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—医療経済研究会 編—「日本医療の進路」
著者: 安冨徹1
所属機関: 1国立京都病院外科
ページ範囲:P.318 - P.318
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まえがきにあるとおり,この研究会の第8回例会における報告・討論をもとにして各執筆者が書きおろした論文集である.第1章の「日本医療の危機と民主的打開の道」という総論的論説から始まって,国際的視野からわが国の医療を考え,住民との関連,各種医療団体の今後の行方,医学教育問題,医療産業の動向に及び,最後に各執筆者の座談会でしめくくっている.この種の論説は断片的には,新聞や病院管理学関係の雑誌などで拾い読みすることはあっても,相対して系統立った一冊の書物として読んだことのない筆者(臨床医)には,正直いってなかなかショッキングな部分が少なくなかった.たとえば,医療の荒廃という言葉一つをとってみても,ほんの少数の不心得ものが犯した脱税や差額徴収,あるいは医療過誤などを一部のマスコミがセンセーショナルにあげつらうための言葉に過ぎないと軽視していた.しかし,朝倉氏が第1章の中で,数字をあげ,保険制度のからくりをえぐり,わが国の医療の現状を分析してみせてくれると,安易に考えてはいられない恥部のようなものを,つきつけられた思いである.
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