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人
柔和な文学青年のおもかげが浦河赤十字病院院長嘉戸達也氏
著者: 遠藤季雄1
所属機関: 1遠藤医院
ページ範囲:P.369 - P.369
文献購入ページに移動 私が彼と識り合ったのは昭和7年北大予科医類に入学してからで,特別の理由もなくただクラスの席がアルファベット順で相互に話し合う機会が多かったためだと思う.彼の父君は理想家肌の情熱的な当時の中等学校教師で,母君は真に穏やかな家庭夫人であった。月末,小遣いの足らなくなった時は今1人の親友と誘い合わせてよくお邪魔したものである.彼自身の柔い人柄とロマンチストぶりをみていると,よくご両親を思い出す.兄妹も多かったからご苦労も大変だったろう,したがって彼自身家庭教師もやっていたようだ.
昔から真面目な努力家で,それでいて余りがり勉の印象を与えなかった.数学系よりも語学系の才能のほうが優れていたようで,予科時代のヘルマン・ヘッセの小説「颱風」などは,学業としてではなく,心からのめりこんでいたようである.65歳を過ぎた今日でも時折その一節を口にして私を面喰わせたり,遠い青春時代に引き戻してくれたりする.
昔から真面目な努力家で,それでいて余りがり勉の印象を与えなかった.数学系よりも語学系の才能のほうが優れていたようで,予科時代のヘルマン・ヘッセの小説「颱風」などは,学業としてではなく,心からのめりこんでいたようである.65歳を過ぎた今日でも時折その一節を口にして私を面喰わせたり,遠い青春時代に引き戻してくれたりする.
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