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雑誌目次

雑誌文献

病院38巻11号

1979年11月発行

雑誌目次

特集 医療費の限界と病院経営

これからの医療需要と医療費の動向

著者: 都村敦子

ページ範囲:P.911 - P.915

 1965年から1975年までの10年間に,我が国の国民医療費は5.8倍に上昇した.医療費の高騰は各国共通の現象であり,スウェーデン,西ドイツではこの期間に医療費が約4.5倍,イギリス,フランスでは4倍前後,カナダ,ベルギー,アメリカでは約3倍に上昇している.経済的,社会的,制度的な各種の要因が医療費に影響を及ぼしているが,ここでは,人口構造の変化および医師数の変化と医療費との関連について若干の検討を行ってみたい.すなわち,第1に,高齢化社会の到来を前にして,人口の老齢化は医療需要及び医療費にどのようなインパクトをもたらすか.第2に,我が国を初めとして,世界の主要国では,1960年代までの医師不足時代から,将来は医師過剰時代へと医師供給に変化のきざしがみられるが,医師数の増加は医療需要及び医療費にどのような影響を与えるか.以上の二点について取上げたい.

医療供給システムの再編成

著者: 西三郎

ページ範囲:P.916 - P.921

 日本の病院は,その歴史的経緯から見て地域性を持たない自己完結型の施設であると言えよう.では,このような病院は,新しい時代の医療供給体制の中でどのように位置づけられるべきなのだろうか.ここでは,プライマリー・ケア実現のための医療システムの中で病院はどう位置づけられるべきか,その具体的施策への手掛りのための基本的事項について述べよう.まず,最初に,我が国の病院の性格及び特色を明らかにするとともに,プライマリー・ケアについて私見を述べる.

医療機関の機能分化

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.922 - P.926

医療の展開
 医療の供給体制は,国によって多少の違いはあるが,開業医を主体とする外来診療と,病院施設による病院医療に大別できる.
 医療の原始形態は,医師個人が患者を診療する単独診療であり,現在でも医療の中心ではあるが,医学や医療技術が専門分化し高度化するにつれ,医師の組織化と医療技術の組織化が進んできた.

国際的に見た医療費の動向とその対策

著者: 紀伊國献三

ページ範囲:P.934 - P.937

 先日発表された我が国の国民医療費は,昭和52年度で8兆5,686億円といわれる.過去において医療費は年率20%近い伸びを示し,遠からず医療費の爆発現象があると諸方面から指摘されている.医療費の国民所得あるいは国民総生産に対する割合が年々高くなっていることは,その伸びが他のいずれのサービス費用よりも高い割合で上昇していることを示している.この現象は我が国だけでなく世界の先進国のいずれにおいてもみられている現象である.昭和52年度の厚生白書に発表された欧米4か国の医療費を,我が国の国民医療費の概念に合わせて修正した値は表1に見られるとおりである.
 ここでは医療費に対する国民所得比を比較しているが,1975年での我が国の5.08%は他の国のいずれよりも低く,他の国では8%台を示しているところが多い.しかし,注意せねばならないことは,いずれの国においても毎年の伸びが急速であるが,過去10年間における伸びの割合は我が国が世界の中でも最高の伸びを示していることである.医学と公衆衛生の進歩がなされればなされるほど,他方,医療に要する費用が多くなるという皮肉な現象に,先進国はいずれも悩んでおり,これは最大の社会問題となっている.

鼎談

低成長下における病院経営

著者: 一条勝夫 ,   石原信吾 ,   大村潤四郎

ページ範囲:P.927 - P.933

 現在,医療費は急成長しているが,その原資であるGNPの伸び率が小さくなり,今後の医療費の大きな伸びは期待できないと予測されている.しかし,この状況に対し,多くの病院では危機意識があまりない.ここでは,医療費は停滞するという予測のもとに,それが病院にどう影響するか,また病院はその事態にどう対処すべきか,病院経営のあり方をめぐって話合っていただく.

グラフ

"愛され信頼される病院"作り—新潟県立吉田病院

ページ範囲:P.897 - P.902

 新潟市内から車で1時間,晴れた日には日本海に浮かぶ佐渡がよく見える弥彦と隣接し,県内では珍しく雪が少ない冬期でも交通が途絶することはほとんどないという好立地な新潟県立吉田病院はある.新潟県は岩手県に次いて16の県立病院を擁し,その各々を基幹病院,地域中核病院,地区病院,へき地病院等に性格づけし,医療の確保と県民の健康保持に取り組んているが,昭和30年,一地区病院として設けられたこの吉田病院は高等看護学校の併設,新潟市に比較的近いため医師の確保がてきたこと,国道沿いで患者の通院にも便利等々の要因で今は455床の県基幹病院に数えられるまでに成長した.このような急成長の理由としては,人口2万3千,米どころらしく水田に囲まれた純農業地帯の吉田町が町の発展のために病院を作ろうという強い姿勢を持つていたことも挙げねばならない.
しかし,このような好条件が急成長に結びつくには開設以来四半世紀を病院と共に歩んできた中畠健院長はじめ多くの職員の熱意と努力が必要であった.中畠院長は大学とある市立病院医長を経て院長職についたが,就任同時に"愛され信頼される病院"という病院の目指す方向を打ち出した.(稲刈り時期,方々で刈りとった稲わらを焼く煙が立ち,空までどんよりしてしまうという米どころらしい環境に吉田病院はある)

第6回日本病院会学会会長に就任富山県立中央病院院長 村田勇氏

著者: 河野稔

ページ範囲:P.904 - P.904

 村田先生は性,剛直,積極果敢,勇断の人であり,第6回日本病院会学会の会長を引き受けられ,目下その俊敏な頭脳でアイデアの発想雲のごとくいろいろ計画中であると思うが,恐らく前代未聞の独創的企画で集団アイデアを集め大成功されることと信じて疑いません.私と先生の出会いは昭和30年5月の富山県のイタイイタイ病発見以来で,公的には学会の好論敵であり,私的には兄弟以上に親しくつき合ってきたものである.
 先生は昭和14年,金沢医科大学卒業,昭和24年医学博士授与.この間,昭和14年10月より21年4月まで約7年弱,軍医として中支に応召,いろいろの辛酸をなめられ,この軍隊生活が後年の村田博士の人間形成に大きく寄与したものと思われる.召集解除後,大学へ復帰し文部教官となり,1〜2の病院を経て,富山県立中央病院院長となり,現在に至っている.先生はこの間に学究の徒として大学教授級の研究をし,その業績を国内有名学会や国際学会に数多く発表され,特にイタイイタイ病に関しては日本医師会より,昭和45年医学賞を授与されておられる.

焦点 対談

プライマリー・ケアと病院(上)

著者: 岩崎栄 ,   若月俊一

ページ範囲:P.905 - P.910

 プライマリー・ケアというと,病院とは直接関係のない問題ととらえがちであるが,我が国の医療体制及び病院の特性からみると,病院でもこの問題は避けて通れないであろう.この対談では,第一線の医療をすすめられている岩崎,若月両氏に,我が国のプライマリー・ケア実践のすすめをお話し合いいただいた.

ニュース

自治体病院関係者松本市に参集—第18回全国自治体病院学会開かる/「21世紀の病院医療」を討議—第17回日本病院管理学会総会

著者: 編集室

ページ範囲:P.933 - P.933

 「心が,血が,言葉がかよう医療」をシンボルテーマに,第18回全国自治体病院学会(学会長・小口源一郎昭和伊南病院長)が,10月4,5日の両日,松本市社会文化会場を主会場に開催された.
 シンポジウム「自治体病院の医療姿勢と企業性をめぐって」は,小口学会長の司会で,学会第二日に行われた.

特別寄稿 医療評価

病院の医療評価資料の調査(4)—各種会議及び委員会,全編総括

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.938 - P.939

 本報告は,第4回報告である.これで,アンケート(1)〜(44)の回答全部の処理を終わることになる.
第1報(1)〜(29),(34)〜(36)第2報(30)〜(33),(37)第3報(39)〜(44)第4報(38)

設備機器総点検

温度センサ(直接挿入型サーモスタット)—中間期における吸収式冷凍機運転の改善策

著者: 辺見九十九 ,   神田耕治

ページ範囲:P.941 - P.941

吸収式冷凍機とその概要
 吸収式冷凍機は冷媒である純水を高真空の容器内で蒸発させて低温を発生し,蒸発した水蒸気をよく吸収するリチームブロマイド溶液に吸収させ,また冷媒を吸収した吸収液を熱することにより,その中の冷媒を蒸発分離させてそれぞれ再使用するようにしたものである.
 吸収液系統のみ説明すると,蒸発器で蒸発した冷媒蒸気を吸収して濃度の薄くなった吸収液(希液)はポンプで2つの個所に送られる.一つは再生器から降りてきた濃度の高い吸収液と混合し吸収液配分装置から吸収器外面に均一に散布され冷媒蒸気を吸収しながら流下する.もう一つは,熱交換器を通って再生器に入り,ここで再生器管内に供給される熱蒸気によって冷媒を蒸発して濃度を増し,再び熱交換器を経て吸収器に入り吸収液の濃度を一定に保つ.吸収液管と凝縮器管内には冷却塔(クーリングタワー)からの冷却水が通っており,吸収液の冷媒吸収熱および冷媒蒸気の凝縮熱を奪って冷却塔へと循環する.基本的には,エネルギー源である蒸気の容量制御と冷却水の温度制御,加えて高真空の維持が大切である.

統計のページ 病院の原価管理・9

補助部門の原価計算

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.942 - P.943

補助部門の役割と原価配賦
 補助部門とは収益を産みだす主部門の活動を円滑にするために必要なサービスを提供するすべての部門をいう.各補助部門は一部を除き直接収益を伴わないが,主部門のそれぞれの機能に応じた収益発生業務の手助けをしているので,その原価はその手助けの程度に応じて各主部門に負担させることになる.これを原価配賦という.また,私物洗濯,私用電話,宿舎利用料金などの補助部門の収益は利用するに当たって費用として計上した当該部門から控除する.
 補助部門には一般管理部門と職員厚生施設の主として職員に対するサービス提供の役割を持つものと医療社会事業,中材,中央注射,吸入室,解剖および医事部門などの患者に対するサービス提供を主とする部門,並びに洗濯・リネン,ボイラー・電気など職員,患者双方にサービス提供をする部門とに大別される.

医療の周辺 生物学—最近の話題・1

遺伝子工学の発展

著者: 長野敬

ページ範囲:P.944 - P.945

急速に発展している遺伝子工学
 どんなテーマを生物学の中から取上げるかを考えてみて,まず遺伝子工学あるいは遺伝工学ということばに思い当たった.それほどこの問題は,今,世上の注目の焦点にある.最近もアメリカで,日本から参加した研究者も含めての研究により,大腸菌に人間のインシュリンを生産させることが,本格的に成功したと報ぜられている.まだ差当たりは量産という段階でなく,試験研究のレベルであるようだが,開発のために企業も参加しているのが,関心をひく.その名もジェネンテク(Genen-tec)社という(注1).社名は遺伝工学技術(genetic engineering technol-ogy)ということばからの省略だろう.
 発展がこんなに急速である理由の一つは,遺伝子のつなぎ合わせが,思っていたよりは簡単であったことによる.遺伝物質の本体は,デオキシリボ核酸(DNA)分子の細長いテープが2本並んで走っている二重らせんである.遺伝子の組替えの際には,これを切ったりつないだりするわけだが,ある酵素を使うと,2本のテープがわずかにずれて切れてくれるので(図参照),つなぎのための格好ののりしろができる.

講座 入門・ME機器の正しい使い方・3

病室モニタにはテレメータが最適

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.946 - P.947

テレメータとは
 テレ(tele—)とは,"遠隔の"を意味する接頭語で,メータ(—meter)とは"計測器"を意味する語形成要素である.この2つの合成されたテレメータ(telemeter)とは,"遠隔計測器",すなわち"遠くの情報を眼の前まで送ってきて観測・記録するもの"の一般的な呼び名である〔テレビジョンは"遠くへ映像(vi-sion)を送るもの",テレフォンは"遠くへ音(phone)を送るもの"などと対比して下さい〕.
 テレメータには大別して2つの種類がある.1つは,情報(信号)を電線を使って遠くへ送る方式の有線テレメータと,もう1つは,情報(信号)を電波に乗せて遠くへ送る方式の無線テレメータである.医療の中でも両方式が使われている.例えば,CCUでベッドサイドモニタからの心電図を,少し離れたセントラルモニタで観測・記録するCCU患者監視装置は前者の有線テレメータの代表例であり,胃や消化管内の温度やpHなどを測定して体内から体外へ電波に乗せて送ってくる超小型の医用カプセルは後者の無線テレメータの代表例である.

実務のポイント 看護

病棟オリエンテーション(1)

著者: 佐藤とく

ページ範囲:P.948 - P.949

 当院では毎年4月に,40〜60名の看護婦を採用しているが,そのほとんどが新卒業生である.新入看護婦には,卒後教育の初期段階として,3月下旬の総合オリエンテーションの後,4月から病棟オリエンテーションを行ってきた.新入看護婦のレベルは一様でなく,それを早期に一定水準に高め,患者に安全で質の高い看護ができるよう育成しなければならない.そのため,オリエンテーションの企画・実施については,人数・背景・前年度の評価を参照し,逐次改善に努めている.今年度は総合オリエンテーションに病棟研修が組まれたので,この時点から病棟オリエンテーションを開始し,4月からの継続オリエンテーションでは,チェックリストの工夫,各人に応じた年間目標を示し,レベルの調整と質的向上を図った.
 以下に当院内科系病棟における実際を述べる.

購買・倉庫

高額機器の売買契約及びリース契約時の留意点

著者: 矢野弘

ページ範囲:P.950 - P.951

 医療の発展に伴い,医療技術の急速な進歩はあざましいものがあり,ますます高度化,多様化しつつある.このような現状のなかで,病院で購入する資材の種類と数量は極めて,多様かつ多量である.これらの資材の購買に適正を欠くことは,病院経営に重大な影響を与えることとなり,ひいては医療活動の運営にも支障を来たすこととなる.したがって資材の購買は,適正な購買計画と基本的な購買ルールに従って,使用目的に沿った資材を適正な価格で,所要量を最適な方法で購買し,所定の時期に入手することである.

管理技法 病院実務管理ケース・スタディ・4

病院管理とはなんだろうか

著者: 井上昌彦

ページ範囲:P.952 - P.953

 以前に病院の職員について,次のようなことを書いたことがある.
 病院には,数百人にのぼる各種の職種の勤務員がいる.それらの一人一人が,毎目,昼も夜も,自分の担当する仕事に従事している."薔薇の樹に,薔薇の花咲く,何事の不思議なけれど"という詩があるが,そのように,自分の仕事を至極当然のこととして,仕事に励んでいる.

現場訪問

新潟県・雪椿友の会会員(オストミービジター)中山憲一さん 新潟大学医療技術短期大学部阪本恵子さん

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.954 - P.955

 人工肛門の人たちにとっては人工肛門を造設すること自体が,解剖・生理学的に問題を生じさせやすく,退院後の社会生活における問題は複雑かつ深刻である.すでにアメリカでは,人工肛門患者のケアの一方法として,オストメイト(人工肛門の仲間)による患者訪問のシステムがあり,その訪問者はオストミービジターと呼ばれている.オストミービジターによる訪問活動は,患者の様様な問題解決に役立ち効果をあげていると言われている.そこで,我が国では始めてそのアメリカの経験を取り入れ,人工肛門受術者に新潟県で実際にビジターとして同様の活動をしている中山憲一さんとビジター活動の推進者である阪本恵子さんにお話を伺った.
 --オストミービジターとはどんな活動でしょうか.

今月の本棚

—柴山悦子 平島裕子 著—「医療ケースワークの初歩的実践」

著者: 上野博子

ページ範囲:P.956 - P.956

現場ワーカーの実践報告
実践からの理論化の試み
 本書を興味深く読んだ理由の一つは,日常ケースワークを実践している現場のワーカーによって書かれたものであるということと,もう一つは医療ソーシャルワーカーの専門職業化(資格制度の確立)をめぐる動きの中で,その専門性や業務内容などの明確化が求められてきている状況を踏まえ,その明確化を意図してまとめられたという点である.つまり本書は,「専門性は今日に至る実践の積み重ねの中に十分存在する」という確信に基づき,「日常業務をそのまま提示してみる」という方法をとり,一つ一つの事例から,ワーカーの判断,知識,技術などを抽出し,ケースワーカーの役割,業務の「範囲」を求めようとの意図で書かれたものである.実践からの理論化の試みは,ともすると実態報告や事例報告にとどまってしまいがちである.したがって,本書において,上述の意図がどれほど達成されているかということが,私にとって特に関心の持たれたところである.
 本書は三章から成り,第一章「専門性の確立とケースワーカーの役割」は,本書をまとめるに当たっての筆者の意図の説明であり,第二章,第三章が,本書のいわば実質的な内容ともいえる部分で,62の事例で構成されている.

新・病院建築・23

茨城県メディカルセンター

著者: 山上藤一

ページ範囲:P.957 - P.962

メディカルセンターの構想と概要
 今日,我が国における平均寿命の伸長,高齢化社会の定着化,またモータリゼーションと産業の発展は,いわゆる成人病(脳血管疾患,心臓病,がん等),交通災害,公害病などの急増をもたらした.
 このような時代に対応するために,本施設は,茨城県医師会の総意に基づき,県政の重点施策である県民の福祉をこうした医療の充実におき,疾病の予防診断,健康の維持増進を行ういわゆる包括医療の理念に基づいた県民の保健予防の中枢機関として計画された(表1).また第二次計画として,県南,県北,県西各所にサブセンターを設置し,より医療の充実を目標としている.

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「医療における連携と調和」基調テーマに—第5回日本病院会学会

ページ範囲:P.963 - P.964

 去る9月20-22日の3日間,秋田市・秋田県民会館で開催された第5回日本病院会学会では,「医療における連携と調和」を基調テーマに特別講演1,公開討論1,シンポジウム2,初めての試みとして教育講演4が行われ,一般演題も過去最高の180題を数え,連日好天に恵まれた秋田市は,約2,000人の病院関係者で賑わった.
 初日(9月20日)第1会場は,開会に続き,看護の一般演題35が行われ,現在の看護の状況・問題点が把握されたところで,シンポジウム「基準看護をめぐって」(座長橋本寿三男氏・病研,兼田喜代子氏・全社連)が設定されていた.まず病院長の立場から前田豊吉氏(市立秋田病院),続いて看護部の立場から松沢孝子氏(神奈川県衛看附属病院),久保静枝氏(秋田脳研),赤岡茂子氏(筑波大),最後に事務長の立場から吉崎芳雄氏(厚生連)が発言した.各演者とも現在の基準看護の矛盾を述べ,具体的変革の時期であることを指摘,更に基準看護と付添の問題についても"家族"の積極的見直しなど発想の転換が必要と報告された.その後フロアからの追加発言として,森日出男氏(名古屋保健衛生大),斉田トキ子氏(東北公済病院),砂田美津子氏(阪大)が基準看護の考え方と試行錯誤の体験などを紹介した.

精神医療の模索・22 鼎談

精神科医療における治療技術(1)

著者: 笠原嘉 ,   保崎秀夫 ,   佐藤壹三

ページ範囲:P.965 - P.969

 今日の精神医療は,新しい突破口を求めて模索しているととらえ,弊誌では「精神医療の模索」シリーズを2年間にわたり掲載した.今回は,このシリーズの掉尾として,精神科医療の治療技術がどこまで進み,新しい芽が出ているかどうかを,佐藤教授を進行役にお話し合いいただいた.

海外の医療

保健医療制度の確立—フィリピンの保健医療

著者: 能勢隆之

ページ範囲:P.970 - P.973

 1978年9月ソ連のアルマ・アタにおいて,プライマリ・ヘルスケア(Primary Health Care)に関する国際会議が,WHOとUNICEFの共催で開催された.その後,世界各国,特に開発途上国はプライマリ・ヘルスケァの実践に努力をしている.筆者は厚生省在職中数回フィリピンを訪問する機会があり,フィリピンの保健医療状況を視察することができたので,それを紹介する.

いま民間病院は

病院デラックス化への対応

著者: 佐藤安正 ,   岡村一雄

ページ範囲:P.975 - P.977

患者のためのデラックス化
 病院のデラックス化の対象としては,次の3つのものが考えられる.すなわち,容器としての建物,診察室,病室,手術室など,内容としての医療機器,そしてそこに働く人たちとである.これらについて採算を度外視した投資を行うことがデラックス化ということにもなろうか.
 公共の施設は別として私的病院のデラックス化は,当然のことながら経営を有利に導くための投資と考えられよう.確かに,病室をデラックス化すれば,患者に快適な居住性と優越感を満足させることによって,差額料を高くするといった大義名分も立つに違いない.しかしそれは,地域医療に奉仕するという病院本来の姿ではないはずである.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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