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雑誌目次

雑誌文献

病院38巻9号

1979年09月発行

雑誌目次

特集 幹部間リレーションズ

幹部のチームワーク

著者: 守屋博

ページ範囲:P.741 - P.743

病院は複雑な集団活動体である
 病院には,看護婦や検査技師やその他の専門技術者が多数いて,診療の担当者であり,その中心である医師に協力して高度の医療を行っていることは誰でも知っていることである.ただ戦前の病院では,これらの医療協力者が,個々の診療を担当する医師(診療科の科長)の直接配下として所属するピラミッドを作っていたので,比較的単純な組織であった.ところが,戦後の病院ではこれらの専門技術者はおのおの独立した組織を作り,その集団同士がお互に協力し合うという複雑な組織に変わってきた.これは近代化した米国の生産工業の組織を取り入れたものであって,個々の技術の専門化,高度化を導き,同時に病院の巨大化をもたらしたものである.工業において科学的な管理技法が急速に進歩したのと同様に病院においても,病院管理学が取り入れられて,近代化が進んだのである.
 このような組織管理学にはいくつかの原則があるが,その第一は集団の中心にあって状況を判断し,行動の意志を決定し,それを集団に指令する司令部を確立することである.会社でいえば社長,軍隊でいえば司令官のように人間の頭脳と同じく,これなくしてはまとまった集団活動はできないのである.ただ下等動物ではこの神経中枢が未発達で身体の各部が勝手に行動する百足のようなものもあることはあるが……

幹部の自己研鑽

著者: 岡崎禮治

ページ範囲:P.744 - P.747

 日本は年功序列終身雇用慣行社会であり,病院もその例にもれず,幹部はおおむね,その属する職種の中の年長者で占められている.このことから,定型的日本の病院幹部は,衰えゆく肉体と深まりゆく情報交換範囲,減少する記憶力と増大する権威とを,併せ持った存在である.またそれらの要素は,相互に関連をもちながらたえず変化している.
 この変化は,瞬時に,プラスあるいはマイナスに向かう性質を持っており,許容量の小さい電池のごとき微妙な動きを示すものである.本人の努力ですべての要素をプラスに転化することもできるし,またわずかの停滞や油断が,マイナス,すなわち病院幹部として不適当な退行変化をもたらすことになる.

幹部の資質・対応と労使関係

著者: 大久保才一

ページ範囲:P.748 - P.751

 組織の中にあって,「幹部」と称される立場にあるものは,それぞれ自己の組織上の所(分)掌業務をまっとうするかたわら,自己の職務権限を通じて,他に対しても協調・協力の下,組織全体のレベルアップに寄与する義務と責任がある.このことは「労使関係」にかかわる問題について特に重要である.
 ところで医療の場における労務管理は,10年立ち遅れていると,多くの人から指摘されて久しい.我々は残念ながら,これを否定する勇気がない.このことは根本的には医療の組織における幹部が,近代的経営管理において,労使関係の基本的認識に欠けるものがあるからだと断ずることはいい過ぎか.いわゆる憲法28条「勤労者は団結する云々」の法意から生まれた諸法令が定めた,団結権・交渉権,団体行動権(争議権)の労働三権をはじめとする,労働者の保護法律について,安直に過ぎる考え方があるように思えてならないのである.

民間病院の幹部

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.752 - P.755

 我が国の医師個人の開設する病院をみる場合,経営経済体質としては,資本主義経済体制における家業あるいは個人企業の範疇に入る.個人の資産を原資とし,生活と診療の場を同じくし,家族労働の協力を得て行われる個人病院は,家業形態の典型である.したがって経営管理の体質は,ほかの産業におけるものとほぼ同様である.経営規模が大きくなり,法人組織をとり経営管理に関する家族の介入が少なくなり,多少とも合理的な組織化をとるようになると,個人企業というのがふさわしいものとなろう.経営管理に現代的な空気を取入れ,科学的合理性が貫かれることが,経営の安泰と成長の条件となるわけである.しかし法人組織といっても,医療法人制度の目的が相続税対策であったという現実的な性格から,私的所有であり,個人経営であるという点で,非法人の場合と大きくは変わらない.これが社員が持分を放棄した財団となると,かなり変身する.開設者と一体であった病院が独立した存在となり,院長と病院,病院と従業員とが分化して認識され,院長対従業員関係の認識もかなり変わって来る.経営管理機構は院長の私物ではなくなり,病院という実体を背景にした存在となり,客観化・合理化は進み,従業員の経営参加は大きくなる.これに反比例して,開設者であった院長および同族の権限なり支配力は弱まる.

幹部の生きがいと哀歓

著者: 新村明 ,   今村栄一 ,   槐満男 ,   嶋崎佐智子 ,   石原信吾

ページ範囲:P.756 - P.761

 石原(司会)病院の院長先生をはじめとする4幹部の病院の中での働きというのは,人間で言えば頭脳組織の前頭葉の部分に当たると思います.ある病院の建国の精神とかあるいは病院をリードしていく指導方針,方向づけといったものはそこで形成される.前頭葉が人格形成の場たとしますと,病院の個性はそういう人たちのところで大体決まるんじゃないかという気がします.
 喜びとか悲しみとかいう感情は前頭葉が発達している人間だけのものですが,病院の前頭葉の部分に位置しておられる皆さんが,これまで何に打ちこんでこられたか,またそれに伴ってどんな喜びや悲しみを味わってこられたかを今日は伺いたいと思います.

幹部の分担と連携

院長と副院長

著者: 小笠原道夫

ページ範囲:P.735 - P.736

 与えられた課題を前にして,なぜこのようなことが今更ながら問題として取り上げられるのか,とまず感じたのであるが,事実としてそれが取り上げられるべき事情があるのであろう.副院長の名称の意味するものも千差万別であり,最古参の医師に与えられた先任を表す称号から始まり,院長不在時の緊急用件のみについての院長代理であったり,また院長業務の一部を院長と分担で責任を持って処置する役目に至るまでのものがあろう.本来の副院長の職責は院長業務の補佐であるべきであろうから,まず院長業務について考えてみたい.

院長と看護部長

著者: 船場宮子

ページ範囲:P.736 - P.738

 よい医療の提供には,より多くの人手と最新の設備や技術の導入などを必要とし,採算性の追求といった経営手段をも満足させるというところに,病院管理の難しさがある.この点を総婦長が理解し,病院長にどのように協力してきたであろうか.体験として言えることがあるとしたら,かつて病棟閉鎖解消のために,病院長と精一杯に看護婦不足対策に力を分担し合ったという実感である.
 この時の病院長と総婦長は,毎日,問い,問いかけられる関係であったように記憶し,そのころの実感を思い出しながら,今回与えられたテーマに触れていきたい.

院長と事務長

著者: 飯島聖人

ページ範囲:P.738 - P.739

 私どもの農協病院は,もともとが無医村的環境を克服し,農村の医療と農民の健康を守るために設立された.
山の中の辺鄙なところであっても,人の生命の尊さには変わりはないのだから,都市にも負けない医療設備と技術陣をもたなくてはならないと確信している.このことは農民から課せられた任務でもあろう.私どもの病院は,農民が主体となって設立したものであり,いきなりこのような医療設備が出来たわけではない.若月院長が病院開設の1年後,昭和20年3月に東大から赴任された時は,県内の製糸工場の建物を移転した障子張りの病棟であったというのだから全体の施設も想像される.医師2名,全従業員が10名ほどで,20床の病室には入院患者が一人もいなかったという.長野県南佐久郡の山の中の人口5千人に満たない小さな町で,朝早くから外来患者の診療と,夜遅くまでの手術など,日夜を惜しまない診療活動でたちまち入院患者は満床になった.病院にみえた患者を治療することも大事であるが,更に一歩進んで村の中に出かけて,病気を早期に発見することが重要であると院長は赴任の数か月後から,病院の従業員と一緒に休日を返上して自作の演劇,紙芝居,指人形などを持って村の中に出かけ,健診のみならず,衛生教育の啓蒙に努められた.(岩波新書,若月俊一著,「村で病気とたたかう」より)

事務長と看護部長

著者: 寺島敏子

ページ範囲:P.739 - P.740

 医療は人間を中心に総合的に行わなければならない.病院は高度の診療を行うだけでなく快適に入院生活ができることが必要であり,そのような望ましい医療の提供は,病院管理のあり方に大きく左右されることは必然である.病院管理は病院の機能の向上を図るのが目標であり,そのために経営の合理化が必要となるが,各種の免許取得者及び人手を要する病院の管理は他産業に比べいっそう困難であると言える.
 この度のテーマである事務部長と看護部長の業務の連絡調整連携について触れてみたい.事務部長の権限業務内容及び組織上の位置は病院の事情によって多少の相違はあると思うが,大方以下の二つの面があるという.

グラフ

わが国初の腎移植センター—国立佐倉病院を訪ねて

ページ範囲:P.721 - P.726

創立は明治7年
 この4月,わが国初の国立腎臓移植センター(腎臓疾患専門病院)が発足した.
 この国立佐倉病院は,国立佐倉療養所が,新築移転を契機に性格転換したものである.

中野は和良村で神様になった和良村国保病院院長 中野重男氏

著者: 市川孟

ページ範囲:P.728 - P.728

 中野重男君(65歳).綽名を「毛」と称する.毛沢東の毛でなく陰毛の義である.愛知一中の頃,2年生全員の水泳合宿の折,やや早熟の君の一物が黒々と繁っていたことから即座に「毛(け)」という名で呼ばれるようになり,50余年経た今も同窓会の時など昔の悪童連中はいとも心安く『おい,毛』と呼び彼もしごく自然に『なんじゃい』と返事するような人柄である.
 彼は終戦を東満の延吉陸軍病院で迎え,翌昭和21年の初夏,国民党と吉林で戦った八路軍の戦傷患者が数百人,汽車の油煙と蛆だらけになって収容所の病院に転送されて来た時,それまで入院していた日本人の傷病兵と一緒に民間人となった.その後有志で延吉市内にバラックの大衆百貨店を開いて,その利潤で診療所を開き,日本人患者の診療に当たり,患者の大部分を苦労して北鮮の港等から日本へ送還したという.小生は八路軍(中国人民解放軍)の後方病院勤務となって中国各地を移動し彼と別れ別れになったが,昭和28年夏,相前後して舞鶴に引揚げた.

焦点 対談

いま病院倫理を語る

著者: 佐藤智 ,   守屋博

ページ範囲:P.729 - P.734

 ヒポクラテス以来,医の倫理,医師・看護婦の倫理については多くの論議があった.我が国でも日本医師会が「医師の倫理」を1949年に制定している.医師や看護婦などからなる病院の倫理に関しても,米国では病院協会・病院管理者学会によってa code of Hospital Ethicsが1941年に制定されているが,我が国ではこの問題はあまり語られていない.医療技術が急速に発展している一方,医療の荒廃がいわれている今こそ,組織体としての病院の倫理についても論議し,新しい医療活動の展開を期待したい.

海外の医療

病院医療体制の国際比較

著者: 石塚正敏

ページ範囲:P.762 - P.766

 欧米諸国の慢性疾患医療というものを研究する際に,どうしても避けて通ることのできないものはコストの問題である.慢性疾患医療の中核をなす「ナーシングホーム」をみれば分かるように,「低レベルの医療で高騰する医療コストを切り詰める」という姿勢は欧米一般に見受けられるが,特に米国においては著しい,慢性疾患医療がこうした宿命を背負っている背景には,その起源が救貧院・廃疾院・精神病者収容所といった,医療の領域に含まれない施設を母体にしたこと,および,高度医療機関(すなわち病院)のコストが余りに嵩み過ぎて在院日数を減らす施策がどの国でも積極的にとられていること,の2点が主に考えられる.
 本稿では,今後の慢性疾患医療を考えていく上でも重要な,欧米の病院医療制度とコストの問題の一端に触れるとともに,併せて基礎的な周辺領域の問題も探ってみたいと思う.

設備機器総点検

ゴミカプセル搬送装置

著者: 大内通孝

ページ範囲:P.769 - P.769

 当院では,最近ゴミカプセルの搬送装置を導入し効果を上げている.
 これはゴミを種類別にカプセルに投入し,そのまま自動搬送(空気圧による低速降下方式)する装置で,当院では既存のダストシュートと焼却炉を活用して設置し,2階以上の病棟のゴミ輸送を行っている.

統計のページ

病院経営の実態・2—「病院経営収支調査」(全国公私病院連盟,昭和53年)より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.770 - P.771

結果の概要(承前)
病床規模別収支(一般病院)
 昭和53年6月の一般病院の病床規模別収支状況を表4に示した.また,同じく一般病院について,総収益100に対する総費用割合別の分布を,病床規模別に表5に示した.

医療の周辺医療経済 医療経済・9(最終回)

医療費の上昇抑制(コスト・コンテインメント)

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.772 - P.773

 1970年代に入ってから,先進諸国の多くは医療費上昇を共通に経験する.社会保険制度をとる国では,その保険財政への圧迫,公共財源を多く充てている国では,その面での重圧などのため,いろんな方策でもって医療費上昇の抑制策を採ってきている.とりわけ病院費用の増加が顕著なこともあって,法律や法案という形でだけみても,次のようなものが制定され,提案されてきている.

講座 入門・ME機器の正しい使い方・1

アースはなぜ必要なの?

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.774 - P.775

 現在,医療の現場では,実にさまざまなME機器が使われ,より良い診断や,より高度の治療に役立っている.
 しかし,正しいデータを得たり,有効な処置を施すためには,機器を正しく扱うことができなければならない.更に,誤った使用法や故障した機器を使ったために,かえって患者に危険が及ぶこともあり得る.

現場訪問

社会保険埼玉中央病院埼玉県腎センター透析室福田秀雄さんに聞く

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.776 - P.777

 慢性腎不全患者の治療法である透析療法が,我が国で広く普及されるようになったのは昭和47年ころからである.この透析療法は特殊な人工腎臓装置を用いており,医師や看護婦のほかに,この装置を取扱い,保守管理を行う専門技術者が必要である.
 —福田さんは,この透析室で,いわゆる「透析療法士」として働いておられるわけですが,具体的にどういう仕事をされているのでしょうか.

実務のポイント 会計・経理

私的病院の税対策(その1)—課税の仕組み

著者: 佐藤武雄

ページ範囲:P.778 - P.779

 現在の私的医療機関(法人)は,国家の規定による現状では不当とも言える低い診療報酬の制度の下で,経営を維持,発展させなければならない使命を持っている,その中でも,特にこの医療機関について課せられる税金を抜きにして経営を語ることは,およそ羅針盤を失った舟のごとく目標に向かっての前進は不可能であり,沈没の運命にあると言わざるを得ない.
 そこで今回,「節税」なるテーマをいただいて実は困惑しているのである.改めてこのことについて思うに,まるで魔法か手品のように税金がなくなるような方法はないからであり,脱税行為を勧めるものでもないからである.しかし法律で定あられた範囲の中で,節税に心樹けるという趣旨から以下述べることとした.

給食

災害用備蓄食糧について

著者: 馬場昂

ページ範囲:P.780 - P.781

 昭和50年,東京都衛生局病院管理部では,病院における災害時の給食対策のあり方について,都立病産院栄養士と検討をすすめ,"災害時用食糧品の取扱要綱"を定めた.その要綱のなかから参考になると思われる事項を要約して取上げ,併せて当院の災害時用食糧の備蓄状況を紹介する.

放射線 診療放射線技師の役割・3

業務量をいかに把握するか

著者: 妹尾昭一

ページ範囲:P.782 - P.784

 業務量を知る必要性について若干ふれて見よう.諸兄姉ご理解のとおり,日々の患者の来院数や,どのような疾患の患者が来るかは,毎日の集計がなくては表面上推測し得ないものであり,また急患の来院も日によって差があり,内容もすべて同一とは限らない.その情況の中で放射線科にかかわる業務を患者にいかに有効に対応させ,病院の運営をスムーズに行うことは,病院としてのメリットだけでなく,利用する患者に対しての最大の奉仕である.また科内的に見れば,そこで働く医療職員の労働条件,技術的条件をより良く維持するためにも重要な課題でもある.そのためには,それらに必要で最も適した利用度の広いデータを得ることが要求される.このことからその情報をいかにして得るか述べて見よう.

新・病院建築・19

健康増進センターの建築計画

著者: 小滝一正

ページ範囲:P.785 - P.790

はじめに
 昭和48年に兵庫県加西市健康増進センターと宮崎県健康増進センターが開設して以来6年を経て,健康増進センターは全国で12施設,今年度開設予定のものを含めれば14施設を数えるようになった.施設数としては少ないながらも,そろそろモデル事業の域を脱して定着の時期に入ってもよさそうである.
 機会を得て資料を集め,いくつかの施設を見学した.資料の精粗にばらつきはあるものの,既存12施設のうち10施設について概観することができたので,健康増進センターを建築の立場から考察し,建築計画の要点をまとめてみた.

精神医療の模索・18

精神科医療におけるPSWの役割

著者: 竹内龍雄 ,   西沢利朗

ページ範囲:P.791 - P.797

精神科医の立場から—PSWの役割とその期待
 模索する精神科医療の中でPSWの果たすべき役割は何か,医師の立場から論ぜよとの編集室からの依頼である.PSWに限らず精神科医療に携わる各専門職種は,自己の役割についてもまだ模索のうちにあるのかもしれない.その中にあって他職種の果たすべき役割を論ずるのは難しい.おそらくPSWの役割を考え,それを披瀝するにふさわしいのはPSW自身であろう.
 医師はPSWらをパラメディカル・スタッフとみなし,自らを医療の担い手の中心に置いて彼らに種々の役割を期待する.筆者もまた医療の対象が病人でありその治療上の役割を考える以上,医師はその中心的な役割を果たすべきだと思っている,(ただし精神科の患者に対する援助は医療だけですまない場合が多く,福祉や教育その他の領域が重なりあって協力し合う必要があり,その際は精神科医はコンサルタントの一員であろう.)したがって以下に述べるのもこのような医師の立場からの精神科医療におけるPSWへの役割期待であり,それはPSW自身の立場から語られるものとはおのずと異なるのではないかと思われる.

いま民間病院は

民間病院における労働組合の是非

著者: 織本良子 ,   柏戸正英

ページ範囲:P.798 - P.800

労組のレベルアップを期待する
 日本人の90%が自分は中流階級であると思っているという調査は誠に興味深い.中流意識とは大なり小なりなんらかの資産を保有していることから生じる."失うべき何ものもない階級"とマルクスによって規定された労働者の階級意識は今や日本の国からあらかた消え失せてしまったかのようである.
 中流意識の中では,労働階級的意識すなわち労働者の連帯感というものは必然的に薄れてゆくだろう.生活の向上,資産の蓄積は当然のこととして人間の思想を保守的にする.労働者の党である革新政党が年を追って凋落し,中道政党がバスを右寄りに乗りかえていく現象は,この国民の意識と無関係に考えるわけにはいくまい.そしてまた労働組合の消長も,この国民的な大きな波のうねりの中にあると思われる.

ほんねたてまえ

病院の営利性を見直すべき時/病歴の保存と経費

著者:

ページ範囲:P.803 - P.803

 徳洲会病院をめぐってのマスコミ報道は,あまりにも善玉,悪玉の単純な決めつけに過ぎるが,一つの問題提起をしたと思う.
 それは病院経営は,いや医療経営は利益になるということである.もちろん我が国には8,500の病院があり,それを十把ひとからげに一つの概念でとらえるわけにはいかない.ここ数年,史上空前ともいえる好況を病院は享受しているとのことだが,一部の病院は依然として赤字である,それが能率の問題であるのか,機能の問題であるかは大変難しい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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