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雑誌目次

雑誌文献

病院40巻7号

1981年07月発行

雑誌目次

特集 設備投資と技術革新

医療機器整備状況と適正配置

著者: 田中恒男 ,   青木和夫

ページ範囲:P.568 - P.571

はじめに■
 戦後の目ざましい技術革新は,社会構造の変革をもたらすまで,多様な影響を与えた.ことに電子工学にかかわる技術の進歩は,医療の方式さえも変えるほど,大きな影響を与えている.その利点も多いが,時に欠点も指摘されており,一概に喜べるものとは限らない.しかも,自由経済機構の中で,また技術志向性の強い我が国の風土が,急速な高額医用機器の導入を促進し,時には過剰配置ともみられる状況を生むに至っている.本論では,このような傾向を生むに至った背景を分析し,現状がどのような問題を抱えているかを考え,最終的にどのような対応を考えるべきかについて述べてみたい.

技術革新への病院の対応

著者: 横内寛 ,   寺田一郎 ,   須之内省三 ,   岩宮緑 ,   登内真 ,   亀田俊孝 ,   深瀬邦雄

ページ範囲:P.572 - P.581

地域医療の情報システムを推進
 約1年前,某新聞に第二次大戦後の間もない時期における胃内視鏡の開発が小説の形で連載された.敗戦後の器材や科学情報すべてに乏しいなかでの医師と技術者たちのひたむきな努力と患者への熱いヒューマニズムに強い感銘を受けたものである.最近も某月刊誌にレーザーメスの出現に関する記事が掲載された.本院でも腹腔鏡や超低体温麻酔などの面で若干の経験があるが,がんその他の不治とされる疾病に対して果敢に挑戦し,未知の分野をあくなく開拓する医師及びそれに協力する技術者または企業家の情熱には襟を正さずにはいられないものがある.
 戦後において,医療技術の革新は大きく2回にわたるといわれる.すなわち,第1回は抗生物質の開発・輸血・麻酔の進歩であり,これにより日本人の平均寿命は大幅に伸びた.反面疾病構造にも変化をもたらし,より精細な検査ならびに治療法が求められてきた.第2回の技術革新は,これに対応するようにME機器が開発されるとともに医療のシステム化が図られつつあることである.

CTの経済計算

著者: 上林三郎 ,   中村彰吾 ,   藪純夫

ページ範囲:P.582 - P.584

 CTスキャナーが,1972年に英国で,頭部診断用として開発されて以来,9年を経た今日,我が国においてもその普及はめざましい.1981年1月末現在,一部の予定を含み,全国での設置台数は1,306台と言われている(表1).CTスキャナーによるレントゲン診断のメリットは今さら述べるまでもないが,採算性については,不利であるというのが,定説となっている.
 頭部用,全身用CTスキャナー導入設置の経済性をみるために,原価計算の手法を用いてみた.この調査実施時期は,1980年10月の1か月間であった.本稿ではこの原価計算実施結果より,CT部門の採算性についての問題点を浮き彫りにした.

未熟児ユニットの経済計算

著者: 関修一郎 ,   上高原勝美

ページ範囲:P.585 - P.586

はじめに■
 新生児医療,あるいは分娩前より母と胎児,更に分娩後の新生児を一貫して管理する周産期医療は今や時代の要求である.脳性麻痺児のかなりの部分,周産期に何らかの異常を認めることが多く,もし不幸にして,将来生産性のある部分に関与し得ないと,国家は莫大な金額を用意しなければならないし,本人や家族の不幸には,目をおおわしむるものがある.この理由で,最近新生児あるいは周産期医療に目がむけられつつあることは,蓋し当然であろう.しかし,現実に,この特殊な,あるいは重症の疾患を取り扱う,医療の地域化としての中心は,大学病院ではなく,ほとんどが国公立,あるいは私立の病院であり,その献身的な努力により支えられているのである.その理由は明白であり,限られた予算と定員の中では,膨大な人と予算を必要とする地域の中心としてのセンターを運営することは,不可能だからである.この点に関しては,明らかに矛盾であり,行政レベルにおける一層の理解が必要であるということはいうまでもない.
 翻って,この新生児センターにおける経済性に関してはどうか.このような医療に対する社会のニードがいくら高く,かつ使命感に裏打ちされてこそ成り立つとはいっても,なるべくなら非採算部門でないにこしたことはない,しかし,一般的にいって20床以下の規模が小さい施設の場合,なかなか採算がとれず,それ以上であると,更に規模が大きくなるに従い黒字になると言われている.

技術革新の現状と将来

検査機器について

著者: 林康之

ページ範囲:P.558 - P.559

 現在の臨床検査機器が検査需要の拡大,精度の向上,新規検査の開発など現場の要請に応じて製品化され市販されてきたことはいうまでもない.また,開発製品化にあたっては理工学分野の基礎技術の進歩に負うところが大きく,その恩恵に浴していない分野はまずないであろう.臨床検査部が病院内で中央化し独立した業務範囲となり始めた約30年前には検査機器といえば顕微鏡,フラン器,乾燥器などであって全自動分析器とか形態分類機器などはアイデアさえ持たなかった.それが最近の電子工学の発達は臨床検査業務自体を工場生産の域にまで押し上げつつある状況である.以下現状の紹介と将来の予測を述べるわけであるが,検査機器の開発が臨床検査を変化させるといえるほどに進歩の速度は早く予測できない面も多いこと,誤解,早のみこみも考えられることは寛容いただきたい.

X線機器について

著者: 梅垣洋一郎

ページ範囲:P.560 - P.562

画像診断は3次元,定量診断の時代■
 近代医学は解剖学から始まったが,現在でも生体の解剖学,つまり画像診断が医療の基盤となっていることはいうまでもない.画像診断の歴史をふり返って見ると,20世紀の前半はX線が主であったが,戦後はこれに核医学イメージング検査が加わり,更に血管撮影が急速に普及した.しかしこの時期までの画像診断はいわば2次元の画像であった.断層撮影法はあったけれど,その役割は補助的なものであった.この状況はX線CTと超音波診断法の進歩により一変した.X線CTは人体の横断(縦断)面を極めて精細にしかも定量的に描出することができるし,超音波診断特に電子スキャン法では生体の器官の動きを3次元的にリアルタイムで観察することができるようになった.その結果,臨床医がCT,超音波等の診断の後に治療方針を定めるのが通常となってきている.高額医療機器の代表であるCTの増加を防ぐために,異常に低い健保点数の設定などの抑制策が取られているにもかかわらず,CTの設置台数は1980年1月末の841台から1981年1月末の1306台2)と実に1年間に約500台も増加した.超音波診断装置については数字の持ち合わせがないが,CTをはるかに上回る増加である.

手術機器について

著者: 都築正和

ページ範囲:P.563 - P.565

はじめに■
 手術(本項では麻酔を含めて論ずることにする.)に使用される機器類には,リスター(Lister),コッヘル(Kocher)の古典的外科手術の時代からほとんど変わらない形で使用されている手術機具(Surgical instrument)と,現代の技術革新に基づく複雑高度の手術用機器類—手術用顕微鏡,TVシステム,人工心肺,補助循環装置,電算機化モニター,レーザー装置等—に大きく分けることができる.
 今日の進歩した手術に関する機器類について論ずる時,手術そのものに直接使用される機器のみでなく,それに関係した設備類(空調設備,医療用ガス配管設備,電源設備,放射線機器用設備など)についてもバランスのとれた配慮が必要となる.

人工臓器について

著者: 大坪修

ページ範囲:P.566 - P.567

 医療における技術の進歩は,目ざましいものがあり,同時に設備,医療器械の革新も年々速度を増してきている.特に人工腎臓,人工心肺など人工臓器は,近年開発されたばかりでありながら,その臨床への応用化と普及ぶりは想像以上のものである.
 現在臨床的に用いられている人工臓器といえば,循環系の人工心肺,補助心,ペースメーカ代用血管や代謝系の人工腎臓,補助肝,人工膵臓,運動系の人工骨頭,関節などがあるが,義歯,コンタクトレンズ等も含めればいかに人工臓器が多様であるかが分かる.そこで,病院の設備として,治療機器としての人工臓器に重点をおき,技術革新の現状と将来について述べる.

紹介

技術革新の効果と限界Technology in Hospitals

著者: B.RUSELL ,   紀伊國献三

ページ範囲:P.587 - P.589

医療費上昇と医療技術■
 1960年代以来,医療技術(technology)の進歩が疾病の多くを克服できるのではないかとの希望が生まれ,多くの医療技術が病院に集中的に導入されてきた.しかし,これが先進諸国において医療費の急激な上昇をもたらしたことも事実である.この技術革新の問題に医療政策の見地から検討を加えたものとして1979年にBrook-ings研究所から出されたTechnology in Hospitalsがある."医学の進歩とその伝播"と副題されたこの本は,医療費の上昇とそれについての対応策について幅の広い検討を行った本として米国で非常な注目を浴びているものである.著者はアメリカの病院医療費を分析し,1950年から1976年の間に病院医療費が実に11倍に上昇したことを挙げ,その背景には医療担当者は医療にとって必要なものは費用を考慮しなくても行うべきであるという哲学に支えられたことを指摘し,その例としてICU,呼吸療法,放射性同位元素による診断,脳波,コバルト治療,心臓手術,人工透析の7つの新しい医療技術についてのCase-studyを行っている.

第7回日本病院学会会長となった 神戸市立中央市民病院院 長岡本道雄氏

著者: 中井準之助

ページ範囲:P.549 - P.549

 京大総長から病院長にと聞けば人は驚くであろう.解剖学者としての岡本さんを知る人は,それなりに意表をつかれたかも知れない.同学の一人として,また家族ぐるみの長いおつき合いを願っている私とてもちょっと驚いた.ついで新鮮な人事と感服した.
 およそ組織づくりは,その頂点にいかなる人物を据えるかが第一.ついで,彼を助ける優れた数名の専門家を選び,その後の人事・企画を大幅に彼らに一任する.一任できる"腹"のある人ということである.これが組織づくりの要諦と心得ている.

グラフ

農村医療を担って—雲南共存病院

ページ範囲:P.550 - P.555

 雲南共存病院は,島根県内の大原郡,仁多郡,飯石郡の10か町村による一部事務組合立の病院である.人口は3郡で約7万8千人,老人の占める割合も多く,過疎化は現在も進んでいる.10か町村は中国山地の山間部にあり,交通も不便なため,患者の輸送には町の送迎用バスが運行している(月,水,金曜日).病院の利用状況は大東町が入院で約40%,外来で約60%,大東町,加茂町,木次町の3町で入院の約70%,外来の約85%を占めている.

我が院内報

上天草病院「あこや貝」

著者: 堤田美根子

ページ範囲:P.589 - P.589

 上天草病院は,昭和39年熊本県天草島の東南端に,病床数70で開設された龍ケ岳町立病院である.現在,病床数200,職員数185で,看護専門学校(定員90),喘息センター,郡市医師会第二臨床検査センター,龍ヶ岳町健康管理センターを併設している.
 当院の院内誌は開設の翌年,昭和40年3月に第1号を発行し,現在まで52号を数えるに至っている.眼下に広がる不知火海の真珠養殖にヒントを得て,医療を育む母貝になるようにと「あこや貝」と命名された.1号から5号まではガリ刷りで毎月発行したが,6号より活字印刷で年4回の季刊となった.左とじ,横書き,A5版,40〜50頁のスタイルは16年間そのままであるが,表紙の色を毎号変えている.また,その時期の建物を白のシルエットで浮き出させることで,相次ぐ増築が一目で分かるようになっている.なお,54年度「あこや貝」発行に要した費用は4回分で43万円である.

リハビリテーション・その現状 対談

地域リハビリテーション活動を語る

著者: 竹内孝仁 ,   浜村明徳

ページ範囲:P.591 - P.598

□なぜ地域リハビリテーションか
 竹内 地域という言葉は最近非常に盛んに使われていて,例えば地域医療とか地域看護とか,あるいは地域リハとか,まさしく氾濫状況にあるという印象を受けます.当然それに関する論文や主張も様々な形で現れています.しかし,それらを読んでみますと,必ずしも同じようなとらえ方がなされているわけではない.つまり,この氾濫状態の背景は,どうやら地域活動,地域医療ないしは地域リハというようなものが,概念的に非常に混乱しているからではないかと思います.
 特に,リハの領域に目を向けたとき,いわゆる地域活動が,一体どういう必然性を持って出てくるかと言うことになると,あまりはっきりしたことは言われていない.このために,地域リハの実践も,どのようにしたらよいのかはっきりしていない.地域リハを考えるには,先ず第一に,リハの概念そのものをもう一度,掘り返す必要があると思います.

設備機器総点検

与薬車

著者: 高取和郎

ページ範囲:P.601 - P.601

 入院調剤投薬の多くは錠剤をヒートシールのまま投薬し,病棟における二次調剤というべき看護部門での錠剤の切り離しと組み合せ作業を,必要としているのが現状のようである.そこで,薬剤科より患者の手へ渡るまで間の,余分な手数をできるかぎり省くために,投薬方法について検討した.
 当院は,入院専門病院として発足したのを契機に,入院投薬に次のような与薬車を使用することになった.この与薬車利用は看護部門,医師より好評を得ている.

講座 病院経営分析入門・4

患者統計の分析(入院)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.602 - P.603

 入院患者数というとき,「ある期間に新しく入院した患者数」という意味と,「ある期間における入院患者の延日数」という2つの意味がある.そこでこれを区別して前者を「新入院数」後者を「入院患者延数」というのが一般的である.
 また入院患者の数え方には,病院報告などで用いる「毎日午後12時現在の入院患者数」をとる場合と,保険請求などで用いる延数,つまり入院した日と退院した日をそれぞれ1日と数えるやり方がある.前者を在院患者延数,後者を入院患者延数というように区別することが必要となる.両者の関係は,入院患者延数=在院患者延数+退院数,ということになる.

医療の周辺 物理学・2

放射線治療と診断

著者: 尾内能夫

ページ範囲:P.604 - P.605

 速中性子治療は主として反跳陽子,熱中性子捕獲療法はHe粒子による治療であることを前回で述べた.これらの陽子あるいはHe粒子などの重荷電粒子を,サイクロトロンあるいはシンクロサイクロトロンと呼ばれる加速器で加速して直接体外から照射すると,入射表面の線量は小さく,ある深部で著しく線量が上昇してピーク(ブラグピークという)となり,これを超えると急激に減少して,ある深部以上には達しないという深部治療にとって理想的な線量分布となる.また粒子が重いので電子のように散乱されないで直進するので,照射野外への散乱が小さく,照射野外の線量を小さくできる.これらのことをWilsonは,1946年に報告し,1951年にはバークレイのTobiasが重陽子による動物実験を開始,1955年には184インチのシンクロサイクロトロンを用いて加速した陽子による治療が実施されている.現在,ボストンのハーバード大学(160MeV),スウェーデンのウプサラ大学(185MeV),ソ連の3か所で陽子線治療が行われている.日本では1979年の秋から放医研で70MeVの陽子線治療が開始された.
 陽子線治療は,線量分布の点では上述したように理想的であるが,高LETとしての生物学的効果はないことが分かってきている.

病院職員のための医学知識

凍結手術の現況

著者: 蔵本新太郎

ページ範囲:P.606 - P.607

凍結手術とはどのような原理に基づく,どのような方法ですか.それはいつごろから行われていますか.
 凍結手術とは生体の一部を局所的に0℃以下に冷却させて組織の凍結を図り,それによって起こる組織変化を疾患の治療に利用するものである.cryo-surgeryとかcryo-the-rapyとか呼ばれているが,cryoとはギリシャ語のKyosから来て,"凍る"という意味である.組織を凍結させると様々な生体反応が生じるが,次の反応が凍結手術に応用される.①凍結付着,②凍結固形化,③凍結炎症,④凍結壊死の4つである.この中でいちばん広く利用されるのが凍結壊死の現象である.この現象は一般的にも,遭難事故などでよく知られていることである.壊死を生ずる機序は完全には解明されていないが,次のことが現在考えられている.

統計のページ

病院経営の実態

著者: 森福省一

ページ範囲:P.608 - P.609

基礎資料——集計病院数
 病院経営の実態については,個々の病院自らはその実態を把握しているが,これが公表されているものは限定されている.
 以下に述べる病院経営の実態は,主として,全国公私病院連盟が毎年6月に実施している次の二つの調査結果に基づくものである.

病院管理の工夫

病院ボランティアの育成と開発

著者: 永沢嘉子

ページ範囲:P.610 - P.611

 当院におけるボランティア活動は開始以来満2年,その活動も漸く緒についたところであるが,今その導入の経過及び活動状況を整理し,ボランティアにかかわるスタッフの役割と方法,今後の課題を紹介することが,同じような活動を志向しておられる方々のなんらかの参考になればとペンを執った.

ユニフォームの工夫

著者: 新垣興文

ページ範囲:P.612 - P.613

当院の沿革と白衣の変遷
 当院は創立昭和45年4月の個人病院で定床223床,1類看護,職員総数125名,看護職員76名である.開院当時は年1回市販の白衣を看護衣として貸与していた.それはごく普通のワンピースや白ズボンであった.開院当時は看護婦の人数が少なく,看護助手が多数を占めていたので,中には精神科看護の経験はもちろんのこと,病人の看護すらしたことのない者がいた.したがって,おのずから看護衣に対する認識も薄く,病院では白衣を着用して働くものであるという程度の認識しか持っていなかった.看護に関する認識や勉強の不足は,開院まもない当院にとってはやむを得ないこととはいえ,看護に対する経験不足のため,看護業務をこなすのに精一杯で,白衣について考える余裕はなかった.
 白衣は同一デザインの一括購入であったから経済性の面から質が落ちサイズも大中小の3種類しかない状態だった.看護者は貸与された白衣にからだを合わすしかなかったのである.ある者はダブダブの白衣を着け,ある者は窮屈そうで,見た目にもあまりきれいなものではなかった.小さめのパンタロンを着けていた者が座った拍子にお尻の部分がビリビリと破れたこともあった.また看護職員には女性が多く,その人たちが結婚し妊娠すると貸与された白衣では間に合わなくなってきた.そんなことから自分の体型に合った白衣を独自で購入する者が出て来た.

事務長訪問

秋田市・明和会中通病院 小林太助事務長

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.614 - P.614

 小林氏は昭和50年に現在の中通病院事務長に就任されるまで,厚生省の国立療養所課を皮切りに(昭和27年),一貫して医療行政畑を歩んでこられた.その間,那覇に派遣されたり,東南アジア諸国の医療施設の設立運営及び医療事情調査などにも携わった.昭和46年から48年まで病院管理研究所にも席を置いたが,この間に1年ほどフランスのEcoleNationale de la Santé Publiqueに留学して病院管理学を学ばれている.
 氏に中通病院の瀬戸院長から,公衆衛生院の前田信雄氏を通じて,事務長をやってもらえまいか,という誘いがあったとき,かなり迷われたようである.

新 病院建築・43

熊本市立熊本市民病院の設計

著者: 牧野芳直 ,   古賀宏右

ページ範囲:P.617 - P.623

はじめに
 昭和21年病床数76床で開設された本病院は現在まで幾多の変遷,増改築を重ね,今回工事前には病床数246床,延べ面積約8,000m2,6棟の総合病院となっていたが,建物のプランや広さが,医療技術の進歩に質的量的に対応できず,施設全体の老朽化が進み,防災設備も不備なところがあり,公的病院としての機能に問題をなげかけていた.
 当初,基本計画を作るために病院を訪れたとき,外観・内部ともかなり建物が傷んでおり,施設全体の狭さが目立ったが,医師をはじめ院内各部門の方々と打合せを進めていくと,今までの不満足な診療施設のなかで熱のこもった仕事をされていることが良く分かり,「良い医療をしなければならない.そのために良い医療施設を要求する」ことが,あらためて認識させられたわけである.

海外の医療

米国のプライマリ・ナーシングの実情

著者: 松木光子

ページ範囲:P.624 - P.627

プライマリ・ナーシングとは
 プライマリ・ナーシングについては,1970年のナーシング・フォラムに出たMantheyらの論文1)が最初であるが,我が国の看護婦の多くがこの看護方式を耳にしたのは,恐らく1977年のICN (国際看護婦協会)東京大会であったであろう.そこでは,これがプライマリ・ケアとともに北アメリカの新しい看護の動向として紹介されていた.しかし,第一次医療としてのプライマリ・ケアまたはプライマリヘルス・ケアと,プライマリ・ナーシングを混同している場合もあるので,まず最初にどういうものかを明らかにしておきたい.
 プライマリ(primary)という言葉には,"第一次の","本来の","主要な","直接の"などの意味があるが,いずれもぴったりする日本語ではないので,あえて訳語をあてはめることもなかろう.それでは,一体,プライマリ・ナーシングとは何かということで一番ぴったりする表現を挙げれば,それは"私の看護婦,私の患者に帰ること"である.この表現は,Mantheyらの論文の副題に使用されているもので,看護本来の1対1関係に帰ることを意味している.この1対1関係は特にプライマリ・ナーシングに限るものではなく,古来からの分担方式である受持ち法(case method)にも見られている.

民間病院の経営と管理

第二薬局の普及状態

著者: 中村晃 ,   渡辺良久

ページ範囲:P.628 - P.631

 近年,いわゆる「第二薬局」の問題が論議されているが,その背景及び実態,そして将来について触れてみたい.
 第二薬局の創設が盛んに行われた時期を内容によってみると三つのピークがある.第1のピークは昭和35年前後,そして第2,3のピークは昭和50年から現在までである.第1のピークにおいては国立大学病院が中心となり,第2のピークは民間病院,第3のピークすなわち現在は民間小病院ないし診療所が中心になっているとみられる.したがって「第二薬局」と一括し論ずることはできないが,ここではなるべく共通の問題を挙げて論じてみたい.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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