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医療の周辺 法律学と医療・1
健康権
著者: 下山瑛二1
所属機関: 1東京都立大学法学部
ページ範囲:P.864 - P.865
文献購入ページに移動 1.医療関係者の間においては,「健康権」という概念がさして抵抗なく用いられてきているように思われる.しかし,法律関係者,行政関係者の間では,なお根強く,このような概念を用いることを拒否する雰囲気がある.このことは意外と医療関係者の間では知られていない.それは,我が国の法律の組み立て方が極めて特殊なものであるからである.例えば,我が国で支配的な行政法の解釈として,医師法,歯科医師法,歯科衛生士法,歯科技工士法,保健婦助産婦看護婦法,あんま,はり,きゅう,柔道整復等営業法などと並んで医療法は,「医事警察」法として取り扱われてきている(田中二郎著『新版行政法,下II』294頁,弘文堂).これらの行政規制が「警察法」と呼ばれることを奇異に感ずる人々は多いかもしれぬが,それが我が国の特殊な法の取り扱い方に由来するものだということを知っている人は数少ない.もとよりここで「警察」というのは,制服を着ている警察官の方々に関する法という意味ではない.我が国にはいろいろの行政分野の取り締まり法を警察法として取り扱ってきた.例えば,銀行法による銀行の営業免許も商工業警察として取り扱われてきている.そして,このような警察法的取り扱いを受ける場合には,国民の基本的人権として保障される諸権利とは切り離された取り締まりになってきているのである.
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