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雑誌目次

雑誌文献

病院39巻12号

1980年12月発行

雑誌目次

小特集 「地域医療」の実践

コミュニティを求める医療—大和医療福祉センターからの報告

著者: 黒岩卓夫

ページ範囲:P.1029 - P.1031

 町立大和病院は「大和医療福祉センター」の中心的役割を担っている.「センター」は病院に加えて町立農村検診センターと特別養護老人ホーム「八色園」から成っている.「センター」は地域包括医療を推進するための基地としてつくられたが,その活動を始めたのは昭和45年である.ただ明確な目標をもって組織的に動き始めたのは昭和48年である.このような活動の中から施設としての「センター」が生まれたことになる.
 私たちの理念は「自分たちの健康は自分たちの手で」と「予防と治療の一体化」であった.したがって医療サイドと住民と行政が共に手をつないで新しい医療をつくって行きたいというのが私たちの希望であった.

へき地中核病院の医療—国立沼田病院の現状と課題

著者: 斎藤昭三

ページ範囲:P.1032 - P.1034

 国立沼田病院の診療圏である群馬県下利根・沼田地区は群馬県の約4分の1,東京23区の約3倍に達し,人口約10万人,医療機関は62か所であるが,主として沼田市及びその付近に分布し,周辺には無医地区45か所を数えている.
 地域の特徴は,周囲に観光地の多いことであり,日光国立公園,上信越高原国立公園,越後三山只見国定公園などによって囲まれ,谷川,尾瀬,水上,老神,猿ケ京,法師,宝川,赤城などの名勝や温泉地が多く,したがって交通事故,山の遭難,スキー,スケート事故,食中毒なども多発している.

「地域医療」を考える—開業医の立場から

著者: 乾達

ページ範囲:P.1035 - P.1037

 厚生大臣が辞任し,東大名誉教授や有名な医事評論家まで連座した所沢市の富士見病院問題は,連日のようにマスコミをにぎわしています.「医療」を供給する側の問題は各方面で取り上げられていますが,忘れられている問題の一つは,被害者である患者が,どのような姿勢で医療にかかわってきたかということです.開業して十年になりますが,いまだに患者の多くは「クスリを服んで,医者に癒してもらう」式の没主体的なかかわり方しかしてくれないのが実情のようです.
 しかし,患者をこのように没主体的な情況に追いこんだのは,一つには,私たち医療に携わっているものの責任でもあります.現在自分の行っている医療をも含めて,医療の構造を考えてみますと,

病人を出さない村づくり—福岡県朝倉町朝倉診療所 林與吉郎前所長に聞く

著者: 編集室

ページ範囲:P.1038 - P.1040

 福岡市からバスで約1時半,大分県及び熊本県に近い朝倉町は,長寿の町として知られている.この朝倉町の診療所で30年間,その所長として「病人を出さない村づくり」に邁進してこられた林與吉郎前朝倉診療所長に,その予防活動を中心にお聞きした.

地方センター病院を指向した病院建築—厚生連帯広厚生病院

著者: 石丸修

ページ範囲:P.1041 - P.1044

 地域における病院は社会システムの一環としてとらえねばならない.それには,社会性,公共性,経済性の面から地域の特性を生かした病院づくりを計画し,いかに地域に定着させるかが問題となる.そのためには住民の健康への理解と医療提供者側の地域の現況についての正しい認識,更に現状の冷静な評価を基本とせねばならない.そして,これらの要因を総合して設立母体を超越して地域に潜在する医療資源を発掘育成し,連合を図るなど地域に対応した柔軟な方策を持って当たり正しい世論の支持を得なければ,その成果は期待できない(昭和53年国立病院療養所総合医学会).
 医療圏にコア病院構想を持ち,いわゆる三次レベルの医療技術の集積を行い,これを一括管理するという思考が支配的であり,これは理論的には極めて望ましいことである.しかし,高度の呼吸・循環・代謝などの管理体系を持った三次医療レベルの技術集積をすべて完備した病院を運営するには,専門医療職という膨大な人的資源の確保とその勤務シフト,施設設備と機能の高度化などが必要である.しかし,各単位における経済性などを考えると,これらの総合管理はほとんど不可能に近く,またそのため継続性は極めて困難となる.

グラフ

人間中心の病院造り—深谷赤十字病院

ページ範囲:P.1013 - P.1018

飛躍への条件
 昭和25年11月,当時深谷町ほか11か町村の組合病院を日本赤十字社が継承し,内科・外科・放射線科と60病床をもって発足した.といっても,医療機器は無きに等しく,治療薬も入手できない状態で,畳敷の病室には結核,赤痢,疫痢等の伝染病患者が共同で自炊生活をする有様であった.そんな中から,医師3名を含む11名の職員による,昼夜を分かたぬ献身的な医療活動が始まった.
 以来まる30年,今では一般300床,隔離38床を擁する地上6階の総合病院へと生まれ変わった.独立採算性をとる赤十字病院にとって,とりわけ道は容易ではなかったが,その経緯については,先月号特集「飛躍への条件」中,高木紹夫院長の文章に詳しい.そこで特筆すべきは,飛躍が単に量的規模を意味するのではなく,「夢を追う」と表現されるように,人間性を中心に据えた医の理想を追求する中で実現されたことであり,今後も一貫してその姿勢を保持しようとしているのである.

ノン肩書き下でのご活躍を 今村榮一氏

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.1020 - P.1020

 去る11月19,20の両日東京読売ホールで行われた第9回日本病院設備学会は大盛況で,さすがは今村学会長の運営と感嘆させた.
 先生は,昭和18年に東大医学部を卒業.21年11月に当時の国立東京第一病院の小児科に勤務.26年に1年間の約束で病院管理研修所の兼務となったのがそのまま続き,以来30年間この道の草分けの一人として,常に先導役をつとめながら今日に及んでいる.

焦点 対談

「地域医療」の実践をめぐって

著者: 今井澄 ,   増子忠道

ページ範囲:P.1021 - P.1028

 80年代に入り,外側からの病院医療への規制はますます厳しくなっている.病院のあり方そのものが問われている時代ともいえよう.今回は,現在から次代への医療を担うべく包括的な地域の医療の実践活動を,地方の小都市である茅野市と東京の下町にあるそれぞれの病院ですすめられているお二人に,第一線での病院医療の現状から今後の問題について話合っていただいた.

病院組合の運営

ある一部事務組合の設立と運営—山口県・大島郡国民健康保険診療施設組合事務局長松浦信夫氏に聞く

著者: 編集室

ページ範囲:P.1045 - P.1047

 医療施設に恵まれない市町村が広域的に一部事務組合を組織し,医療施設を設立した例は多いが,すでに医療施設が存在し,赤字経営に瀕したそれらの医療施設を再建するために組合を作り,健全経営をすすめるに至った事例は少ない.この組合の事務局長松浦さんに,組合結成に至る経緯とその現状についてうかがった.

リハビリテーション・その現状

老人施設におけるリハビリテーション

著者: 竹内孝仁

ページ範囲:P.1049 - P.1052

リハビリテーションの理念
 リハビリテーションは,先天的—後天的障害や老齢などによって,人間としてのあるいはそれまでの「生活」に破綻をきたした人々に対し,その生活の再建を目指す分野である.したがってその活動は単に医療的なものばかりでなく,障害をもつ人の生活に関与するすべての人人や機構などを包括した全体的なものとなる.これは「個人の生活」といえども決して孤立したものではなく,過去の生活史と現在彼を取り巻く社会集団とのかかわりの中で展開されるものだからである.したがって老人施設におけるリハビリテーションも,各種の「機能訓練」によってのみ成り立つのではなく,地域性を含む施設の性格,家族との結びつきかた,施設の方針など,そこにいる老人の生活に直接間接に影響するすべての因子への働きかけが必要である.

設備機器総点検

搬送機—シマコムVT

著者: 滝澤満雄

ページ範囲:P.1053 - P.1053

使用目的
 入院・外来カルテ・X線フィルム・処方せん・検査伝票類・検体(血液・尿・喀痰・その他の人体分泌物)・心電図・脳波等の記録・薬品等中小物品を簡単な操作で自動的に目的場所に運搬することで省力化を図る.

統計のページ

医師と医療従事者の所得・4—1.病院勤務の医療従事者の所得

著者: 二木立

ページ範囲:P.1054 - P.1055

国公立病院勤務の医療従事者の所得
1)自治体病院勤務の医療従事者の所得
 国公立病院勤務の医療従事者のうち,自治体病院勤務者の所得は自治省編『地方公営企業年鑑(第26集病院)』に詳しく報告されている.ただし,本調査のうち医療従事者の所得については昭和39年度からのみ公表されている.
 本調査では,給与の細目が詳しく調査されているが,他面,職種は,医師,看護婦,准看護婦,事務職員,その他の職員,全職員に大別されているだけである.

医療の周辺 社会学(家族関係論)—老人と家族・2

老人家族研究の方法と動向

著者: 奥山正司

ページ範囲:P.1056 - P.1057

 家族は,言うまでもなく,人間の基礎的集団であり,我々は定位家族(family of orientation)の中で育ち,結婚すれば生殖家族(family of procreation)を形成し,その中で一生を過ごす.したがって,家族関係ほど人間の日常的体験に属することがらは他にないと言っていいであろう.それゆえ,この「家族」という身近かな正体に,科学的に接近しようとする場合,我々は自分の特殊な体験に照らして,これを一般化しようとする傾向がある.もちろん,それは無理からぬことであるが,そのためにかえって得られた情報が事実とはかけ離れたものとして存在していることが多い.したがって,社会学的家族研究には,いろいろな資料に当たって,客観的に妥当な情報をつかむ必要性が,他の社会学の分野よりもことさら望まれていると言っていい.
 そこで,老人に関する社会学的家族研究に関しても,既存の研究で用いられた概念を整理し,またどんな研究が行われ,どんな研究が未開拓であるかを知ることが当然必要になってくる.

講座 解説・新しい医療機器・6

自動分析装置

著者: 内藤茂昭 ,   鵜沼伸充

ページ範囲:P.1058 - P.1059

生化学自動分析装置
 自動分析装置というと生化学自動分析装置を指すほど,この装置は今や臨床検査室の花形装置になった.
 生化学自動分析装置は,それまで人手によって試験管の中で化学反応を行わせ,目的とする成分を発色させ,光度計で吸光度または吸光度の変化を読み,成分の量を測定していたものをそのまま自動化したもので,臨床検査が中央化され,項目数・検体数が急増し,限られた検査技師数の中でどう処理していくか--という強い要望の中から生まれた省力化装置といえる.

実務のポイント 施設

配管の漏れ事故例とその対策

著者: 辺見九十九

ページ範囲:P.1060 - P.1061

 配管というものは,給水,排水,蒸気,給湯,通気管など建築設備として,その規模の大小,その構造の簡易,複雑さに差はあっても,常に人間生活の場における基本的設備である.その目的は,それぞれの配管機能を生かし,しかも長期にわたり,中高層ビルはもちろん一般家庭に至るまで,建物内の居住者の保健衛生の保全と,安心して生活環境の向上を図れるものでなければならない.
 これを人体にたとえれば,生命保持の機能源となる大動脈,静脈,そして消化器官の類と言っても過言ではあるまい.したがってこれらを機能的,用途的に誤った設計のもとで,無理な接続や不完全な施工を行い,更に適切な維持管理を行わなければ,それはまさに(後述するように多くの問題点となる)衛生的設備が逆に非衛生的設備になって危険やむだ,ひいては不安や苦心などといった事態を招来する.

購買・倉庫

ディスポーザブル医療用品の購買の留意点

著者: 三上晃

ページ範囲:P.1062 - P.1063

増加するディスポ製品の現況
 ディスポの医療材料製品は今日氾濫の様相を呈している.その様を見ていると,昨今医療産業は急速な発展を遂げていると言われているのも肯定できる.このような医療器材の氾濫の要因としては,医学の進歩,医療技術の向上,検査診断学の進歩,人件費の高騰,感染予防,更には使いやすさ等が挙げられるが,その種類という点になると,その把握は至難の技と言える.特にディスポ医療材料の種類の把握は難しい.
 このような医療器械や医療材料の材料費が,病院支出費を圧迫し始めている現在,真剣な検討を必要としている.医師自身が経営者であるときは,常に経済的効果を背景に採否を検討するが,大規模の病院つまり組織化された病院では,経営面からの考慮を医師に求めるのは理論上はともかく,実際には難しい.したがって,そのような考慮を行い,かつ医師,看護婦に喜ばれる物品を調達する事務部門(用度課等)の責務は決して軽くはない.

医事

患者番号のつけ方—病歴管理などに使用できるもの

著者: 三浦葉子

ページ範囲:P.1064 - P.1065

 病院で使われる患者番号とは,その病院における医学情報の整理収集のための大きな手段であり,能率的な事務処理の上からも不可欠なものであると考えられます.
 それは,医学管理上,患者における個々の検査データや情報はすべて患者番号をもとにして,間違いのないよう,整理,記録され,必要に応じた利用と供給の関係こそが,患者のためになり,明日の医学を支えていくものと思われるからです.統一された患者番号の必要性はそこにあり,各々の患者を識別することができることは患者番号付与の目的とするところです.

現場訪問

自治医科大学附属病院MEセンター技師長 荒井太紀雄さんに聞く

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.1066 - P.1067

 —MEセンターでは,どのような業務をされているのですか.
 荒井 ここでは,医療機器に関する安全管理を含めた保守点検,修理などを行うとともに,臨床面にかかわる技術提供をやっています.

新病院建築・36

千葉県救急医療センター

著者: 野口照義 ,   西野範夫

ページ範囲:P.1069 - P.1074

計画と運営
千葉県救急医療センター設立の沿革
 当救急医療センターは,千葉県の救急医療体制の一環として機能する三次救急専門医療施設で,千葉県下救急医療体制の要でもある.千葉県では,昭和52年度から救急医療体制整備3か年計画を策定し,この計画の基礎調査として,千葉県医師会並びに県共同による医療実態調査が,県下国公立施設を含めた医療機関総数の99%を対象として行われた.他方患者搬送を実施している全県下消防機関を対象に,救急車の搬送動態を調査した.
 この調査結果は,医師会,国公立病院関係者,搬送担当の消防機関,県および市町村などの代表者で構成されている千葉県救急医療連絡協議会で分析検討され,救急医療体制を初期診療体制(一次救急医療体制),二次救急医療体制,三次救急医療体制の三階層に区分して整備し,同時にこれら各体制間の連携を円滑に計るため,全県下を対象として救急医療情報システムの整備が必要であると結論づけられた.この結論に基づき,具体的施策をまとめ,千葉県医療機関整備審議会で諮問され,同審議会より救急医療体制の整備確立の必要性が,昭和52年1月に答申された.

特別企画 慢性疾患の増加と病院

デイケア,ショートステイ,老人病院運営の経験

著者: 上村安一郎 ,   日沼貢 ,   工藤星江

ページ範囲:P.1075 - P.1081

障害老人の"デイケア"を運営してみて
 鵠生園は昭和49年8月5日,特別養護老人ホームとして開園した(50床),かねて施設の社会化を企図し,在宅障害老人の入浴サービスを呼びかけ,老人は家族に連れられて来園し喜ばれた.昨年8月,開園"5年のあゆみ"誌の"今考えていること"欄に次のような記事を掲載した.「どうにか5年経過した.(中略)今年の秋から,国の要請で新規事業の『老人デイサービス事業』というのを引受け着工することになった.デイケアではなくてデイサービスだという.要綱はまだ案だということだが,奥歯に物がはさまったような言い方で,建て前と本音という流行語を思い出した.前年度の事業であるため,年度末の3月末に既設のホームの和室を使って形ばかりのデイサービスを始めた.専用の建造物は図のように,すべて既存のホームと連動させた.今年の5月8日に竣工式を挙行し,12日の月曜日から正式に発足させた.送迎サービス用の小型バスも届けられた.車椅子が2台乗せられるように,リフトが設置された8人定員のものだった.しかし車体の設計は素人ながら感心できるものではない(最近フランスで見た小型バスに乗って,なにか彼我の力関係を感じた).
 さて,実施要綱では利用者1日25人,週1〜2回ということになっているが,従業員は指導員1,寮母2,運転手1の4名が正職員で,昼食サービスのためのパート2である.後で述べるが絶対必要な医療職員は全くない.

精神病院医療の展開

精神病院における栄養部門

著者: 片山一男

ページ範囲:P.1082 - P.1085

はじめに
 精神障害者のもつ多面的ニードに対し,精神病院という医療組織が,この組織を構成するそれぞれの専門セクションの役割分担によって,直接的,間接的あるいはCo—,あるいはPara—の形をとりながら充足してゆく行為の中で,精神科栄養士の行為はどのように位置づけられるべきであろうか.精神病院における栄養部門の役割は何かを考えるとき,まずその機能としての食事供給と栄養指導の本質を明らかにしておく必要がある.戦後の食糧難時代の精神病院給食の実態を記した資料にそれを求めるまでもなく,病院の食糧調達能力,食事供給力は病院のもつ機能を発現し得るか否かにかかわる重大問題である.これは精神病院という施設が持つ住居性などの基本問題とは違った意味で,極めて動的な問題として考えてゆかなければならない.健康人の日常生活における食生活の問題と,精神病院という治療社会での栄養問題はその性質を大きく異にする.しかしそれは等しく栄養指導という手段によってのみ解決される.というのは栄養指導という行為には,あらゆる状態の人を対象とするという特性があるからである.したがって病院の栄養管理もまた栄養指導という一過程を踏むことにより,その目標を達成できると言える.栄養指導は強制的な治療行為をはじめとする種々の管理行為と対照的に,対象者つまり患者に非強制力をもって方向性を与えてゆくものである.

海外の医療

40人の見たUCLA Medical Center (4)—虎の門病院のUCLA見学プロジェクト

著者: 安部節子 ,   山室幸子 ,   本間筧二

ページ範囲:P.1086 - P.1089

ULCA見学
産科,小児病棟における印象
産科病棟
 産科はクリニック,病棟,ICU,分娩室,新生児,未熟児,NICUで構成されている.病棟とクリニックは患者中心に考えられた機能的な構造であり,同じ階に隣接して設けられているので,産前産後の指導が一貫して容易に行えるという利点がある.産科の病床数は20床,NICU19床,分娩件数は月250件,クリニックの患者数は一日120名ぐらいである.産科患者の入院日数は2日間であるため,指導面が特に重要視されるのではないかと思った.
 各分野が細分化されていることもあり,最近特に重要性が認められ,しかも日常臨床に広く普及しつつある超音波診断法,分娩監視装置などいろいろな器械の利用とか,2日で退院する褥婦の検査と保健指導,及び新生児分野では集中医療の急速な広がりによって業務の範囲を拡大するとともに,鋭い観察力を身につけ近代的装置を駆使する十分な能力を持つことが必要とされるなど,産科管理は高度に専門化されている.このことは,ナース業務の専門化にもつながっている.

いま民間病院は

京浜病院の運営と活動—倫理観を基盤にしつつ最新知識の開発と導入を願う

著者: 熊谷頼明

ページ範囲:P.1090 - P.1092

当院の概況
 東京の羽田空港から約2キロメートルほど北へ向かった産業道路沿いの所に,京浜病院が創立してから,はや40年を経た.総建坪2,400m2で地上6階,地下2階の建物で,ベッド数95床,内科,消化器科,循環器科,外科,脳外科,整形外科等を中心として一日外来患者数約350名,職員数約100名足らずの病院である.昭和11年に,父熊谷千代丸がここに病院を始めた時,健康保険を中心として診療することにしたのであったが,当時は保険お断りといった病院が格が高いとされていただけに,少しく珍しい存在であったように思う.また昭和26年の医療法人制度の発足とか,日本病院協会を発足させる原動力的な役割を父が果たしため,当時財産帰趨権の問題から一般の人が踏み切れなかった医療法人の第2号(1号は昭和医大)になった.
 残念ながら父が昭和31年に急逝した後は,工学界にて自動制御の研究家の道を歩んでいた私と,同じく造船界にいた弟とが,急拠医学校に入学して父のあとを継がざるを得なかったことは我が病院にとっても思いもかけない不幸な出来事であった.そして父ほどの力量のない不肖の息子たちは,その後病院を大して発展させてはいないのである.

研究と報告【投稿】

病院医師の職業生活意識—仕事の満足度について

著者: 小野能文

ページ範囲:P.1093 - P.1095

 現在,医学の発達や医療の社会化などを基盤として,病院や診療所で非常に多くの人々が診療を受け,しかも医療及び医師に対する社会的関心がかつてないほど高くなってきているが,筆者は,これまでプロフェッション=専門職の典型としての医師の職業生活を研究してきている.
 最近,病院医師すなわち病院開設者と病院勤務医は,その数が診療所開設者=個人開業医の数を上回るようになってきている1).更に,今後も病院医師特に病院勤務医の増加の傾向が続いていくものと予想される.すなわち,開業資金の膨大化や開業希望の勤務医の割合の低下傾向などの理由で,開業医が増加しにくいけれども,病院勤務医の需要は小さくないためである2).このように,病院医師はますますその重要性を増している.

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「病院」 第39巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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