文献詳細
文献概要
医療の周辺 生命科学(ライフサイエンス)
ライフサイエンスとバイオエシックス
著者: 中村桂子1
所属機関: 1三菱化成生命科学研究所
ページ範囲:P.420 - P.421
文献購入ページに移動ライフサイエンスの誕生
ライフサイエンスという言葉が日本で使われ始めたのは1970年ころです.10年前に,私自身も,この新しい分野に入ったわけです.なぜ「ライフサイエンス」が生まれたかと言うと,大きくみて二つの背景があったと思います.
一つは学問的背景です.1960年代までは,自然科学の分野では,化学や物理学が大きく進歩し,60年代末には科学技術の行きづまりが言われ始めました.この間,生物学の分野では,生命あるもの一生物を研究する学問が大きく変化,進歩し,「分子生物学」という新しい生物学が誕生しました.この分子生物学は,私たちの生命観に大きく影響しました.生命現象を物質の動きで理解できるのではないかという考えが生まれたわけです.しかし,分子生物学の考え方で生命をとらえ,生命を作っている物質を操作することに対する疑問や不安も生じました.そこで,「人間とは何か」「生命とは何か」という問いを発する立場から,分子生物学を活用して生命を考えようという流れが出てきたのです.
ライフサイエンスという言葉が日本で使われ始めたのは1970年ころです.10年前に,私自身も,この新しい分野に入ったわけです.なぜ「ライフサイエンス」が生まれたかと言うと,大きくみて二つの背景があったと思います.
一つは学問的背景です.1960年代までは,自然科学の分野では,化学や物理学が大きく進歩し,60年代末には科学技術の行きづまりが言われ始めました.この間,生物学の分野では,生命あるもの一生物を研究する学問が大きく変化,進歩し,「分子生物学」という新しい生物学が誕生しました.この分子生物学は,私たちの生命観に大きく影響しました.生命現象を物質の動きで理解できるのではないかという考えが生まれたわけです.しかし,分子生物学の考え方で生命をとらえ,生命を作っている物質を操作することに対する疑問や不安も生じました.そこで,「人間とは何か」「生命とは何か」という問いを発する立場から,分子生物学を活用して生命を考えようという流れが出てきたのです.
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