文献詳細
文献概要
人
この人を得て東京都立神経病院院長 椿 忠雄氏
著者: 豊倉康夫1
所属機関: 1東京大学医学部
ページ範囲:P.656 - P.656
文献購入ページに移動椿忠雄氏は昭和20年東京大学医学部卒業後,沖中重雄教授の下で神経学を志し,その後30有余年その道一筋の精進をつづけてこられた方である.先生の歩まれた道は決して安易ではなかったし,我が国における臨床神経学の確立と発展のために尽された蔭の御苦労と不屈の意志を私どもはよく知っている.高潔な人格公平無私な態度,冷徹な論理,そして先生の心暖かさは,学界の良心という言葉こそふさわしい.学問的な業績は数多いが,なかでもスモンの病因としてのキノホルムの発見,有機水銀中毒に関する広汎な研究は,我が国の誇るべき業績として万人の知るところである.神経学の臨床が限りなく深く,道遠く,高いものであることを,先生は身をもって証しつづけておられる方であると,いつも私は思う.そして,先生の学問には,いまだかつて「患者」を欠いたことがないのだ.
掲載誌情報