を伸ばす医学ではないと強調した.

民間病院の新しい試み

博慈会の病院経営—とくに医薬品購入・管理を中心に

著者: 横山清

ページ範囲:P.1002 - P.1004

法人の沿革
 当法人の沿革を語る前に設立趣意書の一部を紹介しよう.「この時にあたり老人病研究所並びに附属病院を新設し,生命の神秘を科学的に解明すると共に,広く老人病の研究と調査及びその予防対策を樹立し,且つ,科学的で低廉なる適正医療を普及し,国民の保健衛生に寄与するをもって目的となし,ここに財団法人博慈会を設立するものであります」(昭和40年1月21日).
 そもそも当法人は,昭和38年1月,社会福祉法人博仁会(老人ホーム設置経営)の総合老人タウン計画の一環として病院設立が企画されたが,社会福祉法人では病院を設置できないとの厚生省の指導に基づき,昭和40年3月26日付厚生大臣認可をもって,財団法人博慈会として発足したものである.昭和41年6月には,老人病研究所とその附属病院(110床)が完成した.昭和43年10月には飛鳥山胃腸病院(現飛鳥山クリニック)の強力な支援が,そして,昭和44年には関連機関としての有限会社博慈会が設立され,後述のサングループの基が発芽した.

地方の病院から

健康で豊かな町づくりを目指して—岐阜県・国保上矢作病院

著者: 大島紀玖夫

ページ範囲:P.1005 - P.1005

診療所開所まで
 岐阜県恵那郡上矢作町は県の東南端に位置し,隣りを長野県下伊那郡,愛知県北設楽郡に接する辺地の町である.町といっても人口わずか3,700人,95%を山林が占めるといった山村.交通はといえば,中央線恵那駅に出るのに,峠を越し,数十メートル下に川を見下ろす崖ぷちにつくられた曲りくねった道路をバスに乗って小一時間はかかる.
 その山間僻地に上矢作病院はある.病院の歴史はまだ浅く,昭和50年6月国保診療所(ベッド19床)開所,52年4月病院化(内科,外科,産婦人科,歯科,ベッド60床)と,子どもでいえばヨチヨチ歩きの満3歳を過ぎたところである.

院内管理のレベル・アップ 薬剤 安全情報の院内伝達・5

病院薬剤部の役割—医師の立場から

著者: 鈴木秀郎

ページ範囲:P.1006 - P.1007

はじめに
 最近薬害事件の報告がマスコミを賑わせており,そのため医師,パラメディカルの人たちはもとより,一般の人々の薬剤の安全性に対する関心は著しく高くなっている.このような薬害の発生を少しでも少なくするために必要な対策にはいろいろあるが,なかでも重要なものの一つとして,医薬品の副作用に関する情報の収集と伝達がある.以下,医薬品の副作用の収集と伝達における大病院の薬剤部の役割について,医師の立場から気付いた点を述べる.

ものの管理 ものの使用管理・6

手術用治療材料の使用管理

著者: 谷口紀子

ページ範囲:P.1008 - P.1009

 当大学病院の手術部は,開設以来約8か月を経過したが,病棟は部分開棟でベッド数に制限があり,手術件数も1日平均10件にとどまっている.現状では,大学病院としてはまだまだ軌道にのっていないといえよう.その中で手術用治療材料の使用管理も,まだ完全な状態とはいいがたいが,事例も含め報告し,ご助言,ご批判を仰ぎたい.

廃棄物処理 病院廃棄物の問題点・5

排水の管理

著者: 秋山より子

ページ範囲:P.1010 - P.1011

排水規制の経緯
 昭和30年以降,わが国は急激な経済成長をとげ,産業・人口の都市集中,下水道整備の遅れから,公共用水域の水質汚濁を増加させていった.このため昭和33年12月に水質保全法および工場排水規制法が制定されたが,これは,水質汚濁問題が生じた水域あるいは生ずるおそれのある水域に対して,水域を指定して排水規制を行うという"後追い的"色彩の濃いもので効果的対策とはならなかった.
 この後追い行政の是正を図るため,昭和42年8月公害対策基本法が,昭和45年12月に33年の二法を整理統合した水質汚濁防止法が制定されている.この法は,事業所などから排出される排水の水質に係わる基準を設け,これを事業者に遵守させることによって水質の汚濁防止を図るものであり,その基準は表1,2のようになっている.

手術 安全,確実な手術のために・8

手術室電気設備の保守管理

著者: 倉持一雄

ページ範囲:P.1012 - P.1013

 手術室は病院の中でも,電気設備機能が最も安全に管理されなければならない部門である.手術医,麻酔医の技法がすぐれ,熟練した介助看護婦と各種ME機器などの専門技術者が適正に配置され,手術に使用する器具.材料が適切に滅菌・消毒され,手術室の室内環境が清潔に管理運営されても,手術に使用されるME機器あるいは一次側電気設備の機能上に欠陥があれば,電撃ショックなどの不測の災害を生ずるおそれがある.欠陥がなくても保守点検が不的確であったため,その機能の使用効果があがらなければ,手術の成果は望めないばかりか,時には,患者はもちろん手術従事者を危険にさらすことすらある.
 施設の保守担当の立場から気づいた点を参考までに述べる.ご検討の一助となれば幸いである.

滅菌・消毒 感染管理の理論と実際・6

滅菌・消毒の実際(2)

著者: 川北祐幸

ページ範囲:P.1014 - P.1015

感染病棟における滅菌・消毒
 室内全体の消毒をする必要が生ずることはままある.重症感染症の患者が入っていた時,ICU,新生児室などで,院内感染率の高くなった時などは,今まで述べたような部分的手段では駄目で,室全体を消毒しなくてはならない.
 方法としては,酸化エチレンガスとホルムアルデヒドガスを用いる方法があるが,酸化エチレンガスによる滅菌・消毒は,引火性,毒性などのほか,加湿,加温の条件が,滅菌効果を大きく左右するので,室内に利用することは実際的に困難である.

最近の判例からみた医療事故・12

精神病質者に対するロボトミーの施行と医師らの責任

著者: 稲垣喬

ページ範囲:P.1016 - P.1017

判例
 本判決(札幌地裁昭53.9.29判決,未登載)は,ロボトミー(前頭葉白質切截術)の実施について,それが医療行為といえるか,その許容の条件は何か等をめぐり激しく争われた事案に関して,わが国において始めてなされた裁判であり,違法性判断の前提としての医療水準,手術選択における裁量の限界,ないし患者の承諾を得べき場合等について詳細な判示をしただけでなく,精神病質者との診断によりロボトミー適応と判断してこれを依頼した医師,およびこの依頼に基づき手術を施行した医師の関係にも考慮を払いながら,なお両医師の責任を肯定したものとして注目される.

今月の本棚

—川上 武 著—「医療経営と技術医療費問題へのアプローチ」

著者: 遠藤保喜

ページ範囲:P.1018 - P.1018

広範な問題点の指摘,だが至難な変革
問題点を総合的に整理
 私はこれまでに書評をした経験もなく,またその柄でもないので,書評ということではなく,読後の感想として若干述べてみたい.
 著者が多年にわたって医療経営の諸問題について研究され,医療経営問題から自治体の衛生行政にまで及ぶ,多くの問題点を詳細に把握し,整理しておられることに,先ず敬意を表する次第である.

—自治医大自主講座《住民医療》編集—「第一線医療の探究—先駆者たちとの対話」

著者: 川嶋望

ページ範囲:P.1019 - P.1019

自治医大生の医療への問いかけ
 近代医学と疎遠なへき地の第一線で保健医療に従事する医学徒の卒前教育を担った自治医科大学は,医療関係者・自治体・一般社会が注目する中で100%に近い医師国家試験合格率を示して第1期生を社会に送り出した.各自治体によって受け入れ体制に差こそあれ,彼らの医療活動は始まり,本院でも3名の自治医大第1期生を迎えることになった.

院外活動日誌

地域医療への栄養士の参加

著者: 立川倶子

ページ範囲:P.1020 - P.1020

"糖が出るといわれ,ショックでごはんものどを通りません.""血糖検査が境界域に入ったくらいで,そんなに気になさることはないんですよ."
"血中コレステロールが高いので鶏卵はいっさい食べておりません.""卵黄はたしかにコレステロール値の高い食品ですが,コレステロール値は食品100g中で表示されていますから,卵黄100gというのは5—6個分になります.1日1個くらいの鶏卵を召しあがることは,良い蛋白質をとるためにも,むしろおすすめします."

新・病院建築・12

慶応義塾大学月が瀬リハビリテーション・センター—限られた敷地の有効利用

著者: 鹿子木宏

ページ範囲:P.1021 - P.1025

はじめに
 月が瀬リハビリテーション・センターは,静岡県田方郡天城湯ケ島町月ケ瀬温泉地に建設されている.この敷地には,昭和16年から大学月が瀬温泉治療研究所として、温泉を利用した療養所があったが,昭和33年の狩野川台風で,上地および研究所の建物が流失し,そのまま閉鎖されていた.
 このたび,社団法人日本損害保険協会の寄付により,リハビリテーション・センターとして建設されたものである.

病院のあゆみ

病院管理学的にみた昭和初期の大学病院(2)

著者: 守屋博

ページ範囲:P.1028 - P.1032

放射線による診断と治療
 レントゲン線発生器が日本に輸入されたのは明治の末期であるから,昭和初期までに20年近くたっていたが,発生線量は未だ非常に弱く,撮影時間は長く,明確な写真をうつすことも透視もそんなに容易ではなかった.大学の各教室はそれぞれ専用の器械をもち,教室員は各自が受持ち患者の透視撮影を行っていた.つまりレ線読影の専門家はいなかった.
 第一外科には,シーメンスの撮影器が一台あって,大谷という小僧以来30年というベテラン技術員が,輸入以来一人でスイッチを入れたり現像したりなどしていた.管球は当時ガス球からクーリッヂに変ったばかりの時であったが,外科では主として胃の造影に使われることが多かった.それも粘膜レリーフなどは無理で,全体として欠損像がわかる程度であった.教室員のうち,伊知地君や佐分利君のように,レントゲン係を割当てられた諸君は段々と専門化し,うまい写真をとるようになると同時にほかからの依頼撮影をするようになった.しかし読影については討論会をもつようなことはなかった.血管撮影や間接撮影が始まったのは大分後である.

精神医療の模索・12

外来診療所と病院—精神科診療所は新しい道

著者: 佐々木邦幸

ページ範囲:P.1033 - P.1037

精神科医療の特殊性
 精神科以外の診療科では至極当り前のことである「外来診療から入院治療へという一連の治療活動」が,精神科においては最近まで存在しなかった.一般的には存在しえなかった.
 精神科治療といえば入院であり,行動制限であり,代行行為であり,入院から退院まで本人をぬきにして事が運ばれるという虚構の世界であったということができる.その歴史があまりに長くあったため,精神科治療とはそういうものだという先入観が広く世間にあって,今日起りつつある急激な内部崩壊に近い変化に対して容易に理解が得られず,むしろ非難めいた当惑や同情のある誤解さえ生じてきている.

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「病院」 第37巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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