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雑誌目次

雑誌文献

病院41巻1号

1982年01月発行

雑誌目次

特集 新医療費と医療の流れ

病院医療の展開と医療費制度

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.18 - P.21

 最近医療の分野に起こっている変化の大きさと早さには驚くほかはない.しかもそうした医療事情は急速に悪化に向かう兆候を示している.特に昨年6月に3年4か月ぶりに行われた医療費の改定以降,医療機関の間には失望とともに大きな危機感が生まれ,それは今や医療機関の全体を覆っているかに見える.その根底には何かこれまでにない事態あるいは環境変化が起こっているといった予感ないしは不安が働いているようにも思われる.
 その予感や不安はおそらく事実に合致していると言ってよかろう.むしろ実際にはそれ以上のことが起ころうとしているとさえ思われる.昨年の医療費改定までの経過や改定内容に現れた変化などを見ても,その一端は明瞭にうかがわれるような気がする.今や,医療の流れは大きくかつ急速に変わろうとしている.昨年の医療費の改定は,その前触れと見てもよいものではなかろうか.

地域内における機能分担への模索

著者: 藤咲暹

ページ範囲:P.22 - P.25

医療環境の変化と対応■
 医療の社会環境条件の変化として,高齢化社会の到来と医療技術の高度化とが挙げられる.疾病構造の変化を伴った人口の老齢化は,我が国に高齢化社会の到来を必至のものとし,しかも,その急速な進行と世界のいかなる国も経験のない老人大国の出現をもたらしつつある.このような情勢の中では,疾病を持つ老人の増加は当然に予想しなければならない.一方,医学及び関連領域における学問の進歩は,医療技術の高度化を招来し,医療機器の高額化に如実に示されるように,医療の巨大化として急激に進行しつつある.これらの条件は医療資源の投入の増大をもたらし,強いインパクトを社会に与えることになる.
 特に医療費の膨張は,我が国では未だ余裕があるとはいえ,諸外国の趨勢を前提とした社会的危機感は深刻化しており,また,医師数の増加の問題は,現在の医療体制の延長線上では,近い将来に深刻な事態を招くことになろう.更に,国の赤字財政が危機的な状況にあることから,医療費の抑制策がより強力に現れるおそれがあった.

診療報酬における技術評価

著者: 大村潤四郎

ページ範囲:P.26 - P.28

医療費体系改革の方向■
 昨年6月1日の医療費改定は単なる改定ではなく改革の要素を多分に含んでいる.昭和33年医薬分業を契機として,薬価と技術を分離した新医療費体系に基づく点数改正が実施され,点数表は甲乙二表に分かれた.今回の改革は前回の改革ほど大きくはないが,一つの新医療費体系である.そこで,今度の新体系の医療機関に及ぼす影響が,その医療機関の診療内容によって様々であるのは当然のことである.33年改定は上げ幅8.5%,今回の上げ幅8.4%と近似しているが,前回は薬価基準の引き下げはなかった.前回は医師会が猛烈に反対し,その結果点数表は旧体系による乙表を残さざるを得なかったが,今回は医師会が積極的に推進した改革であるという.
 今回の改革に当たって,三本の柱ともいうべき方針は技術料の適正評価,プライマリー・ケアの充実,保険外負担の解消であるという.

新医療費と高機能病院の対応

著者: 諸橋芳夫

ページ範囲:P.29 - P.32

 昭和48年秋の第一次石油ショックによる狂乱物価,人件費の上昇で,虎の門病院,日赤医療センター,済生会中央病院,聖路加病院等は軒並み大赤字となった.昭和49年2月に医療費改定(実質上げ幅17.5%)はあったものの,これら17大病院(高機能病院)は当時,このままでは更に赤字が増額し,正に危殆に瀕するとして「大病院財政危機問題連絡会」を作り,厚生省に対し医療費改定とともに財政危機の根本的解決を図る対策を要望したことは今なお我々の記憶に生々しいものがある.幸いこの年の10月,2回目の改定(16.0%)があり,病院はようやく生き返った.その後51年4月(8.6%),53年2月(9.3%)に医療費改定が行われて,53・54年度の病院経済は稀にみる好況の決算をみることができた.
 従来医療費改定はいつも後追い方式を取り,今年3月の公的一般病院移動年計によると医業収支率は甲表病院では,53年4月より改善された収支比率が55年11月に至って再び100を超え,赤字となり,また厚生省医務局の病院収支調査月報によれば昭和56年3月の一般病院の医業収益100対医業費用の割合を見ると,特に高機能病院と推定される400床以上の病院の医業費用・給与費は高額となり,赤字額も多くなった.

新医療費と一般病院の対応

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.33 - P.36

 今回の医療費改定による影響率の調査は,全国公私病院連盟の手で即時行われた.
 その結果,収益増になったのは精神病院で,40施設中39施設が4〜8%の増収になったが,一般病院では,64%が減収となり,上がったものでも2〜3%,ほとんどが5〜6%の減収となった.厚生省は改定に際して,8.1%の引き上げであり,医科では8.4%,病院では8.7%になると言ったのであるから,これをまともに信じた病院経営者が,一斉に驚きかつ怒ったのは当たりまえのことである.

座談会

新医療費と医療の流れ—背景と評価を主題に

著者: 尾口平吉 ,   高木紹夫 ,   石原信吾 ,   行天良雄 ,   小笠原道夫

ページ範囲:P.37 - P.44

 小笠原(司会) 昨年6月の改定が大きな波紋を起こしていることには,二つの理由があると思います.一つは,今度の改定そのものがいろいろの方向性を示した改定であること.もう一つは医療の総わくがちっとも拡がらなかったこと.また,増収が全くないという非常なショックに加えて自分の病院の収入以外に,日本の総医療費という観点からみると総医療費をこれ以上増やしてはいけないという気持ちがある.そういう自分自身の中のジレンマが一つのいら立ちになっているということです.総医療費を増やさないで,わく内再配分ということがあるわけですが,これもいくら考えたって限度がある.
 そこで,この辺で日本の医療に新しい発想による組み直しをしなければいけないと,概念的に考えてもその結論が出ない.ですから新しい道の目途がついてくれば多少はそのいら立ちも収まるという気もしますが,差し当たって3年4か月待ってた医療費の増額がないという目の前の苦しさというものは,これはもう覆い隠しようがないわけですね.

熟年に寄せられる大きな期待 慶応義塾大学医学部病院管理学教室教授 倉田正一氏

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.9 - P.9

 昨年10月に慶応義塾大学医学部長及び義塾理事に就任された.以来,従来のご多忙に輪がかかり,最近ではお電話してもなかなか連絡がとれないほどである.
 先生は,今や我が国の病院管理学の現役教授中最古参であられる.昭和38年5月に慶応大学に病院管理学教室が創設された時,若くして初代教授になられた.東北大学の島内,日大医学部の永沢,順天堂大学の守屋の各元教授に次ぐ我が国4人目の教授である.

グラフ

全科にPOSを採用した医科大学—滋賀医科大学を訪ねて

ページ範囲:P.10 - P.15

 "医大のない各県に医大を一つずつ"という田中内閣の施策に沿って,大津市に滋賀医科大学が誕生したのは,昭和49年10月.昭和50年4月には大津赤十字病院(766床)を関連教育病院として,第1回の新入生を迎えた.付属病院は3年後の53年10月開院,現在600床で,昨年3月第1回の卒業生を送り出している.
 開学に際しては,まず国策に沿って地域住民のための医大を作ること,古い大学のもつ権威主義セクト主義,学閥などは極力排除し,新しい大学にしかできないことを実行すること,中に働く全職員が一丸となって患者中心の医療を作っていくこと,を目標に据えた.そこで教職スタッフの選考に当たっては特定の大学に片寄ることを極力避け,教授クラスは京大,京都府立医大,阪大などから均等に招き,同じ大学から10人を越えないように配慮した.さらに助教授・講師クラスはかなり多くの人を市中病院からも招いたという.また若いスタッフの意見を大きく採り入れる方針をとった.そうしたことから一応講座制を敷いているが,POSの採用やproblem中心の新しい臨床医学入門講義などの採用によって講座制の陥りやすい弊害を極力避けるようにした.

中小規模病院の運営

中小病院の役割とその展望

著者: 川添善弘

ページ範囲:P.45 - P.48

病院と診療所の相違
 日本の医療は,病院,診療所を中心に行われている.最近は,各種の保健組織,検査施設,社会復帰施設,老人ホームなどの虚弱者援護施設や,訪問看護などのケアが進展しつつあるが,その大部分は,病院,診療所を母体としている.
 昭和53年には,1日平均で115万人の入院患者,716万人の外来患者が,病院,診療所で医療を受けた(歯科診療所を除くと外来患者数は,598万人である).無床診療所を除けば,医師は,入院患者も外来患者も診療するが,平均的にみて,1人の外来患者に掛ける手間は,入院患者の2.5分の1程度であるので,以下,入院患者+外来患者÷2.5を入院換算患者数と呼ぶこととする.病院,診療所を含め,医師1人当たりの患者数は,入院6.9人,外来42.8人であるから入院換算患者数は21.2人となる(医師にも,常勤者と非常勤者があるから,勤務時間を考慮して,常勤換算をしている).

設備機器総点検

ワードプロセッサ—レターメイト80

著者: 石山稔

ページ範囲:P.49 - P.49

 邦文タイピストが休暇をとってもだれかがタイプできる体制,その答えがワードプロセッサ(以下ワープロ)レターメイト80(写真1)である.
 ワープロもマイコン同様,販売競争が激化しているが,特色をつかみ,自分にあったものを選択することだ.レターメイト80は,だれでもわずかの練習で,邦文タイプを打てると同時に,様々の機能を有しているので,使い方によっては,革命的な事務機器となる.

講座 病院経営分析入門・10

医業費用の分析

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.50 - P.51

 病院勘定科目として挙げられている各費目について,大きさ,増減,支出の妥当性といったことを検討する.しかし損益計算書や補助簿をみるだけでは不十分であって,それぞれの費目がどのような事情にもとづいて支出されたかを多角的に観察評価しなければならない.

バイオエシックスと医療

1.バイオエシックスと「医の倫理」

著者: 木村利人

ページ範囲:P.52 - P.53

 バイオエシックスと医療とはどのようにかかわり合っているのかについて,具体例をあげながら,これから1年間,読者の皆さん方とともに一緒に考えて行きたいと思います.
 まず第1回目は,バイオエシックスと医の倫理との関係を分析しつつ,「医療における同意」と「医師—患者関係の型」をめぐって,その問題点を指摘してみたいと思います.

病院職員のための医学知識

肝炎ウイルス

著者: 志方俊夫

ページ範囲:P.54 - P.55

肝炎ウイルスはどのように発見されましたか,そしてどのようなものがありますか.
 昔カタル性黄疸と呼ばれていた肝臓の病気が,臨床的にまた疫学的にウイルスによる伝染性疾患であろうと推定されたのは1920年代から1930年代にかけてであった.1940年代には弘好文,MacCallumらによって人体接種実験が行われている.しかしB型肝炎ウイルスがみつかったのは1960年半ばBlumbergがオーストラリア抗原を発見したのを契機にしてであり,A型肝炎ウイルスがみつかったのは1970年代半ばと実に長い期間を経過した.ここで既にA型,B型ということを述べたが,ウイルスがみつかるかなり前から疫学的,臨床的に2種類のウイルス性肝炎が知られていた.流行性肝炎と呼ばれ,食物,水などを介して経口的に感染するA型肝炎は戦争などに関連して,また平時も地域的に大流行を起こした.一方,B型肝炎は黄熱病などのワクチン接種などによって感染し血清肝炎と呼ばれていたのである.
 臨床的にはA型は潜伏期が短く,B型は長いとされた.しかし現在は既にA型肝炎とB型肝炎の全貌はほぼ明らかにされ,既に治療とか予防とか対策の段階に入っている.B型肝炎ウイルスは血中に存在するので輸血によって多くのB型肝炎患者が発生した.

統計のページ

病院に勤務する看護職の労働実態・1

著者: 鶴田薫

ページ範囲:P.56 - P.57

 日本看護協会がまとめた「昭和54年病院における看護職の労働実態調査」の結果から,病院に勤務する看護職の労働実態について主な点を2回に分けて報告する.

病院管理の工夫

看護部のこころみから

著者: 関場泰

ページ範囲:P.58 - P.59

 ①患者本位の病院 ②職員が安心して働ける病院 ③管理者に心配をかけない病院 ④新しい医療に遅れない病院
 以上が当院本宿尚院長の常に全職員に示している病院運営の基本的考えであり,看護部としてもこの方針に沿うための努力をしているものの,容易にその具体的対応を見い出せないでいる現状であるが,ここに2,3の事例を記してみる.

宮川医院の管理に学ぶ・2

患者教育の工夫

著者: 宮川和幸

ページ範囲:P.60 - P.61

 マンガ本の大流行である.どこの大学の階段教室の机の下にもマンガ本が読み捨ててあると教授たちは言う.通勤電車でも社会人となったいい大人が,少年〇〇とやらに夢中になって,ひとりでニヤニヤしている風景は既に日常的となった.面会にきた夫の置き忘れたマンガ本を見てみると,知的なものからも,美的なものからも程遠い.自分で考えずに人が作ってくれた一コマ一コマを追ってゆく.退屈しのぎ,時間つぶしと思えば腹を立てるほどのことではないかも知れない.
 我々の時代には「坊ちゃん」とか「我輩は猫である」などの名作は,中学一年のころまでにほとんどの者が読み終えていた.

事務長訪問

横浜赤十字病院 益田啓作事務長

著者: 本誌編集室

ページ範囲:P.62 - P.62

 「私は妥協することが一番嫌いです.だから労使交渉においても,瀬踏みはしない.考えに考えた末にある線を出してそれを動かさない.組合はそれでは交渉にならないというが,かけひきということが嫌いなんです」と横浜赤十字病院事務長益田啓作さんは言う.院長の陰で内助に徹する方とは違い,はっきりものを言う事務長さんである.
 益田さんは,昭和39年,病院新築を手がける院長の秘書として勤務,主に新築関連の仕事をした.以来,昭和41年事務副部長,45年に事務部長に就任した.病院勤務の前には,サラリーマンとして実業界,教育界で働いていた益田さんにとって,病院はいい所だという.専門職の集りで,ライセンスを持たない事務系にはやりにくいと言われ,特殊視される医療界だが,益田さんに言わせると,病院というところは利潤の追求ばかりを目的とする職場とは違って,一所けん命やれば感謝される数少ない職場だという.商社などでは仕事をやればやるほど矛盾を感じるという要素があるが,病院は,本来,良心に反したことはしないで済む職場であるし,みんなが新しいものを学び,研究をするという知的な雰囲気がある.

随想=私の出会った患者

アルコール症患者とのつきあい

著者: 上野幸久

ページ範囲:P.63 - P.63

 都内城南地区で書店を経営しているTさんは慢性肝障害のため,月1回著者のところへ通院している.ある日,「先生これを」と言って何やら書いた紙片をおそるおそる差し出す.見ると"7月6日大5本,9日中6本,11日中3+小2本……"といった数字が並んでいる.ずいぶん努力しているでしょうと彼は自慢する.なんのことはない自らの勤務評定で,飲んだ酒の本数を書き連ねているのである.なおも読んでいくと大2本+水割り3杯,ワイン1本+水割2杯などというのもある.
 克明につけた彼の飲酒日記を半ばあきれ,半ば感心しながら眺めていたが,なぜ中瓶を8本も飲んでいるか?大瓶3本か4本のほうが手間がかからないし安いのでは……と問うと,イヤその店には中瓶しか置いてなくてと言う.また大瓶6本というのもあるので,3本くらいでも腹がふくれるのによくまたそんなにと言うと,いや3時ころから5〜6時間かけて飲みましたのでねと答える.一晩に飲むアルコール量としては相当なものだが,小生の言いつけを守って中2日ないし3日おいて飲んでいるゆえか,半年前の初診時に比べて肝障害が程度はむしろ軽く,GOT,GPTなどは軽度の異常にとどまり,γGTPの上昇が目立つ程度で進行性は認められない.

新 病院建築・49

病院の建築規模と部門別面積配分1982年

著者: 伊藤誠 ,   河口豊 ,   中山茂樹

ページ範囲:P.65 - P.73

はじめに
 我が国の病院が,どの程度の面積をもって建てられ,またその面積を院内各部門にどのような比率で割りふっているかについては,過去にも何度か分析を行い,そのつど結果を報告1〜3)してきた.それらは,新しい病院の計画資料として,またそれぞれの設計を検討するための比較対象として,広く活用されてきたようである.
 しかし,ここ数年,病院全般の規模水準は急速に向上しつつある.現状を常に正確に把握し,今後の方向を見定めていくために,以下,再びその後に建設された病院についての分析を試み,かつは前報2)との比較検討を行う.

老人医療と福祉の課題

老人医療・福祉の将来

著者: 佐藤智 ,   奈倉道隆

ページ範囲:P.74 - P.78

自ら健康を守り隣人と共に生きる
 人類の発生と共に医療は始まり,現在まで確実に進歩してきた.それは人間が自らを死に追いやる病気や苦痛から逃れたいという願望を常に抱いているからである.しかし,いかに医療や福祉が発達しても「人間は必ず死ぬ」という原則は変わらず,「人間は健康で,幸せでありたい」という願望も変わらない.
 ここに私は日本の老人医療,福祉の将来を西歴2000年を越えて,総人口に対する老人比率が最も高くなる第1のピーク1)2020年(21.8%),第2のピーク1)2043年(22.2%)を予想し,病院(施設)の立場を踏まえながら考えてみたい.

リハビリテーション院内から地域へ 座談会

障害者・家族・リハビリテーション

著者: 浜村明徳 ,   石原邦雄 ,   長谷川宏 ,   竹内孝仁

ページ範囲:P.79 - P.86

なぜ家族を検討するか
 竹内 リハビリテーション医学は,その定義付けをめぐっていくつかの論議がありますが,障害を持った人々の生活を再建するという点については,異論のないところだと思います.しかし人間生活という課題が持ち込まれてくると,単なる身体機能以外に,生活を規定している数多くの問題を整理してとらえ直していかなければならないということになってまいります.
 障害を持つ人の生活は彼を取り巻く家族によってかなり左右されているという現実があります.具体的には,家族が良ければ障害者も落着いたより人間的な生活を得ているというのが一般的な認識としてあると思われます.そこで言えることは,人間の生活は常に環境とのかかわりの中で決定されているという事実で,特に環境を構成する他の人々,とりわけ私たちと生活を共にしている家族について検討していく必要があるということだと思います.

病院精神医療の展開

てんかん患者の取扱いと処遇の問題

著者: 福島裕

ページ範囲:P.88 - P.91

 従来,てんかんの発病率は0.3〜0.5%とされてきた.最近では,もっと高率であろうという推定もなされている.このように言われている発病率から有病率を推定してみると,現在の我が国には,少なくとも50万人のてんかん患者がいるものと考えられる.
 ところで,現在では,てんかん発作に対する薬物治療が非常に進歩し,その治療予後も著しく改善されている.最近の,我が国の調査研究(全国多施設共同研究)の結果4)では,長期治療例について,その半数以上が発作の完全抑制ないしは長期間発作消失という成績が見いだされている.てんかんの治療と予後に明るい見通しを与える結果であったと言える.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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