icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院38巻7号

1979年07月発行

雑誌目次

特集 医療機器管理の焦点

医療機器の耐用年数

著者: 樫田良精

ページ範囲:P.565 - P.569

 急速な医学の進歩に追随して,今日の医療に使われる機器はその種類もその数量も激増した.戦前から使われていた比較的簡単な器械類,例えば鋼製小物といわれる手術器械から複雑な電子回路・コンピュータを備えたものまで各種の段階のものがある.また病院の診療組織の近代化に伴い,臨床検査・放射線・核医学の諸室,中央手術室,中央滅菌材料室,リハビリテーション室などの中央診療施設における医療機器が充実・高度化し,一方眼科,耳鼻咽喉科,産婦人科,泌尿器科,皮膚科,脳神経外科,麻酔科などではそれぞれの科に特有の機器が多数必要になった.更に病棟では重症患者監視装置と人工呼吸器その他の治療用機器が常用されるようになり,特に集中治療の行われるICU, CCUなどでは機器の重装備化が進んでいる.
 広い意味の医療機器として,院内の薬局での分包・製剤の機械化が増加し,また病院情報システム,検査情報システムなどの新しい医療情報機器の導入が次第に盛んになりつつある.

医療機器の安全性と事故対策

著者: 斎藤正男 ,   高田寿士

ページ範囲:P.570 - P.574

 医療における最近の工学技術の進歩には,めざましいものがあり,数多くの医療電子機器が,診断・治療の場に導入されている.近代医療において,これらの医療機器の果たしている役割は,極めて大きいといえるであろう.したがって,このような医療機器は,患者ならびに医療従事者にとって安全であり,かつ信頼性の高いものでなくてはならない,このためには,まず機器の製造者側に,安全な機器を作る責任があり,また,使用者側には,その安全性を維持するために,機器を有効に管理していく責任がある.製造者に対しては,現在,日本ME学会の医用電気機器暫定安全基準1)を順守するように指導されている.そこで,本稿では,後者の使用者側の責任,すなわち医療機器の安全性,特に電気的安全性を維持するための保守管理のあり方について,述べてみたい.
 医療に用いられる機器が,何らかの異常のために,正常に動作せず,好ましくない結果を生じた場合,これを事故と広く定義すれば,医療機器による事故では,次の二つが重要である.

医療機器の保守管理—私のこつ

著者: 増田康治 ,   松浦啓一 ,   榊徳市 ,   正津晃 ,   和久井聖一 ,   今井慶子 ,   天野清範 ,   神崎仁 ,   小野博

ページ範囲:P.575 - P.584

放射線診断機器管理—私のこつ
医療機器は今日多岐にわたり,その機構は複雑になっている.これらの機器を円滑に運用していくためには,保守管理が十分でなければならない.当施設では1968年より,すべての放射線機器について,設置時の点検,その後の毎朝夕の始業時点検と保守および年2回の定期点検を行っている.ここでは医療機器のうちでも放射線機器,ことに放射線診断用機器の保守,管理について,これらの経験に基づいて述べる
 一般的に,機器の設置時にその性能を知り,保守をしながらも生ずる経年変化の状態を正しく把握することによって,初めてその機器を十分に使いこなすことができる.そしてまた医用放射線機器では,機器の性能の保持,機械的電気的安全性保持,そして放射線被曝に対する安全性の保持が求められる.これらによって不測の事故の防止と安定した医療情報の提供ができよう.

医療機器の選定

国立循環器病センターの場合

著者: 曲直部壽夫

ページ範囲:P.559 - P.560

 本稿では医療機器の購入に当たり,各科より要望のある多種多様な機器類の中から,どのようなものを,どのような考え方で選定するか,ということに関して当院の立場で述べようとするのであるが,初めにお断りしておかねばならないことは,当院の特殊な立場についてである.
 国立循環器病センターは,我が国の年間死亡数の40%以上を占める循環器病制圧対策の中枢的機関として昭和52年6月,大阪府吹田市に設立された.したがって,取扱う疾患は,循環器病,すなわち脳血管障害,心臓大血管,末梢循環,腎・高血圧・動脈硬化代謝栄養疾患などの特殊な専門領域に限られていることである.次は,当センターの組織は一般国立病院と異なり,運営部,病院,研究所の3部門より成り,総長がこれを統括することである.第三は,これら3部門が三位一体となって,循環器病に対する高度の専門医師,循環器病に関する調査・研究,循環器病に携わる専門医師・研究者の養成および再教育ならびにその他医療従事者の研修教育,の3大使命を総合的,効果的に達成しなくてはならないことである.第四の特殊性は,新設でありしかも未完成であるということである.

北里大学病院の場合

著者: 阿曽弘一

ページ範囲:P.561 - P.562

 昭和46年7月26日,北里大学病院が病床数164床でスタートしてから間もなく満8年を経過しようとしている.現在病床数830床,外来患者数1日平均1,800人を数え,我が国の代表的な大学病院の一つとして高く評価されるまでに発展することができたのも,多くの関係者のご支援とご協力のたまものである.
 開院時の初動設備は別として,次年度以降今日まで医療機器の購入に際しては,病院長より委嘱された委員長,委員および書記をもって構成される購買委員会が,計画的整備と効率的供給を行うように努力してきた.委員長は副院長(診療部長)が兼務し,委員会規則は下に示すとおりである.

選定への提言と岸和田徳洲会病院の一例

著者: 山本智英

ページ範囲:P.562 - P.564

 医療機器はその価格が数万円から数億円に及び,またその種類は非常に多様であり,病院の各部門からの購入希望の機器に対し,公平に予算を割当てることは極めて困難である.病院の設立期には設立者と各部門の管理担当者の数も比較的少なく,皆がある程度共通した病院の将来の発展についての意見を持っているため,機器の購入に当たっては,いくつかの高額な機器についてはどの機器を購入するか,また同種の機器の中でどの機種を選ぶかといった程度の検討だけであり,問題は比較的簡単である.その後の病院の発展に伴う患者数,診療科,医師数の増加,また医学の進歩に伴う新種の医療機器の開発により,一定の予算内で,各部門からの要求により,各部門の合意の下に新規機器の購入を行うことになる.多くの病院では民主的な形式を採り,備品委員会の開催ということになる.しかしながら,このような委員は各部門の利益代表者の感を呈し,委員会は予算の分取り合戦となる危険がある.病院の規模がある程度大きくなると各診療科の間の壁が大きくなり,他の診療科の現状と将来のビジョンが分からなくなるため,ある診療科の新規機器の必要度が他の診療科には理解しがたいものとなることが,その一つの原因であろう.

座談会

ホスピタル・エンジニアの現状と将来

著者: 小野哲章 ,   沢崎博次 ,   藤咲喜一 ,   桜井靖久

ページ範囲:P.585 - P.590

 桜井この座談会はいわゆるホスピタル・エンジニアについて,現状と将来をお話していただくわけですが,現在,ホスピタル・エンジニアというか,MEに関連して医用工学,医療工学,病院工学などいろんな言葉があります.またクリニカル・エンジニアあるいはBMETすなわちbiomedical equipment technicianといったような言葉もあります.
 そこで,ホスピタル・エンジニアとは一体何なのかと読者の方がお感じになると思いますので,まずホスピタル・エンジニアの内容について小野先生からお話し願いたいと思います.

グラフ

新装三年老人医療を担う—浴風会病院

ページ範囲:P.545 - P.550

 昭和初期に建てられ,壮麗を誇った浴風会病院も50年の歳月を経て,病院の老朽化はいかんともなしがたく,49年東京都の助成を受けて大幅な改築を行い,50年11月近代的な病院に生まれかわった.旧病院については本誌(33巻10号)でも紹介したが,高齢化社会を目前に控え,老人医療のあり方が模索されている今,民間老人専門病院として唯一の,そして各種ホーム(養護400名,軽費125名,特養100名)を含め老人福祉施設としても人きな位置を占める浴風会及び浴風会病院を訪ね,一民間医療機関として,問題の山積する老人医療をどう担っていくか,これまでの輝かしい伝統の上に新装なって3年の新病院が何を築いているかを見聞した.

人呼んで西郷さん—済生会静岡病院院長 岡本一男氏

著者: 内野滋

ページ範囲:P.552 - P.552

 畏友岡本さんが三菱重工の貧弱な診療所を譲り受けて済生会静岡病院を発足させたのは昭和23年であるから爾来30有余年,その間昭和32年には静岡県で初めてアイソトープ治療設備や心肺呼吸装置を備え,新進気鋭の医師を招聘して今では720床,外来1,000名を越える大病院に育て上げた実績は刮目に価する.元来済生会病院は本部からの財政的援助のない文字どおりの独立採算性であるから自力で今日の大病院を作り上げた手腕は見上げたものである.人呼んで彼を西郷さんという.
 風貌もさることながら豪放磊落,項事にこだわらずしかも幾度か死線を越えたこともよく似ている.例えば戦地で敵陣に包囲され味方はほとんど壊滅したが,彼は脱出して一命を得た.また5年前には診療中精神科の患者に襲われ,左肺を貫き肝臓に達する刺傷を受けたが,即刻手術したために奇蹟的に助かった.2年後にも同じ凶漢に襲われたが幸運にも彼は助かったが彼をかばった看護婦さんは無残にも即死した,これは西郷さんが僧月照に同情して薩摩灘に投身し,月照は水死し西郷さんは救助されたことといささか軌を一にしている.

焦点 対談

小児・新生児医療とICU (上)

著者: 三川宏 ,   柴田隆

ページ範囲:P.553 - P.558

 病院の小児病棟では,慢性疾患患者が多くを占め,小児や新生児の重症患者を十分にケアできない状況がある.一方,いくつかの先駆的病院のNICUは,新生児の重症患者のケアに有効に働いている.7月,8月号では,今まであまり議論されなかった小児および新生児の重症患者の医療をめぐってお話し合いいただく.

ニュース

第2回プライマリケア学会から

著者: 編集室

ページ範囲:P.558 - P.558

 東京の開業医グループが母体となって,昨年発足したプライマリケア学会が,さる6月9,10日の両日,笹川記念会館(東京都港区三田)において第2回プライマリケア学会を開催した.参加者は600人といわれる.一般演題73,シンポジウム3題,パネルディスカッション1など,昨年と比べると,いずれも極めて公衆衛生学的色彩の濃い内容であった.ここでは特に武見日医会長と藤野志朗中大教授の二つの講演の内容を紹介するにとどめる.
 「プライマリケアの展開過程」と題して武見会長は,まず行政主導型の我が国の医療体制下では,プライマリケアの実践はまず不可能に近い,と前置きした後,プライマリケアとは,発病前からリハビリまで,一貫してコントロールの下に置くことであると定義し,家庭的ストレスや職域的ストレスなどpreclinicalな段階でのコントロールも大切であると語った.またプライマリケアの実践は医学以外の経済学を中心とした諸生活科学の参加が必要であると同時に地域における職能的組織化が必要であり,更にpreclinicalな環境整備から産業医学との結合まで必要であり,これは国民の参加なしにはできないと語った.また,その実践に当たっては,地域の実情に見合った医療的,社会的(施設など),経済的計画性が大切であると述べ,今後プライマリケアは医師会病院と地域保健調査会が中心になって展開されるべきものであると結んだ.

ホスピタル・トピックス

—自治体病院特別委員会報告—「自治体病院の役割とその役割を遂行するためにとるべき措置」について

著者: 米田啓二

ページ範囲:P.569 - P.569

 全国自治体病院開設者協議会(会長川上千葉県知事)と全国自治体病院協議会(会長諸橋旭中央病院長)では学識経験者を加え,自治体病院特別委員会(会長五島貞次東洋大学教授)を設置,昨年9月4日以来,①自治体病院の果たすべき役割,②自治体病院がその役割を遂行するために国,自治体及び病院がとるべき措置について検討を行ってきた.委員会は14回開かれ,この5月8日,会長に報告が行われた.
 この報告は,医療環境の変化に対応するためにどうあるべきかについて,いくつかの項目に分けて述べている.まず①公衆衛生活動については,医療と有機的連携を保って行うことが最も効率的であり,市町村の公衆衛生活動と自治体病院との連携の強化を図ることが必要であるとし,保健婦が病院と連携を保ちつつ,家庭訪問を行い家庭療養の促進を図ることを例示している.②老人医療については,総合的な老人福祉対策の一環としての対策の必要性を述べ,特養老人ホームと医療施設との緊密な連携の必要性や自治体病院併設が望ましいとしている.③救急医療については,国の救急医療対策のうち第二次医療対策は,病院の立地条件,病院の機能の面から,地域によっては,これらの施設のみで対応するのが難しい場合もあり,また,自治体病院にとってこれは重要な機能のひとつであるから積極的に対応すべきであるとしている.

設備機器総点検

スラッガー(ごみ圧縮機)

著者: 小田桐信子

ページ範囲:P.593 - P.593

 病院では毎日大勢の人が働き,そして生活している.したがって病院から排出されるごみの量は年々著しく増加し,質的にもきわめて多様化しており,ごみ処理の良否は生活環境の破壊につながるばかりか病院の機能をも左右するため,どの病院でもごみ処理には頭を悩ましていることと思う.
 当院では,大量かつ多種多様のごみの処理について,環境改善,収集輸送の合理化,近代化,処理コストの低減,及び衛生的な処理方法の一手段としてごみ圧縮機(スラッガー)を導入して,ごみ処理の部分的な前処理—中間処理を行っている.これは,改善の域を出ないが,割合手軽に導入できるので,ここに紹介する.

統計のページ

病院の原価管理—第7回 手術部門の原価計算

著者: 黒田幸男

ページ範囲:P.594 - P.595

 採算性手術部門の採算性は極めて悪い.昭和48年調査では61.4%と大幅な欠損額を出し,50年では,49年における手術点数の大幅改定の影響もあって15.9%に減少したものの,52年調査では再び39%と欠損額は増加した.それを損益分岐点図でみたのが図40である.各調査月の損益分岐点収益は48年では9,750千円,50年12,100千円,52年17,900千円になるので,それぞれの調査月における収益不足額は48年3,975千円(不足率68.0%),50年1,990千円(同19.7%),52年5,319千円(同42.3%)と50年を除き2倍前後に及ぶ収益不足状況がその原因であることが原価計算結果からみても明らかである.
 これを手術件数1件当たり収益対原価(図41)でみるとその収益/原価は48年62.0%,50年86.3%,52年73.0%になっている.

医療の周辺医療経済 医療経済・7

医療費用の効率的配分と費用の再配分

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.596 - P.597

 医療や保健サービスへのニードの増加は必然なのに,それに応えるべき入員や施設そして材料などには制限がある.このためどうしても効果的効率的な「資源」の再配分が要請される.こういう論旨は,数多くの人たちから述べられてきた.しかし,そのことの,そのための実証研究は,日本では特に少ない.その実証研究を広める上でも必要な,いくつかの論点の整理をしてみよう.なお,ここで「医療費用」としたのは,医療資源とほぼ同義語であるが,もっと経済的な費用配分を考えるために使っただけである.「資源」には,狭義には「所得以外の資産的なもの」の意味,広義には,水や空気まで含めた「地球全体」の意味,ときには無形の技術まで含めた意味があって,大きくなり過ぎるのでここではあえて使わなかった.医療費用といえば,提供側の施設,人,設備であり,ほぼそれと同じ範囲で,しかもそのうち配分が可能な社会的費用について考えることとする.

講座 入門・診療記録管理・7

保管業務のポイントと用具

著者: 栗田静枝

ページ範囲:P.598 - P.599

XIV.保管業務の目的と方法
1.保管の目的
 診療記録の保管(ファイリング,filing)は,完全な診療記録管理を行うために最も基本となる重要な作業のひとつで,ただ単に診療記録をしまっておくということではない.正しいファイリングをすることは,診療記録を利用しやすくするための手段であり,診療記録が幅広く活用されるように整理し,必要に応じて,速やかに取り出せるようにしまっておくという大いに意義のある作業であることを忘れてはならない.診療記録は使うためにある.利用しにくいファイリングは,診療記録管理の意義を半減するといってよい.
 一口に診療記録の保管といっても,現物のままの保管,マイクロフィルムによる保管,更にはコンピュータにデータをしまいこむという方法もある,ここでは,現在,多くの病院が行っている現物のファイリングについて述べることにする.

実務のポイント 検査

検査室職員の人事管理

著者: 平沢政人

ページ範囲:P.600 - P.601

 近代医療の発展は,診療の合理化と科学の導入のために,パラメディカルの分業と信頼を常に要求してきた.この目的を達成するために臨床検査の発達が著しく普及し,検査業務の増加は上昇の一途を示し,それに伴って検査室の規模がますます増大している.最近の医療機関では臨床検査の中央化システムが常識とされ,診療上はもちろん,病院経営上からも検査室の人事労務管理は無視することができない存在となっている.
 したがって,ますます多様化した検査室機能を最高の状態に維持し,大量に提出される複雑な検査を正確で迅速に処理できるような人事,労務管理の方法を組織的に確立し実施するためには,職員の募集,採用方法,教育,勤務考課,健康及び安全,人事配置と配置転換など様々な面からの管理が重要であるので,その内容について簡単に述べる.

薬剤

サテライトファマシーの運営

著者: 保田静江

ページ範囲:P.602 - P.603

サテライトファマシーという言葉に初めて出会ったのは,今から7〜8年ほど前になろうか.院長から回送されてきた雑誌"Hospital"であった.その後日本でも,東京女子医大における糖尿病外来のために,また最近東京厚生年金病院においても,神経科病棟に設置されていることを知った.(薬事,VoL 20 No.5)
 このたび上記テーマをいただき,記述するほどのことも行い得てない現状であるが,病院勤務薬剤師の向後の方向のひとつとしてなんらかの参考になればと考え,私見を交えながら述べることとする.

給食

治療食献立管理の実際

著者: 宮本佳代子

ページ範囲:P.604 - P.605

 病院の食事は,治療の一環である以上,よりその効果を高める献立管理(献立作成から給食管理までを含めた総合的なものとする)が望まれる.ここでは病院における献立管理を3段階に分けて論をすすめる.

現場訪問

日本赤十字社医療センター受診相談担当—小林ゆきさんに聞く

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.606 - P.607

 病院の大型化,診療科の専門分化につれて多くの病院で,受診相談コーナーを設けている.名称は病院によってまちまちで,診療相談,受診案内,外来インフォメーション,相談等々.医師が出てふり分けを行っている所もある.更に業務内容も単なる院内案内から専門的立場でのふり分け,診療後の苦情受付,身の上相談まである.今回は外来患者数1日1500人の日赤医療センターで,昨年5月から受診相談を担当する小林さんを訪ね,ご苦労及び患者側,医療側への注文を伺った.なお小林さんは,健診センターで,健康相談・指導を行う保健婦でもある.
 --この病院では,受診相談はいつから始められましたか.

今月の本棚

—樫田 良精 編—「医療機器事典」

著者: 白石透

ページ範囲:P.608 - P.608

最新の医療機器を収録・解説
 樫田良精先生を編集長とするこの『医療機器事典』は従来に例を見ない新機軸を有する事典である.
 私事にわたって恐縮であるが,ここ数年来,新設医大の開設が相次ぎ,中央検査施設の企画担当責任者の先生方から,検査室の設計や,必要検査機器のリストアップに際してしばしば協力を求められた.もちろん,筆者の専門分野に関してのことであるから,どのような種類の計測器が必要かは,すぐに書きおろせたが,それらの機器に必要なスペースおよび検査機器購入費用の見積りは意外に大変な仕事であった.その理由は,検査機器そのものがどんどんモデルチェンジされ,更によりシステム化されていること,また価格も著しく変動しているという事実があって,結局のところ,集まった名刺を頼りに,各メーカーまたは代理店をまご引きし,片ッ端から電話してカタログを集めることから始めたわけである.であるから,専門以外の領域の検査室また治療機器に関して,同様な企画設計を行うのがどんなに大変なことか想像に余りある.しかも,検査や治療のサービス部門が分化,統合され,従来の診療科のわくを越えた部門が急増しつつあり,担当者は,自分の専門以外の診療機器に関しても管理,運営を強いられるように成っているのが現状なのである.

新・病院建築・19

東京女子医科大学病院中央病棟—総合整備計画の第一ステップ

著者: 佐藤建二

ページ範囲:P.609 - P.616

はじめに
 東京女子医科大学は,東京女医学校として出発してより78年の歴史を持つ世界で唯一の女子医科大学である.また,当大学独自の構想によって各種の医療センターを設立するなど,その存在は斯界にユニークなものとして知られている.
 このたびの建築は,年々老朽化・狭隘化していく各施設の新たな整備再編を意図した敷地全域の総合整備計画に基づいて企画され,その第一ステップとして計画実施された.建物は敷地中央部に位置し,病棟部・中央診療部・エネルギーセンターを主内容とする.

精神医療の模索・19

米国の精神医療とハーフウエイ・ハウス(1)—カリフォルニア州北部を例として

著者: 桑原治雄

ページ範囲:P.617 - P.621

 米国の精神医療は入院中心から地域内医療中心へ,更に地域精神保健活動へと移行している.この状況は1975年の地域精神衛生センター法の改正や1978年2月に公表された「精神保健に関する大統領諮問委員会President'sCommission on Mental Health」の勧告案でも明らかで,地域内医療中心の方向が後もどりするものでなく,これまでの反省の上に立った新たな地域精神保健活動community mental health activitiesとしての模索の段階にあることを示している.こういった状況の下で,ハーフウェィ・ハウスhalf-way houseは精神病院入院の代替施設としてばかりでなく,精神病に対する積極的な働きかけを提案している点でも注目に価する.これについては後述するが,この勧告案に述べられている以下のような政策が米国の精神医療の動向をよく示している.

いま民間病院は

民間病院と現行の基準看護

著者: 河野稔 ,   川原啓美 ,   中野博光

ページ範囲:P.622 - P.625

基準看護の矛盾
私は昭和30年,束京都では30番目に基準看護をとったものだが,基準看護(制定当初は完全看護といい,完全ということばに幻惑され,いろいろトラブルがあったので基準看護と訂正されて今日に及んでいるのは賢明な読者は先刻ご存知のはず)が余りにも矛盾に満ち満ちているので,昭和43年総合病院を完成した際に,人手は十分あるのに基準看護を廃止して,510床の病院になった現在でさえも基準看護に踏みきっていない.その問題点の最たるものは,1)4:412の矛盾 私は夙に1:2:7を唱えている.すなわち,正看1,準看2,補助者7であり,この補助者7の中に全国10万余の看護学生,メディカルクラーク,看護補助者(付添婦)を入れることを提唱している.
 大体,どこの企業でも課長4,係長4,平社員2という逆ピラミッド型を形成しているところはない.かかる点を我々は勇気をもって見直すべきである.

ほんねたてまえ

「たてまえ」と「ほんね」の相克

著者:

ページ範囲:P.627 - P.627

 現代は選択の時代であるといわれている.しかし,ある問題について複数の解決案が提出された場合に,その中からひとつを選択することは,実際には相当に困難なことが多い.複数の解決案の中には,たてまえに属するものと,本音に属するものが混在しているのが普通である.
 「では,賛成の方は挙手をお願いします」と詰められると,多くの人はその時代の傾向や論説などの風向きに従って,例えば「反対」と唱える.これは大低の場合「たてまえ」であることが通常である.しかし,これまた多くの場合,当の具体案などをもし実行しないときに,別の方法があるかどうか,また,仮に実行した結果が,将来よい結果に結びつくかどうかも,よくわからないことが多い.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?