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雑誌目次

雑誌文献

病院40巻6号

1981年06月発行

雑誌目次

天草のメイヨークリニックを実現してほしい 龍ケ岳町立上天草病院院長 岡崎禮治氏

著者: 大橋登

ページ範囲:P.461 - P.461

 私が熊本大学第二外科の助教授であったころ,彼は学生で,私の国立病院転出と前後して教室に入局したので,一緒に診療に従事した経験はほとんどない.にもかかわらず,彼を医師として,人間として,ここに語りたいのは,彼の退医局後,天草の僻地竜ケ岳町の町立病院長としての積極果敢な活躍ぶりである.
 こんな僻地に白亜の五階建て200床の上天草病院を初めてみる人は「こんな田舎に」とまず驚く.そして,看護専門学校や健康管理センターや,小児喘息病棟を付設している状態を知り,またその開設以来の歴史を聞く時,感嘆を禁じ得ない.僻地病院で最も苦労するのは,医師を始め,スタッフの獲得である.それを彼が見事にやってのけたのは,彼の稀有なる政治力,統率力と,彼の魅力あふれる人間性によるものである.

グラフ

老齢化社会への対応を急ぐ—浜松市・聖隷三方原病院

ページ範囲:P.462 - P.467

 わが国の医療と福祉の分野で,常に先駆的な役割を担ってきた聖隷福祉事業団(理事長長谷川力氏)も昨年ちょうど創立50周年を迎えた.この事業団の発祥の地にあって,その基幹的な役割を果たしてきたのが,聖隷三方原病院(622床)である.浜松市の北西部に位置し,緑豊かな自然に恵まれた環境にある.更にこの病院を中心とする周辺の50,000坪という広大な敷地内には特別養護老人ホーム,軽費老人ホーム,高齢者世話ホーム,重度心身障害児(者)施設,重度精薄児施設,保育園,ベトナム難民援護施設,看護短大,高校,教会などが散在し,医療と福祉,教育,宗教が一体となったコミュニティゾーンを形成している.
 聖隷三方原病院は昨年事業団創立50周年記念事業の一環として地上5階地下1階の新館増築工事を完成,主に癌,脳血管障害の診断治療に必要な機器を完備,名実ともに浜松市北西部から長野県境までの診療圏を擁する地域中核病院としての陣容を整えた.

小特集 都立病院の財政再建をめぐって

都立病院の使命と経営合理化

著者: 木下二亮

ページ範囲:P.480 - P.483

 東京都は昭和55年11月14日「東京都公営企業等財政再建の方策」を発表した.東京都が直接経営している17の都立病院産院が,昭和54年末には231億円の累積欠損金をかかえており,昭和58年度には154億円の収支不足を生じ,累積欠損金は690億円に達するものと予測されると指摘し,これに対する財政再建の方策を打ち出している.筆者は昭和45年4月から昭和54年3月までの10年間,東京都医師会の病院担当理事を務めてきた.その間,日進月歩の医学の進歩を踏まえて,東京都民のための医療の確保対策を関係者と深く検討するとともに,そこで得た結論の実現に努めてきた.すなわち,都における医療体系の整備の一環として,"都立病院産院のありかたと役割"について東京都医師会長と美濃部前都知事との間に合意をとりつけ,更にその具体化について東京都に意見具申するとともに,その実現のため都の関係者に協力し努力してきたのである.そのような立場から,今回の"財政再建の方策"(以下「再建案」と略)について,この機会に意見を述べ,東京都民の医療福祉向上に資するとともに,他の自治体あるいは国が地域医療計画を策定してゆく上で,参考にしていただきたいと念願する.

ニューヨーク市立病院の閉鎖をめぐる諸問題

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.484 - P.489

 1979年11月4日朝,米国公衆衛生学会の開会式のあいさつのために,ニューヨーク市長コチをはじめ学会長や連邦厚生教育長官ハリスらが登壇する.席に着いて,いよいよ市長のあいさつ,というときに,フロアに横断幕をもった一団が入場してくる.その途端,壇上にかけ上がった三人の医師らから市長の顔めがけて卵が投げられる.すぐそばに厚生教育長官がいるところで,もみ合いと怒声が数分続いた.学会員でもある"狼籍者"が退場されられた後,ニューヨーク市立病院閉鎖反対の抗議をする一隊も静かに学会場から出ていくことになる.
 3,500人の出席者というマンモス学会の開会式用に歓迎の辞を用意してきたはずのコチ市長は,目を真赤にし興奮しながら,"こういう無法者がいるからニューヨークは悪くなる一方だ""市立病院閉鎖は断固実施する""16ある市立病院は役立たずである"と演説した.やじと怒号のなかで…….開会式が始まる前から,今日は何かありそうだ,という声が周りでささやかれてはいたが,このような事情に全くうとかった日本からの出席者の筆者にとって,このアカデミズムの場での事件は,何から何まで異様であり,大きなハプニングにしか見えなかった.しかし,このニューヨーク市で開かれた第107回公衆衛生学会のシンポジウムと報告を聞いてみて,この市の病院閉鎖問題の根は深く,ニードの高い貧困者への医療のあり方を問う極めて重要な問題であることが分かりかけてきた.

座談会

都立病院の役割と経営問題

著者: 斎藤誠 ,   古家郁男 ,   嶋田和正 ,   諸橋芳夫 ,   石原信吾

ページ範囲:P.469 - P.477

 石原 最近は国も各自治体も財政状況がとみに悪くなり,病院に対する財政負担も各自治体にとって非常に重荷になってきており,経営改善策は全国共通の問題になっています.
 東京都では,財政再建委員会の54年11月9日の答申を受け,55年2月に公営企業等財政再建委員会を設置し,その答申が昨年の11月14日に出されました.この答申は全国の自治体から非常な注目を浴びています.

資料

東京都病院事業財政再建の方策—東京都公営企業等財政再建委員会「東京都公営企業等財政再建の方策」(昭和55年11月14日)より

ページ範囲:P.478 - P.479

第1都立病院の現状と課題
1.都立病院の沿革と現状
 都立病院は,明治時代に,伝染病,精神疾患および生活困窮者に対する医療の供給をおもな目的として発足した.
 以来,都立病院は,それぞれの時代の要請にこたえ,都民医療の確保に大きく貢献しつつ,現在の17病産院へと発展してきた.

特別寄稿

現行診療報酬制度の問題点—昭和54年度長野県市町村立病院事業経営状況一覧の分析より

著者: 倉澤隆平

ページ範囲:P.490 - P.495

 昨年は富士見産婦人科病院の悲しむべき話題が新聞紙上をにぎわしました.あの話は一つの極端ではありましょうが,筆者は医師として,日本の医療はその連続線上で病んでいると考えている者の一人です.十年前に,大学における医学,医療に絶望して,この佐久市立国保浅間総合病院にやって参り,現名誉院長の吉沢国雄先生の「一所懸命より良き医療をやって,赤字が出るなら,その赤字を誇りにしようじゃないか.」との言葉に全く共鳴して,少しでもより良い医療を行えたらと心掛けてきたつもりですが,より良いと思われる医療をやればやるほど,患者は増え,病室はめまぐるしく回転しますが,病院は赤字となり,いかに赤字を誇りと思っても,赤字が必要な人を雇えなくし,必要な医療機器の購入を困難にし,結局はより良き医療を行いがたくするというジレンマに落ち込んでしまうのが現実でした.
 黒字でどんどん大きくなって行く病院もある中で,私どもの病院の何が問題なのでしょうか.

レポート【投稿】

医療経済学の国際的動向—「世界医療経済学会」に出席して

著者: 二木立

ページ範囲:P.496 - P.500

 1973年の石油シヨックを契機とした経済の低成長化の中でも「国民医療費」は高騰を続け,1978年度には10兆円を突破した.このような医療費の高騰とそれによる医療保険制度の財政破綻,医療問題の社会問題化は今や世界共通の問題である.我が国より一足先に高医療費時代に突入している欧米諸国では,すでに政府による直接,間接の医療費抑制策がとられているが,それと同時に,それの理論的分析—医療経済学の発展も著しい.
 昨年9月にオランダのライデン市で開催された世界医療経済学会(World Congress on Health Economics)には,最近の医療経済学の進歩,到達点が反映されており,日本の医療問題を経済学的に分析する上で示唆に富む報告が少なくなかった.

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機器短報

ページ範囲:P.501 - P.501

普及形頭部用CT
 東芝メディカル(電話03-815-7211)は,省スペース設計で実用性に優れた普及形全身用X線CT「TCT−80A」を開発した.同社は,1979年に低価格の普及形頭部用CT(TCT−30)を製品化し,中小規模病院や脳神経専門病院などに普及を進めてきたが,本機は一般診療を主体とした病院や大病院の増設需要に応じようというもの.
特徴は,①装置の専有面積が6.7m2,総重量3.5トンで,従来のスペースの70%,②高速走査(2.7〜9.0秒),320×320の高精度画像分解能など高級機と同等の画像を再構成できる,③簡単な操作で必要な断層像が得られる,など.<価格1億1,400万円>

講座 病院経営分析入門・3

患者統計の分析(外来)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.502 - P.503

 経営成績をみようというとき,だれでもまず手をつけるのが患者統計であろう.どの病院も患者数に関しては神経質であり,ある病院などは病院の要所要所に「昨日の患者数」などと掲げて,職員の関心をあおっている.
 患者数を分析するには,毎日の外来患者数,入院患者数を調べてみなければならないのはもちろんであるが,「昨日の患者数」が多いからどうといったものではない.毎日の患者数は,曜日によって違う.天候でも違うし,部長が外来に出る日などというように,どんな医師が外来に出る日かによっても患者数は動く.だからその多少をみて,昨日より多い少ないといってもほとんど意味がない.

医療の周辺 物理学・1

医学物理学者と放射線治療

著者: 尾内能夫

ページ範囲:P.504 - P.505

 放射線物理学はドイツのRontg-enがX線を発見した1895年に始まる.放射線治療はその翌年,ドイツのVoigtが鼻咽頭癌にX線照射をしたときから始まり,1899年にはスウェーデンのSjögrenとStenbeckが皮膚癌のX線治療に成功している.そのころはX線の性質もよく分かっていなかったろうから,放射線物理学の進歩とともに放射線治療も進歩していったに相違ないし,放射線治療には放射線物理学者の協力が必須であったと思われる.欧米ではこの必要性が固定化し,制度化されていて,医療の中に物理学者のポストがある.コンピュータ断層(com-puted tomography,CTと略す)の原理を提唱してノーベル賞を受賞したCormackも,アフリカのケープタウン大学で放射線治療のための物理を担当していた学者である.医療の中で物理を担当している学者を医学物理学者あるいは病院物理学者と呼んでいるが,日本ではあまり知られていない.欧米では物理部をもつ大学の医学部,医学系研究所あるいは病院が多数あるのに,日本では放射線医学総合研究所と癌研究所にあるだけである.

病院職員のための医学知識

老年痴呆とは

著者: 大友英一

ページ範囲:P.506 - P.507

 老年痴呆はいわゆる"ぼけ"と同じと考えてよいのでしようか.またその原因は何ですか.
 "ぼけ"は生理的な老化現象の範囲内の知的能力の低下であり,老年痴呆はこれがはなはだしくて生理的範囲を越えたもので,脳の器質的な疾患と言い得,同一のものとは考えないということが一般的な意見です.ただ脳の病理学的,形態学的変化は老年痴呆でも生理学的老化によるものと質的な相違はなく,ほぼ同じであるが量的には異なるという点,また,生理学的老化による知能低下と病的な知能低下との間に明確な線を引き難い場合も少なくない点が問題です.
 広義の老年痴呆は,狭義の老年痴呆(以下老年痴呆と略す)と言われる原因の明らかでないものと,脳血管性痴呆と言われ脳血管障害が原因と考えられるものとの二つに大別されます.前者は変性性痴呆,原発性痴呆,あるいはAlzheimer型痴呆とも呼ばれています.この型の発現機序は不明ですが,最近神経伝達物質(セロトニン,アセチールコリンなど)の役割が注目されており,生化学的な異常が示唆されています.

統計のページ

医療施設における医療機器装備の動向

著者: 高島史路

ページ範囲:P.508 - P.509

 前号では特殊診療施設の普及状況について説明したが,今回は病院経営実態調査報告書などにより医療施設内の100床当たりの有形固定資産額の実態,経営主体による相異などを述べる.
 図1,表1によると,固定資産は8年間に2倍の増加を示し,その主なものは土地,建物で65%を占めている.この比率は各年とも大きな変化は見られない.

病院管理の工夫

放射線科における工夫

著者: 虎渡勇二

ページ範囲:P.510 - P.511

基本的考え方
 工夫とは,いろいろ考えて手段を選び,また,やり方を考えることを言うものと思う.これに該当する英語は,アイデア(Idea)とも言い,計画,思いつき,もくろみ,意図,想像,印象,空想,直観等々範囲も広い.
 放射線科内での工夫は,数限りなく存在し枚挙にいとまがない.

トイレのスペースを利用した浣腸用ベッド

著者: 賀川弥寿栄

ページ範囲:P.512 - P.513

 当院は,昭和28年に県立の結核療養所として病床数300の規模で発足したが,その後胸部外科,抗結核剤の発達等によって,結核患者が著しく減少したため,地域のニーズに応えて次第に一般病院へ移行し,昭和48年より県立柏原病院と名称を変更し,名実ともに丹波地域の基幹的中核病院へと発展しつつある.このたび県の施策として全面改築が計画され,昭和53年度より3期に分けて工事が進められ,54年7月には,第1期工事として,4看護単位の病棟,給食部,気缶室,電気室等が完成し,56年6月には第2期工事として管理部,救急部,薬剤部,中材,手術棟,透析,3単位の病棟等が完成予定となっており,更に第3期には外来棟,検査,放射線科などすべてが完了の予定となっている.
 完成の暁には,50床の結核病棟ならびに準3次救急部門を含む350床の基幹病院として,その機能を遺憾なく発揮し地域医療に貢献することになる.

入院体験から

患者の立場からみたサービスを考える

著者: 名越あつ子

ページ範囲:P.514 - P.515

 この1年間,家族の場合を含め,3回も心身ともに耐え難い入院生活を余儀なくされ,しかもその間に,76歳の実父と20年間同居した82歳の姑の死という悲しい現実を体験させられた.死という活字が,私の脳裏で幾度か旋回するうちに,悪夢の連続もようやく治まったのであろうか,不気味なまでの平静さに戻り1か月を経過した今,自分は,本当に看護婦としての32年間何をやってきたのであろうか,しかもその間の管理,監督者の立場での30年間に何をしてきたのであろうか.改めて患者の身になって知った入院生活について考えてみた.

新 病院建築・42

上野総合市民病院の設計

著者: 加藤智弘

ページ範囲:P.517 - P.522

はじめに
 本病院は昭和30年開設されたが,医療技術の長足の進歩による,高度医療が要求されるようになり,伊賀地域の中核病院としての機能の充実を希望する声がたかまり,さら地に移転新築することになり,私どもに当病院の設計依頼があった.我々は建築家の立場から,少しでも市民にとって親しみと信頼のおける明るい美しい建物であり,働く人たちにとっては魅力ある職場となるよう,また,病院の機能が地域の医療水準を決定する要素であることを踏まえたうえで,現在はもとより将来においても予想されるさまざまな事態に対しても十分対応し得ると同時に,市民の医療サービスを十分果たし得るよう考慮した.

病院精神医療の展開

長期在院分裂病者の社会復帰

著者: 広田伊蘇夫

ページ範囲:P.523 - P.527

 ここに記す内容は,「精神病院長期入院者の社会復帰」をテーマとする調査研究に基づいている.この研究のねらいは,次のごときものであった.まず,平均在院日数からすると,我が国の大部分の精神病院は多くの長期在院者を収容していると推定されるが,その実態は必ずしも明確ではない.そしてまた,この長期在院者に対して,どのような治療的アプローチが行われているかも詳らかではない.そこで,ひとまず自治体立精神病院を対象として,その実態を分析し,精神病院における社会復帰活動の方向を再検討しようとするものであった.このために,厚生省の助成を得て,1977年から3年問にわたり,まず39の自治体立精神病院の職員・患者構成を調査し,次いで,これらの施設での長期在院分裂病者に対する社会復帰活動の概略的実状を調べ,最後に5施設を対象として,精細な症例検討をも含めた社会復帰活動の現状を検討したものである.この間に集積されたデータはかなり大部なものとなっている.ここでは,本調査研究にかかわったひとりとして,そのポイントを記し,精神病者の社会復帰にまつわる今後の課題に触れてみたい.

リハビリテーション・その現状

開業医とリハビリテーション医療

著者: 西田一彦

ページ範囲:P.528 - P.531

 開業医の場でのリハビリテーション医療の対象の大部分は脳卒中患者であり,『実地医家のための会』の調査によっても,いわゆる寝たきり患者の大半は脳卒中後遺症によるものである(図1).年々増加傾向の寝たきり患者(老人)の多くは適切なリハビリテーション医療を受け得なかったために,いわば作り出された寝たきり患者(老人)と言っても過言ではないであろう.脳卒中患者を寝たきりにしないために,そしてまた肢体不自由な状態を維持しながらも,社会への完全参加を容易にし促進するためにも,地域におけるリハビリテーション医療のあり方を真剣に考え,システム化し,実践することが急務である.国際障害者年行動計画書に書かれた概念と原則の⑤は極めて示唆に富んでいる.それは"障害は,ある個人とその環境との関係において生ずるものであると考えるのが解決法として建設的で,この考え方が広まっているが,まず‘能力不全’を‘不利’にならしめている社会条件を見つめなければならない."というのである.この原則と概念を基に地域における,特に開業医の立場からのリハビリテーション医療のあり方について述べてみたい.

海外の医療

40人の見たUCLA Medical Center (7)—虎の門病院のUCLA見学プロジェクト

著者: 寺崎明美

ページ範囲:P.532 - P.535

UCLA見学
看護部の勤務時間について
 この度のUCLA見学メンバーの約半数を看護部門が占めたのであるが,それは,とりもなおさずベッドサイドに最も近い看護部門に「Patient Orientedの医療とは?」と問いかけをされた院長の計らいであったと思われる.病院は患者のために建てられ,患者にサービスすることを目的としている.しかも患者サービスは24時間通して行われる.業務の実態に合せたサービスと勤務体制とは切り離せないものであり,今度の見学が「勤務時間」そのものを中心に見てきたわけではなく,勤務時間について述べるには理解が十分とは思われないが感じたことを卒直に述べてみたいと思う.

民間病院の経営と管理

患者の動態を知る—減っているのは患者の絶対数なのか,その受診回数なのか

著者: 田中熈

ページ範囲:P.536 - P.538

患者の動態調査
 他の病院でもそれぞれ行われていることであろうが,当院でも毎年1回10月に患者の動態調査を行っている.各カルテごとにその地域分布をみてゆくわけであるが,表1に示したのが,54年,55年度のそれぞれの各地区ごとの来院患者数(延べ数ではなく絶対数)とその地区の人口数との比較である(このまとめの前に更に細かく各丁目ごとの人数確認がなされていることは言うまでもない).毎年度ごとに比較してゆくことにより,その地区ごとの来院患者数の消長及び人口との相関が分かってくる.人口数の増加に伴い,患者数の増加している所,あるいは逆に人口数が減少しているにもかかわらず,患者数は減少していない所,あるいは意外な地区から意外なほど患者が来院している所等々.毎年一定月に調査を行っていると,その変化がよく分かってくるものである.
 ただ,気をつけなければいけないのは,調査を行うに際し,できるだけ誤差を少なくする意味からも次のことは最低限度守りたいものである.

随想

偶感

著者: 伊藤忠雄

ページ範囲:P.539 - P.539

看護学生を送り出して
 当院では昭和14年創立以来,形は変わっても看護婦養成が現在まで続けられている.甲種,ついで乙種,准看護婦養成と.更に昭和52年から始まった3年課程(1学年定員50名)は,今春第1回生を世に送るとともに新しく第4回生を迎えた.創立には多くの方々にご努力いただいたにもかかわらず,いざスタートしてみると予想外に苦難が多い.発らつとした高校卒の女・男学生を迎え,様々な行事と盛りだくさんのカリキュラムの計画・準備・対応に教務は四苦八苦である.しかし苦労が多ければまた,それにも増して教育の場をとおしての喜びは大きい.手塩にかけた子は可愛いというが,まさに実感である.
 「第1回生の皆さん,卒業おめでとう.来賓各位,ご父兄をお迎えして本日はここに3年にわたる看護学生の生活を終え,多くのなつかしい想い出を残し,数々の苦難を乗り越え,共々過ごした学校と寮をあとに,多くの級友とめでたく校門を巣立って,袂を分けあう日を迎えるに至りました……(中略).

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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