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雑誌目次

雑誌文献

病院39巻3号

1980年03月発行

雑誌目次

特集 診療録の保存と利用

診療録の保存期間—医療上・法律上の価値期間と関連して

著者: 高田利広 ,   藤野臻策 ,   野辺地篤郎 ,   三宅史郎

ページ範囲:P.201 - P.206

 司会 きょうは「診療録の保存期間について」という座談会です.これは大変難しいテーマですが,最初に高田先生に法律的な診療録の定義,あるいは法律的に決まった保存期間というのをお話しいただきたいと思います.

医療情報資源としての診療録—コンピュータによる情報処理とその問題点

著者: 三宅浩之 ,   川辺昭 ,   小笠原聰 ,   戸川登美子 ,   田丸恵津 ,   田中美智子

ページ範囲:P.207 - P.213

 医療に関する詳細な情報を記録する手段として診療録が存在することは周知のことであるが,医療情報の資源としての診療記録の取扱いが十分に行われているかという質的内容にまで立入って考えると,現在でも多くの問題が残されている.診療の記録の保存という物の取扱いについては法的に規定があり,また,十分な医療経過の記載があるという前提で医学研究目的も含めて永久保存を行っている施設が多い.しかし,一方保存されている診療録の内容が十分利用され,活用されるような医療情報の管理・体制の整備は,やっと最近話題に上るようになってきた段階である.
 更に医療情報の処理と有効利用という立場で診療記録をみると,その記録が最もひんぱんに利用されるのは医療の現場で次々と経過が記録されてゆく診療録の作成過程であろう.この時点における医療情報の交換利用手段とその記録の集積として診療録を見るならば,医療に直接関連する医学的な一次情報はすべて診療録の中に集積されているはずである.ここで診療録とは医師の記入する病歴(カルテ)部分のみではなく,図1に示すように,医療関係者のすべてが分担して作成している診療に関する情報を患者単位に集約した物であると定義しよう.

診療録マイクロ化の諸問題

著者: 大塚親哉 ,   丸林葉子

ページ範囲:P.214 - P.217

 診療録は誰のものかとの質問に対して,ある者は医師のものと答え,あるものは患者のものと言う.ひと昔以前であれば,医師のものとの答が大多数を占めたであろうし,それも主治医個人のものとの認識が高かったはずである.
 しかし,考えてみれば,診療録は患者自身のために,診療を担当した医師が記録し,保存をしているものであり,それが診療録のもっとも大切な意義であることは明らかである.もちろん医学が博物学と同様に記載の科学であり,集積された記載が体系づけられ,発展してきた学問であることを否定するものではない.その内容は科学的な観察記録であろうが,それは現在二義的なものである.

日本と米国の診療記録に思う—利用価値のある診療記録にするために

著者: 本間襄

ページ範囲:P.218 - P.221

 編集部から日本と米国での診療記録の利用され方の違いについて書くようにとの話があった.しかし相違を考えることは両国の診療記録が,内容・質において大体同じレベルにあってはじめて可能となるのであって,残念ながら日本の診療記録の多くは,未だ同じ俎上に載せ得る質に達していないと考えた.
 昨年欧州で日本人は兎小屋に住む働き蜂……と評されたことが話題になったが,住以外に未だ欧米のレベルに達していないものの一つに病院がある.外国のそれと比較して遜色のないホテルや文化施設があるにもかかわらず,最も身近かで重要な問題の,一般の人が日常受けている病院医療の質はどうであろうか.日本の医学には世界的な研究や技術もあるが,平均した質の点では欧米と同程度のレベルに達している病院が余りにも少ないと思う.その差は「診療記録の内容を重視し集中管理する方式」がほとんどの病院で採られていないことによる.診療記録を日常診療や研究などに役立てるには,その要求に答え得る内容と質をもった記録を作らなければならない.日本の診療記録の中で最も足りないのは医師の記録であろう,看護婦は忙しい間をぬって細かいことも記録しているように思う.以下どのようにすれば医師の記載を豊かにし内容の充実がはかられるかを考えてみたい.

我が診療録室

著者: 百々勝子 ,   山田二三子 ,   野坂弥須夫 ,   草信正志

ページ範囲:P.222 - P.227

東京警察病院
X線フィルム保管,図書室業務も行う
 当院の診療録室は,昭和31年10月に開設,病歴室と呼称され,入院病歴の管理保管を始め,現在開室以来全入院病歴計144,977冊を現物保管している.翌昭和32年10月には入院X線フィルム,ECG,EEG等,入院資料をX線フィルム袋に同封して保管を始めたが,現在10年間保存し,10年経過したものは各科で選別してもらい,重要な資料はそれぞれの医局または個人に差し上げ,後は廃棄処分にしている.また昭和43年10月より外来病歴の保管も始めたが,これは外来に未通院7か月以上の外来病歴を保管,また5年間未通院の病歴はスペースの関係上廃棄処分にし,通院中の外来病歴は医事課保管としている.

診療録の開示基準とその取扱い

著者: 小堺堅吾

ページ範囲:P.228 - P.231

医事紛争と診療録の開示要求
 最近の医師・病院を取り巻く社会的環境は依然として厳しく,とりわけ,医事紛争の増加とこれが対応は,医療関係者にとってまさに喫緊の要事といえよう.医事紛争発生の増大にともなって起こってくるのが,患者側からの診療録(医師法24条にいう診療録のほか,これと一体をなす指示票・看護日誌・各種検査記録・手術記録・温度表・X線写真等の補助記録を含む)の開示要求である.これら広義の診療録は,患者の病状・症状やこれらに対する医療措置等の具体的な医療情報が記録され,当該医療行為の適否の判断資料として,極めて重要な役割を果たすものだからである.開示要求の態様としては,①患者側からの直接請求,②医療機関,その他第三者からの直接請求,③弁護士会からの照会請求,④証拠保全,⑤送付嘱託および⑥提出命令などがあり,①ないし④は,訴訟提起前の開示要求(ただし,③の証拠保全は訴訟係属中でも行われる),⑤および⑥は,訴訟提起後に裁判所の行う開示手続であるが,いずれの場合も,その開示を求める主体は,患者側とそれ以外の第三者(前医・後医の医療機関のほか,使用医薬品の製造メーカーなど)に分けられる.

グラフ

足利地方の中核として充実—足利赤十字病院

ページ範囲:P.193 - P.198

 足利市は,栃木県南西部,足尾山地の南麓,渡良瀬川沿いにある,人口は約16万.織物のまちとして知られている.足利赤十字病院はこの足利市唯一の総合病院として,"患者に親切にすること"を基本に,足利,佐野,田沼,葛生など(人口約30万の地域),更に群馬県の隣接市町村の地域住民の医療のかなめを果たしている.

病院の隆盛築いた三代目大分市医師会立アルメイダ病院院長 吉川暉氏

著者: 宇都宮文夫

ページ範囲:P.200 - P.200

 昭和27年京都大学医学部を卒業され,昭和30年には郷里大分市へ帰り,別府市の九州大学温泉治療学研究所産婦人科に勤務された.一つは父君吉川渡先生(東京大学医学部卒業)が大分県立病院産婦人科部長を辞めて市内で開業しておられ,その長男としての責任もあったであろう.ところがその父君が急逝されるに及び,後を継いで市役所の隣に開業,父君にも増して盛業された(現在は市役所の拡張のため市内中島中央町に移っておられる).
 私が先生のお宅に足繁く通い始めたのはその頃であった.目的は彼を大分市医師会の理事に引っ張り出すことにあった.開業早々の彼には相続税の問題,夜間にも及ぶ診療などがあり到底無理という.説得は容易ならざるものがあった.最終的には私どもの熱意が受け入れられ,ようやく理事となって下さった.彼と大分市医師会とのつながりは,そういうことから始まった.大分市医師会に共同利用施設を作ろうという動きが起こったのもその頃であった.

ニュース

「病院の技術集積と機能拡大」をテーマに—第7回日本医師会病院学会

著者: 編集室

ページ範囲:P.213 - P.213

 去る2月9日,東京・千代田区大手町の経団連会館で全国から多数の参会者を集めて開かれた第7回日本医師会病院学会は,「病院の技術集積と機能拡大」をテーマに,各病院の実践例など22の演題が報告された.
 まず武見太郎日本医師会会長が挨拶に立ち,今回のテーマの主旨を説明,その後,午前は「呉市医師会病院の技術集積と機能拡大」(富永仁示氏・呉市医師会)ほか10題の演題発表がなされたが,第2,第6題の「病院の技術集積と機能拡大」では喜島惟栄氏(板橋区医師会),岡崎禮治氏(上天草病院)が,「最新の医療を地域に反映させるためには,現在,濃厚に医療技術が集積されている病院という器を用いて,地域住民に還元する,特にプライマリー・ケアの担い手である開業医の手によって地域に反映させていくことが大切」とした.

守屋博先生の喜寿を祝って—記念誌「守屋博先生と病院管理のあゆみ」の発行と祝賀会

著者: 長谷川泉

ページ範囲:P.263 - P.264

 日本の病院管理の開拓者の一人である守屋博氏の喜寿をお祝いする会が2月2日午後1時半から笹川記念会館で開かれ心温まる盛儀であった.
 「守屋博先生喜寿の会」は,ゆかりの深かった順大・病院管理研・病院建築協会・病院設備協会などの有志が発起人として計画されたもので,当日の祝賀会のほか「守屋博先生と病院管理のあゆみ」と題する記念の書籍が3月初旬に発行された.

いま民間病院は

多角的病院経営の展開—川崎市・京浜総合病院

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.233 - P.237

 矢作忠政会長は医療経営に携わることなど思いもよらなかったという.銀行マンであった会長は,ある日父親に呼ばれて,病院の後を託された.止むなく承知してそれ以後は,慣れない医療という世界で,文字通り朝から晩まで走り回った.医師であり,かつアイデアの豊富な大野松次理事長が診療,教育を担当し,経営・営業は会長が引き受けるという二人三脚で病院を運営してきた.
 現在,200床の総合病院のほかに,看護婦,検査技師養成の京浜学園,検診業務担当の財団法人京浜保健衛生協会,検査部門の株式会社京浜予防医学研究所,リース関係担当の株式会社ホスピアの5施設を持つ.病院の患者さんへのPRひとつをとっても,積極的に出ていって,獲得するという発想を即,実行する矢作会長と大野理事長にこの病院の運営についてお話し願った.

設備機器総点検

透析用チェアー

著者: 織本正慶

ページ範囲:P.241 - P.241

 人工腎臓による血液透析を行う場合,患者が寝るあるいは座る,ベッドないしは椅子は何であってもよいわけであるが,当院では現在98名の透析療法を行っているが,外来透析者などはワイシャツの袖をまくって椅子に座って透析をしてもらうという気楽な雰囲気を出すために透析チェアー(天龍工業製)を使用している.これが27台あるが,実はこのチェアーはベッドよりは多少ともスペースをとらないという特徴以外は本来特徴があるものではないが,問題はこれに"007級"の細工を施してある点である.
 第1にこの左手のアームにナースコールボタンと,チェアーの真上の天上にある照明のスイッチとテレビ用ヘッドホンのジャックと更に外線につながる電話のジャックがあることである.ナースコールやヘッドホーンのジャックはともかくとして,透析中患者に重要な電話がかかったりしたとき,もし歩いて電話台の所へ行かなければならないとしたら大変なことになる.一般的には恐らく電話には出られませんと断るのが普通で,特別サービスをするとしたら何分かかけて,人工腎臓を通らない別な体外循環を形成してからでないと人工腎から患者は離れることができないのである.そこでこの電話のジャックは透析しながら話ができるということで,威力を発する.

統計のページ

病院経営収支の実態—「病院経営収支調査」(全国公私病院連盟,昭和54年6月)より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.242 - P.243

病院収支状況の年次推移
 表1に示した総収益100対総費用割合及び医業収益100対医業費用割合は,100円の収益を得るのにいくら費用を投入したかを示すものであり,この割合が少ないほど病院の収支は好調ということになる.
 この二つの割合は,病院の収支についてこれを総額において見るか,あるいは医業の直接的な収支で見るかによるものである.後者の費用には支払利子などが含まれず,また収入には預金の利子や国や都道府県からの運営費補助金などが含まれていない,しかし,いずれにしても,二つの割合の傾向は同様である.

医療の周辺 生物学—最近の話題・5

精神作用と「脳機械」

著者: 長野敬

ページ範囲:P.244 - P.245

 「医学の周辺」としての生物学を考えてみると,前回までもそうであったように,分析的な生命機構の解明,あえて言えば機械論的生物学の勝利の結果が,どうしても大きくクローズアップされる.この点は,機械論的に最も解明し難く思われる精神作用の座である脳についても,言えることである.
 機械論の勝利と言いながら,それとは矛盾するような結果も包含しているのが,生物学での成果の特徴であって,脳の場合もその例に漏れない.例えば脳の機能局在ということは,大脳生理学の重要な結論であった.Brocaの中枢(前中心回下方,運動性失語症に関連)や,Wernickeの中枢(上側頭回後部,感覚性失語症に関連)の発見は,そうした傾向への"はしり"と言うことができて,ともに1世紀以上前の話であった.局在性の同定は視覚,聴覚,嗅覚と次々と進んだ.体性感覚野と運動野とが中心溝の直前と直後の部分に帯状に並ぶとして描かれた,いわゆるPenfieldの小人(ホムンクルス)の図は,局在観の一つの集大成として,だれでも目にしたことがあろう.

講座 入門・ME機器の正しい使い方・7

ペースメーカはよく理解して使っていますか

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.246 - P.247

ペースメーカとは
 ペースメーカ(正式には,人工心臓ペースメーカ)は,何らかの原因(房室刺激伝導障害や洞結節刺激生成異常など)で,心臓の拍動数が極端に(30〜40以下)低下してしまった患者の心臓に,周期的に電気刺激を加えて心臓を動かし,正常な拍動リズムを取り戻させるためのME機器で,いわゆる人工臓器の花形選手である.
 心臓に電気刺激を加えて治療するME機器には,もう一つ除細動器(ディフィブリレータ)があるが,除細動器の電気刺激の出力電圧が数千V (体外通電の場合)である(昨年12月号本コーナ参照)のに比べて,ペースメーカの出力電圧は,わずかに数Vである.これは,除細動器が心筋細胞すべてを刺激し,すべてを興奮させなければならないので大きな電圧を必要とするのに此して,ペースメーカは,心筋中に広く分布している刺激伝導路(心筋の一部で,洞結節からの刺激を心臓全体に伝える役目を持っている)のごく一部分を興奮させれば,その興奮は自動的に伝導路中を伝わって心筋全体に拡がるので,ごく一部を刺激できるわずかの電圧しか必要としないのである.これがペースメーカによるペーシングの原理である.

実務のポイント 医事

医事課の組織及び機能

著者: 森田和義

ページ範囲:P.248 - P.249

医事課の当事者能力
 病院トップマネジメントの考え方で,医事課の骨格が作られるが,毎日の仕事は,医事職員の質と量,すなわち医事課の当事者能力により,医事業務は運営されている.

検査

検査技師の技術管理

著者: 前畑英介

ページ範囲:P.250 - P.251

 検査需要の増加に伴って機械化も進み,検査法も臨床医のニーズに応えるために,より簡便な検査法の確立が急がれている.しかも,簡単な検査は自動化され,多項目同時検査によるProfiling ch-eck systemが採用されようとしている.
 以上のような背景のなかで,検査室管理者は測定精度が適切に維持された状態,すなわち精度管理(以下,QC)されたデータの返却がスムーズに行くような状態に管理すべきであろう.

給食

患者食堂運営の実際

著者: 杉山隆五

ページ範囲:P.252 - P.253

 近年,病院業務の中で,患者の栄養管理の内容について,関係者の間から総合的に見直しが,なされてきているようであり,関心の度合も強い.適温給食,選択のできる献立,早過ぎる夕食時間,低額な給食費,給食設備の近代化など直面する問題が多いからである.医療保険制度の現状から,また,きびしい経済事情の中で,これらの課題を一挙に解決することは無理であっても,たゆまぬ努力と研鎖によって,改めて行くべきであろう.医療の発展と給食業務の改善を願っている一人として,患者サービスの面から,当院で実施している専用食堂の実際を紹介する.参考になれば幸いである.
 昭和49年4月,東海大学に医学部が開設され,それと併設して50年2月,附属病院が完成,病院は「人間性豊かな治療と憩の場」であるという基本理念を踏まえ,数々の方策のなかで,患者専用食堂が生まれた.

現場訪問

北里大学附属病院臨床検査部 高橋加代子さんに聞く

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.254 - P.255

 救急医療の整備や入院患者の重症化に伴い医師,看護婦ばかりでなく,放射線部門や検査部門の24時間体制が求められて久しいが,職員の絶対数の不足,採算性などの点から,放射線及び検査の24時間体制を実施している病院はまだまだ少ない.その中で,昭和46年開院以来,いつでも迅速に正確なデータを提供することをモットーに24時間体制(夜間当直)を実施している北里大学病院で,技師として7年目を迎えた高橋加代子さんに当直の実情や苦労,採血の感想など含めてお話を伺った.

新病院建築・27

東京都養育院ナーシングホーム

著者: 浦川満

ページ範囲:P.257 - P.262

設計要旨
 この施設は明治5年に創立された都養育院内に建設されたものである.同敷地内には昭和47年に我が国では初の本格的な老人専門病院(700床)が開設され,本施設を新たに加えて在来の老人ホームとの体系化,連けい化を実現したものである.この設計に先立ち,与条件として養育院運営協議会より次のような基本構想が提出された.
 1.東京都の中期計画に基づき,老人対策の一環として増大する寝たきり老人,及び付属病院(老人専門)に入院中病状が固定もしくは回復期に向かったが,ただちに家庭復帰の困難な老人の需要にこたえるため,ハーフウエイハウス(機能回復訓練,生活指導)20床を付置した老人専門のナーシングホーム(特別養護老人ホーム).290床を建設する.

精神病院医療の展開

保護室はどう使われているか

著者: 村田穰也 ,   井上正吾 ,   近藤廉治 ,   仙波恒雄 ,   金子嗣郎

ページ範囲:P.265 - P.271

西城町国保西城病院精神科(広島県)
保護室についての私の考え方
 よく患者から保護室の体験について,非常に嫌な感情でもって話されることがある.入院したらすぐ独房に入れられ,呼べども叫べども,だれも来てくれなかった.豚小屋のように臭くて汚なくて暗く,非常に不安で恐ろしくて,と,また家族からも,保護室にずいぶん長く入れられて,面会もさせてもらえない.保護室というのは牢獄のようなところなんですね,と.
 いまだに多くの精神病院では入院→保護室収容→一般病棟といった定式化が無条件で行われ,病状とは関係なく一定期間は収容されるという実情があるようだ.

海外の医療 座談会

発展途上国への医療協力のあり方と問題点(下)

著者: 岩村昇 ,   中島章 ,   大谷藤郎 ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.272 - P.276

 前回,開発途上国への医療協力の動機づけは何か,また医療協力として何をするべきか,すなわち,草の根か大施設建設か等が話し合われ,多面的な力の結集が大切との結論となったが,今回はその中でも特に重要と指摘された医療協力に身を捧げる人の教育の問題から語っていただいた.

リハビリテーション・その現状

代々木病院リハビリテーション科の管理と運営

著者: 二木立

ページ範囲:P.277 - P.281

 代々木病院は東京都渋谷区にあり,内科,外科を中心に18科,270床を有する財団法人立の中規模一般病院である.創立は1946年で民間病院としては比較的古い,しかし,リハビリテーションに意識的に取り組み始めたのは1974年度からで,まず,内科病棟の看護婦が,専門職も専門設備も全くない中で,"そこに患者がいるから"という現実を前にして,やむにやまれぬ気持からほとんど独力で取り組んだ.その後,現在まで6年の間に,順次,リハビリテーション医,ソーシャル・ワーカー理学療法士(3人),作業療法士が参加し,現在では,看護婦も含めて総勢25人のリハビリテーション・チームを形成している.また,78年度からは30床のリハビリテーション専門病棟も開設している.
 常勤の理学療法士,作業療法士がいなかった時点でのリハビリテーション科の管理・運営については,すでに本誌などで紹介した1,2).今回は,常勤の理学療法士,作業療法士を抱えるとともに,専門病棟を有するに至った段階でのリハビリテーション科の管理と運営の現状と問題点を報告したい.

お知らせ

山間離島の医療に恵まれない人のために医師の協力を期待しています—自治体病院・診療所勤務医師等職員センター

著者: 米田啓二

ページ範囲:P.281 - P.281

 山間・離島等いわゆるへき地等における医療対策の最も重点となるのは医師の確保である.医療は,医師のみで行われるものでない,しかしながら,医療の中心となって活躍が期待されるのは医師である.我が国において,へき地医療対策が進められて久しいが,最大の問題は医師の充足にある.因みに,全国自治体病院開設者協議会及び全国自治体病院協議会の共同調査による昭和53年9月30日現在における常勤医師の充足率についてみると,山村・離島等へき地に所在する100床未満の病院では65%に過ぎず,地域の中核病院としてへき地等の医療対策に期待がかけられている100床以上300床未満でさえも68%に過ぎない(全病院80%).また,診療所は74%の状態で医師不足は未だに一部大都市を除いて深刻である.最近,医科大学の新設,医学部の定員の増加が図られてきてはいるが,これらの医師の多くは都市に集中する傾向が強く,このまま放置すれば,都会と山村・離島等の医療格差はますます増大するものと考えられる.
 これに対処するため,全国自治体病院開設者協議会及び全国自治体病院協議会では山村・離島等における医療の確保を図る目的で,両協議会で設置した「自治体病院及び診療所における勤務医師対策小委員会」の提言に基づき,関係諸団体との協議のうえ,この事業を実施することにした.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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