icon fsr

文献詳細

雑誌文献

病院38巻6号

1979年06月発行

文献概要

今月の本棚

—オッレ・ハンソン 著 柳沢 由美子・ビヤネール多美子 訳—「スモン・スキャンダル—世界を蝕む製薬会社」

著者: 日比逸郎1

所属機関: 1国立小児病院

ページ範囲:P.516 - P.516

文献購入ページに移動
薬剤監視への新しい問題提起
"産業システム"との孤独な戦い
 スモンという薬害のことは,日本の国民はだれもが知っている.すでにその元凶であるキノホルムを代表とするオキシキノリン製剤は,日本では発売禁止になっているし,1971年5月以来の各地のいわゆるスモン裁判によって,スモン薬害のすべてが明るみにだされている.それなのに日本以外の国では,この恐ろしい事件は一部の識者を除いてほとんど知られていないし,元凶のオキシキノリンは現在もなおチバガイギー社などによって大量に製造され,世界各地で売りまくられているのである.日本では当局の集計でも約1万,実際にはその数倍の患者が確認され,その3〜6%が死亡しているというのに,日本以外の国では何百万の人々がこの薬を40年間も使い続けていて,スモン類似の患者発生は40〜60例,死亡例は1例の報告もないというのが,情報化地球時代といわれるこの時代における医学情報の現状なのである.
 スエーデンの小児神経疾患の専門医である著者のオッレ・ハンソンはオキシキノリン製造の元凶たるチバガイギー社と,それを取巻く"産業システムに乗った医者たちの集団"を相手にしたドンキホーテ的な孤独な戦いを展開した人である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?