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雑誌目次

雑誌文献

病院4巻6号

1951年06月発行

雑誌目次

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病院概史(その19)

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.2 - P.2

 昭和11年(1936)6月日支事變が勃發するや全國の陸海軍病院に動員が下令され,醫師及び救護看護婦が續々召集配屬され,更に野戰病院,兵站病院が編成されて外地に出征する。戰線が擴がるにつれ,この野戰病院と兵站病院の網は漸次廣範圍の地域に擴大されて行き,數萬の傷病兵が,續續と後送せられて,病院船により内地に還送,小倉,廣島,大阪,善通寺の收容病院を經て各軍隊の病院,又は特殊治療を要するものは臨時東京第一陸軍病院(今の國立東京第一病院)國府台陸軍病院(戰爭神經症又は戰爭精神症)へ,又は後療法職業準備教育を要するものは臨時東京第三陸軍病院(今の國立相模原病院)へ轉送せられ,又温泉地の轉地療養所も活動に加わつた。赤十字病院は從つて陸軍病院に編入せられた。
 戰爭は益々擴大して行き,昭和13年(1938)には軍事保護院が創設せられて傷痍軍人のために,全國各地に結核療養所,温泉療養所又は特殊な下總(頭部損傷)箱根(脊隨損傷)療養所等の慢性疾患の病院,その他失明療とか,傷痍軍人職業補導所(大阪,小倉)が設けられ,軍の施設と相俟つた,戰線から銃後にわたり傷病兵の爲の醫療網が完成されて行つた。

入院保險の提唱

著者: 守屋博

ページ範囲:P.3 - P.4

◇入院料は今のままでよいか
 戰爭中の壞滅状態から,立上つた病院の復興はめざましいものがあるが,今なお院長の目の前には知つていて出來ぬ問題が山積している。手術室の整備にしても,家族付添の廢止にしても,完全給食にしても,先立つものは金と云いたい。これが米國であれば,レントゲン一臺買うにも,寄付金を集めると云う事が出來るが,現在の日本では寄付金の見込は殆どない。大多數の病院の收入が患者料金に依存している現状では,料金と云う問題に關心をもたざるを得ない。これが宿屋とか料理屋ならば,かかつただけの料金を請求するか拂つただけのサービスをしていればよい理だが,病院だけにそう行かないので中に入つた院長が一人で苦しむ事になる。現在我々の病院の内,官公立は勿論,公的機關の大多数のものの料金は凡て標準料金である健康保險の點數を用いている。その他の病院でも極く少數の例外を除いては患者の大多数を占めるのは,保險患者,生活保護患者であり,小數の自費患者にもそれ以上の料金を課す事は不可能の實情である。
 手術料や注射料も色々問題のある所だが,それはしばらくおくとして,入院料だけは,あまりに時代ばなれのした料金なのでおどろくの外はない。これは一點,單價の問題でなくて他の治療の點數との比率の問題である。他の注射其の他の料金が比較的容易に原價が計算出來るのに對して入院のサービスについてはその程度の基準が決められぬ所にこの悲割が生れて來た。

病院經理の基礎知識(1)

著者: 山元昌之

ページ範囲:P.5 - P.12


 終戰後,病院の經營管理について病院人の關心が漸く高まつてきた。殊に厚生省の病院管理研究所が活動を開始してから急速に眞劍な研究熱が起つてきたように見える。さきに拙著「病院經理の理論と實際」を出したのも,このような要望に應えるためであつた。ところがこれは,未だ先人の業績がないので先ず體系づけることに主力を注いだため,この方面の豫備知識のない讀者,即ち醫師,或は事務人でも官廳會計だけの經驗者等には理解され難い箇所が多い。勿論病院には經營專門家が配置されてはいるであろうが,醫師であつても院長,副院長のような經營責任者は勿論,各科長,藥局長のような責任の地位にある人達は一應の經理常識を備えていなければならない。經營責任者には經營の技術的な管理面の知識だけでなく,經營理論の知識が必要であるからである。それで醫學部で醫事法制の講義があるのと同程度に專門外ではあるが,醫師に最少限の常識として知つていて貰いたい程度のことを纒めたのが本稿である。その目的に應じて,本稿では經營分析,豫算統制,原價計算等について前著以上に詳しく取扱つた。これらの項目が經營責任者にとつて極めて重要であるからである。又一面これらの部分は前著の補遺としての目的も持つているので,豫備知識のある讀者にも幾らか御參考になれば幸である。

社會保障制度審議會の勸告と醫療機關の整備(その2)

著者: 河野鎭雄

ページ範囲:P.13 - P.17

 前稿においては,社會保障制度審議會の勸告のうち,醫療機關整備に關する部分を摘記した後,同勸告が公的醫療機關と私的醫療機關の二本建をとつていること,兩者の關係について勸告は必ずしもこれを明確にしていないが,診療所については私的醫療機關を,病院については公的醫療機關を中心として考えることが自然の姿であり,勸告においてもこの考え方をその根底にもつていると推測し得ることを述べた。そこで更に勸告が醫療機關の整備について具體的に如何なる構想をもつているかを檢討しつつ,逐次これに伴う種々の問題について考察を加えて見たい。

理想的の結核病床數

著者: 宮川米次

ページ範囲:P.17 - P.17

 開放結核患者數,肺結核の感染源を閉鎖するには,開放結核患者數を知り,これに對處することが極めて大切なることは申すまでもない。Krügerが年間結核死の10倍を要治療者數だとなし,入院治療を要するには,年間結核死數に相當する病床數が必要だとし,本邦に於てもせめてこの數に相當する病床數を得たいと努力しているようだ。我が國の現状は,その要求をようやく半分位しか滿たしていない。例えば昭和23年の年間死亡數は145,000人,病床數は62,000しかない。現在はこれよりなにがしよくなつたことであろう。筆者は,このKrügerの提稱は今日改定しなくてはならぬものだと信じている。それは,自己の經驗と世界の結核豫防對策の變化からである。
 筆者の經驗,川崎市の某大工場の從業員について,春秋の定期健康診斷をなし,必要と思う場合はレ線直接撮影,喀痰檢査等々によつて,要治療者は從業員の15%前後にある。その中に開放結核が10%強にあることを知つて,非常に驚いている。本邦の工場勞働者をかりに500萬人とすると,75萬人が要治療者となり,その中開放結核が少くとも75,000人があるということになる。

病院齒科の基本問題(3)

著者: 高木圭二郞

ページ範囲:P.18 - P.23

 以上私は病院齒科の診療組織が,如何なる形態に組織されることが,最も合目的であるかということについて,記載した。そして5つの診療部門のそれぞれに,優れた技能を有する有能な齒科醫師を配して,診療を實施することが,適正齒科診療の實現の面からみて,望ましいことゝ思う。しかし,病院の現實は,全てが早急に,この實現を許容すべくもないであろう。從つて,病院の實情に應じて,適宜取捨されるべきであることはいうまでもないが,齒科の診療組織の基本的な考えは常に,こゝに置かれなければならないと思う。なお,病理學的,細菌學的,生化學的,諸檢査其他は,病院が線合的な檢査施設を持つているのであるから,口腔院理科のようなものを,特別に,診療組織中に設ける必要はないであろう。必要に應じて,それらの施設を利用すればよい。

病院關係人事消息

ページ範囲:P.23 - P.23

◇佐谷 有吉氏 國立大阪病院長の氏は國立田邊病院長を兼任さる。
◇菊池 正三氏 福島女子醫大整形外科教授の氏は國立鳴子病院長に就任。

米國赤十字血液問題

著者: 高木圭二郞

ページ範囲:P.24 - P.25

 Sharon Tec Watts嬢は13ヶ月の子供であるがWashington市で暑いストーブに落ち沈んで手と足に大火傷をしたのである。この圖は米國赤十字國民血液計畫により贈られた血液の輸血を受けている處である。それは彼女の回復を促進させるであろう。

アメリカ病院藥局インターン調査の斷片

著者: 原祿郞

ページ範囲:P.26 - P.28

まえがき
 終戰後に於ける社會諸制度の民主化は常に吾々に新しい息吹きを感ぜしめずには置かない。醫療法,藥時法,麻藥取締法等加うるに米國藥剤師調査團の勸告は,凡ての面に更に吾々を飛躍せしめる機會を與えたのである。即ち藥科大學の教育内容も亦從來の偏重的教育が改革され藥學教授要目が大體藥學教育委員會に依て協定されたので自然に學科目を實際化する段階に到達したことは教育上の進歩と言わねばなるまい。この學科目の實際化の問題に關聯しインターン制の實施が切に要望される。即ち藥劑師業務に必要な實際的知識,實際的技術の中には講義と試驗だけで教育しても把握出來ないが或る期間の實務經驗に依りいやでも體得出來るものも少くない。學的基礎に立つ藥劑師にしてしかも直に資格に價する業務を行い得る藥劑師の教育を現年限で學校のみに責任を轉化する事は酷な話でありインターン制の協力を待たねば困難である事は論を俟たない。從つて國家試驗のあり方もインターン制を伴わない試驗は不完全極まるものであると言い得る。之は國力に左右され易い問題であるが醫學教育の高水準に比し藥學教育の低水準に我慢する事は不合理な極みである。然して藥劑師の受驗資格にインターン制のない國は少い英國では學校前3ヵ年の藥局見習を要し,佛國では3ヵ年米國では州に依つて異るが2,3ヵ年の見習を要している現状であると言われている。余は茲に米國に於ける病院藥局インターン調査報告の斷片を披瀝して諸氏の參考に供する。

手近な無錢サービス

著者: 庄村英四郞

ページ範囲:P.29 - P.31

 病院から診療という面を取つてしまつたらあとに殘るものは,受付,看護,給食,洗濯,清掃或は會計といつたような部門であつて,どれもがホテルの仕事と同じであると言われているが全くその通りである。ホテルとしての仕事と言うのは取りもなおさすサービス面の事であつて,吾々サービス業務に直接關係している者には既に百も承知の筈であるが,さて何かを實行に移そうとするとまず第一に金がない。人がいない。資材がないと言つたようにないないずくしで,例えば折角はり切つて患者さんにはいつも鈍白な病衣を着ていて貰おう,枕カバーはいつでも眞白であるようにと思つても,雜仕婦があかぎれに泣きながら一枚一枚たんねんに手洗でやつていたのでは1日に幾枚も出來ず,大勢の患者さんにいつも滿足して貰うようには仲々出來るものではない。然もお天氣の日ばかりは続かないし梅雨どきでなくとも乾燥室の1つも欲しくなるのが落である。然し洗濯機や乾燥室を備えてもらおうと思つても,いつの日この南のはて迄廻つて來るだろうかと思う氣持が先に立つて遂々あきらめてしまい勝ちになる。

病院用品一覽表(米國病院用品組合カタログより抄録)

著者: 島內武文

ページ範囲:P.32 - P.35

1 温度計,注射筒.注射針 Thermoteters, Syrin-ges,Hypo-needles
 體温計 clinical ther mometer

—ルポルタージユ—東大看護學校

著者: 花木曲子

ページ範囲:P.36 - P.37

 看護ということが新しく解釋され,高められた其の標準をまもるべく,教育水準の高揚がはかられ,新制度に基く看護婦教育機關は,文部又は厚生大臣の直接指定するところとなつてから此處に3年目,新制高校の卒業生を對象に,看護護の專門教育の火蓋を切つた看護學院は,現在までに99校あると,關係主管當局は發表しています。其の主なものは,國立病院附屬のもの,日本赤十字社病院に附屬されているもの,國立,公立大學病院に附屬するもの等で,其の他は各般の施設であります。これらの中,きくところによれば,指定に際して最も問題が多く,條件の完成も充分でないものは大學系統の學院で,中には今だに指定をうけることの出來ないところもあるということであります。
 教育の最高峰と自他共に許した東京大學,舊東京帝國大學の醫學部附屬醫院の看護學校は,その名譽ある傳統と,名聲に反して2回の指定審査に失格しています。東大としては誇りである傳統と,知識の殿堂としての獨りよがりが,世間をみない偏見となつてわざわいし,指定の條件も充し得ないのであると,關係者は言つています。そこで,指定を受ける事の出來なかつたこの看護學校の實態を檢討してみましよう。

保健婦助産婦看護婦法の一部改正

著者: 厚生省醫務局看護課

ページ範囲:P.38 - P.40

まえがき
 今回保健婦助産婦看護婦法の一部が改正されるに至るまでには,看護制度の今後の在り方について,各方面で熱心な檢討が行われていたのであります。即ち,厚生省においては醫務局内に臨時に看護制度審議會を設け,定期的に審議を重ね,日本助看保協會では法律研究會を新設し會員の世論調査に基き研究がつゞけられました。一方國會においても,参衆兩院の厚生委員會にそれぞれ看護法小委員會を設け,實態調査等によつて研究をすゝめていたのであります。又全國醫療從業員組合は日本教員組合の協力を求めて本法改正の意見を集め,同會内に事務所を設けて活動する等,多種多樣なうごきがあつたのであります。そして結局本年三月に至り衆議員より議員提出として提案され關係方面との接渉の後,衆參兩院の可決を見たのであります。

結核療養所建築についての心得

著者: 厚生省公衆衞生局結核豫防課

ページ範囲:P.41 - P.46

第1 敷地の選定
 1.療養所の敷地は,現代診療技術を容易に,且つ,總合的に活用するとともに,患者及びその家族等が便利に利用できるような地點,例えば,都會地又はその近くに選ぶことが心要である。特に良い道路に近く,療養所利用物資の運搬及び利用者の出入に便利で,且つ,上水道,下水道,電氣ガス,電話等の公共用施設を容易に利用できるところが望ましい。
 2.上水道を利用できる地點でも,その敷地内に,良質な自家用水を十分に得られるような場所を選ぶことが好ましい。

診療エツクス線技師法

ページ範囲:P.47 - P.47

 診療エックス線の業務に從事する者の資格を定めてその資質の向上をはかると共に,その業務が適正に蓮用されるよう,數年來之が法制化が懸案となつていたが,先般參議院議員谷口彌三郞氏外6名より診療エックス線技師法案が今第十國會に提出され5月には參衆兩院を通過成立した。同法の要綱は下の通りである。

東京病院協會だより

ページ範囲:P.48 - P.48

A.臨時理事會 日時 4月13日 各理事委員 二階堂都醫務係長 熊谷起草委員長 新居(三樂)近藤(廣尾)長谷川(東京第一)各病院ハウスキーパー出席。
 1.4月1日の病院施設見學及び4月3日の日本病院協會(假稱)創立準備會の状況報告があつて今後も此の種の見學を時折催おす事に申合せがあつた。

編集後記

ページ範囲:P.49 - P.49

 日本病院協會定款起草委員會及び創立準備委員會が5月12日に開かれた。Japan Hospital Associationを作りあげる準備を完了し,設立總會は來る6月24日盛大に擧行される。懸案がこゝでようやく實を結んだわけである。草分けの各地病院協會及び,この仕事を積極的にプツシユしてきた人にとつては感概無量なものぶあろう。病院の問題は今でこそ脚光をあびてたちあらわれたが,まだまだ爲すべき問題が山のようにある。むしろ開幕早々の期待と緊張から解放されて自由に問題の焦心にメスをいれるところまで病院協會がイニシヤテイブをとらなければならない。そのようにして病院管理學會も成立するであろうし,また病院協會自體のインターナシヨナルなつながりまでの發展も期待されると思う。
 「病院」誌の使命も,いよいよその重要性を倍加したことを痛感する。雜誌「病院」の發展は,そのまゝ日本の近代的病院管理學史のコースの道標を示すものであつたのだが,こゝで一段と飛躍の體制をとりたいと思う。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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