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雑誌目次

雑誌文献

病院40巻8号

1981年08月発行

雑誌目次

行政畑から転身,数少ない女性の学院長へ 三井記念病院高等看護学院長 山田里津さん

著者: 永野貞

ページ範囲:P.641 - P.641

 山田里津さんとはもう30年来の親しいつき合いである.知り合ったのは私が国立公衆衛生院衛生看護学部に勤務し,彼女が三重県衛生部看護係長時代であったと思う.私の父方の郷里が三重県渡会郡の在であった関係で帰省の折しばしば話し合ったりした.私は彼女の物事に対する反応の速さに驚いた.
 私が厚生省医務局看護参事官として移って3年目で看護課は復活した.彼女自身も看護婦係長として本省に転勤した.地方に調査を依頼したときなど実に敏速によく協力してもらったし,会合でも臆せず意見を表明したことを憶えている.ご本人は,自分はあわて者で,またあまりはっきりものを言うので……と言っておられるが,あるいはそれは当たっているようにも思う.

グラフ

5年間で再建—改革—拡張—十和田市立中央病院

ページ範囲:P.642 - P.647

 モニュメント「早蕨」の作者佐藤忠良氏は,昨年5月,新装なった病院の落成式と兼ねた像の除幕にあたって次のように述べている.「…あんなものを建てるなら救急車のたしにしたり,医療機器を買うのにまわしたほうがいいんじゃないか,と思われる方もいらっしゃるんじゃないか…無駄といえばこれほど無駄なものはないだろうと思うんです.しかし,私は対抗できないにしても,その分だけそれに答えられるものを作りたいと努力したつもりです.」その言葉のとおり,さわやかな躍動に満ちた肢体は,再生した病院の未来への希望と,六万十和田市民の健康のシンボルとなっている.今春には,国立ロダン美術館で開かれた作者の個展のためパリに渡った.
 本病院が累積赤字約3億円を抱え,303床に医師は唯一人だけという崩壊寸前の状態から,今日の近代病院へ生まれ変わった経緯については,増改築を中心に既に本誌で詳述された(末武保政:モニュメント「早蕨」の下で.40巻2号,114-117頁,1981).赴任以来5年間にわたる再建の跡を振り返って,末武院長は「試行錯誤の繰り返しであったが,それは病院管理学そのものの実践であったようだ」と述懐する.

小特集 病院臨床実習の実情と問題点

病院臨床実習の意義と実際

著者: 小酒井望

ページ範囲:P.649 - P.651

臨床検査技師教育と私■
 私が医療関係者の教育に従事したのは,まず検査技師のそれで,昭和27年からのことである.第二次大戦後,近代的病院管理が米国から導入され,その一つとして臨床検査室の中央化が取り上げられた.私の勤務していた国立東京第一病院(現国立病院医療センター)に中央検査室が設置されたのは昭和25年のことである.それまでは,「医師は自分の受け持つ患者の検査は自分でやれ」というのが医科大学における教育方針であったから,検査技師は必要なかったというわけである.しかし臨床検査の種類が増え,医師がそれらを自分で行うことが不可能になってくると,専門の技師が必要になり,それが臨床検査室の中央化と相俟って,検査技師の養成学校が必要となった.昭和27年に我が国最初の検査技師学校が創立されたが,その創立の経緯は省略するとして,その講義と実習を私どもが主として担当することになった.
 米国では1920年代から技師学校が存在し,技師教育が充実していると聞いたので,米国の技師学校(schoolof medical technology)のカリキュラムを手に入れ,検討した.当時の米国の技師学校は高校卒業後の2年間,ジュニアカレジで所定の基礎科目の単位を修得し,病院検査部に附属する技師学校で満1年間,実習を主とする臨床検査の教育を受けることに定められていた.

臨床実習受入れのメリットとデメリット—病院の側から

著者: 安冨徹

ページ範囲:P.652 - P.653

 標題のテーマをいただいて実のところ大変困惑した.このようなことをあらためて考えてみたことがなかったからである.どんな職業でもそうであろうが,特に医師やナースは企業秘密がないだけに,自分の知っていることや経験を惜しむことなく後輩に相続してもらうのが当然と考えている.したがって取り立てて実習の場を提供することの損得計算はしてみたことがないわけである.しかし考えてみれば,どんな営みにもメリットとデメリットはあるはずである.ただひとくちにメリットと言いデメリットと言っても,それをそのように受け取るのはそれぞれの立場によって異なるのは当然である.ここで求められているのは「病院の側から見た……」とあるから,病院の管理者としての立場から感ずるそれであろうが,同時に現場における指導者としての感じ方も含まなければならないであろう.ひとくちに言って現場の指導者といっても階級の差があることであるから,細かく言えば更にいくらかの違いがあるはずである.
 このテーマをいただいて,大げさに言えば愕然とした私はすぐ臨床実習の現場の責任者としての婦長と主任の10数名の人に,この旨を伝えて数枚の感想文を書いてもらった.ここではその感想文のまとめを軸として,私なりの考えをいくらか付け加えて述べることにした.

臨床実習受入れの実情と問題点 看護部門

臨床看護婦は,すべてが学生指導者

著者: 西條ひとみ

ページ範囲:P.654 - P.656

 看護教育における臨床実習の意義は教室で学んだ原理・原則を臨床において個々の患者に応用することにあると言われている.この看護教育の効果を左右するとまで言われる臨床実習について,学生を受け入れている臨床の側から当院の現状と問題点を考えてみたい.

臨床検査部門

実習病院の格差をなくす方向で

著者: 伊藤一広

ページ範囲:P.656 - P.658

 臨床検査技師学校は3年制であるが,多くの学校が学内での基礎実習を終えると外部の病院を実習の場として求めるのが常である.また薬学部,衛生学部,理学部などの学生が春休みや夏休みを利用して短期間の臨床実習にくる場合もある.当院ではこれらの学生を可能な限り受け入れているが,何と言っても技師学校からの実習生が主なので,ここでは技師学校の実習を対象として話を進める.
 私たちの検査部では毎年4校から計14名の学生を引き受けている.実習期間は9か月ないし1年で,2名一組となって各検査室を回っているが,開始時期が1月,4月,10月と各校ばらばらなので実習日程表を作るうえで大変苦労している(図).この日程表は各校の実習生担当主任により作られ,各検査室から日程表作製について要望事項があれば,主任会議などで討議のうえ改訂することもある.

放射線部門

学校と実習施設間の交流促進が必要

著者: 大越健一

ページ範囲:P.658 - P.662

実習生受け入れの実情■
1.放射線治療実習(実習責任者:補佐坂井博志)
 ライナック1台,アフターローデング1台,カリホルニウム1台,シミュレータ1台が,現在実働の装置で,規模の割合に,治療室の数,装置数とも少なく,受け入れる適正な学生数は3名くらいと考えているが,現在,城西と都立から時期をずらし,それぞれ5名なので,やや荷が重い.両校とも,実習期間は2週間(82時間)で,時間は少ない.
1)高エネルギー放射線照射の実習:鉛ブロックによる不整型照射野の補正,シャドートレーの着脱,ウェッジフィルターの使用,絞り調整,固定器具の使用法を実習させ,照射は見学させる.加速器モニターの増量更正実習.

リハビリテーション部門

受持ち患者が多く,実習指導は片手間に,が実情

著者: 福島芳孝

ページ範囲:P.662 - P.663

 我が国における理学療法士の養成が始まったのは,1963年からであり,既に18年の歳月が流れている.この期間に養成校は30校近く,理学療法士の数も3,000名近くになり,5年後のその数は6,000名を超すと言われている.それ以降は職域の拡大や定員増の要求を考えない限り,いずれ失業問題が起こると予想され,前途多難である.このような時期に,我々ひとりひとり専門職としての資質を問い正していくことは大切である.その中で,学生を指導していく臨床指導者としての責務は,誠に重大であると感じている.

座談会

"よりよい病院実習"への課題

著者: 吉武香代子 ,   妹尾昭一 ,   森三樹雄 ,   堀江朝子 ,   川北祐幸

ページ範囲:P.664 - P.671

 川北 医師以外の職種の病院における実習,特に学生実習を中心にしてお話を進めたいと思います.医療の専門分化に伴い学校教育が充実してきました.その結果,病院実習が増えてきています.これは法的裏づけがあるなしにかかわらず,カリキュラムの強化の中で実習が取り上げられてくるようになった結果でしょう.
 今,病院には医者も含めて24種ぐらいの,法に基づく専門職種があり,それぞれ専門教育を受けています.これらがなんらかのかたちで病院実習を取り上げて,実際に病院に実習生を送っています.

寄稿

診療録管理・情報処理システムの展望—ストックホルムカウンティの事例を中心として

著者: 西本至

ページ範囲:P.672 - P.674

 近年,我が国でも広義の病歴もしくは診療録(medi-cal record)管理や情報処理システムに対する関心が高まっている.その理由としては,医療分野での種々のニーズを満たすためには医療の客観的情報が必要であり,診療記録が疾病統計,業務統計,臨床研究などの各種の医療活動に多角的に利用される基礎データであることが再認識され始めたことが考えられる.いずれの使途に力点が置かれるかはそれぞれ病院の方針によって異なるが,今後多くの病院がなんらかの形でこのシステムを取り入れる傾向が増すことは疑いない.そこで本稿では,主にスウェーデンのストックホルムカウンティでの診療録情報システムの現状を紹介しながら,我が国における今後の課題や展望について検討を加えてみたい.

民間病院の経営と管理

薬価切下げと薬剤の購入

著者: 田中凞 ,   深瀬邦雄

ページ範囲:P.676 - P.679

薬価改正を忍ばず
薬価基準引下げ18.6%という数字
 今回の薬価改正に際して,告示前から,様々の予想・反応等が飛びかい乱れる中を,いたずらにそれらの動きに惑わされることなく,静かに告示の日を待った私的病院機関も多かったことと思われるが,当院もその一つであった.56年5月9日,新薬価告示のその日,正に私的病院は震えた.危機の念にである.発表によれば「今回の薬価基準改訂率18.6%,医療費換算でみると6.1%(ただし医科では6.7%)に当たる」とされた.果たしてそうであろうか.
 以下に当院のささやかな分析とそれへの対処を通じてて,いささかの「思い」を訴えたい.もとより一病院の軌跡にのみ論拠を求めるのは決して正しくないし,公の発表である以上,十分なる討議と,使用頻度に基づく十二分の荷重平均計算がなされた上での医療費換算比率6.1%なのであろうが,少なくも地道に,こつこつと18年間地域医療の要請に応じた形で少しずつその対応を拡げて来たごく普通の私的一般病院を自認する当院の数字とは大きな隔たりがあり過ぎるように思われる.

我が院内報

信楽園病院「信楽」

著者: 大須賀ヒロ子

ページ範囲:P.679 - P.679

 当院は新潟市の郊外,佐渡が島が眺望できる砂丘にあって隣接する「有明福祉タウン」の中心的役割を担っている.結核療養所として昭和6年に発足し来年は創立50周年を迎える.病床数320の内科系慢性疾患の専門病院で呼吸器疾患・感染症・腎疾患・血液透析・脳卒中・リハビリテーション・消化器疾患の内外科系診療に重点をおいており,本年から脳神経外科を開設した.
 当院の広報紙は昭和38年ごろから不定期ではあったが発行されてきていた.現在の広報紙『信楽』を年4回発刊するようになったのは昭和54年6月15日からである.広報委員会のスタッフは調査広報室長(医師)を委員長とし,職種の異なる6名で編集に当たっている.

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機器短報

ページ範囲:P.681 - P.681

患者監視装置
 日本光電工業(電話03-953-1181)は,マルチディスプレイを可能にした患者監視装置「ライフスコープ11(イレブン)」(OMP−7201,同7202の2機種)を発売した.
 特徴は,①操作が簡素化され,看護婦に親しみやすいシンプルなデザイン,②心拍数計測の信頼性が大幅に向上,また新手法によるノイズ対策,ベーシングパルス対策がなされている,③テレメータ方式を採用,④マイコンを活用し,波形,グラフ,測定値などをマルチディスプレイする,⑤心拍数,各血圧値,呼吸数,体温など9種類のトレンドグラフが観察できる,⑥故障発見が早く,修理時間を大幅に短縮できる,など.<標準価格OMP−7201が248万円,OMP−7202が232万円>

講座 病院経営分析入門・5

患者統計の分析(入院・続)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.682 - P.683

病床回転率
 病床利用効率の測り方のひとつに病床回転率がある.これには(イ)年間入院患者実数÷平均実働病床数(ロ)年間退院患者数÷割当病床数がある.
 (イ)の分子には,その期間に取り扱った入院患者実数つまり期首の繰越患者数に期間中の新入院を加えたものをとる.

医療の周辺 物理学・3

放射線計測と防護

著者: 尾内能夫

ページ範囲:P.684 - P.685

 放射線が癌の治療及び診断に用いられていることを述べてきたが,その放射線が癌を作ったり,火傷を起こしたりすることも分かっている.X線が発見されてから5年後の1900年にはX線による世界最初の犠牲者がでている.彼は皮膚癌で死亡しているが,1896年から4年間X線透視を見世物としていたというから相当の放射線量を被曝していたに相違ない.また,Raが発見されてから7年後の1905年にはRaによる世界最初の犠牲者がでている.彼は火傷で死亡しているが,ウラニウムからの放射能を発見したBecquerelも,Raをポケットにしまい忘れて胸部に火傷を起こしている.このように放射線の危険性については早くから分かっていたので,放射線を過度に照射しないために放射線量を正確に測定する方法の研究や放射線から身体を守るための放射線の遮蔽方法の研究,またどの程度の放射線被曝によって,どういう障害が現れるかといった研究が,放射線物理学者,放射線生物学者,放射線医学者によって実施され,そのデータに基づいて放射線計測と放射線防護の方法が国際的組織でまとめられ,報告されている.

病院職員のための医学知識

腎移植の実際と課題

著者: 落合武徳

ページ範囲:P.686 - P.687

腎移植はいつごろ始まったのでしょうか
 腎移植は表1に示したように1950年代に入ってアメリカとフランスで始められました.この当時は未だ拒絶反応に対する治療薬がありませんでしたので,肉親の間の移植も拒絶反応のために数か月で腎機能が失われてしまいましたが,拒絶反応のない一卵性双生児の間の腎移植は成功し,特に56年にボストンで移植された人は16か月後には出産しました.日本では65年前後から東大第2外科,京都府立医大第2外科,大阪大学泌尿器科,千葉大学第2外科などで始められました.

統計のページ

病院経営の実態・2

著者: 森福省一

ページ範囲:P.688 - P.689

病院の経営収支(つづき)
3)赤字黒字の程度による病院分布
 病院全体の収支率の年次推移は表3に示したが,総収益100対総費用割合階級による病院分布の推移を示すと表6及び図1のとおりである.
 前述のように,53年は,赤字病院の割合も少なく,赤字程度の大きい病院の割合も少なかったが,54〜55年になると,総収支率130.0以上というような病院の割合も漸次増加し,病院経営収支状況は全般的に沈下してきたことが認められる.

病院管理の工夫

病院給食と食事療法

著者: 島雄満子

ページ範囲:P.690 - P.692

 食事療法の歴史は古い.文献によると,バビロニア医学「ハンムラビ法典」はB.C.5000年に,また中国では"周公旦"の著,周礼のB.C.1027〜771年にさかのぼることができる1).例を食の文化を同じくする中国に取ると,食事療法をつかさどる医を食医とし,疾医(内科),瘍医(外科)に分けると記されている.
 食医は,六つの穀類,六つの肉類,六つの料理,六つの成分,六つの基礎食品の配合と調理を計る者でもあるとされている.

放射線科における工夫—正確な情報伝達のために

著者: 荻原淳

ページ範囲:P.693 - P.693

 人と人との間に意志を通じさせることは,人間社会を進歩させる上で最も重要なことであり,それができること,そのことが,人間社会である.病院においては,意志の疎通が最も重要であり,組織が大きくなれば,機能も大きくなり,意志伝達が十分に行われ難くなる.ではどのようにしたら意志伝達が可能だろうか.人々がいろいろな形で意志伝達の方法を述べてはいるが,顔を合わせての伝達が最も伝わりやすく,口づてに伝達する方法が一番通じ難いと考えられる.
 病院においては,特に組織が大きくなれば大きいほど意志伝達は難しくなる.私どもの周りで行われている日常の仕事の中で,特に患者の診療にかかわる情報伝達は正確でなければならない.情報の発信者と最終受信者との間に相違があってはならないし,また伝達の速度もあまり遅れるようでは困る.X線撮影においては診療に当たっている医師からの依頼票という形で情報が発生する.忙しい診療の間であっても,その意志(依頼内容)が的確でなくてはなんの価値もないし,万一誤情報があれば大変に困ることが起きる.そのように考えると依頼票一つにしても,そのなかに含む様々な要件を的確に満たすようになっていなくてはならない.私たちは,業務の合理化と意志伝達の正確さにのっとり,依頼票の記述様式と業務ルートに沿った情報のとりこぼしをなくすることを目的に,チェック複葉方式の依頼票を使用している.

身近にあるものの看護用具への応用

著者: 城田クニ子

ページ範囲:P.694 - P.694

 私たちは限られた看護人員と看護用具を最大限に活用し,患者が入院生活を安全で快適に過ごせるように,身近にあるものをもう一度見直し工夫してみた.実例を以下に紹介する.

事務長訪問

国保直営君津中央病院 古谷直事務局長

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.695 - P.695

 人の「和」を第一に強調されるところは,ほかの事務長さんと変わらない.しかし,その意味するところが,どこか違う.「和」というと,和気藹々とか,互いに立場を尊重し合うといった,足して2で割る式が一般的であるが,古谷さんがこの言葉を使われる場合は,常に行動を伴う具象的な話の途中に限られている.
 事務職員が医師や看護婦に用事のある時,電話で用件を済ませてしまわない.直接足を運んで相手に接触させる.話しにくいとか,いやだと思う人にほど,体でぶつかっていく.そうすれば,相手はまともに対応せざるを得ない.言葉上だけの交流ではなく,人と人との生きた疎通性がそこから開ける.今では,他の部門にもこの方式が浸透して,医師も何かあると直接当該部署にやって来て,質問したり注文を付けたりするようになった.

新 病院建築・44

神戸市立中央市民病院の設計

著者: 伊藤喜三郎 ,   石島秀雄

ページ範囲:P.697 - P.702

はじめに
 神戸市立中央市民病院は今から57年前,大正13年2月に長田区三番町で誕生し,その後昭和28年生田区布引の生田川畔に新築移転し,今回昭和56年3月神戸市の近代化のシンボルである海上未来都市「ポートアイランド」に生まれ変わって新発足した.
 旧病院は長年にわたり,神戸市民の基幹的医療施設として機能し,数数の業績をあげてきた.特に救急救命センターとしての救急部の活動などは全国的にも名高いものである.

病院精神医療の展開

精神科老人病棟の運営とそのあり方

著者: 小野江信介

ページ範囲:P.703 - P.706

 我が国における老年人口は,近年著しく増大し,65歳以上の人口は,昭和55年10月現在1,000万人を超え,全人口の9.0%に達している.この傾向は今後とも続き,65年には11%,80年には15%強,すなわち65歳以上の老人が2,000万人を超すであろうと言われている.
 このような老年人口の増加は,当然ながら脳器質性精神障害の増加をもたらし,この対策が老人の医療,福祉を考える上で大きな問題となってきている.

海外の医療 40人の見たUCLA Medical Center・8(最終回)

虎の門病院のUCLA見学プロジェクト

著者: 南雲英俊

ページ範囲:P.707 - P.710

UCLA見学
物品管理の一つの指標
 物品の供給,管理方法は病院によって様々である.今回の研修に当たっては「物品の補給体制」,特に病棟での物品管理の実情をみるのが私の研修主眼であった.
 物品の供給担当部署はCentral Service (Supply)/Cen-ral Distributionと言い,我が国の用度・中材に当たる(図1).

海外見聞記

中国の医学教育,研究,医療の現状—北京市中心の医療視察・2

著者: 安達勇 ,   佐分利輝彦 ,   本間三郎

ページ範囲:P.712 - P.715

中国医学科学院の病院施設の視察からみた医療,臨床研究活動
 衛生部が私たちに示してくれた資料によると全国の病院数は65,000で,病床数が185万床(うち都市部が71万床,農村部が114万床)である.医療体制は,都市部の末端に診療所があり,そこは中等専門学校を出た医士が診療に当たっている.その上に,区,市の病院,更に県,省や国が管理する病院がある.一方,農村部においては,人民公社の末端組織として生産隊があり,そこに初等専門学校を出た,衛生員や助産婦が配置され,出産や保健衛生的な医療行為を行っている.その上の生産大隊には,合作医療ステーションがあり,そこに,いわゆる"はだしの医者"が3〜5人配置され,救急医療や保健衛生活動を行っている.病院施設としては人民公社に10数床程度の病床をもつ衛生院が設置され,15人ほどの医師または医士が診療に当たっている.そのほかに,農村部の医療を援助するために,都会や解放軍から医師を派遣し,人民公社の衛生院などを利用して,巡回医療活動を行っている(図).
 ここで,簡単に中国の医療保障制度を紹介しておきたい.表に示したように,一つは,国家公務員,大学職員,学生を対象とした公費医療制度で,また,一般の都市労働者に対しては労働者保険制度がある.これらは本人は無料で,家族は半額または全額自己負担となっている.しかし,中国ではほとんどの人が共働きをしているために実質的には無料であるようだ.

研究と報告【投稿】

田浦共済病院における医療相談業務の実態

著者: 中村泰子 ,   福沢玄英

ページ範囲:P.716 - P.718

 今日,社会状勢の複雑化とともに,患者の有する問題も多岐にわたるようになってきており,また,人口構成の高齢化とともに,病院においては高齢者の占める割合が年々増加してきている.
 これら高齢者にあっては純医学的な問題のほかに,その退院に当たっては,受け入れ側の家庭の事情,また,一人暮らしの老人では,退院後の日常生活上の問題などがある.このため入院が長期に及びがちであり,昨今の病院は程度の差こそあれ,高齢者の収容施設化の傾向にあると言えよう.

随想

命虔しめ

著者: 近藤良一

ページ範囲:P.719 - P.719

 石田波郷は,清瀬の東京療養所で,昭和23年10月と12月に2回の胸成術を,翌24年4月に遺残空洞に対する肋膜外合成樹脂球充填術を受けてなお排菌が止まらず,絶望はしないが希望もない,希望がなくとも生きてゆけると,当時は療養所俳句の全盛時代であったので,彼もさかんに療養俳句を作っていた.
七夕竹惜命の文字隠れなし

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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