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雑誌目次

雑誌文献

病院39巻6号

1980年06月発行

雑誌目次

小特集 診療報酬請求審査を点検する

現在の診療報酬請求審査の実情

著者: 小島靖

ページ範囲:P.485 - P.489

保険医を取り巻く情勢
 80年代に入り診療報酬の2年間据え置き,5段階方式による大増税,健康保険組合連合会の医療費通知運動,不正告発運動,マスコミの医師に対する集中攻撃,患者の一部負担を増大させる健康保険法改正案の国会上提等,我々の開業保険医を取り巻く情勢は緊迫化してきた.また厚生省は昨年1月『保険診療適正化のための指導監査の推進』の通知を出し,指導監査の強化と医療費の"むだ"排除に積極的な姿勢を示してきた.
 今までも全国各地で苛酷なまでの審査,監査が強化されてきたが,旧内務省以来の監査行政にみられた一罰百戒主義は昭和34年の監査旋風の中で数名の保険医の自殺者を出すという最悪の事態を惹起した.昭和35年の『厚生省社会保険指導監査に関する説示指示事項』は,国民皆保険体制に対応する指導監査の基本方針として『一罰百戒主義を改める』ことを指示しているが,20年経った今日さしたる改善はみられず,かえって不十分なまま発足した医療保険制度は,法的にも様々な矛盾を露呈している.

法律家の眼からみた診療報酬請求の審査問題

著者: 新井章

ページ範囲:P.490 - P.493

 私はここ数年,たまたま縁あって社会保険医療制度の問題に首をつっこむことになったが,まだ膨大なこの制度のほんの一部をかいまみたにすぎない私にとっても,法律家の眼からすると,まことに驚くべき(とみえる)実態に逢着することが少なからずあった.そのなかの最たるものの一つが,ここで取り上げる診療報酬請求への審査・支払制度の問題である.
 もとより医療問題についてはズブの素人であり,制度の問題についても初学者にすぎない私のことゆえ,恐らく問題のとらえそこないや一面的な見方が多々あると思うが,これまでこの領域には法律的な視点からの光があまりあてられてこなかったようにもみうけられるので,卒直に私の感じたところを披瀝して御参考に供したいと思う.

座談会

審査基準と医療内容

著者: 織本正慶 ,   檜垣曄夫 ,   仲田良夫 ,   石原信吾

ページ範囲:P.495 - P.501

 司会(石原) きょうの我々のテーマは「審査基準と医療内容」ということですが,審査という問題については,いろいろ議論のあるところです.健康保険の支払い側から言わせれば薬づけとか検査づけとかいうことともからんでそういうことに対してチェックを望んでいる面があるし,一方,医療の実践に携わっている診療側にしますと,これが非常に不本意だという面もある.つまり片一方では必要な部分を強調するし,片一方は審査の悪いところを強調するということで,両者の主張がぶつかり合っております.
 本日はこの現在の健康保険制度の最大の宿命的な問題である審査について,先生方のご意見を率直にお出しいただきたいと思います.

資料

診療報酬請求審査における減点の具体例

著者: 細田健二

ページ範囲:P.502 - P.505

 昭和2年健康保険法が実施されてから,行政が医療内容そのものにまで介入するようになった.医療は患者に対する診察と治療が本来の姿で,患者の診察,治療に対する判断と行為については,医師の責任において自由裁量が認められている.そのため,たとえ同一疾患であっても,医師によって診療のパターンの異なるのは当然である.しかし,これらを集積させていくと,病院,地域における格差になり,更に国際間における格差となって現われるわけである.
 しかるに,現在の健康保険法により,すなわち現物給付的支払方法により,各医療機関から提出された医療内容(レセプト)は,医師の自由裁量を認められながらも,ある一定の基準によって審査され,減点というかたちでわくがはめられている.

診療報酬請求審査についてのアンケート調査結果—岩手県医師会勤務医部会

著者: 小山田恵

ページ範囲:P.506 - P.507

 保険診療は開業医,勤務医を問わずすべての医師が関与し,その診療行為が審査によって不当と査定されたものは診療報酬が支払われない仕組みになっており,これは現在の医療制度のもとでは致し方ないことであるが,実際の審査,査定については多くの不平,不満がある.保険審査が公平に,そして医学的立場に立って行われるよう望むのは診療を行っている医師の正当な要求である.勤務医は診療報酬の査定が直接個人の収入に関係することはないが,それなりに比較的冷静に審査査定の不当性,不合理を指摘し,その改善のための方策を強く要求できる立場にある.
 このような認識のもとに岩手県医師会勤務医部会は昭和54年度の活動方針の一つにこの問題を取り上げ,同年2月部会員に対するアンケート調査を行い,その後勤務医部会幹事会ならびに地域懇談会を開いてこの問題について討論を行った.本稿においてはアンケート調査結果,討論で出された勤務医の意見,県医師会を通じて要望した改善策について述べる.

グラフ

「和」を基調に総合医療を実践—佐賀県立病院好生館

ページ範囲:P.469 - P.474

「心の触れ合い」を大切に
 「県立病院の院長を30年近くも続けている医師は余りいないでしょう」と,佐賀県立病院好生館鶴丸廣長館長は笑いながら語る.
 鶴丸館長は,昭和27年本院に外科部長として入り,翌28年に院長に就任し今日に至っている.

近代的病院経営論の実践者厚生連篠ノ井病院院長 新村明氏

著者: 若月俊一

ページ範囲:P.476 - P.476

 新村院長は端正なスタイルをしている.しかし,その柔和なgen-tlemanの中に,意外に不屈な闘志が秘められている.
 私が親しくおつきあいをするようになってすでに13年.思えば,彼が篠ノ井病院の初代院長に赴任されたのは,昭和42年だった.当時病床30床,37名の職員だったのが,今や280床,292名の病院になった.たいへんな彼の奮闘である.

焦点 対談

医師の卒後研修をめぐって

著者: 水野祥太郎 ,   杉本雄三

ページ範囲:P.477 - P.484

 医師の研修は生涯研修(教育)であるといわれているが,まだ十分に体系化,組織下されていない.現在,医師の卒後研修はインターン制度の崩壊から研修医制度へと徐々に定着しつつあるが,プライマリー・ケアの重要性も言われ,改めて研修体制の確立が喫緊な課題となっている。今回は,現在の問題点を摘出し,今後の研修体制の確立に向けて,お話し合いいただいた.

ニュース

医療費抑制に審査の導入—U.S.A社のシステム,他

著者: 編集室

ページ範囲:P.501 - P.501

 医療費の高騰に頭を悩ます米国では,種々の制約を設けて医療費膨張を抑えようとしているが,先ごろ来日したカリフォルニアの民間会社U.S.A.(U.S.Administrators)のRaymond D.Goodman MD.MPHは勤務先であるU.S.A.の試みは医療費抑制にある程度の効果をもたらすのではないかとして,その業務を紹介した.
 民間の医療費請求支払会社であるU.S.A.は60年代後半に設立され,現在,労働組合や会社を対象に100万の会員を擁し,会員が医療,歯科医療,薬の処方を受けた時には,会員から徴収する会費からその料金を支払っている.その対象とする医療の中には,医師の指示を条件に,はり,きゅう,カイロプラクティックなども含まれている.U.S.A.が取り扱う診療報酬請求件数は月150万件に上り,その70%が薬剤,15%が歯科,15%が医療であるが,その15%の医療のうち68%はコンピュータで,請求書受領の後なんと48時間以内に自動的に支払われるということであった.さて,自動的に支払われる68%を除く残り32%の半分は事務上の誤りで,あとの半分が何らかの審査上の問題で,30人の専門医による上部審査協議会に回され,その協議会は,RVS (Relative Value System)のもとに審査を行っている.

設備機器総点検

焼却炉

著者: 佐藤典衛

ページ範囲:P.509 - P.511

 当院には,現在,3基の焼却炉があるが,これは,いずれも特製品である.特製品としたのは,旧病院を全面改築して昭和50年4月に再発足した際,同時に建設した臨床医学総合研究所から排出される塵芥も一括して処理することとしたので,焼却効率が高く,炉を設置するスペースが少なくてすむものを求めざるを得なかったためである.その仕様内容等は,表のとおりである.

統計のページ

病院経営分析の実態・3—「病院経営分析調査」(全国公私病院連盟,昭和54年6月)より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.510 - P.511

1人1日当たり診療収入による患者分布
 入院患者1人1日当たり診療収入階級別の病院の分布を表8に示した.
 また,外来患者1人1日当たり診療収入階級別の病院分布を表9に示した.

医療の周辺 人間工学—病院建築への提言・2

機能の分類

著者: 古川俊之

ページ範囲:P.512 - P.513

 集中度の高い設計思想の病院は,敷地面積の制約や建築費の節減のためにも増える傾向にある.これには幾つかの利点があって,各科の連繋が良く,講堂,ロビイなどが共同利用でき,移動距離も少ない.外部からの侵入を防ぎやすく,維持費も相対的に低くなる.そこで欠点を補う積極策を考えれば,集中型設計の評価は更に高まるはずである.欠点の主なものは,防災上の問題と,改造・拡張に対する制限であり,その他,機能上では各科の独立性が悪く,窓のない部屋ができやすいことなどである.これらの対策としては,機能を分散することが肝要と考えられる.
 機能の分散は単に内科と外科を分けるといったことの他に,例えば火を使う場所,化学物質を扱う場所などを分ければ,防災対策は必然的に高水準となると期待できる.

講座 入門・ME機器の正しい使い方・10(最終回)

ME機器の管理はいかにあるべきか—購入から廃棄まで

著者: 小野哲章

ページ範囲:P.514 - P.515

 本シリーズの最終回に当たって,ME機器の管理のあり方について考えてみよう.
 ME機器の管理とは,広義に解釈すると,図に示すように,機器のライフサイクル(購入計画から廃棄・更新まで)にわたって,機器の安全性・信頼性・経済性を確保することであると定義できよう.

実務のポイント ハウスキーピング

委託業務の運用と費用の算定(2)

著者: 近藤英二

ページ範囲:P.516 - P.517

外部に委託する場合の準備資料(承前)
1)作業仕様書の作製2)作業手順3)作業を日常作業,随時作業,周期作業に分ける.
 前回に引続きここには作業仕様書の作製について述べるが,受託業者の作製した清掃作業仕様書の一例を表6として掲げる.もちろん作製させる前に,あらかじめこちらから,それぞれの条件,要点を示しておく.特に,日常作業は作業手順に従い,記載させる.周期作業は,週に何回とか,また月1回とあるのは4週に1回というようにする.また,交互に行う作業については,隔週1回と記す.作業対象については小児病棟付属室—配膳室,治療室,ユーティリティ,リネン室,入浴室と一括して,日常作業,周期作業と記載させる場合もある.いずれも作業手順に従っ記載させる.

図書

逐次刊行物—受入れから製本まで

著者: 首藤佳子

ページ範囲:P.518 - P.519

 現代のような情報化時代には,早い情報の伝達が不可欠である.したがって単行書よりも発行頻度の高い逐次刊行物(以下逐刊と略す)の重要性が高まってきている.病院図書室もその例外ではなく,単行書よりも逐刊に割く予算の割合が多いくらいである.また逐刊の創刊も多く,情報源としての役割の大きさ,扱う量の多さからこの逐刊の管理・運用には十分な配慮が必要である.

医事

中央カルテ管理のあり方—外来カルテ管理を中心に

著者: 成田幸美

ページ範囲:P.520 - P.521

当院の概要(昭和54年度)
 経営主体:医療法人
 病床数:340床
 一日平均患者数:入院337人,外来660人(平日),147人(休日)

現場訪問

聖隷浜松事業団ホスピス準備室 土屋豊年さん,斎藤武さんに聞く

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.522 - P.523

 本誌では1昨年の夏「末期患者の医療を考える」という特集(Vol.37, no.8)で欧米のホスピスを紹介したが,静岡県浜松市において幅広い医療福祉活動を展開している聖隷福祉事業団が,来年の3月オープンを目指して,我が国で初めてのホスピス建設の準備を着々と進めている.今月はそのホスピス準備室の土屋部長と,最近アメリカから帰国されたチャプレンの斎藤武さんに,お話をうかがってみた.
 一土屋部長さんは,聖隷福祉事業団には,いつごろからおられますか.

新病院建築・30

大村市立病院の設計

著者: 高橋進 ,   柴田節雄

ページ範囲:P.525 - P.530

 我が国初の海上空港として知られる長崎空港をもつ大村市は,長崎市と佐世保市のほぼ中間に位置し,東に多良岳を仰ぎ西に風光明媚な大村湾に面する人口約6万人の都市である.古く江戸時代には,西洋医学導入の門戸の役を担った長崎という歴史的風土をもつ地としても知られている.
 昭和26年に開設された本病院は,その後数次にわたった増改築により拡張されてきたものの,施設の老朽化と内在された非機能性から,自治体病院として果たすべき市民に対する十分な医療サービスの提供がなされ難い状態にたち至った.昭和50年に至り,近接する地に約29,000m2の敷地を得て,本病院に全面移転改築する計画が具体化された.

精神病院医療の展開

長野県立阿南病院精神科の地域医療

著者: 花岡秀人

ページ範囲:P.531 - P.534

はじめに
阿南地域
 既に本誌1977年6月号および8月号に,当病院と地域の紹介が出ているので参照されたいが,一言で表現すれば「長野県のそして伊那谷の最南端に位置する典型的な過疎地域」である.一昨年阿南で開かれた長野県4県立病院医師会に集まった他の病院の医師をして,"ここに生活しているというだけで尊敬する.阿南の医師の待遇が特別上がっても,他は文句を言わない"と言わしめたほどの僻地である.ちなみに,県庁所在地の長野市へはほぼ200km,どのような交通手段を用いても5時間の道程となる.

リハビリテーション・その現状

横浜市大病院リハビリテーション科の運営と活動

著者: 伊藤利之 ,   大川嗣雄

ページ範囲:P.535 - P.538

はじめに
 横浜市大病院においては,1968年5月に特殊診療科としてリハビリテーション科が設立され,すでに12年が経過した.この間,診療科とはいえ大学病院に所属している関係上,教育,研究活動にも携わってきており,この点で,一般病院におけるリハ部門とは異なった発展をしてきた.
 開設当初の主な役割は,地域におけるリハビリテーション医療部門の不足を補う診療サービスと,医師を始めとする医療スタッフや学生に対するリハビリテーション医学の教育であった.しかし,その後の発展に伴い,次第に横浜市あるいは神奈川県におけるリハビリテーションの"要"として,また種々の研究活動の中心としての役割が大きくなりつつある.

海外の医療

40人の見たUCLA Medical Center (1)—虎の門病院のUCLA見学プロジェクト

著者: 浅井一太郎 ,   栗原やま

ページ範囲:P.539 - P.542

 昨年10月から半年間,虎の門病院はカリフォルニア大学ロスアンジェルス校(UCLA)医療センターに,一病院としては例を見ない総勢40余名というスタッフを送り込んだ.様々の職種の人がそこで見たもの,感じたものを6回連載で追ってみた.

いま民間病院は

生保・結核患者の専門病院経営者の病院運営

著者: 伊泊鉄夫

ページ範囲:P.543 - P.545

当院の性格・規模
 当院は昭和37年に結核予防法の命令入所となる患者(34条,35条)の入院加療を目的として開設された社会防衛的な役割を持った病院で,なおかつ,生活保護法に基づいて,生活困難な労働者の医療を行い,社会福祉の一端を担っている.病院の性格上どうしても職員の採用には一段と厳しい面があり,一般病院とは比較し得ないハンディーを背負わされているのが実情である.このような病院は公的機関がより中心となって整備されるべきものだが,概して締め出し傾向にあるのはなぜだろうか.一貫して生保,結核患者の治療に専念している病院である関係上,一般病院と性格の異なる医療業務面での法的な事柄が多々ある.まず,それをかいつまんで述べねばなるまい.
 入院時にはもちろんのこと,療養中の態度についても,ケースワーカーならびに事務職員による指導を怠ることはできない.雑務においても生活保護及び日用品代の支給とか,細部にわたり手数がかかる.これを指導するに当たって,実務上の細かい面の諸規則に着目する行きかた,法令を通じてその奥に根底的に伏在しているはずの原理的なものを追求する行きかた,あるいは現在一般的にこうだとされているところのものをもっぱら受動的に了解しようとする態度もあれば,それだけに満足しないで原理的なものの追求との関連のもとにそれを批判的に展望したり,そして制度の改善を志向する態度もあり得よう.

ほんねてたまえ

Cost Containment/「ホンネタテマエ」考

著者:

ページ範囲:P.547 - P.547

 このごろは,院長の仕事が多過ぎるようだ.院長をトップにして医師群が,あれもこれも引き受けようとしている.また実際に何でも引き受けて,重荷がふえるばかりで,はたでみていてもはらはらする.これはいつにかかって医療法第十条で定められている,"病院の管理は医師にさせねばならぬ"という法令に基因する.アメリカもイギリス,フランス,西ドイツ,スェーデン等,医療については先進国といわれるこれらの国々でははるか昔に,病院の専門管理者教育に医師が協力して,管理の仕事はすべて彼らに委譲している.
 我が国と同じように医師が管理している国は韓国,フイリピン,インドネシア等の後進国に多い.そのフィリピンにも近年フィリピン病院管理者協会が組織されて,アメリカのACHAのような働きを,レイマンにもさせようとしている.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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