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雑誌目次

雑誌文献

病院41巻10号

1982年10月発行

雑誌目次

グラフ

県の精神医療センターとして—石川県立高松病院

ページ範囲:P.833 - P.838

 石川県立高松病院は,金沢市から七尾線で約30分,能登半島の入口に位置する人口約1万人余の高松町にある.石川県内唯一の県立精神病院で,昭和41年5月に200床で開設された.石川県内の精神病院は大部分が金沢地区から加賀地区に集中しており,県立病院は能登地区に設置しようとの動きもあったが,高松町の県施設誘致運動もあり,現在地に設置された.
 病院は高松駅から約1km弱,日本海を望む緑に囲まれた閑静な高台に約65,000m2の敷地を占めている.

地域医療の底辺を支える院長先生 栃木県・県南総合病院院長 木下博氏

著者: 斉藤淏

ページ範囲:P.840 - P.840

 彼は,医者になって40年になろうとしている.その間,私とは離れたことがない.30年前,栃木県田沼の小さい国保病院がふり出しで,公医の冠も,遂に,彼から離れることはなかった.
 かえりみると,授かった仕事は,ひたむきにやり遂げようとする,そんな人である.細心でしかも広く気を配り,勉強し続けてきた.私は,地域医療の動態を,絶えず,彼から聞かされて来た.医療制度や医学教育の基本を彼によって考えさせられていた.

小特集 院内診療各科の協力体制

佐賀医科大学の綜合外来の概略

著者: 須永俊明 ,   松井征男 ,   山本裕士

ページ範囲:P.848 - P.850

まえがき—佐賀医科大学附属病院の診療体制概略■
 当院は昭和56年10月に開院したが,その診療体制は従来のそれと多少趣を異にしている,したがって当院の綜合外来について述べる前に本学の教官組織と附属病院の診療体制全般について概略説明を加えることにする.
 臨床医学系講座には内科学,外科学,精神医学,小児科学,産科婦人科学,眼科学,耳鼻咽喉科学,放射線医学および麻酔学があり,内科学および外科学は大講座制をしいている.

心療内科と他科との連携

著者: 石川中

ページ範囲:P.851 - P.852

アメリカと日本の心身医学■
 心療内科と他科との連携は,心療内科の臨床において基本的なことである.
 まず第1に,心療内科は内科と極めて緊密な連携をもたなくてはならない.次に精神科との連携も重要である.このことは,元来心療内科が,どのような歴史的経過で確立されてきたかを考えると,明らかになる.

内科と皮膚科の連携

著者: 牧野荘平

ページ範囲:P.853 - P.855

はじめに■
 病院全体として受診した患者に適切な治療を供給するためには,内科,外科,すべてを含めての協力は極めて重要である.内科と皮膚科の連携も病院内の各診療科の間の連携の一部としてとらえるべきことはもちろんである.実際に,特別の規則や協定なしにスムーズに行われているのが実情であろう.現在の高度の診断技術,治療技術の進歩は,いくつかの専門領域の協力を必要とさせているからである.
 この文のテーマは内科と皮膚科の連携というものであるが,当大病院の内科は7つに区分されている.循環器,呼吸器,消化器,神経,血液,内分泌,アレルギー・膠原病のそれぞれを専門としている.内科全体と皮膚科の協力を取り上げることは,容易でなく,本文では当アレルギー内科がどのように皮膚科に御協力,御教示いただいているかを考えることとした.このような重要な問題を検討するに当たっては各科の協力の実態とその頻度についての広範な調査データを必要とするが,そのような病院全体のデータは見当たらず,また,時間の関係で実施不能のため,個人的な印象によることを,あらかじめお断わりしておきたい.

児童精神科と小児科の協力

著者: 山崎晃資 ,   坂井聖二 ,   加藤俊一

ページ範囲:P.856 - P.858

まえがき■
 児童精神医学におけるLiaison-Consultation Psychia-tryの重要性については,いうまでもないことである.児童のもつ発達的特性から,地域社会のなかでのさまざまなアプローチが必要であり,地域の関連機関との実際的な連携,協働が不可欠であるが,同時に,総合病院における児童精神科の役割も検討しておかねばならない.
 周知のごとく,諸外国における総合病院での児童精神科医の役割は,それぞれの医学専門領域における精神医学的諸問題に関するconsultationが重要な部分となっている.長期入院児の心理学的問題や,死を目前にした患児および両親に対するアプローチが,児童精神科医の対応すべきことがらの一つとなっているが,我が国においてはそのような認識は未だに不十分である.また,ネフローゼのために副腎皮質ホルモンの長期服用を続け,多彩な精神症状および問題行動が出現すると,小児科では対応が困難となり,open heart surgeryにみられるpost-cardiotomy dcliriumや,脊椎側わん症のためのコルセット着用による心理学的問題などに対する関心もほとんど払われていない.更に,眼科,耳鼻咽喉科における視覚障害,聴覚障害の診断と早期治療,教育に関しても,児童精神科医との密接な連携が必要であると思われるが,現状では必ずしも円滑には行われていない.

リハビリテーション科と他科との連携

著者: 明石謙

ページ範囲:P.859 - P.860

当科の現況について■
 川崎医科大学附属病院リハビリテーション科は,昭和50年4月に開設され,現在に至っている.最初は医師1名,PT2名,外来受付の事務員1名で始めたが,現在は医師7名(内1名は米国留学中),PT8名,OT7名,外来看護婦1名,外来受付の事務員1名(パートタイム1/2日勤務1名を加えると112名)となり,常時PT,OT合せて6〜8名の実習生の実習も行っている.ベッドも出発当時は5ベッドだったが,現在は20ベッドとなり,脳神経外科との混合病棟だが,時には2〜3名は定員を超えるようになった.外来患者は平均80〜90名/日だが多い時には1日130名近く増加することもある.これらの患者のほとんどが再来の患者であり,再来患者の新患に対する割合は新患1名に対し20〜30名となっている.
 病院のシステムは,当科についてみれば,リハビリテーション科と中央リハビリテーション部があり,PT,OTは中央リハビリテーション部に,医師はリハビリテーション科に属している,なおリハビリテーション科の部長は,中央リハビリテーション部の部長も兼任している.

中央放射線科と診療各科の協力

著者: 勝山直文 ,   多田信平

ページ範囲:P.861 - P.862

はじめに■
 最近,医療機器の発展はめざましく,1972年にCTが出現して以来,超音波,核医学も進歩してきた.また最近は,デジタル・ラジオグラフィ,NMR (核磁気共鳴)も臨床に応用されつつある.これらの画像診断機器はすべてが,放射線を用いるわけではないが,中央放射線科という役割を考えると,一か所でまとめて管理するほうが種々の点で望ましいと思われる.これらの新しい機器を購入,設置する場合には,放射線医は各科の要求を聞き,それをまとめてどの機種が最もよいかを選択しなければならない.次に臨床に用いる段階では,最近発表された臨床研究に熟知し,どういったことが可能であるかを臨床各科に広める必要がある.更に,その検査の適応の有無,検査方法を決定し,その結果を読影して,必要ならば次の検査を指示する.このようにある程度以上の病院(300床以上)では,放射線医は必要であることが最近認識されるようになってきた.しかし,放射線医は数,質ともに十分とは言い難いのが現状である.

ケースワーカーと診療各科の協力

著者: 足利量子

ページ範囲:P.863 - P.864

はじめに■
 病院のケースワーカー業務は「医療社会事業」の基盤の上に成立している.
 これは"Medical Social Work"の訳語で,1905年にMassachusetts General HospitalのDr.Richard C.Ca-botが,病院の医療チームの一員としてSocial Workerを導入したことに始まっている.

鼎談

院内診療各科の連携—順天堂大学病院における協力体制を中心に

著者: 塩川優一 ,   川北祐幸 ,   中島章

ページ範囲:P.841 - P.847

緊密なヨコのつながり■
 川北(司会) 各科の協力は組織医療になってくればくるほど,だんだん大事になってくると思っております.
 順天堂大学病院では昔から,先生方も診療各科間の連携が多いほうだと考えられていると思っております.私も実は,病院の中で,じゃあ一体協力がどれくらい行われているのか,今消化器内科で調べているんですが,まだ結論は出ておりませんけれども,ざっと見ていくと,40%ぐらいはほかの科に必ず診てもらっているということなんです.ただ,これは調べるのが大変難しい.というのは,内科で糖尿病で関係があって眼科へ行っている場合と,入院していてたまたま眼が悪いからついでに診てもらいたいというのもある.後者は協力というのとはちょっと違います.大変区別は難しいが,実際医療をしていく場合に,どういうような形で対診が必要になってくるか,塩川先生からお話を伺いたいと思います.

リハビリテーション院内から地域へ てい談

地域リハビリテーションと開業医

著者: 林弘 ,   鈴木荘一 ,   竹内孝仁

ページ範囲:P.866 - P.872

 林 日本のリハビリテーション医学は,欧米の発想,欧米の生活様式を基本にした文字どおりの舶来品で,輸入後約20年たって,ようやく日本のリハビリテーション(以下リハと略)として定着しはじめたと思いますが,それが本当に患者の住んでいる町や村に定着したかというと,そこまではいっていません.これは,輸入の発想に始まったので仕方ないことかもしれませんが,急速に高齢化が進み,老人問題が深刻化していることを考えると,そうのんびりと構えてもいられない.明治の人たちもかなり急いでことを進めてきたけれども,我々も真剣にできることからやっていかないといけないと思います.
 では,何から手を付けるかと言うと,私自身もまだわずかな経験しかありませんが,患者が住んでいる場でのリハが実はいちばん放りぱなしになっていることです.本当に生活につながるリハのシステムができていない.今まである専門のセンターや少数の有志がやっている地域のリハとかの有機的な連携一貫したリハの流れが今もってできていない.これはゆゆしいことです.

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機器短報

ページ範囲:P.873 - P.873

パソコンシステム
 日本電気(電話03-454-1111)は窓口会計処理から心電図解析のような診断,治療まで広範な業務に利用できるメディカルパーソナルコンピュータシステム「MEDICAL-PCシリーズ」を発売した.
 特徴は,①窓口会計処理や心電図解析処理のような医療事務,診断,治療,研究などに関する各種のソフトウエアパッケージが用意されていること(パッケージのうち5本までは所定の価格に含まれており,システム導入時に必要な業務に利用できる),②専用タブレットによる入力操作で操作が簡単,③「PC・EX」機には音声入力装置が装備されており,音声によるデータ入力やシステムの制御ができる,④漢字ディスプレイ,漢字プリンタの採用により,診断報告書,検査報告書などの書類が読みやすい日本語で表示・印字される,など.

講座 病院経営分析入門・19

生産性の分析(8)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.874 - P.875

設備生産性
 資本生産性とか有形固定資産生産性といったものは,定義は明瞭であるが,何を意味するのか,抽象的であり,内容の点でもあいまいな面がある.「資本」の概念は,経営主体によってかなり違った意味をもっており,その評価法や含める範囲といったものは,はなはだまちまちである.
 有形固定資産は,土地,建物,設備器械といったように具体的に内容が分かるので,その生産性というと容易に理解ができる.しかし,国立とか国有民営の病院では,こうした資産はゼロであるし,ほかの公立病院でも,範囲や内容は千差万別であって,到底,病院資産の全額を正確に表すものとは期待できない.だから病院勘定科目を厳格に適用することを求められる被課税の法人病院などの私的病院でなければ,経営分析や診断の材料としては不適当なのである.

バイオエシックスと医療

10.バイオエシックスの思想と文化(その3)—「全人医療」のための指針

著者: 木村利人

ページ範囲:P.876 - P.877

 1960年代には,主として若い世代の人々によって,既成秩序・価値の否定(Counter-Culture)が主張され,体制への徹底した反抗が世界的に共通して認められました.
 更に,一般の市民たちによる数多くの人権と生命を守る運動や実践活動が,政治的・社会的・経済的社会変革へと展開されました.しかし,その一方で,人間の内面の変革を制度の変革とともに重視する運動も生まれ,いろいろなグループやプログラムが,米国では今も活発な活動を続けています.

病院職員のための医学知識

薬剤の血中濃度モニタリング

著者: 久保真莉子

ページ範囲:P.878 - P.879

昨年の診療報酬点数の改定で,薬剤の血中濃度モニタリングが特定薬剤治療管理料の一つとして認められましたが,このモニタリングは何を目的としていますか.
 近年の微量定量法のめざましい進歩と血中濃度モニタリングの研究により,種々の薬物に,"有効血中濃度"—薬物が効果を発現するために必要な血中の薬物濃度—というものが存在することが知られてきました.しかし,常用量の投与によってすべての患者を有効血中濃度域に到達させることはできません.なぜならば,血中濃度を決定する薬物体内動態というものが個人によって大きく異なるからです.つまり一般に臨床家が良く経験することですが,医学成書や効能書に記載されている常用量に従って投薬を行っても,患者によっては効かなかったり,あるいは中毒に陥ってしまったということがしばしば起こるのは,このためなのです.図はフェニトインを同量投与している100人の外来患者の血中濃度を示したものですが,てんかん発作が抑制される血中濃度,つまり有効血中濃度域の10〜20μg/mlにコントロールされている患者はわずかに27%で,16%の人が中毒域に,そして実に50%以上が有効血中濃度域に達していないことが示されています.
 フェニトインの例が示すように,同量を投与しても血中濃度には大きなバラツキが見られます.

統計のページ

部門別原価計算・2—「昭和56年10月病院部門別原価計算調査」より

著者: 森福省一

ページ範囲:P.880 - P.881

業務単位当たり原価と収益(表3)
1)業務単位当たり原価の性質
 表3に示すように,入院及び外来部門では,患者1人1日当たりの原価と収益が計算してある.手術,人工透析,放射線,検査及びリハビリ部門では,1件当たりで計算しても,比較的簡単なものもあり,また複雑なものもある.したがって,これらの部門では,収益1,000点(金額:10,000円)当たりの原価を算定した.また,薬剤部門については1調剤(延べ数)当たり給食では1食当たりの原価と収益が表示してある.
 このようにすると,病床規模による差異などを捨象して,前回の調査結果と比較したり,他の病院と対照することが容易になる.

病院管理の工夫

病棟におけるパラメディカルスタッフの連携

著者: 森日出男

ページ範囲:P.882 - P.883

 日本の医療は,私的な施設により支えられてきたし,また支えられている.特に救命救急などの最先端部門,また老人・慢性疾患患者の受け入れ後方部門は,多くの私的な病院あるいは多くの法人や奉仕団体等によってカバーされているとも言える.
 私的なところは,利潤の追求が第一義でないにしても,収支のバランスを考えなければ組織を守ることができない.だからといってサービスを低下させ,貧しい医療内容を提供することは当然許されることでもない.

診療報酬請求漏れとその防止策

著者: 小吹孝二

ページ範囲:P.884 - P.886

 診療報酬請求明細書を作成するに際して一番感じることは,診療内容の質の高度化及び専門化が進み,情報量が多くなってきたことである.
 医事部門の80%以上が情報の結果を処理する部門であって,情報の発生から明細書の作成(完成)までの一連の流れをすべて取り扱っているものと言える.

随想=私の出会った患者

習い覚えた技の功

著者: 相澤豊三

ページ範囲:P.887 - P.887

 あくまでも局地解決を叫んでいた政府の声明とは裏腹に支那事変は長期化し,昭和16年12月8日,遂に我が国は米・英とも戦火を交えるに至り,いわゆる大東亜戦争へと突入してしまった.
 そのころ,私は慶大内科教室で助手生活すでに10年目を迎えていた.今まで50人近くの医局員を擁して偉容を誇っていた内科教室も櫛の歯をひくように,次々と軍医に応召,夜になると歓送の会に賑わったとはいえ,行き先き知れぬ不安が医局にただよい始めた.第二乙で赤紙の来ない私など肩身の狭い思いをしたものであるが,兵隊に取られないものは満州(現中国東北部)にでも行って,先輩の手助けをすべしという大陸発展政策が打ち出され,まず私に白羽の矢が立った.首都・新京の近く,王爺廟というところに大きな病院があり,先輩がそこで院長をやっているが,内科医がいないから手伝えとのことである.世が世ならば欧米留学というところだが,戦時だから東洋留学とあきらめるがよいと慰めてくれる友もいたが,肝心の私が行く王爺廟なるもの,心細いことに普通の地図にもなく,旅行案内にも載っていなかった.

新 病院建築・58

日産厚生会玉川病院の設計

著者: 大野寛

ページ範囲:P.889 - P.896

病院の沿革
 日産厚生会玉川病院の発祥は,昭和16年鮎川義介氏に依り,社会事業の一環として,千葉県佐倉に,結核撲滅を目指した佐倉厚生園の設立したのに始まる.結核の早期発見早期治療のテスト施設で,多くの患者の快癒を見た結果,東京都内にも必要性有りと言うことで昭和28年3月に多摩川の丘陵地で当時,閑静な環境であった瀬田に敷地約1万坪を求め210床の病院を開設した.それを土台として,昭和29年には60床,昭和35年には30床を追加し,計300床,昭和47年に,総合病院となった.
 戦後新薬の発見により,結核患者は,昭和30年代に入ると,治療効果てきめんとなり減少してきた.その間に,成人病—高血圧,糖尿病—,消化器癌,肺癌,それに本来の自然気胸の診療研究を重ねた.更に東洋医学の研究,人間ドック,集団検診,救急医療の諸機関を加えて,入院患者のみでなく,地域住民の診療に多大に貢献してきた.

病院精神医療の展開

病院精神医療チームにおける臨床心理士の役割

著者: 大田民雄

ページ範囲:P.897 - P.900

 残念ながら我が国では,精神医療,その他の領域における臨床心理士の役割は,独立した専門機能としてまだ定着していない.したがって治療チーム内での役割も,病院経営者や他の治療スタッフの考え方,臨床心理士自身の能力などによって全く異なっており,ある所では自立した治療者として認知され,他の場所では未熟な半人前として扱われている,といった状態である.米国で発達した臨床心理士という職業は,歴史上様々な文化的,政策的,経済的,社会的理由で,日本では比べものにならないほど遅れを取っている.我が国の臨床心理士の多くは,かつて米国でもそうであったように,専門教育の不足,実力不足,役割の不明確さ,社会的地位の不安定などのため,職業的なアイデンティティー危機に苦しんでいる状況ではないだろうか.病院内臨床心理士として熟練した先達が多く育っていないので,若い中堅の臨床心理士たちが自らの役割を切り開いてその地位を築こうとしている段階であろう.現実とのギャップはまだ大きいものの,目標として掲げられている精神医療チーム内の役割とその任務は以下のごとくである.

老人医療と福祉の課題

老人ケアへの対応と施設拡充の経緯—三重県・小山田病院の例

著者: 川村耕造

ページ範囲:P.901 - P.905

 小山田病院は三重県四日市市の西南に位置し,小山田老人施設群〔小山田特別養護老人ホーム(以下特養ホームと略す),小山田病院,第2小山田特養ホーム=痴呆専用ホーム,軽費老人ホーム(B型),デイ・サービス・センター,老人憩の家〕の一角にあり,内科・外科・整形外科・眼科・神経科・リハビリを有する病院で,緑に囲まれた閑静な環境の中に建っている.老人ホームは社会福祉法人青山里会,小山田病院は医療法人主体会によって運営され,デイ・サービスは四日市市より委託され運営されている.医療法人主体会は四日市中心部で,川村病院(内科・外科・消化器病科),川村第1病院(放射線科,理学療法科),人工腎臓透析センターを運営しており,小山田老人施設群における高度医療の役割を受け持っている.
 これらの老人施設がどのような動機で建設され,どのような事態に直面して,どのような考え方に基づいて発展したのか,将来的展望をも含めて紹介したいと思うう.

中小規模病院の運営

自動化健診システムの経営分析

著者: 三木徹

ページ範囲:P.906 - P.909

自動化健診システムと健診
 近年,医学の進歩は極めて顕著なものがある.長年死亡率第1位を占め,国民病とまで言われていた結核も影をひそめ,それに代わって成人病が死亡率の上位にあり,死亡率全般の65%以上を占め,大きくクローズアップされてきた.
 健診は,結核が死亡率第1位を占めていたころは,巡回検診車などで胸部X線,血沈,ツベルクリン反応などの対結核の検査を行っていた.労働基準法においても胸部の検診を義務づけて現在に至っているが,死亡率の変遷により,癌疾患の死亡率が高くなるにつれて,胃の集団検診として検診車を地方に巡回させその検診を行っている.また平均的寿命が74〜75歳と高齢になると,老人病健診としての高血圧,動脈硬化,その他簡単な検査を施行しているのが現状である.単一的な検査よりも総合的な検査の必要なことは言うまでもない.

民間病院を見る,聞く,語る・7

小児のトータルケアを目指す民間小児病院—大阪府・中野小児病院

著者: 中野博光 ,   一条勝夫

ページ範囲:P.910 - P.914

 不採算が前提となる小児医療の充実のため,公立小児専門病院が各県にできつつあるが,中野小児病院は,日本で初めて東京に国立小児病院が出来た翌年(41年)に民間の小児病院として開設された.小児のトータルケアを目指す当院は24時間救急受入れをはじめ,心理部門の併設,教育の実施などきめ細かい対応をしている.しかし高度な全人的医療の提供は経営の苦しさにつながる.そのため何度か,「規模の割に職員がたくさんいって,またその一人一人が必死に働いているのが実情」と話された.

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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