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雑誌目次

雑誌文献

病院39巻2号

1980年02月発行

雑誌目次

グラフ

がん制圧を旗印に大幅な整備拡充—国立がんセンター

ページ範囲:P.105 - P.110

 1978年,大都市部では脳血管疾患を抜いて主要死因のトップに踊り出た悪性新生物.現代の人類にとって最も恐しい敵である.
 1962年,国民のがん制圧の期待を担って旧海軍施設を引き継いで診療を開始した東京・築地の国立がんセンターは,病院,研究所,運営部門の構成で,我が国のがん研究・診療の中心的役割を果たしてきたが,既存建物の老朽化,来院患者の増加に伴い,改築に着手し,77年病棟,78年外来診療棟をオープンし,現在,研究所部分の工事を進めている.全体の完成は82年の予定だが,現在の最高水準をゆく施設・設備を備えた病棟,診療棟を中心に国立がんセンターを紹介しよう.

病院管理に新しい展開を厚生省病院管理研究所所長 佐分利輝彦氏

著者: 紀伊國献三

ページ範囲:P.112 - P.112

 つとに大物医務局長として評判の高かった佐分利輝彦先生が,昭和54年11月9日付で第三代の病院管理研究所所長に就任された.行政の場からの転進といぶかる人もあろうが,実は先生は病院管理とは深い関係をお持ちである.
 病院管理研究所が,昭和36年前身の病院管理研修所から,教育研究の綜合的研究所としての新発展をみた時,厚生省医務局総務課担当の技官として,生みの親として尽力されたのが先生である.国立病院課長として国立病院の運営にも力を尽くされ,公衆衛生局長,医務局長という医療行政の最高責任者として病院問題と取り組まれた.

焦点 対談

医師と患者の関係をめぐって

著者: 唄孝一 ,   砂原茂一

ページ範囲:P.113 - P.119

 医療は,まず医師と患者があって成り立つ.そして,医療をうまくすすめるには,むすびつきがなければならない.ところが,医師と患者の信頼関係の崩壊を嘆く声は多い.他方,患者側の権利意識(思想)の拡大につれ,医療事故をめぐって,法廷で争われることも多くなった.今回は,医学と法学の立場から検討する.

特別寄稿

高齢化社会と医療構造の変貌

著者: 藤正巖 ,   渥美和彦

ページ範囲:P.120 - P.123

 高齢化社会はすべての国に間違いなくやってくる.人口の増加が許されなくなったこの地球上の人類にとって,高齢化社会は避けることのできない将来像である.そして,この現象で最も深刻な打撃を受けるのは,医療を含む社会システムである.本稿では,我が国がここ数十年で直面する世界に例のない高齢化社会が医療構造にどのような影響を与えるかを,計量経済学的な手法によって予測し,今後30年間の定量的なシナリオを描くこととしよう.たとえそれが間違った答であったとしても,そこには,そのシナリオを導き出すに至った定量的なパラメータと経済原理が定義され,だれもが同じ土俵で論議できると考え,あえてこの一文を書くこととした.

小特集 老人医療と福祉の課題

寝たきり老人の問題点—在宅医療と病院医療

著者: 奈倉道隆

ページ範囲:P.124 - P.126

在宅寝たきり老人はどのような状態か
 全国で30万人を越えるといわれる在宅寝たきり老人の実態を,最近の調査で見てみよう.
 昭和52年に全国社会福祉協議会が,65歳以上で6か月以上床に就ききりの老人を対象に,「老人介護実態調査」(調査例数18万人)を行った.その集計結果では,図1に示すごとく,自分で移動できる人,手伝ってもらえば移動できる人,合わせて60%に達することが認められた.

特別養護老人ホームの問題点

著者: 磯典理

ページ範囲:P.127 - P.129

特別養護老人ホームとは
 特別養護老人ホームが設けられたのは,老人福祉法が施行された昭和38年以降である.
 それに先立ち昭和37年の厚生白書の中に「養老施設の中で常時介護を要する状態にあるものを……医学的管理のもとに適切に処置を行うことが,老人の健康保持と施設管理の合理化の面から強く要請される.……これらの者を収容する施設として諸外国に例をみるナーシングホームを計画的に設備していく」云々という主旨に見られるように,審議会の段階では医療的色彩の濃厚なナーシングホームが意図されていたようであるが,いざふたをあけてみると,特別養護老人ホームの名のもとに医療の極めて乏しい社会福祉施設として発足した.

老人医療保障の問題点

著者: 三浦文夫

ページ範囲:P.130 - P.132

 老人の医療や福祉の問題に関連して,ここでは老人医療費をめぐる最近の政策動向に焦点をあて,若干の問題を提起したい.

調査報告

老人の終末期ケアと病院

著者: 森幹郎

ページ範囲:P.133 - P.136

 経済・社会の高度成長の過程で,老人の終末期における介護と死の社会化が進行しているが,老人問題・老人福祉の関係者は,この問題について,どのように考えているのであろうか.筆者は,このことについて,先般,調査を行ったので,その結果を次に報告する.

施設紹介

長崎県立特別養護老人ホーム「眉山」

著者: 後藤敏郎

ページ範囲:P.136 - P.136

 このホームは長崎県が昭和51年に島原市に開設したもので,運営は,同県障害者福祉事業団に委託し,特別養護老人ホームの制度のわくの中で運営されているが,実質的には,中間施設的性格を目標とし,県下要介護老人施設のモデル的なものとして計画されたものである.
 島原市の南の端,松の疎林に囲まれた21,000m2の小高い敷地の中に建てられた2,765m2の鉄筋平家建て,後方は,近く雲仙の前峰である眉山を背景とし,前方には,街並みを越えて有明海を臨む風光明媚の地,港にも駅にも近く,リハビリテーション病院の県立島原温泉病院とも疎林を距てて隣接している.この種の施設の環境としては恵まれているといえよう.

海外の医療 座談会

発展途上国への医療協力のあり方と問題点(上)

著者: 岩村昇 ,   中島章 ,   大谷藤郎 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.139 - P.143

 国際医療協力センターの設置,中国への大病院設立のための資金供与など,一般の国際医療協力に対する関心は徐徐に高まりつつあるが,ここでは途上国に絞って,医療協力は何をどのようにしたらよいか,問題点は何かをお話しいただいた.

設備機器総点検

オートエンボッサー

著者: 細川シゲ子

ページ範囲:P.145 - P.145

オートエンボッサー採用前の窓口
 5年前,当院に導入された16KBのミニコンを扱いながらいつもこう思った.窓口登録業務が1人でできたらどんなに良いだろう.当時はフロントに新患が来たとき,1人がカルテを作り,2人目がカルテからIDナンバーと,属性をコンピュータに登録し,3人目が診察券を作るために,前と同じことをエンボッシングし,チッパーする.3人の仕事は同一の内容だから1人でできたらどんなに早く,間違いもなくて済み,患者の待ち時間も20分から3分に減るではないだろうか,と.

統計のページ

病院部門別原価計算の実態・2—「病院部門別原価計算調査」(全国公私病院連盟,昭和53年10月)より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.146 - P.147

(1月号より続く)
部門別原価構成と収支バランス原価の構成
 原価は,病院各部門で直接費消されるものと中央材料,ボイラー,管理部門などの補助部門の原価を各部門に配賦されたものとの合計である.
 直接費消されるものでも,医師,看護婦などのように2部門以上において働く者の給与費は,その労働時間によって各部門に配分されるなど,一定のルールによって積算される.

医療の周辺 生物学—最近の話題・4

生命の機械論と医学教育

著者: 長野敬

ページ範囲:P.148 - P.149

 前回生物学教育について多少触れたが,別の側面からもう少し,これと関連して具体的な生物学の進歩に触れてみたい.ここに取り上げようというのは筋収縮の機構なのだが,なぜ取り上げるかについて簡単に前おきを述べる.
 教養課程の生物を担当していて,筆者なりに講義で強調することの一つは,生命の機械論的な見方ということである.今や生命機構は徹底的に分子機械として理解されてきた.それだからこそ遺伝子操作や人間工学も可能になった.そして人間も,特殊性はもちろんあるけれども,動物からの絶対的な不連続は何もない存在である以上は,やはり機械という目で理解できる.その理解が分子・原子のレベルまで精緻に完成してきた一例は,もちろん分子遺伝学の分野だけれども,個体の生理機能で言えば,筋収縮の機構が手ごろな具体例である.生理学の基礎知識として,もちろん必要なものだけれども,それ以外にも以上のような含みで,筋肉を取り上げることがある.筆者流の話の持ち出し方を,一通りご紹介してみたい.

講座 入門・ME機器の正しい使い方・6

電気メスでヤケドを起こさないために(その2)

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.150 - P.151

 前号では,電気メスによる熱傷事故のうち"対極板部に起きる熱傷"について,その原因と防止策について述べた.本号では,ひき続いて,"それ以外の部位で起きる熱傷"の原因と対策,およびその他の使用上の注意を述べよう.

実務のポイント 放射線 診療放射線技師の役割・4

新しい技術への取り組み

著者: 栗田道雄

ページ範囲:P.152 - P.153

 最近の放射線医学における診断技術は,新しい装置の開発により,急激な進歩を遂げた.従来からの診断用X線装置においては,詳細な心疾患の検索が行えるようになった循環墨診断装置,また画像診断装置の革命児といわれるCTをはじめとして,核医学診断装置,超音波診断装置などは,毎年グレードアップされた装置が出現している.例えば,CTにおいてはすでに第四世代といわれる装置が開発されている.これは従来の装置に比べ,
1)高速スキャン2)高分解能3)画像の再構成時間の短縮などがなされると同時に,コンピュータラジオグラフィ,ダイナミックスキャンなる新しい技術が開発され,応用分野の拡大が注目されている.

会計・経理

未収金の処理法

著者: 橋本レツ子

ページ範囲:P.154 - P.155

 病院の収入の主なものはいうまでもなく患者収入であるが,これは請求先によって,1)個人,および2)公的機関①社会保険診療報酬支払基金,国民健康保険団体などを通じて健康保険組合へ請求する分,②公費負担制度下における地方自治体が負担する分,に大別できる.したがって未収金も個人と公的機関分とに分類でき,未収金の発生の仕方,性質,入金の手順なども個人と公的機関ではおのずから違った形となる.

購買・倉庫

医薬品(含衛生材料)の請求から決定・購入までの実務と留意点

著者: 梅津勝男

ページ範囲:P.156 - P.157

 病院は,その経営主体・規模・地域・設立主旨によりおのおの経営方針が異なるが,終極の目的は,人間の心と肉体の病を治すことにある.そこで働く者は対象が物ではなく,人間であることから,おのずと仁術が要求される.我々用度担当者が物品を購入する場合でも,同じことが言えるかと思う.「価格だけにとらわれず,使う者の側にも立ち,より良い医療が行われるよう配慮する」姿勢が大切である.
 病院経営の経費を見た場合,大型機器の購入費は別にして,経常経費で最も多いのが,人件費で,それに次ぐものが医薬品費であろうと思われる.人件費については,一定の人員を確保しなければいけない病院の性格上,大幅な削減は不可能である.とすると,病院経営の健全化は,その次の医薬品費及び衛生材料等の消耗品費がどの程度のウエイトを占めるかに左右されるところが大である.ということは,我々購入担当者の技量によって左右されると言っても過言ではない.ちなみに医療文出に占める医薬品費の割合は20〜30%である.

現場訪問

浴風会病院病棟婦長大梧かねさんに聞く

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.158 - P.159

 某女史の小説が出て以来,‘恍惚’なる言葉は流行語のようになったが,恍惚の人を抱える一家は精神的にも肉体的にも疲労が重なって破滅に追い込まれることもあるといわれる.ところで,このような老人患者のみを集めた病棟で,日夜患者の看護に明け暮れている人たちがいる.浴風会病院の病棟婦長大梧かねさんもその一人である.大梧さんに日頃の苦労を語っていただいた.

新病院建築・26

市立伊勢総合病院の設計—自然と医療の調和をテーマに

著者: 相田吉三郎

ページ範囲:P.161 - P.167

はじめに
 市立伊勢総合病院は,昭和32年伊勢市河崎町に鉄筋コンクリート造3階建,診療科目8科,病床数158床で建設された.その後に幾多の増改築を行いながら,地域住民の医療に多人な役割を果たしてきたが,ついに,その増築の余地もなくなり,施設も老朽化し,伊勢市10万市民はもとより,南勢地域(鳥羽,志摩,渡会郡)における中核病院としての医療サービスが図れなくなったため,今回の移転新築となったものである.
 新施設は369床の総合病院と50床の精神病棟,50人収容の看護婦宿舎,そして,それらをサービスするエネルギー棟,共同汚水処理施設(別敷地)から構成されている.

精神病院医療の展開

東京都の精神科救急と都立墨東病院神経科

著者: 西山詮

ページ範囲:P.168 - P.171

精神科救急とは何か
 まず定義を述べてみよう.精神科救急とは,精神障害のために自分自身の名誉や身体を傷つけたり,他人の権利を侵害する場合に対し,精神障害の治療とともに,自傷他害の事態を速やかに除去ないし調整すべく対処することをいう.これは我々の精神が自己ならびに他者との関係としてあるために,その障害が端的な現れとして自傷他害という形態をとるからであるが,この自傷他害という社会的事象はまた精神科救急に公的性格を必要とさせる事態でもある.
 以上は,実は精神衛生法に基づく精神科救急というべきもので,いわば堅い精神科救急の定義である.いうまでもなく精神科救急がこれに尽きるわけではなく,精神障害者の多くが自傷他害の事態をひき起こすわけでもない.精神障害者も基本的には病める人であり,当初から医療を求めてくる人々も多いのであるから,これに対応する救急,精神衛生法を必要としない,いわば柔らかい精神科救急もあってしかるべきである.しかし,この柔らかい精神科救急を一方的に理想化して,現実に必要な堅い精神科救急を軽視することはできないであろう.

リハビリテーション・その現状

総合病院でのリハビリテーション診療

著者: 三好正堂

ページ範囲:P.172 - P.175

 老人や身体障害者の増加に伴い,リハビリテーション(以下リハビリと略す)の必要性が高まってきているが,一方,治療者サイドの準備は立ち遅れ,特に「ひと」の確保が困難で,リハビリ診療の体制づくりに困っている病院施設が少なくないと思われる.筆者は総合病院でリハビリ診療に従事するようになって5年たったが,リハビリはプライマリー・ケアのひとつであり,すべての施設で行わなければならないこと,器具や設備はそれほどなくてもできることをますます痛感するようになった.そこで,リハビリに関する基本的理念と,脳卒中片麻痺のリハビリに関する小経験を述べ,若干の提案を行いたいと考える.

いま民間病院は

私の病院経営30年

著者: 内藤景岳

ページ範囲:P.176 - P.179

 「私の病院経営」というテーマで書けとの注文を受けたが,「さて」となると大した目新しい話題もなく当惑したが,病院開設以来30年になるので,当院の歴史を少し反省してみたいと思う.

寄稿

慢性疾患病院の動向—R.J.Zonneveld著"The chronic hospital"を中心として

著者: 石塚正敏

ページ範囲:P.180 - P.183

 近年における公衆衛生の進展ならびに医学の進歩は,感染症をはじめとする急性疾患の大部分を征服した.これに代わって注目を集めて来たのが,成人病・老人病に代表される慢性疾患であるが,これは平均寿命の飛躍的な伸びということにも大きく関係している.欧米諸国では慢性疾患対策がかなり以前から議論されてきたが,今や世界でも1,2の長寿国となり,欧米諸国の2,3倍の速度で老齢化社会へと突入する我が国においては,慢性疾患患者の問題は今後欧米以上に深刻なものとなるはずである.
 慢性疾患患者に対するケアが,西欧先進諸国において今日ならびに将来の医学と福祉領域の大問題とされている背景には,高齢者に頻度が高くまた老化のプロセスでもある,いわゆる慢性変性疾患に対する病因論や予防・治療が確立されていないこと,就業不能の障害者を生む事故の増加,重度の先天奇型を有する小児が死亡せず延命可能になったことなどが挙げられている.

ほんねたてまえ

公害防止と病院

著者:

ページ範囲:P.183 - P.183

 近代都市を構成するメンバーとして,病院は,鉄道,ホテル,学校などと同じように欠くことのできない重要な働きをしている.
 都市機能の働きは,文明の発達とともに高くなり,市民の生活はすべての面で向上し続けてきたが,自然の破壊という点から思わぬ難題に遭遇し,快適であるべき都市生活が,空気,音,水などの汚れから不快,さらに進んで,ぜん息や中毒等,直接市民の健康にまで悪影響を及すまでに至った.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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