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医療の周辺 法律学と医療・2
地域保健医療
著者: 下山瑛二1
所属機関: 1東京都立大学法学部
ページ範囲:P.960 - P.961
文献購入ページに移動 1.最近,「地域保健医療」の声がとみに強くなってきている.そのこと自体は非常に結構なことである.地域保健医療は,西欧では長い歴史の積み重ねの上に立って,第二次世界大戦後,ことに1960年代以降強力に唱えられだしてきたものであるが,かかる主張の底辺にも,ある程度長い間の社会的需要というものがあった.それに対して,我が国の場合には,かかる実績を必ずしも有していないため,いまだお題目の域に過ぎず,なかなかその緒につきかねる状態にあるといってもよい.
確かに,それぞれの国にはそれぞれの異なった条件がある.したがって,西欧諸国の状態を基準にしてものごとを割り切ってしまうと,我が国の社会の歴史的発展過程を無視して,批評家的発言に終わってしまう場合が生じてくる.我が国の先覚者は,戦前においても,農村における結核対策との関連で,早くから地域保健医療的な施策を実施してきた.ただ,それらの貴重な経験も,戦後の農村における農地改革,ならびに高度成長政策に伴う過疎化現象により,また,結核の激減により,新しい社会的条件の下において新たな地域保健医療へと発展していったとはいい難い.
確かに,それぞれの国にはそれぞれの異なった条件がある.したがって,西欧諸国の状態を基準にしてものごとを割り切ってしまうと,我が国の社会の歴史的発展過程を無視して,批評家的発言に終わってしまう場合が生じてくる.我が国の先覚者は,戦前においても,農村における結核対策との関連で,早くから地域保健医療的な施策を実施してきた.ただ,それらの貴重な経験も,戦後の農村における農地改革,ならびに高度成長政策に伴う過疎化現象により,また,結核の激減により,新しい社会的条件の下において新たな地域保健医療へと発展していったとはいい難い.
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