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雑誌目次

雑誌文献

病院38巻4号

1979年04月発行

雑誌目次

特集 大地震と病院―宮城県沖地震を中心に

宮城県沖地震における救急医療

著者: 安田恒人

ページ範囲:P.287 - P.292

 昭和53年6月12日,何の予報もなく突然に襲ったマグニチュード7.6という地震は宮城県内各地に激甚な被害を与えた.建造物,道路橋梁,交通機関や物品,商品などほとんどあらゆるものに被害を与えた.これらに関する報道はなされたが,最も貴重な人身に対する被害については,27名の死亡者が確認されたのみで,負傷者に関してはいずれも過少で,かつ不正確な把握しかなされず,またその処理,すなわち当時の救急活動に関しては,報道の対象にすらならなかった.
 宮城県医師会は地震発生後1週間のうちに県下の医療施設に対して実態調査を開始し,ここに提示する調査結果を得たので,地域医療の一環であり,かつ極めて特異な汎発的大量被災の救急医療の貴重な経験として,ここに発表することとした.一部はその後行われた仙台帝医師会の調査および県当局が行った抽出アンケート調査の結果を引用した.

宮城県沖地震の体験から—仙台市立病院の場合

著者: 丹野三男

ページ範囲:P.293 - P.295

 昨年の宮城県沖地震に際し,病院の職員がどのように対応したか,院内の人的物的被害状況はどうであったか,また地震に対し職員の教育訓練はしていたか,今後に備えてどのような準備体制を取るべきかなどの体験談を書くようにとの依頼を受けた.もうすでに半年近くも経過し,院内はもちろん仙台市内の被害も一部を除いては漸次回復しつつある状況で,また筆者自身の記憶も薄れつつあるが,当時筆者の取った行動を中心に院内の模様を再現してみたい.

宮城県沖地震の体験から—健康保険宮城第二病院の場合

著者: 高橋一郎

ページ範囲:P.296 - P.298

 1978年6月12日午後5時14分ごろ突如MH7.4,震度5の強震にみまわれた.筆者はその時,外来診療棟にいたが,ミシミシという音とともに病院の建物が大きく揺れ,南北に揺れるにしたがって人が立っていられない状態になり,立ちすくむもの,柱に寄りすがるもの,机の下にもぐるもの,など様々であった.
 同時に院内の薬品戸棚,備品機械戸棚,カルテ棚,書棚が倒れ床に散乱し,またガラス棚,ガラス器具の壊れる音,事務室内の重い金庫と中央診療棟の医療機械が移動した.

大地震と病院

著者: 松本啓俊

ページ範囲:P.299 - P.303

 我が国の国土はいわば地震の巣の上に形成されているということは,かなり以前から指摘されてきている.そのような意味で,我が国では,地震の発生は宿命的であるといえよう.
 近年の大地震を取上げてみても,昭和39年の新潟地震,43年の十勝沖地震,50年の大分地震,そして昨年の宮城県沖地震がある.更には駿河湾を始めとして幾つかの大規模地震の発生の予測がなされている.

グラフ

県民の期待に応えた中核病院—鳥取県立中央病院

ページ範囲:P.273 - P.276

 雨の山陰--鳥取駅に隆り立つと,鉛色の厚い雲が,街並の屋根を包むかと垂れこめ,小糠のような雨が2月の風に舞っていた.駅前から車で10分余,市街の家重が切れたかと思う頃,鳥取県立中央病院が忽然と姿を見せる.周囲にほとんど建物のない,暗灰色に塗りつぶされた風景の中で,そのレンガ色はいかにも暖かく,鮮やかに浮かんでいる.開口部を縁どる暗褐色の線が,明るい外装に重厚なアクセントとなっている.一点景としては小さく見えた建物だが,車が近づくにつれて巨大となる.地上7階建,東西南北に翼を広げた鳥取県の中核病院である(当院の建築については,本誌36巻4号65頁を参照されたい).

変貌する国療のリーダー国立療養所所長連盟会長 久保義信氏

著者: 松山智治

ページ範囲:P.280 - P.280

 結核一辺倒を脱し,様々な慢性疾患の医療を担当するようになった国立療養所(以後国療)のリーダー(国療所長連盟会長)である.温厚な人柄に加えて洗練された言動は,つとに定評のあるところで,国療のみならず厚生省の関係者からも,厚い信頼を得ている.「医療の中にも国でなければできないものがあり,それができるのが国療である」,「全国ネットワークを有し強固な連帯感で結ばれている国療に新幹線を!」の信念のもとに,多方面にわたっての活躍ぶりは枚挙にいとまがない.
 ニューギニア戦線で戦火をくぐり,復員後,慶応医学部整形外科教室に入局.脊髄損傷の研究に取組み,昭和25年国立村山療養所整形外科医長として赴任,爾来20年臨床に研究に数々の業績をあげられ,昭和45年,乞われるままに現在の国療箱根病院院長に就任された.院長就任後は,厚生省リハビリテーション研究会会長,人事院福祉施策専門家会議委員等の職を兼ね,福祉医療の推進に大きく貢献する一方では,厚生大臣の諮問機関である国立病院,療養所問題懇談会の委員として,国立医療機関の将来設計に情熱を傾けている.

焦点 対談

チーム医療と医療チーム(下)

著者: 砂原茂一 ,   若月俊一

ページ範囲:P.281 - P.286

 患者を"トータル"に診るためには,専門分化してきた医療関係職種が一休となって,チーム医療をすすめねばならない.他方,従来病院ではないがしろにされてきた「プライマリー・ケア」の重要性が,改めて言われている.そこでは病院にも,医療スタッフがチームを組み「外」に出る「地域医療活動」が求められることになろう…….

募集案内

病院管理研究所研修生募集

ページ範囲:P.298 - P.298

昭和54年度診療録管理専攻科
申込資格病院の診療録管理業務に2年以上従事している現職者(通信教育受講期間を含む)で,原則として下記のすべての条件を備える者.1.短大卒業以上の学歴を有する者またはこれと同程度の学力を有すると所属長が認める者,2.年齢30歳以下で身心健全と認められる者で当所の選考に合格した者.
募集人員30名期間11月5日〜12月5日

特別企画 病院情報システム

共同利用型病院情報システムの現況

著者: 松井一光

ページ範囲:P.304 - P.307

 国民の医療需要は近年ますます複雑多様化しつつあり,かつ質・量ともに増大してきている.しかしながらそれに対処する医療従事者,医療施設,医療設備などの医療資源の増加にはある一定の限界がある.医療資源の活用が叫ばれる所以である.
 資源の活用のためには資源に関連するありとあらゆる情報が準備されて,必要なときに必要な情報が提供されなければならない.これに要する情報処理と情報伝送の技術はコンピュータの出現とともに著しい進歩をみせている.もはやごく日常的になった銀行や国鉄のオンラインシステム,工場の制御システム,科学技術関連の幾多のシステムなど実働中のものに加えて,コンピュータネットワークに代表される新規技術の開発導入も活発である.

共同利用型病院情報システムの問題点

著者: 三宅浩之

ページ範囲:P.308 - P.311

 本文の主題である共同利用型病院情報システムという提案をあまり違和感なく理解できるのは,すでに病院内に情報処理システムを持ち,システム計画や利用を実際に手がけて苦労している人々だけではないだろうか.
 一般の病院人,特に病院長,事務長などの管理者や,病院の中で毎日の業務に追われている病院従事者にとっては,まだ無縁の存在と考えられているのが実状であろう.

医療評価

病院の医療評価資料の調査(2)—パラメディカル部門について

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.313 - P.316

 この論文は病院第36巻第12号(1977年)の私の論文「病院の医療評価資料の調査」の続編である.この副題からすれば,前編には,「メディカル部門について」という副題をつけるべきであった.続いて医療職々員数,各種会議及び委員会についての調査報告もしたいと考えている.
 主題の論文の目的は,病院医療を評価し,必要に応じてその監査が行えるようにすることにある.評価と監査との間に言葉の用い方で混乱がありそうであるが,私は,監査は評価の特別な場合であると考えている.前編(第36巻第12号40頁)にはアンケートによって得た81の研修指定総合病院の昭和50年1月〜12月の業績集計(医療業務会計,前編表3)を提示し,読者が,病院(自己の,あるいは他の)の評価,あるいは監査の基準を,自らつかみとることができるようにした.このような基準はこの方面の知識が進んでくれば,公的に出来てくるであろう(若松栄一『アメリカの医療の横顔』,牧野出版,27頁参照).

設備機器総点検

電動インプリンタ

著者: 福田昭

ページ範囲:P.317 - P.317

 当院では,昭和47年1月1日以降,初来院の患者に対し,プラスチック製の診療券を交付しており,その後は,来院の都度,その診療券の,キーセット端末への投入によって,再来患者登録を行っている.
 この診療券には,もう一つの用途がある.外来入院患者への指示行為における各種伝票への属性記入を,インプリンタによって,簡易化していることである,この診療券の表面に,患者番号,氏名,生年月日,性別を浮彫させ,これとドクタプレートを併置したものの上に,各種伝票をのせてインプリントしている.

統計のページ

病院の原価管理—第4回 外来部門の原価計算

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.318 - P.319

 外来部門の損益分岐点図(図18)による損益分岐点収益は,48年57,750千円,50年84,000千円になるが,両年とも約1千万円の収益不足となり7〜800万円の欠損になっている.52年は収益の増加によりわずかではあるが利益が発生した.
 これを患者1人1日当たり収益対原価でみると図19のとおりになる.原価と収益の伸び率は48年を100%とした場合,原価は50年170.9%,52年167.6%となり,収益は50年176.3%,52年202.9%と入院部門と同様に原価の伸びを35%上回っている.

医療の周辺医療経済 医療経済・4

費用便益分析(コストベネフィット分析)

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.320 - P.321

 従来,病院などの医療施設は,来院した患者の対応に追われてきた.そのため,経営のこともあって,1日当たり取扱い患者数や病床回転,ひいては収支結果にだけ目が向くようになっていることは否めない.今まで採ってきた発想を変えるために今回は,ひとつの考え方として,費用便益分析のことを説明する.これはどういうサービスが大きな経済的利益を社会にもたらすかを示す手法と考えていただきたい.

講座 入門・診療記録管理・4

実地研修のポイント

著者: 栗田静枝

ページ範囲:P.322 - P.323

VII.実習期間と実習病院の選定
 開設第一歩の稿で,「準備期間を十分にとること」と述べたが,このことは,専門職員の養成との関連で,特に強調して言いたい.例えば,看護婦出身の適任者を選び,通信教育を受けさせ,終了を待って採用したからといって,この職員が,ただちに診療記録の中央化をし,業務を開始し得るものではないということを,病院管理者は十分認識していただきたい.特に診療記録管理室新設の場合には,先任者はいないのだから,十分な実地教育を受けさせなければならない.通信教育の2年間に,たくさんのリポートを書き,スクーリングに出席し,認定試験にパスはしても,この時点では概論を知ったというだけに過ぎない.この新管理士を専門家扱いして,早速業務をスタートさせるような傾向が往々にしてあったが,結果はかえって本人の負担を重くさせ,失敗に終わった例もいくつか聞いている.このようなことは絶対に避けるべきである.
 まず,診療記録管理を実施している病院で,本格的な業務実習をさせることが必須である.実習期間は,少なくとも1か月以上,できるだけ長期間が望ましい.

実務のポイント 施設

排水規制対策の実際—生化学検査部門における対策

著者: 坪倉篤雄 ,   島末明

ページ範囲:P.324 - P.325

 工場廃液中の水銀やカドミウムなどの重金属による水質汚染が原因で,水俣病やイタイイタイ病のいわゆる公害病患者の発生をみるに至り廃液による水質汚染は大きな社会問題となってきた.病院から排出される廃液にも,多量の環境汚染物質源が含まれており,病院に対する排出規制も次第に厳しくなつている.
 昭和45年に排出等の規制に関する法律,水質汚濁防止法により有害物質による排水中の汚染状態を規制する排水基準が決められ,この法律に基づく特定施設として,501人槽以上の屎尿処理施設をもつ大病院では,すでに法規制の対象となっている.現在のところほとんどの中小病院では,法律的に特定施設としての規制をまだ受けてはいないが,規制の対象に加えられるのもそう遠くはないものと思われる.病院廃液による病院内から周辺にもたらされる環境汚染以外に,病院内での感染や有害物質による職場での健康や危険の防止に対する問題もある.検査室からの廃液は病院全体から考えると一部であるかもしれないが,検査試薬として種々の有害物質を取扱っている現実から,検査室廃液の対策は今日重要な課題となってきた,検査室で使っている有害薬品には,酸・アルカリ剤,重金属化合物,ハロゲン化合物,シアン化合物,有機溶媒,芳香族アミン系の発がん性物質,洗剤,フェノール系消毒剤など複雑多岐である.

入退院管理

入退院管理の実際

著者: 石原孝憲

ページ範囲:P.326 - P.327

 効率的な病床利用を行うためには,まず,院内の入退院業務基準を機能的に確立することが大切であり,以下に当院の入退院業務の実際について概略を紹介する.

管理技法 ケーススタディ・1

ある院内放送

著者: 井上昌彦

ページ範囲:P.328 - P.329

 『病院職員の皆様に申し上げます.入院患者さんで,緊急の手術を要する方がおられます.手術大量の血液を必要としますので,A型の病院職員の方々の献血をお願いします.
献血をして下さる方は,○○科○○医師にご連絡下さい.』

現場訪問

東京都養育院付属病院言語聴覚科—福迫陽子さんに聞く

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.330 - P.331

 医療が人間のトータル・ケアを目指すという理念を掲げて以来,医師のみによる診断・治療という旧来のやり方だけでは人々のニーズに対応できず,医療の場にも,様々の関係職種が誕生した,言語治療士もその一つである.比較的新しい職種なので,全般的な状況を中心におたずねした.
 —言語治療は,日本ではいつ頃から行われているのですか.

今月の本棚

—鈴木 芳次 著—「精神疾患付神経疾患の食事」

著者: 金子嗣郎

ページ範囲:P.332 - P.332

多年の研究の成果
 著者の鈴木氏は永らく都立松沢病院の栄養士として勤められたのみでなく,日本の精神医療史の研究者として知る人ぞ知る第一人者である.彼の研究——栄養学あるいは精神医療史ともに——の方法は,実際に自分の足で歩き,自分の眼で確かめるというやり方で,これが多年続けられたことによって,驚くべき資料の蓄積となって現れている.
 本書においても,この著者の姿勢,方法が滲み出ており,特色ある本になっている.

新病院建築・16

国立がんセンターの設計—面目を一新したがん撲滅への一大基地

著者: 山口輝男

ページ範囲:P.333 - P.339

はじめに
 国立がんセンターは,昭和37年5月23日,わが国で最初の,国立のがん専門病院として発足した.以来,治療,診断,研究において,常にその先駆者として偉大な成果をあげ,国内はもとより,全世界にわたって指導的役割を果たしているものである.
 ところが,その施設は以前,旧海軍の医療施設であった部分や,昭和初期の建築で当時東京市立病院であった建築物のほか,国に移管されてから,がん専門病院として最少限度必要とする治療部門,外来診療部門の建物を増築し,狭隘な敷地に余すところなく,建築物が不整形に建ちならんでおり,外部の人々が見ると,これが悪病がん撲滅のための強力な成果をあげている施設とは思えなかったであろう.

精神医療の模索・16

精神科の看護体制—開放療法における精神科看護の実践から

著者: 牧武 ,   光吉ヨシ子

ページ範囲:P.340 - P.343

 現在の精神科医療では,向精神薬による治療と,様々な形での精神療法が主要な治療手段となっている.しかし,どのような治療も,それが行われる場としての病院の形態や機能と切放してはその効果を論ずることはできない.むしろ,そのような"病院のあり方"というものが,そのまま治療効果やその後の患者の成行きにまで深くかかわってくるといえるのではなかろうか.筆者らは,このような考え方で病院を"それ自体が治療的な働きをもつ環境"として育てることを願い,努力している.筆者らの病院は,病床数160床の小規模なものである.措置入院のベッドを持たないので,6個の保護室を除いては全部を開放にしている.そのため,医師,看護婦その他の病院の全スタッフが,いつも全体の患者の状態を把握し,治療的な配慮をすることができなければならない.更に,病院の中ですべての人間が相互に十分な関心を持合い,管理したり,管理されたりする関係でなく,"人づきあい"という形のつながりの中での治療が行われることが,開放的な運営を可能にするための一つの要件であるように思われる.

海外の医療・3 対談

世界のプライマリヘルスケアの動向—ソ連アルマアタの国際会議を中心に

著者: 大谷藤郎 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.344 - P.349

 昨年9月,ソ連のアルマアタでWHOとUNICEF共催による初のプライマリヘルスケア国際会議が開かれた.この会議では,西歴2000年までに世界のすべての人々に健康をという主旨のアルマアタ宣言を採択するなど盛会であったが,この国際会議に日本代表として出席された大谷審議官に会議の基調,名国の対応から,これからの世界及び日本におけるプライマリヘルスケアの動向などお話しいただいた.

いま民間病院は

法人化の是非

著者: 太田正治 ,   小柴清定 ,   河野通弘

ページ範囲:P.350 - P.353

特定法人病院の院長という誇りがメリットか
 法人化の是非を論ずる場合,社団,財団,特定財団の3つの枠組を知る必要がある.一般的に世間では,これら3つの法人を混同しているきらいがある.
 この中で特定財団は医療法人としての認可と併せて,大蔵大臣の承認を得なければならない.役員会の構成も理事会,評議員会に分かれ,執行機関と議決機関に区分され,また役員は同族関係の人員を制限している.課税上の取扱いは一律に純益の23%と定められている.特に厳しいのは,法人が解散する場合は,同系法人または国に帰属すると定められていることだ.財産権の放棄が要求されているわけである.同時に自費患者の診療報酬は健保算定額を超えてはならない等,利益追求を明確に規制している.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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