icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院37巻9号

1978年09月発行

雑誌目次

特集 変貌する病院事務

見直しを迫られる病院事務

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.714 - P.718

まえがき
 以前は,病院では,玄関を入ってすぐのところに必ず事務室があり,そこには木の机や棚がごたごたと置かれ黒い腕カバーをつけた事務員が,何となく帳簿をつけたり,ソロバンをはじいたりしているというのがふつうの姿であった.一般的に見て,この姿は現在でも基本的にはそれほど大きく変っているようには思われない.診療所から発達してきたわが国の病院において,事務にも診療所的原型がずっと残っているというふうに考えられる.しかし,これは単に病院には限らず,わが国のほとんどすべての事務室に共通した風景とも見られるから,その原因はもっと深く,事務という仕事の本質そのものの中に求められるものかもしれない.
 病院は,患者のために診療を行う場所であるから,どんなにしても,事務という仕事がそこでの中心的働きとなりうるはずはない.病院での主役は,あくまでも医師をはじめとする薬剤師,看護婦,放射線技師,臨床検査技師等々の診療ないしは医療関係職員であり,事務関係職員はそれに対する脇役かないしは裏方でしかないというのが従来からの一般的見方であったと言える.しかも,診療関係職種のほとんどは国家試験による資格を必要とし,業務上高い知識が要求されるところから,専門職種と呼ばれているものである.となると,資格もいらず,またそれほど高い専門性を必要とするとも見られない事務職員が,その中でどうしても軽視されることになるのは止むをえない.

医療機構の変遷と事務機能

著者: 細田健二

ページ範囲:P.719 - P.722

はじめに
 医療法にいう.
 第10条病院又は診療所の開設者は,その病院又は診療所が医業をなすものである場合は医師に,歯科医業をなすものである場合は歯科医師に,これを管理させなければならない.

病院事務に求められる情報の質と量

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.723 - P.727

はじめに
 情報とは,ある一定の行為を始めるに先立って知る必要のあるすべての知識を取り扱うものである.情報をこのように考えた場合,病院事務に必要な情報ということになると,その範囲は広く,かつ,多種多量である.そして,その情報の果たす役割から,病院の経営方針の意思決定のための情報と,それぞれ情報の発生する各現場における業務処理方針確立のための情報とに分けられる.前者は経営管理のための情報であり,後者は能率管理のための情報ということができる.
 病院で最大の情報は生体記録に関する情報であるが,その大部分の情報は医事管理システムの1つである診療費管理システムにも必要不可欠な情報である.また,生体情報を管理した結果の診療情報も当然なことながら多く,その使途は能率管理のためのみならず,設備投資計画のための重要な指針の1つになる.

病院事務の諸相

多施設運営の中枢として

著者: 大塚暢

ページ範囲:P.728 - P.731

企画部とそのブレイン
 「すべてのしあわせをもとめて,半世紀もの長きを不幸な人々のために尽され,なお,その尊い愛の活動を続けている聖隷--.
 その一貫した≪こころ≫を知らされた私共は深い感動をおぼえると同時に,心動かされ,活動を共にすることに大きな望みをたくします.そこで,多くの知恵をあつめ,まとめあげ,より格調高い聖隷をつくるためのプロジェクトシステムを導入されんことをご提案申し上げ,それに参加いたしたくお願い申上げます.

事務業務の外注化を行って

著者: 尾崎恭輔

ページ範囲:P.731 - P.734

はじめに
 病院経営形態の近代化,合理化に伴い,医療部門以外の,いわゆる病院事務(病院の基木業務である医療を直接,間接に支援する管理部門のもつ機能,すなわち一般事務,医療事務,補給,整備等の管理業務をいう)の合理化,特に省力化について強い要請があり,これら業務の個々および組織的な合理化向上施策の探求に努力が払われている.
 事務業務の外注化といった場合,どこまでを事務とみるか多少の問題を残すが,ここにいう管理業務と,医療部門内の事務,たとえば栄養課における給食材料の購入,薬剤部における薬品購入,管理などの業務をも含むものとした.

外来事務の外注化を行って

著者: 桃原永勝

ページ範囲:P.734 - P.737

はじめに
 県立那覇病院においては昭和51年5月以降,医事の外来業務について,レセプト作成をはじめ患者の受付事務から諸統計資料作成まで,すべて外注を実施している.その背景および方法等を具体的に記述して,すこしでも御参考になれば幸いと思います.

事務のコンピュータ化をすすめて

著者: 小出治

ページ範囲:P.737 - P.741

病院の概要と特徴
 当院は,大正10年12月に西宮町立診療所を開設したのがその前身であり,昭和14年10月に病床を有し病院として開設した.
 その後,逐次,施設を増築し,診療科の増設と内容の充実に努めたが,増築を重ねたため非能率的な施設配置となり,病舎の老朽化は近代医学の発展に追随し得ない結果となったため,昭和45年9月移転新築を決定し,市民の健康を守り,福祉の増進に寄与するため,高度な医療を提供する場として,特色ある病院を目途に設計をまとめ,昭和48年9月に工事に着手,昭和50年3月17日より新病院にて診療を開始した.

グラフ

多彩な試みで総合医療を推進—東京都・医療法人社団北病院

ページ範囲:P.705 - P.710

 大都市の医療においては患者と医療関係者との絆の薄れ,また検査,投薬中心の機械的な診療から"医療における人間疎外"が叫ばれているが,ここに地域住民と医療従事者・開業医などとが一体となって建設し,地域の人々のいのちと健康を守る役割を果たすことと,第一線医療機関との連携による地域医療の実践を目的とする病院がある.開設以来3年半で,病床数40から150床へ,救急も都の1,2次の指定を受け,脳外科手術の24時間体制をとるなど,北区の主要センター病院として機能しはじめた医療法人社団北病院がそれである.
 北区は都内でも総合病院が少なく,区内にセンター病院をという要望は強かった.そこで,48年7月現在の住田院長を中心に北区の公害と闘ってきた市民組織の人々が,区民の健康を守る医療機関を区民の手で作ろうと立ち上がった.以来今日まで5年間の北病院の歩みは,"住民のために"と"住民とともに"に徹することにあったといって過言ではないだろう.

広い視野と寛容の人柄で日病薬を指導日本病院薬剤師会会長 永瀬一郎氏

著者: 岩崎由雄

ページ範囲:P.712 - P.712

 昭和19年東京帝国大学医学部薬学科卒業,分析学教室(現日本薬剤師会会長・石館守三教授門下生)出身.戦時中軍隊生活1年復員後東京大学助手.その後国立東京第一病院,関東逓信病院,新潟大学病院,東大分院,千葉大学病院薬剤部に勤務され本年8月東京逓信病院薬剤部長になられた.
 数多い国立大学病院薬剤部長の中でも,生粋の病院薬剤師であった.これはご経歴を見れば分る.30年病院生活を生きぬいた根性が今日の日本病院薬剤師会(全国会員1万数千名)の最高指導者として卓抜な識見と大所高所に立ってものを観る広い視野を体得した所以であろうと思う.

病院の窓

ユーザーの泣きごと

著者: 笹本浩

ページ範囲:P.713 - P.713

 東海大学医学部付属病院に対して,1976年第17回建築業協会賞というものが与えられた.その選評によると,「……人間(生命・人体)研究の期待に応えるべく建てられたのがこの建物である.その理想主義的な高い理念が過・不足することなく建築的に貫徹して,ヒューマンな精神と合理的な機能が,この大建築にほとんど破綻をもたらすことなくまとめられていることに,まず感嘆するものである.……」
 建物がすぐれているから賞をもらったというのなら,まだ話はわかるが,病院はその機能もきわめて大切である.この病院がオープンしてから3年余を経過して感じたことを,ユーザーの立場から記してみる.

ホスピタル・メモ 検査

オートクレーブ

著者: 吉野二男

ページ範囲:P.718 - P.718

 高い山へ行ってご飯を炊くと,かたいなまにえのご飯ができてしまう.これは,気圧が低いと水の沸点が低くなって,すなわち100℃にならないで沸騰してしまうので,うまいご飯が炊けないのである.これを防ぐためにいわゆる圧力釜といわれているものがある.この圧力釜を用いると,うまいご飯ができる.圧力が高いと沸点が上昇し,100℃でも沸騰しないし,また100℃以上の水蒸気も得ることができる.
 細菌類を殺してしまうために熱を加えることは,容易にできる手段として,臨床検査のみならず,一般診療に広く用いられている方法であり,沸騰水中にひたす煮沸滅菌,また水蒸気にふれさせる蒸気滅菌があるが,これによる温度は一般的に100℃どまりということになる.

読者の声

病院事務は魅力ある職場か—とくに医事業務について

著者: 熊沢実

ページ範囲:P.727 - P.727

 病院行きのバスに乗ったことのある方ならご存知のことと思うが,バスが病院に到着するやいなや自分が病人であることを忘れて,一目散に駆けてゆくひとコマをどう理解したらよいだろう.また雨が降って患者が少ない日は,職員全体の気持が何となく落ち着く……
 医療の現場は忙しい.われわれ医事係は事務の現業員であり,患者は増えても,職員の増員は支出の増大につながるから簡単に人は増えない.ということから相手のことよりも自分のノルマを果たすことで毎日が過ぎてゆくことが多い.

地方の病院から

現在の悩みと将来の課題—岩手県・国保総合水沢病院

著者: 中島達雄

ページ範囲:P.745 - P.745

 国保病院の医師として,また院長として26年間の経験から痛感していることは数多くある.

院内管理のレベル・アップ 手術 安全,確実な手術のために・6

手術室での偶発事故と防災

著者: 桜井健司

ページ範囲:P.746 - P.747

 天井に採光用の明り窓をつけ,自然換気で,蝿たたきといった手術室の風景はこの頃少なくなった.かわりに窓なしの人工照明下に複雑なME機器が並び,機器も多くが電動式で,換気はlaminar flowのbio—cleanといった手術室が増えてきている.そして以前は考えられもしなかったような高度の手術が日常行われるようになってきた.このような手術室の設備および機能の高度・多様化は医療の進歩に伴い必然的に起ってきたものである.しかし反面いろいろな問題も出てきた.装置が複雑・多用化するに伴い偶発事故の要因が多くなってきたのである.
 外科医として長年いろいろな病院で働いていると手術室内で起る各種の偶発事故を見聞きしたり,それに伴う医療訴訟問題を読んだりすることがある.偶発事故は普通あっても病院内あるいは手術室内という限られた場所でのできごととして処理されることがほとんどなので正確な発生頻度はわからないのが実情であるが,一般的にこの種の事故は幸い少ないと言える.

医療社会事業(MSW) 病院におけるMSWの役割・5

医療ソーシャルワークの中心機能—1.社会資源の活用をめぐって

著者: 上野博子

ページ範囲:P.748 - P.749

 病院内において,医療ソーシャルワーク(MSW)の業務および機能が,どの程度正しく理解されているかというと,必ずしも十分とはいい難い状況がある.それは,MSWの業務の中心的な機能が,対象者(患者あるいは家族)との相談のプロセスにおける両者のかかわりにあり,そのなかでの質的な側面において発揮される性質のものなので,外側からはわかりにくいということにもよる.
 たとえば,医療費の問題の相談についていえば,結果として医療扶助の適用を受けたという場合,扶助の適用という目に見える部分は,大変具体的でわかりやすい.しかし,相談のプロセス(いかなるかかわりの中で,対象者が主体的に自らの問題解決のための方法を選択し,困難を克服してゆくか,という内的側面)については,外側からは具体的に見えず,したがって理解しにくい.

廃棄物処理 病院廃棄物の問題点・3

院内焼却

著者: 粕谷良

ページ範囲:P.750 - P.751

 病院にハウスキーピング部門が確立されている場合,そこでは,患者および職員の生活環境をととのえるリビングサービスの仕事が行われている.とくに病院は,いつの場合でも数多くの細菌によって汚染されやすく,また地域社会より持込まれた多種多様の物品が,深刻なまでの複雑さで広範囲な廃棄物となってはねかえり,はては,病院機能の保全にまでも支障をきたしてきていることは,清潔な生活環境保持を第一とする病院ハウスキーピング部門にとって重大であり,多くの問題を提起している.

労務 労務管理の考え方・6

新しい労使間の定義(2)

著者: 山本重文

ページ範囲:P.752 - P.753

新しい労使関係の技術的問題(つづき)
 前回(37巻8号)では,主として筆者の労使間の定義について,概念的に述べた.
 それでは,この概念を根底にした技術的問題について述べてみたい.

薬剤 安全情報の院内伝達・5

中小病院での現状(2)

著者: 保田静江

ページ範囲:P.754 - P.755

(8号よりつづく)
情報の伝達
1)比較的普遍的なもの
A.医薬品管理に関するもの
c.薬事委員会報告(FormularyCommittee Report,表2)
 過去ある時期に,『薬品情報』と題して薬局から積極的にプリントを配布したが,効果があまり期待できず中止し,今日では,薬事委員会報告に併載している.当院においては,隔月に薬事委員会を開催し,新薬の採否,Formulary削除薬品の決定,また薬局から提供する医薬品の安全性に関する各種情報,使用上取扱いの注意事項などについて協議の上,当院での使用の可否,用量変更,約束処方の変更などを決め,これをreportとして,全医師,薬剤師,看護婦各詰所および医事課に配布し,徹底を図っている.

最近の判例からみた医療事故・9

交通事故に基づく被害者の脳機能障害をめぐる加害者と診療医の責任

著者: 稲垣喬

ページ範囲:P.756 - P.757

判例
 交通事故により傷害を受けた被害者(患者)が,医師の診療を経た後,症状が拡大ないし死亡するに至ったような場合には,加害運転者とその診療医師との間で,結果に対する責任の成否・限度をめぐって争いとなることが多く,因果関係の有無ともからみ困難な問題を提供している.本件は,右のような事例において,いわゆる植物人間となった原告が,衝突事故の発生ないし医療過誤を理由として,加害者と診療医の連帯責任を追及して損害賠償を求めたのに対し,裁判所が,加害者の責任を全部的に認めたが,診療医には過失がないとした事案である(札幌地裁昭52・4・27判決,判例タイムズ362号310頁).

今月の本棚

—佐藤 智 著—「病院消防署論院長日誌」

著者: 守屋博

ページ範囲:P.758 - P.758

病院長を理解するテキスト
 著者の佐藤先生は,病院学会などでしばしば病院の地域活動等について発表されているので,私も一応面識はあるが,膝を交えて懇談したことはなかった.このたび本書を読了し,はじめて先生の病院に対する信念を知ることができた.
 『病院消防署論』とはいかにも武骨だし,600頁に及ぶ大冊はちょっと近寄りがたく,また例の抽象的な病院論かと思ったが,読んでみると非常に読みやすい院長日誌の綴じこみなのである.朝日新聞の天声人語に劣らぬ名コラムニストということができるであろう.

—越山 健二 著—「地域医療のあゆみその実践と研究」

著者: 若月俊一

ページ範囲:P.759 - P.759

地域医療との闘いの記録
 私は筆者越山院長とは長い間のおつきあいをさせてもらっている.彼はまた,私どもの日本農村医学会の評議員で,その重要なメンバーでもある.地域医療についてはお互いに長い間,理論的にも実践的にもかかわりあってきた仲で,この度,今までの業績をまとめられ『地域医療のあゆみ』を出されたことは私にとっても,たいへんな勉強になった.なにより,筆者の全貌をより広く深くうかがえたことはうれしかった.彼はかつて海軍軍医として空母鳳翔にのりくんでいたという.そして爆撃で負傷した.彼の,日頃のなんとなき毅然たる風格,そして実際に所信を貫き通してきた業績,すべてはそういう生死を越えた彼の経歴に,よい意味で関連している所があることが分った.
 ここには,彼の学術論文あり,調査,研究の業績のほか,評論あり,さらに講演,随想までもある.「はしがき」によると,各章は「おおむねその時代の順に」配列されているという.地域医療に関する彼の業績が結集されており,彼の考え方や方法論を知るのに便利である.第1章「地域と疾病」から,第6章「上市厚生病院のあゆみ」に至る論文のうち,とくに昭和42年頃からの,市村潤氏と連名で発表されている近代統計学とコンピュータを使っての,地域医療のシステム化への追究の努力は注目に値しよう.

院外活動日誌

訪問看護係一年生

著者: 大野順子

ページ範囲:P.760 - P.760

6月21日
 今年は陽性の梅雨ということで,今日も雨が降らず暑い日が続いている.訪問看護係に転じて5日目.先輩のKさんは子供の発熱でおやすみ.出勤してまず留守番電話を聞く.朝早くかけたらしいSさん(88歳)の奥さんの声が流れる.「昨夜,おじいさんが食事のあと,食べたものをもどしました」.折返しこちらから電話をかけて様子を聞き,午後一番に訪問する.ベッド上で眠っているSさんの顔や胸,腕のあたりに汗がにじんでいる.奥さんの話では,嘔吐は一度だけで嘔気はないが,食欲もないし,大事をとってアイスクリームを食べさせただけですとのこと.
 Sさんは49年1月85歳の時,脳卒中で倒れ,後遺症として左半身不全麻痺がある.発作後訓練で歩行可能となったが,52年に再発作を起した.現在は少しボケもあり,ギャッジベッド上で半坐位になれ,介助があれば椅子に移ることもできる.足を伸ばせばベッドの端から端まで届きそうな,体重も70kgを越すような体格のSさんを目と足の不自由な83歳の奥さんでは,椅子に移すことはできない.

新・病院建築・9

大阪府立成人病センター新病院—高度の機能を高層集約型ブロックプランに

著者: 伊藤誠

ページ範囲:P.761 - P.768

 大阪府立成人病センターの名前は既に広く知られている.開所以来20年近い歴史をもち,その間がんや脳卒中・心臓病の分野で数々の輝かしい成果を挙げてきた.国立循環器病センターが同じ大阪に開院したのはようやく昨年のことである.また,当センターのがん部門が開設されたのは国立がんセンターより1年ほど早い.このあたりが大阪独特の先進性なのであろう.
 また、機能内容の面でも施設の,点でも,その成長ぶりはまことに堅実そのもので,危げな足どりは微塵も感じられない.この度,隣接用地が買収できたのを機会に,病院部門の本格的な整備充実がはかられた.6期にわたる建設の過程が大阪独特の堅実性を語っているように思う(表).

民間病院の新しい試み

地域医療活動の拠点を目指す—北病院住田院長に聞く

ページ範囲:P.769 - P.772

 医療法人社団北病院は,昭和49年,現在の国電東十条駅から3分の地に,病床数40床で設立された.開設以来3年たった今日,14診療科,150床で,総合病院にもう一歩というところに迫っている.他医療機関との連携を強め,お互いに意識を高めながらの効率的な分業と協力により住民のための医療の実践を目指している住田幸治院長に設立の理念,経過,現在の活動についてお話をうかがった.

精神医療の模索・9 総合病院における精神医学(療)の技術

総合病院精神科とLiaison Psychiatry

著者: 武正建一

ページ範囲:P.773 - P.775

はじめに
 医療技術のめざましい進歩とそれに伴う専門分野の細分化は,一方ではより統合的な視野に立った病める人たちへの人間的な医療が求められているのも事実であろう.こうした状況の中で,総合病院精神科の果たす役割は次第に大きくなっていると思われるが,果たして他科との緊密な連携のもとで理想的な総合医療が行われうるかということになると,その医療経済上の問題,労力といった面から決して容易ではないというのが率直な感慨である.
 これまでの精神医療の歴史的な流れを振り返ってみると,やはりそこには単科の精神病院を中心にして発展してきた精神科というものを考えざるをえない.したがって精神科とは,精神病者の治療にたずさわる特殊な科としての印象が精神科以外の各科の医師たちに持たれてきたし,また現在もなしとはいえないであろう.精神医学が今もなお,ある意味合いでは特殊な専門分野であるということは,心身の統合を目標としながらも,なおこの壁を乗り越えることができないでいるという精神医学自身にとっても,重要な課題として残されていることであるが,これについてここで深く立ち入るつもりはない.

現代の要請に応えうる治療の場

著者: 小倉清

ページ範囲:P.776 - P.778

総合病院精神科の出現
 総合病院の精神科がそれ独自の医療技術をもつのかどうかは,かなり議論の分かれるところではないかと思われるが,それを考察する前に,そもそもなぜそんなことが議論されるのかということから考えてみたい.
 従来,精神病院にはいいイメージがなかったきらいがあるといっていいであろう.それにはいろいろ理由があろうが,まず,①精神疾患に対する系統的,科学的なアプローチが欠如していたこと②精神疾患に対する偏見,無知,無理解に基づく強い恐れが一般にあったこと③治療や看護に当る人的資源の問題④精神疾患についての衛生行政の問題などがあげられよう.

病院給食

病院給食部門の適正人員について

著者: 大関政康

ページ範囲:P.779 - P.782

 本誌1号に掲載された榊田博氏の「医療業務の標準化」中の給食適正人員算出式について,質問が方々から寄せられたので,ここで改めて大関氏に解説していただいた.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?