文献詳細
海外見聞記
中国の医学教育,研究,医療の現状—北京市中心の医療視察・2
著者: 安達勇1 佐分利輝彦2 本間三郎3
所属機関: 1国立がんセンター内科 2病院管理研究所 3千葉大第二生理学
ページ範囲:P.712 - P.715
文献概要
衛生部が私たちに示してくれた資料によると全国の病院数は65,000で,病床数が185万床(うち都市部が71万床,農村部が114万床)である.医療体制は,都市部の末端に診療所があり,そこは中等専門学校を出た医士が診療に当たっている.その上に,区,市の病院,更に県,省や国が管理する病院がある.一方,農村部においては,人民公社の末端組織として生産隊があり,そこに初等専門学校を出た,衛生員や助産婦が配置され,出産や保健衛生的な医療行為を行っている.その上の生産大隊には,合作医療ステーションがあり,そこに,いわゆる"はだしの医者"が3〜5人配置され,救急医療や保健衛生活動を行っている.病院施設としては人民公社に10数床程度の病床をもつ衛生院が設置され,15人ほどの医師または医士が診療に当たっている.そのほかに,農村部の医療を援助するために,都会や解放軍から医師を派遣し,人民公社の衛生院などを利用して,巡回医療活動を行っている(図).
ここで,簡単に中国の医療保障制度を紹介しておきたい.表に示したように,一つは,国家公務員,大学職員,学生を対象とした公費医療制度で,また,一般の都市労働者に対しては労働者保険制度がある.これらは本人は無料で,家族は半額または全額自己負担となっている.しかし,中国ではほとんどの人が共働きをしているために実質的には無料であるようだ.
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