特集 病院運営の経験と分析
コンピュータ導入の失敗—東京都・中小病院の経験
著者:
望月和昭
所属機関:
ページ範囲:P.119 - P.122
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病医院にとって保険請求事務は毎月のことながら最も頭の痛い業務の一つである.そしてこれに携わるベテランの医療事務員の養成,確保及び各種統計資料の作製は中小病院にとっては殊に重大である.保険請求が終り,ほっとしたと思うと,またすぐに請求事務が始まるというような感覚の連続で,各種統計資料も余裕がないと作り難い.これら統計資料が正確で迅速かつ随時に見られるようでなければ,経営に不可欠の参考資料として役立てることはできない.この難問題を解決するために電算機を利用したいと思い,私どもはコンピュータに関する資料を集め,メーカーから話を聞き,あるいはビジネスショー等を見学したりしていたが,従来のコンピュータは高価で経費も高く高嶺の花であり,操作も多数の数字の桁の羅列によるインプットで極めて煩雑であり,とても馴染める代物でなく,10年来試行錯誤の繰返しであった.
ところが昭和50年ころには経済性の点から考えても中小病院でもなんとか導入できるミニコンピュータが発達して来た.しかしこのころの各コンピュータメーカーや導入した病院は,それぞれ独自のシステム開発に大変な努力と苦労を要した.私どもの病院も遅れ馳せながらコンピュータ導入に追従した.因みに私どもの病院は入院約100床,外来患者450〜500/日,木曜日及び日曜日休診の診療5日制の病院である.