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雑誌目次

雑誌文献

病院38巻8号

1979年08月発行

雑誌目次

特集 病院給食の新しい動向

病院給食の新しい動向—当面する課題とその対応策

著者: 榊田博

ページ範囲:P.646 - P.649

 病院給食は医療の一環として実施される.すなわち治療食による病態の是正のほかに,喫食者の栄養改善への認識を新たにさせる役割を担っている.したがって,病院給食は栄養学的原則に準拠する一方,規定食への喫食者の適応性を高めるため,任意選択制献立と適温食の供与のもとに,個人別,年齢別,病態別栄養管理システムを確立するのが理想である1)
 しかしながら,現実には必ずしも病態の改善に寄与しているとは限らない.むしろ不完全な食事内容のために,かえって栄養障害を助長している憾みがないでもない2).特に我が国では社会保険制度と関連して,基準給食による法的,行政的制約および経済的制約に加え,病院の当面している労務環境の厳しさが大きな隘路となっている.他方,我が国の病院の経営規模が大小さまざまで,これに加えて病院の経営主体を異にするため,経営意図も異なり食材の購入その他の点で病院相互の協力体制をとりにくいなどの事情もあって,病院給食には多くの問題点が横たわっている(図)3).これらの問題点を克服し,技術革新の時代に即した指導原理を明確に示し,病院給食本来の理想を指向しながら,病院給食に新たな対応が迫られている,以下,病院給食を革新するための具体的な対応,特に臨床栄養の合理化に関して当面する課題について展望する.

病院給食への電子計算機械組織の導入—特に献立作成の自動化

著者: 中野迢

ページ範囲:P.650 - P.653

 病院給食への電子計算機械組織の導入は,社会生活の中に電子計算機が定着するようになって,ますます,その特徴をいかす必要性が生じている.それには,病院医療,病院給食関係者らによる効率的な業務遂行をはかる組織化に必要な事務機械を使用することである.常日頃,実施されている病院給食の事務処理を誤りやむだを生じさせることなく,病院医療全体の業務の中で迅速に処理する方法を確立し,進めていかなければならない.
 診療部門をはじめ各部門は,個々の患者の病態を改善するに適した方法で,効率的かつ迅速的に治療をする場としての機能を最大限発揮している.当然,食事管理部門では,生死をさまよう患者の病状を治癒する方向に向けるために満足できる病院給食を,新知見を駆使しながら,最善の方法で実施することが必要である.

冷凍食材の現況と取扱い上の問題点

著者: 田中武夫

ページ範囲:P.654 - P.658

取扱う冷凍食材の範囲
 ここでいっている冷凍食材とは,凍結されたいわゆるフローズン形態の食品材料のことであって,よくいう冷凍食品だけをさすのではない.冷凍食品というのは「前処理を施し,急速凍結を行い包装された規格商品で,簡単な調理で食膳に供されるもの……」と定義されるように,デパートやスーパーのショーケースに入っているあの小口の冷凍品をさす.このような製品ないしは半製品形態の冷凍食品以外に,丸ごとの大きなマグロやカツオ,半分にタテ割りした豚や15〜20kg単位の大きな肉ブロックなど,いわば原料形態の冷凍品の分野が別にあって,実はこちらの分野のほうが産業的にははるかに大きい.この原料形態のほうを冷凍品,小口の冷凍食品のほうを冷凍食品,と紛らわしい呼び名ではあるが,私どもは区別して呼んでいる.今回の冷凍食材には冷凍品,冷凍食品両方を含めて扱うこととしたい.

電子レンジ調理の問題点

著者: 上月叡子

ページ範囲:P.659 - P.664

 私どもの大学では,無菌病室利用による白血病の治療という目的の一環として,実際に患者に対して無菌食の供給を成さねばならず,電子レンジによる滅菌効果に着目,特殊用器を用い,瞬間凍結した食材を自然解凍後,加熱処理することにより喫食に供している.病院給食としては,少数例にすぎないかもしれないが,すでに欧米諸国で現実に十数年前から一般病院給食にも導入されているところから,電子レンジによるdifferential heatingcontainer systemの具体化も夢ではなく,適温給食になくてはならない未来の機器といえる.

病院給食へのコールドチェーンの導入

著者: 下石茂彦

ページ範囲:P.665 - P.668

 ここ数年来,病院給食への冷凍食品の導入が関係者に様々な評価を受け,また一部では導入の動きが高まって来ているように見受けられる.しかし,冷凍食品そのものについての歴史は,我が国では水産界に端を発し,相当な歴史をもっているが,それは第一次原料の保蔵方法として発展して来たもので,給食への導入は筆者の記憶では学校給食や事業体などの大量給食への導入がスタートであったように思われる.しかし,当時の製品は品質的に十分なものでなく,あまり良い評価は得られなかった.
 その後,社会情勢の変化や,世界的な食糧事情の急変から食品流通の改善,合理化の有力な技術的方策として低温の継続,つまりコールドチェーンの中で食品を流通してゆくということに脚光があてられたと理解して良いと思われる.ところが給食施設や病院における冷凍食品の導入という問題は,食品の流通方法としてのコールドチェーンという発想とは別の問題として扱わないと,大変広範囲に及ぶことになり混乱を生じかねない.ここで与えられたテーマは,コールドチェーンという搬送方法で入手した,冷凍品(原料的な一次冷凍素材:冷凍魚,冷凍野菜など)と冷凍食品(調理加工した半調理冷凍食品・完全調理済冷凍食品)および自家冷凍という範囲で私見と体験を述べてみることにする.

事例

遅れている給食施設の近代化

著者: 浜田秀雄

ページ範囲:P.669 - P.671

 給食業界も全般的には近代化が進み,過去のような悪評は一掃されてきているが,病院給食は一般集団給食とは本質的に異なり,患者の病態に応じた給食をする特殊な環境にあり,業務が複雑なため改善などが遅々として進まない,その一つの原因に施設の欠陥が挙げられると思う.
 病院給食の近代化が叫ばれ,機械による合理化が考えられてはきたが,思ったほど効果はあがらず,かえってマイナスになった例が多い.例えば人手を減らそうと考え,新しい機械を入れたが,人手は減らず,経費は増えたということがある.それは機械自身の欠陥による場合よりも,機械を導入するに当たって,関連の「システム」の検討を怠った場合が多い.部分は常に全体との関連によって成り立つのであって給食の体質改善には,このシステム的思考が必要であると思う.根本的な問題を検討し,作業環境の改善と作業動線の確立をすべきである.

グラフ

「人間医療」を求めて—和良村国民健康保険病院

ページ範囲:P.633 - P.638

 あしたは,年1回の「病院総括」の日だ.和良村国民健康保険病院中野重男院長は,「総括」を翌日に控え,会議室に掲げられた校条前副院長の遺影の前に立つ.診療所時代から20年間,共にこの和良村の住民の健康を保持増進するために働いてきた,自分の後継を託そうとした校条さんを失った今,中野さんはまだ頑張り続けねばならない.それが1年か,2年か,それとも5年に……,中野さん自身にも分からない.

病院管理の先達,今病院へ復帰神奈川県立こども医療センター所長 小西宏氏

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.640 - P.640

 今度,小西先生が神奈川県立こども医療センター所長に就任された.我々の待望久しかった病院界復帰である.ただし,先生がかつて病院管理の分野で,文字どおり若きホープ的存在であったことを知る人は案外少ないようだ.
 本誌の創刊は昭和24年7月.その第1号に,既に先生の論文が載っている.今から30年前で,先生は30歳そこそこであったはずである.25年6月から編集委員.橋本寛敏,守屋博,吉田幸雄,尾村偉久といったそうそうたるメンバーの中にあってもちろん最年少.WHOのフェローで病院管理の勉強のために4か月間米英に留学して帰られた後,28年7月から32年4月に吉田先生にバトンタッチするまで,本誌の事実上の編集責任者であり,編集委員のほうは36年8月まで続けられた.

焦点 対談

小児・新生児医療とICU(下)

著者: 三川宏 ,   柴田隆

ページ範囲:P.641 - P.645

 7月号では,新しく生まれ変わろうとする国立小児病院の構想と聖隷浜松病院の新生児の地域医療にふれながら,小児および新生児の重症患者の医療について話し合いいただいた.今月号では,話題は更に展開されるが,「国際児童年」に当たる本年,この対談を礎として次代を担う子どもの医療について論議されることを期待したい.

ニュース

「自治体病院などの勤務医の確保対策」報告書まとまる/シンポジウム「みんなで医療を考える」参加者1,400人

著者: 編集室

ページ範囲:P.645 - P.645

 自治体病院等勤務医師対策小委員会(座長=馬場春雄青森県野辺地町長)は,「自治体病院及び診療所における勤務医師の確保対策」について報告書をまとめ,5月21日,川上紀一全国自治体病院開設者協議会会長および諸橋芳夫全国自治体病院協議会会長に提出した.
 以下は主な概要である.

第21回国際病院連盟会議オスロで開催

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.709 - P.709

 第21回国際病院連盟(以下IHF)会議が,去る6月24-29日の6日間にわたり,ノルウェーの首都オスロで開催された.これはIHFコングレスを2年ごとに開催するという規定によるもので,前回は1977年5月に東京で開催されている.
 以下,その概略について,まとめてみる.

設備機器総点検

食器洗浄機

著者: 鈴木啓二

ページ範囲:P.673 - P.673

 給食業務への機械の導入は,単純な手作業を機械化し,能率的に業務を処理して合理化することにある.その代表的なものとして,現在,食器の手洗いを機械化した食器洗浄機があるが,ほとんどの病院では,単に食器を洗浄するために使用しているのが現状である.
 当院では,食器洗浄はもちろんであるが,更に調理用器具を初め,従来は後片付けと称して手洗いをしていたまな板,鍋類,バット,ボールなどの単純な洗浄作業にも洗浄機を使用している.

統計のページ

病院経営の実態・1—「病院経営収支調査」(全国公私病院連盟,昭和53年)より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.674 - P.675

収支調査の概要
調査の実施者と調査の目的
 調査の実施者である全国公私病院連盟は,昭和39年に結成され,現在,全国自治体病院協議会,全国厚生農業協同組合連合会,全国公立病院連盟,日本赤十字社病院長連盟,日本私立病院協会,東京病院協会,岡山県病院協会の7団体が加盟している.
 この調査の目的は,病院経営収支の実態を把握し,今後の診療報酬の改善,病院経営の適正化を図る基礎資料を得ることである.

医療の周辺医療経済 医療経済・8

代替案の作製

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.676 - P.677

 経済学はもともと政策の提示のための学問である.単に経済現象を需要や供給などで数量的に説明したり,医療の経済構造の性質をあれこれ批評して終わるものではない.自然科学や実験室のような場での社会実験はなかなかできないが,経済学は,対策,施策,政策ということで考えると,ある新しい方針の実施にかかわる科学である.特に公共的経済機構の下では,その新しい方針での施策が中心となる.そしてこれからは,民間の病院においても,その医療活動や経営状況も地域性を持ち,社会保障との深い関連で進められるものであるから,当然その経済活動も,国民の健康を高め,福祉の充足に寄与するという社会的目標を持ち,効果的効率的活動とならねばならない.このような目標が設定され,効果性や効率性を測る尺度としての様々の手法,そして事業の結果(実績も含む)についての評価方法が開発されると,次に代替案(alterna—tive)の作製が可能となる.

講座 入門・診療記録管理・最終回

閲覧・貸出し・返却等の業務

著者: 栗田静枝

ページ範囲:P.678 - P.679

XVI.閲覧,貸出し,返却
 診療記録管理室には,必ず閲覧する場所を設置しておかなければならない.そして,医師らの必要に応じて,いつでも(時間内はもちろん時間外でも早急な場合は貸出す方法をあらかじめ決めておくこと)抽出し,原則として,この場所で閲覧してもらうことが望ましい.ただし,閲覧室の広さには限度があるので,同時に多人数になると,使用者に不便をかけることになる.そのほか,参考資料として使うため時間がかかったり,調査に使われる場合,あるいは学会発表の準備で大量の診療記録が必要の場合などには,貸出し業務が行われる.
 言うまでもなく,診療記録は活用されてこそ意義があるので,貸出し・返却は日常業務のひとつであり,しかも記録室の係員はこの作業に相当量の時間を費すことになるので,貸出し・返却の手順はなるべくやりやすい方法で,しかも正確性をはからなければならない.

実務のポイント 購買・倉庫

主要物品の価格の推移と購買

著者: 本田力

ページ範囲:P.680 - P.681

 病院で購買業務を担当する用度課としては,いかに良いものを安くそして早く納入させるかが問題となる.しかし安かろう悪かろうで使用部署からクレームを言われるのでは困る.一般的に病院の支出割合は,人件費50〜60%,物品費30〜40%,薬品15〜30%,原価償却5〜8%,その他というのが大半の目安のようである.病院の内情によって差があるのはもちろんであり,個人病院では人件費はもっと少ないはずである.
 最近は物品だけでなく薬品も事務サイドで扱う病院が多くなっており,要するに物品+薬品45〜70%の支出を抑えて,医療収入以外の第3の利潤をあげるというのが用度課職員の義務であろうと思われる.

薬剤

病棟の薬品管理の実際

著者: 宇佐美久良

ページ範囲:P.682 - P.683

病棟の薬品管理の基本
 近来,医療の場における医薬品の貢献は非常に大きいものがある.それだけに病院の中を見渡すと,薬品が至るところで保管され,使用されている.すなわち調剤室,製剤室など薬局内はもちろんのこと,病棟,外来診療部,手術室,X線室,検査室などがその場である.いま病棟に置かれている薬品について考えてみると,処方箋により調剤された入院患者個々の調剤薬品,注射薬品,検査薬品,処置用薬品,消毒薬,製剤薬品などが保管されている.これらの薬品は一枚の処方箋,注射箋および伝票などで供給され,その後は薬剤師の手から離れて,その管理は主として看護婦に委ねられているのが現状である.したがって供給された薬品の管理の良否は看護婦の取扱い方いかんに負うところが多い.
 医薬品はその特殊性から,1)医薬品の変質の機構(例えば温度,湿度,光)や有効期限などによる品質管理,2)安全性を保つための方策(例えば誤薬防止,保存法,副作用対策など)をたてる安全管理,3)適正な薬品の使用方法に基づく使用管理,4)医療上および経営上,合理的な量的管理をする出納管理,5)個々の患者に特定の薬剤を正しく与薬し,観察する与薬管理など専門的な管理が要求される.

放射線 診療放射線技師の役割・2

患者サービス

著者: 大谷英尚

ページ範囲:P.684 - P.685

 患者サービスとは何か.病院は旅館や娯楽施設ではないから,患者の機嫌をとったり豪華な設備をすることがサービスでないことは確かである.この問題は,単に放射線部門に限らず,医療人として患者にできるだけ苦痛を与えないで,正しい診断とよい治療を「まごころ」をもって行うという医療の本筋を守ることが基本であろう.
 患者は病院に対し,ある程度以上の感謝の気持と信頼感を持っているはずである.にもかかわらず,自分の病気についての心配や恐怖心ばかりでなく,診察や治療を丁寧に,しかもスムーズにやってもらえるだろうかと大きな不安を抱きながら病院を訪れる.患者は心理的に受身の立場なのである.

現場訪問

稲田登戸病院産婦人科病棟小野良子さんと鈴木明子さんに聞く

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.686 - P.687

 小野さんと鈴木さんは,病棟の勤務につきながらも,寸暇を縫って,いわゆる"オッパイ外来"に意欲的に取組んでいる助産婦である.その現場を訪問した日は,たまたま夜勤明けということであったが,二人はその疲れもみせず,乳房にマッサージを施しながら,若い母親となごやかに語らっていた.時折,乳汁を指先にすくい舌に載せ,母親にもそのことを促す.そして何事か説明する.頷く母親の得心したような顔.また,ほとばしる乳の勢いに,思わず放たれる驚きの声と笑い.産婦人科病棟の,処置室と書かれた6畳大の部屋には,陽気な気分が満ちあふれていた.窓の外には,梅雨に降られる灰色の風景があった.

今月の本棚

—イヴァン・イリッチ 著 金子嗣郎 訳—「脱病院化社会—医療の限界」

著者: 藤岡萬雄

ページ範囲:P.688 - P.688

手強いが貴重な一書
ネメシスと現代医療
 本書の原題は"Limits to Medi-cine"で,副題は"Medical Nemesis;The Expropriation of Health"である.すなわち「医療の限界:医療における復讐(ネメシス)—健康の収奪」である.
 かつてプロメティウスは根源的な貪欲に駆りたてられて,人間の限界を超え,限りない傲慢さによって天国から火を盗んだ.そのために彼は神々の手により,鉄鎖によってコーカサス山脈の岩に縛りつけられ,一羽の禿鷹によって,永久に内臓を啄ばまれるという残酷な復讐(ネメシス)を受けるのである.

新・病院建築・20

富田林医療福祉施設富田林病院—医療・福祉の総合施設として

著者: 小橋正 ,   柴田敬四郎

ページ範囲:P.689 - P.695

設立の経緯と現状--運営面から
 富田林病院は一昨年10月に開院した.大阪府衛星都市にはちょっと珍しい立派な病院と自負している.約1万4千坪の広い敷地の上に約56億円をかけた建物,10億円余の医療機械その他の備品を設備した4階建白亜の340床の病院である(伝染病棟40床を含む).設備医療機械類は300床の自治体病院基準,教育研修病院として要求されているものを具備するよう考えた.
 当院は大阪府,富田林市の一方ならぬ尽力により,共同事業として建設され,済生会に委託という形で運営されている.大阪府医師会をはじめ,富田林医師会,府,市行政当局を含めた施設運営準備委員会の方々の数年にわたる努力の結晶である.

精神医療の模索・20

米国の精神医療とハーフウエイ・ハウス(2)—カリフォルニヤ州北部を例として

著者: 桑原治雄

ページ範囲:P.696 - P.700

ハーフウェイ・ハウスについて
ハーフウェイ・ハウスの性格と目的
 カリフォルニア州では,1978年8月から地域精神保健居住治療システムCommunity Mental Health Re-sidential Treatment Systemのために州から資金が供与されることになった.名称はいかめしいが,内実はハーフウェイ・ハウスの強化策である.これはShort法の付加部分として(Bates法)地域精神衛生活動のために新たに立法化されたものである.この中でハーフウェイ・ハウスについて以下のような性格と目的が持たされている.
1)施設収容や入院の代替となること.

海外の医療・6

シンガポールの保健医療事情

著者: 石野誠

ページ範囲:P.701 - P.703

一般事情
 我々がシンガポールを訪れた時は,ちょうど13回目を迎える「建国記念日」を一週間後に控えて,街路の飾りつけがにぎやかになりつつあるころであった.
 シンガポールの歴史はイギリスの東インド会社による貿易港としての発展にはじまっている.その後永くイギリスの支配下にあったが,第二次世界大戦後マレーシア連邦の一員として新しいスタートを切ることになった.しかし,2年後の1965年にはシンガポール共和国として独立している.人種構成は中国系が圧倒的に多く(約75%),マレーシア系(約15%),インド,パキスタン等が続いている.面積はほぼ淡路島と同じくらいで,人口密度は極めて高く,住宅,公衆衛生の面でも多くの悩みを抱えている(写真1).

研究と報告【投稿】

病院における賃貸借・委託・外注の実態—類型別規模別分析(3)

著者: 車田松三郎

ページ範囲:P.705 - P.707

C型—外部依存の利用状況
 病院の外注は業者に委託することであるが,その委託の仕方にも2種類ある.ひとつは,病院の設備の一部を病院が提供してサービスを受けるものと,院内の設備とは関係なしに独立してサービスの提供を病院が受けるものとであり,ここでは,後者のことをC型と名づけた.業者は病院の外部にあり,病院はそれを利用する,他の外注よりも外部依存が強い性質のものと思われる.
 典型的な例は臨床検査,フィルムバッヂ測定,ばい塵濃度測定,塵介処理,歯科技工,患者給食,事務の合理化(給与計算,レセプト作成の委託),自動車および駐車場などである.

読者の声

豊洲厚生病院の適温給食の試み

著者: 藤平清乃

ページ範囲:P.710 - P.711

 病院給食は,医療,看護と並んでその重要性を認められながら,給食本来の使命を十分発揮することは今までほとんどなかった.というのは病院給食の財源である社会保険診療報酬の給食料では材料費,労務費,設備費,給食全般の経費を賄うことは全く不可能で,したがって食事内容,人員,施設などを制約せねば給食そのものが実施できなかった.
 給食料の安さに起因する問題は重大かつ深刻で,現状では病院側の大きな経済的犠牲なしでは,この問題の解決は不可能である.

ほんねたてまえ

医療と人手と経済性

著者:

ページ範囲:P.711 - P.711

 良い医療を行うためにはどうしても人手は多くなる.医療水準が高ければそれだけ金がかかるということが病院の質を論議する時には決まって出される意見である.しかし,考えてみればそれだけのことが配慮されれば理想とする医療が実現できて当たり前なのである.
 新卒技術職員の採用面接時に医療と経済とは両立できるのかという問を投げかけてその反応をみたことがある.問題をマクロ的に社会全般との係わりとしてとらえる人,病院の存立問題として考える人,個人生活という身近な経済問題としてそれを感じる人などがあって,反応はさまざまであったが,答え方のパターンを大別すると次の三通りであった.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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