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雑誌目次

雑誌文献

病院40巻3号

1981年03月発行

雑誌目次

特集 医師の「外勤」問題

病院勤務医の「外勤」

著者: 川北祐幸

ページ範囲:P.202 - P.204

 戦後世情が一段落するとともに,無医村,無医地区の存在がクローズ・アップされ,医療行政が世に問われたときに,医療政策として我が国では,医師過剰の現実の上に無医地区の解消,地域格差の平均化を考え,県単位に新設医大を増設し,医師数の増加を促進させた.現在,この政策は一応完了し,着実に医師数は増加の方向に進んでいる.
 昭和54年末現在の医師数は,15万229人で,前年より7,245人(5.1%)増加し,人口10万対比で137人と厚生省では推定している.昭和51年末現在では,医師数13万4,934人で,人口10万対比129人になっており,昭和60年には19万2,000人,人口10万対比で157人,昭和70年では24万〜25万人の医師数になり,人口10万対比189人といった予測もされている.

大学医局員の「外勤」の現況と問題点—東北大学附属病院の場合

著者: 車田松三郎

ページ範囲:P.213 - P.218

 1980年6月に,東北大学附属病院のある診療科が,会計検査院から公的病院への医師派遣(「外勤」)に対して自粛をするように勧告された.
 この問題をめぐってどんな意見が出され,当大学病院では,これにどう対応したのだろうか.また医員制度の発足とその経過,及びその実態はどうなっているのだろうか.以下これらの諸問題について分析し,医員制度の役割と問題点について考察したい.

「外勤」問題—受入れ病院の意見

ページ範囲:P.219 - P.224

近い将来は不要になろうか
当院の現状
 私どもの病院のあるこの地方都市の民間病院は,私どもの病院(医療法人)を含めて,ほとんど医師不足に悩んでいるようである.当院の現況は次のとおりである.診療科目は内科(循環器科,胃腸科,呼吸器科)と外科.1日平均の患者数は,外来200名,入院数140名.ほかに集団検診,事業所の健康管理も引き受けている.常勤医師は,院長を含めて内科5名,外科1名,健康管理担当1名の計7名である.外科病棟は1看護単位で50床.内科病棟は3看護単位で計150床.この中の約20床は,常勤医の不足が主たる原因となって,空床のままで経過している.これによって全病床の稼働率は70%にとどまっている.
 毎年の保健所の医療監視において指摘される事項は決まって医師不足への対処であるが,この指摘の有無にかかわらず,常に困っていることは医師の不足である.医師は,専門技術提供の面でも,労働力としての面でも共に不足している.

「外勤」問題—医師の意見

ページ範囲:P.225 - P.229

修練と技術提供の場
 「外勤」医師の意見というテーマで寄稿を求められて,まず気に掛かるのは一体だれが,どうして私の「外勤」を知っているのかということである.公務員としてフル・タイムの給料をもらっている以上,「外勤」は許されざることと考えているからである.
 私の病院では「外勤」先の病院から病院長宛に依頼があり,病院の承認を得てあるのだが,なんとなく私の良心はとがめている.それなのになぜ,私は「外勤」医として働くか,まず第一には公務員として働く病院において科長の方針によって手術する機会を与えられないからである.外来,実習を除くと病棟における臨床指導の機会もなく,研究面では若手医師の参加を得られず,仕方なしに自分の外科医としての修練のため,また臨床的研究を満足させるため,某病院で特殊外科的技術を提供している.もちろん,これらのことが本来私の病院で満足させられるなら,「外勤」する時間的余裕もないはずであるし,また「外勤」する意志もない.

専門技術提供としての「外勤」

技術提供と「外勤」

著者: 古谷博

ページ範囲:P.205 - P.208

若手医師の勤務医志向とその行動■
 私も大学医学部を卒業して30年以上たったわけですが,その間,大学病院や地方の病院などに勤務して,現在,大学で働いています.
 昔の大学病院は若干の私立大学もありましたが,ほとんど国立で,ですから大学病院というと,多くの病院長さんたちは,いわゆる国立型の病院を想像されるのではないでしょうか.戦後は,社会の変動もあり,医学界もいろいろな動きがあり大学病院に働いている医師の意識も年代的にだいぶ違うと思います.

「専門医」と地域医療

著者: 渡辺信夫

ページ範囲:P.209 - P.210

 最近,"「専門医」の先生に診てもらいたい"と言って病院の受付けに保険証を提出する患者が多い.
 今の時代にもっともな話であり,都会では一時代前の風調だと言われるかも知れない.地方の,しかも山間の僻地の老人までが,専門医の医療を要望するとなると,地域医療に携わる100床前後の小規模病院にとっては,その対応策に苦慮せねばならないことが多々ある.

第一線病院と専門技術の受入れ

著者: 中島穰

ページ範囲:P.211 - P.212

運営の理念と現状■
 まず,当院(中島病院)の概略からお話します.中島病院は,埼玉県南部の戸田市にあります.戸田市は荒川をはさんで東京都に隣接しています.私は,昭和34年に父から開業を引継ぎました.当時8床の有床診療所でしたが,38年6月に25床とし院長に就任しました.41年には医療法人啓明会が認可され,42年に救急告示病院となりました.その後,増改築をすすめ100床に,更に47年から171床となっています.現在の許可病床数は171床ですが,実際には155床を運用しています.また埼玉県南には人工透析の施設が少ないので,現在15床ほどの人工透析室を備えています.また4年前には浦和市内に分院を開設しました.
 現在,外来診療は午前9時から12時まで,午後4時から6時までの2単位で行っています.外来患者は1日平均約350人,戸田市を中心に,川口市,蕨市などから来院しています.入院病棟は45床を1単位として4単位です.

グラフ

市民に親しまれる病院を伝統に—仙台市立病院

ページ範囲:P.193 - P.198

■基本構想四本柱にそって整備
 仙台市立病院は,昭和5年の創立以来,仙台市内の二番丁に位置していたが,昨年7月,仙台駅から徒歩約10分,国道4号線と清水小路が合流する地点に,10階建の病院を新築移転した.
 旧施設は,戦後,数度に及ぶ増改築を重ね,総合病院としての役割を発揮してきた.しかし,最近の医療の急速な進歩に対応すべく整備するには,建物が老朽化しており,その上スペースも十分でなかった.そこで,新施設を建築するためには昭和51年の市立病院整備審議会の答申を受けて,新施設の建築に着工.昨年3月に完成し,7月から診療を開始した.新施設の建築に当たっては,市当局,東北大学,市医師会などが参加,市内各病院の患者数,患者の流れ,及び各医療機関との連携.競合などの問題を十分に検討してきている.

病気の克服が真の医者を作った 兵庫県立柏原病院院長 山本善信氏

著者: 岡本道雄

ページ範囲:P.199 - P.199

 山本先生は私より二つくらい後輩で,三高時代,同じ下宿だったこともある.高校在学中,二人とも肺を患ったが,特に彼は重症で,数年の闘病休学の後,京大へ入学してきた.彼は一中,三高,京大という名門コースを進んだ人だが,若い時から確かに大した秀才で,かつ哲学者だった.また真面目な人格者であった.
 卒業後,私は学問の道に進んだが,彼は昭和17年卒業と同時に兵庫県三田の当時の県立療養所春霞園に入り,自らが病んだ結核に取り組んだ.28年,柏原病院に赴任し,その後今日まで農村のひとりひとりに語りかけるように医療を差しのべてきた.そのような姿を識らず識らずの内に皆が知り,患者も,職員も,県当局も彼を信頼するようになった.

読者の声

「病院医療における人間性」に想う

著者: 井上昌彦

ページ範囲:P.204 - P.204

 40巻1月号所載のシンポジウム,"病院における人間性回復"を非常に興味深く拝読した.そこで,望蜀の感を述べると,患者さんのご遺体についてのご発言が見られなかったことである.
 筆者は,かつてある市立病院で,ご遺体がお宅に帰られるときに,病院長,副院長,看護部長がそろってお見送りされている現場を拝見し深い感動に打たれたことがあった.それ以来筆者は病院事務長現役時代に,ご遺体が霊室に降りられたら必ず知らせてくれ,ご焼香をしたいから,また,ご遺体がお帰りになるときも必らず知らせてくれ,お見送りをしたいから,と常々頼んでいた.しかし,実際には会議その他の仕事の都合でなかなか思うようにはできなかった.

リハビリテーション・その現状

一線病院でのリハビリテーション—片麻痺患者の追跡調査を中心として

著者: 福沢玄英

ページ範囲:P.230 - P.234

 リハビリテーション(以下リハと略す)の概念の普及とともに,リハを専門とする施設及び病院は漸次増加し,今日に至っているが,その絶対数はなお需要にほど遠いのが現状である.一方,最も大切な初期リハと直結する一般病院にあっても,リハユニットをもつ病院が増えているとは言え,リハ専門医をはじめとして,専門のスタッフが充足されているところはまだ少ない.リハ専門医のいない病院にあっては多くはなんらかの形でリハの研修を受けた整形外科医がその任に当たっている.当院もその範疇に属し,リハ専門医はおらず筆者が主宰している.
 一般病院でのリハの対象となる疾患は片麻痺が大部分である.私どもも片麻痺のうち言語治療,職業前評価などを必要とするごく一部を除いて病院リハの対象と考えており,従来よりこれと積極的に取り組んできた.

随想

早春

著者: 鈴木辰四郎

ページ範囲:P.235 - P.235

 北信濃の春は遅いと言われているが,春の兆しは早くから現れはじめている.
 12月22日は冬至であるが,この日は一年中でいちばん短い日である.冬至を境にして昼間が伸びてくるが,昔の人はそのことを畳の目がひとつずつ伸びてゆくと表現した.極めて徐々にではあるが昼間の伸びてゆくことはわかる.しばらくの間そのことは気付かれないほどであるが,新しい年が明ける頃になるとだれの目にもわかるほどになる.今までは南の空に低かった太陽も,いつしか頭上高く明るさを増して,物の象(かたち)も一段と鮮明に映るようになる.厳しい寒気の中にも春の気配が,そこはかとなく感ぜられるのである.

事務長訪問

徳洲会茅ケ崎病院 三上晃事務長

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.236 - P.236

 三上晃さんと言えば,病院事務関係の講習会で,「医事課職員に必要な医学知識」とか,「用度課業務の心得」等のテーマで,ユーモアを混じえながらも説得力のある講義を受けたことがある,と思い出される方も多いかと思う.本誌でも三井記念病院医事課長時代から再三にわたり,医事部門や用度部門の実務についてご執筆いただいてきた.ファイトマンとして医事業務のコンピュータ化に熱心に取り組んでいた三上さんが,関東進出第1弾として騒がれた徳洲会茅ケ崎病院の事務長になられたと聞いたのが昨年6月.著者としてご執筆いただいたことがあるためかいささかびっくりした.そこで,なぜ徳洲会に入ったかをお聞きした.「私なりに病院経営面の仕事をやってみたいという願望があったが,その中で,特にここに魅力を感じたのは,医療に対する厳しさがあることと,地域医療に対する積極性がある,特に住民の監視の下での医療を行おうとしている点で,それは,私が常々意図していたものと共通のものでした」との答.
 就任して約10か月,事務長職というものは,「雑用係ですね」とのこと,「雑用係というのはすべての業務がスムーズに行えるための病院の滑潤油的存在になることが仕事ということで,そういう潤滑油になるための知識と経験と人間性が求められる」とも.

設備機器総点検

システマ・オートラック

著者: 柿薗チカ

ページ範囲:P.237 - P.237

使用目的
 物品のいかんを問わず狭い倉庫を有効に駆使し,管理してゆくために,関係者はより良い方法を考案しなければならない.そのための方策として古くは木製の固定棚があり,近年用途に応じた多くのスチールアングルが発売されているが,実用の面,また収容能の点で問題が多い.そこで限られたスペースを有効に活用するものとして開発された製品,左右に開く移動棚,ムーブラックがある.これを更に電動化,機能的に改良を加えたものがシステマ・オートラックである.
 今回薬局の新設に伴い,限られた薬品倉庫のスペースを最大限に活用し効率よい作業を推進してゆくために,上記システマ・オートラックを採用架設した.このオートラックはボタンひとつで5列,6列の棚が左右に動き目的物の収納,出庫がスピーディーに処理できる.薬品の品種,数量が多いほど威力を発揮する.作動中の安全性についてはよく究明されており,棚列の移動が停止すると同時にインターロックされ,安全保安が確保される.

講座 解説・新しい医療機器・9

ゼロラディオグラフィ

著者: 笠井敏晴

ページ範囲:P.238 - P.239

 最近乳がん死亡率の増加の目立つ我が国において乳腺を中心とした軟部組織のX線像記録方法としてゼロラディオグラフィ装置が注目されているが,ここではゼロラディオグラフィ装置(製品としては現在ゼロックス125システムしかないのでここではゼロックス125システムについて述べる)の原理,特徴,利用範囲について説明したい.

医療の周辺 社会学(家族関係論)—老人と家族・5

大都市青壮年の老人扶養意識

著者: 奥山正司

ページ範囲:P.240 - P.241

 ここでの課題は,大都市に居住する青壮年が老人の家族扶養(私的扶養)に関して,いかなる意識・態度をもっているかを明らかにすることである.
 いうまでもなく,一つの集団としての家族が追求する福祉機能(包括機能)は,国や地方自治体が追求する画一的な給付やサービスとは異なって,家族員のより個別的なニードに対応して提供されることを特徴としている.それゆえ,家族は幼児の育児や老人扶養に限りなく多大な責任を負っているといっていい.しかし,このような特徴があるにもかかわらず,老人扶養の研究に限定してみれば,ここ数年,扶養される老人側の調査は,数多くやられてきているが,その一方で老人を受け入れる側の青壮年の意識や態度については,総理府の調査などを除けば,それほど関心を示してこなかったと言っていい.最近,ようやく,我が国だけでなく,欧米諸国でも,家族福祉という立場から家族機能を見直そうという動きがでてきたのである.それは,老人福祉対策を考慮する上で,老人の扶養意識を明確にしておくことが最小限必要であると言えるからであろう.

病院職員のための医学知識

最近の輸入伝染病

著者: 大友弘士

ページ範囲:P.242 - P.243

 伝染病の世界的状勢はどうでしょうか,そして輸入伝染病とは何ですか.
 過去幾多の惨禍を記録している我が国の伝染病も逐次制圧され,今日では赤痢,腸チフス,発疹チフスなどの常在的流行病も昔日の猛威は影をひそめ,同時に伝染病という言葉のもつ重苦しいニュアンスも次第に遠退きつつあると言えましょう.
 その反面,東南アジア,オセアニア,アフリカ,中南米などの農業を基盤とする開発途上国を含む熱帯地域では,依然として各種感染症の猖獗が,毎年犠性者の直接死因となり,現地住民の生活に脅威を与え,ひいては,その地域の開発と近代化を阻害し,それらの関連において後進性を余儀なくされている実状も無視し得ません.またこれら地域との人的物的資源の交流は増大し,しかも最近の国際交通機関の高速化,大型化に伴い,種々の感染症の病毒が我が国に搬入される危険性は増大しつつあります.このような経路によって国外から搬入される伝染病を輸入伝染病と呼んでいますが,この中にはかつて我が国にみられなかった疾患もあれば,また我が国では絶滅し,あるいは著しく減少している疾患もあり,その態様は種々です.しかし,重要なことは我が国に存在しない疾患,あるいは現在は流行が終熄している疾患等については,宿主の免疫抵抗性は著しく減弱し,防禦能は皆無に等しいと考えられるため,いったん輸入伝染病の侵入を見,その病毒に曝露されれば国内に不測の事態を招く危険があることです.

病院管理の工夫

院内製作

著者: 滝田実

ページ範囲:P.244 - P.245

 当院においては,昭和52年来比較的簡単な機器類を院内において製作し好評を得ているが,この院内製作は中央機械管理室として当初からこれを目的として始めたものではなく,副次的な業務として行っているものであるが,その院内製作開始の過程を一応述べてみたい.
 現在の診療報酬体系の中で,本当の意味での良い医療,良い看護を提供しようと思えば,病院経営の中で省き得るむだは徹底的にこれを探索し排除してゆかなければならない.独立採算の病院では特にそれが必須条件になる.そのような意味でむだと目されるものは多々あるが,その中の一つが医療機械器具の不良投資である.すなわち病棟単位でなく視野を広くして病院単位で眺めるとき,配置されている機器類の稼働状況は非常に低いものであることは一目瞭然である.例えば吸引器・ネブライザー・蘇生器等々,各々の病棟に何台かずつ配置してあると思われるが,各時間帯ごとにその稼働を調査すれば恐らく10〜20%であろう.病院全体として,必要な時に,必要な機器が,直ちにしかも機能的に万全のものが,必要箇所に届けられるシステムを組めば,全体としての必要台数は半分以下になり効率的な運用が行えるのは当然である.したがってこのシステムが十分活用されれば,半分は不良投資ということになる.と同時に,常に万全の保守管理がされた機器を安心して使用することができるというメリットがある.

片麻痺患者食事の工夫

著者: 中山栄子

ページ範囲:P.246 - P.247

 私たちの病院にリハビリテーションセンターが設けられたのは昭和43年で,当時は整形外科単科の病院であった.したがって患者層の主流は,整形外科疾患で占められていたが,その後,次第に脳卒中や頭部外傷等による,片麻痺患者が来院する機会も多くなり,昭和50年,PTが鳴子温泉病院に内地留学して,片麻痺のリハビリテーションを学んで来た.それ以来,片麻痺の治療に本格的に取り組むことになった.
 最近は片麻痺患者の入院も増加して,昨年一年間に,25名の患者のお世話をさせていただいた.

ディスポーザブル診療材料の中央管理

著者: 西村文子

ページ範囲:P.248 - P.248

 医療の高度化に伴いディスポーザブルの診療材料が多種多様に出回っている.なかでも特にカテーテル・チューブ,注射針などは,タイプ・種類が多いため管理上種々の問題がある.これらの問題点を列記すると,以下のとおりである.
1)各セクションで好みのタイプの製品を購入する傾向にあるので,病院内での統一がとれない.

統計のページ

医師と医療従事者の所得・7—3.開業医の所得(承前)/4.高額所得医

著者: 二木立

ページ範囲:P.250 - P.251

開業医の医業収入・診療報酬額の分布(承前)
2)社会保険診療報酬支払基金「医療機関別診療状況調」
 開業医の所得面での著しい格差,階層分化の一端を示す官庁統計としては,社会保険診療報酬支払基金が毎年6月診療分について行っている「医療機関別診療状況調」中の「診療報酬支払額の金額階級別の状況」が挙げられる.ただし,本調査に含まれるのは,被用者保険と結核予防及び生活保護分等だけであり,国民健康保険や患者負担分等の状況は分からない(昭和52年度国民医療費統計によると,本調査は国民医療費の59.8%%をカバーしている).しかも,被用者保険と国民健康保険などとの比率は,各地方,各医療機関で相当異なっている.こうした制約はあるが,本調査は,全国レベルでの開業医の階層分化の一端を不十分ながらも示す唯一の官庁統計である.
 個人診療所(医科乙表)の診療報酬支払確定額の金額階級別の状況の推移を表25に示す.

新 病院建築・39

昭和大学病院入院棟

著者: 向田勇三郎 ,   寺嶋修康

ページ範囲:P.253 - P.259

はじめに
 我が国の病院建築の発展は,近年著しいものがある.診療部門については,西欧の病院と比較しても,決して優るとも劣らない施設となりつつある.しかし病棟部門の質の差は著しく,質的向上が望まれている.病棟の充実とは,患者の主たる居住空間としての「ゆとり」であり,ひいては病院全体の「ゆとり」を目指すものである.今回の設計に当たって,この「ゆとり」を確保することを目標とし,ある程度それを達成できたと思っている.

病院精神医療の展開

開放病棟と閉鎖病棟その問題点

著者: 山村道雄 ,   山村靖

ページ範囲:P.260 - P.263

■当院の沿革
 当院は昭和3年10月,岐阜市(人口9万人)郊外に51床で社団法人岐阜脳病院として発足し,昭和5年5月県立代用精神病院として指定され,昭和27年岐阜県立医科大学(現在の岐阜大学医学部)に精神科が開設されるまでは県下唯一の精神科医療機関であった.漸次増改築を続け,昭和24年7月名称を社団法人岐阜精神病院と変更,昭和50年3月に612床となり現在に至っている.

我が院内報

虎の門病院「虎の門病院広報」

著者: 稲垣泰彦

ページ範囲:P.263 - P.263

 虎の門病院:ベッド430床.1か月入院患者延数約12,000人,1日平均外来患者数約1,700名,職員数約920名,昭和33年5月国家公務員共済組合連合会により設立.
 虎の門病院広報:昭和34年8月創刊.現在年4回,1,400部発行.事務部調査役が編集責任担当,編集委員は各職種より選出,現在19名,ただし現在医師の参加がないのが悩み.1昨年5月病院創立20周年に合せて第100号記念特集を発行.現在第106号まで発行済み.

海外の医療

米国のグループ・プラクチスとメイヨー・クリニック

著者: 岡崎春雄

ページ範囲:P.264 - P.267

 上記テーマについては私自身専門家的知識があるのでもなく,日本の事情にも大分うとくなっているので,十分役が果たせるか自信はないが,町医者の息子であり,現在は病理専門医として,研究よりも「開業」(プラクチス)の形で飯を食っている身として,全く他人事でもないので,日米の差の一端をメイヨーのprivate grouppracticeを通じて説明できれば幸いと思い,あえて筆をとった.

民間病院の経営と管理

公庫資金融資の利用のしかた

著者: 村松稔

ページ範囲:P.268 - P.271

 新たに病院を開設しようとする場合あるいは既設の病院が需要に対応するため増床したり,木造施設の不燃化を図ろうとする場合,これらの設備投資には相当多額の資金が必要である.現在では病床1床当たり500万円ないし600万円の資金がかかるのはごく普通のことであり,100床の規模を有する病院を新設しようとすれば土地の手当は別にして5億円ないし6億円の資金を準備しなければならない時代である.
 医療を担当する場としての病院は,人間の疾病を扱うという意味において極めて強い公共性が求められる業種であるだけに,安定した経営の持続が社会的にも強く要求されることは言うまでもない.それだけに設備投資に要する資金の調達にはできるだけ長期かつ低利の資金を使用することが最も重要なことである.短期資金にその多くを依存することは開設後毎年元利金の返済に追われ,資金繰りに苦慮する場合が少なくない.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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